★ ドラマ「VIVANT」は急展開。散りばめられた伏線の数々。繰り返されるどんでん返し。目的のためには手段を選ばないドラマ「24」のような毒もある。最後まで観終わって初めて全体像が浮かび上がるモザイクのような作品だ。
★ さて今日は、森絵都さんの「風に舞いあがるビニールシート」(文春文庫)から「器を探して」を読んだ。
★ パティシエを目指す弥生という女性が主人公。彼女はヒロミという女性がつくるケーキに惚れこみ、彼女のビジネスを手伝うことになる。弥生は、ヒロミのケーキを信奉し、まるで信者が布教するように頑張ったという。
★ それから8年。ヒロミのケーキは評判を呼び、マスメディアへの露出も増えた。小さな店では生産が追いつかず、大きな物件に移転。弥生の役割も「専属秘書」になった。
★ ヒロミはケーキづくりやビジネスにカリスマ性を発揮したが、一方で私生活は不安定。とりわけ恋愛下手で、気分が不安定になると弥生にそのとばっちりが向かう。
★ 弥生はヒロミの移り気に不満を持ちながらも、彼女がつくるケーキに惚れた弱さで、ヒロミの影として手腕を発揮していた。その結果、失った恋が2つ。そして3つ目の恋が成就するはずのクリスマスイブ。30代に手の届いた弥生にとっても決断の時だった。
★ それなのにこの日、ヒロミが弥生に依頼したのは、菓子の撮影で映える器(美濃焼)を探すこと。弥生は嫌とは言えず、新幹線に乗ったのだが。
☆ 人の心は複雑だ。弥生が器を探す過程で目にした「釣具小鳥将棋碁麻雀」の看板。ケーキ一筋の弥生には理解できない発想だったが、エンディングではそれも悪くないと思えるようだったのが印象的だった。
☆ 京都は台風の前に静けさ。明日は大荒れになるのかな。