かねうりきちじの横浜・喫茶店めぐり

珈琲歴四十年の中の人が、珈琲豆荷揚げ量日本一を誇る横浜港のある町の喫茶店でタンザニア産コーヒーを飲み歩きます

訪問販売で購入(笑)

2013年08月28日 | 旧ブログ記事(文化財関係)
三蹟のひとり藤原行成の「白詩詩巻」。

不明ですが、誰かの依頼でしたためたものです。

けれども、行成が筆を執った、長和、いや(笑)、寛仁2年から112年後の保延6年、藤原定信という人物が手にします。

その経緯が・・・



赤色の部分に記されています。

例によって原文は漢文ですが、読み下すとこうです。

  『物売り女(め)、蓬門より入り来たりて、手本二巻、
  一巻は野道風屏風土代、一巻はこの本を売る。
  見るに、一定の由。価直を賜うに、女人はなはだ悦気を
  なし、すなわち以て退出す。』

訳すとこうでしょうか。

  『蓬門から物売りが入ってきて、書を売りに来た。ひとつは小野道風の屏風土台、
  もうひとつはこの本である。一見して、確実なものだと分かったので、お金を
  渡すと、女はたいそう喜んで、すぐに門から出ていった。』

要は訪問販売。

でも、この女性、結構やり手。

というのも、購入した藤原定信は、「白詩詩巻」の書き手、藤原行成の玄孫だからです。

おまけに三蹟のもうひとり小野道風の「屏風土代」・・・


図録からスキャンしました

を抱き合わせて売っています。

ご先祖の作品と、道風の作品。

定信はさぞかし奮発したことでしょう。

「はなはだ悦気をなす」わけです。

でも、この「物売女」が定信に売らなかったら、「来者」である私たちは、この2つの作品を目にすることができなかったかもしれませんね。

感謝です。
コメント
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