★ 今は亡き某芸能プロダクションの経営者が、所属する少年たちに性的虐待(そういっても良かろう)を与えていたことが話題になっている。(これは、氷山の一角なのかも知れない。)
★ 事件が発覚し、報告書が出され、性被害の事実が明確となった。それを受けて、ニュースキャスターは正論とマスメディアとしての反省を述べていたが、それには業界としての白々しさも感じる。
★ 有力事務所であるがゆえに、カリスマと言われる人物であるがゆえに、業界の中で「公然の秘密」として扱われてきたのではないだろうか。
★ そしてこれは、芸能事案に限らず、例えば絶対安全と叫ばれてきた原子力発電、メディアにとって大スポンサーである電力会社への忖度はなかったのか。大手広告代理店の不祥事も然りである。
★ そんなことを考えながら、安倍公房さんの「公然の秘密」(「笑う月」新潮文庫所収)を読んだ。
★ 淀んだ掘割の中に生息する腐敗した生き物。誰もがその存在に気づいていたが見て見ぬふりをしていた。「公然の秘密」だった。いざ、姿を現すとそのみずぼらしい姿に同情の声も上がったが、同時にそれを疎ましく思い、なかったことにしようとする心理もはたらいた。
★ 「弱者への愛には、いつだって殺意がこめられている」というのは、考えさせられる一文だ。
★ ファシズム、集団圧力、エゴ、心に突き刺さる作品だった。