河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

私と歩行分析 11

2008-02-03 | 私と歩行分析
3次元動作解析システムを更新しなければならないとは考えていた。
しかし同時にそれは不可能であると言うことも分かっていた。
何故なら更新のために必要な予算は控えめに見ても数千万円であり、私がいくら努力して研究費をかき集めても数百万円だったからである。
私がこれまで獲得した一番大きな研究費は科研費基盤研究Bであるが、これは上限が数年計画で総計2000万円である。
2000万円全部出せば最低限のシステムは組めるかもしれないが、2000万円で初年度に3次元動作解析システムを導入してあとは予算無しで研究を行うという研究計画は100%間違いなく落ちるに決まっている。
機器の購入が目的の研究計画とみなされるからである。
科研費で購入するとしたら基盤研究A以上の大型研究費を取るしかない。
とてもそんなことができそうには思えなかった。

私が見聞きした範囲では3次元動作解析システムを導入するのは学部を新設するとか、リハセンターを新規に作るとかの場合に設置経費で導入するという場合だけだった。
もう諦めるしかないと本気で思っていたのである。


ところが、事態は思わぬ方向へ流れていった。

少子化で入学者の減少が続く中、全国どこの私立大学においても生き残りをかけた大学改革の動きは盛んである。
学生は減る一方なのに大学はどんどん増えている。
文部科学省は大学設置の基準を緩くする一方で、大学のクオリティーチェックを始めたのである。
2002年の学校教育法改正に伴い、2004年度以降わが国の大学は、文部科学大臣の認証を受けた評価機関による評価を7年以内の周期で受けることが義務づけられた(認証評価制度)。これを受けて、大学基準協会が2004年度に機関別認証評価機関としての認証を受け、わが国ではじめての認証評価を行うとともにその結果を公表するようになった。
吉備国際大学においても生き残りのために大学をあげて報告書を作成し、大学基準協会の認証評価を受けたのである。

その結果、何とか認証を受けることはできたのだが、多くの改善勧告と指摘事項を受けることになったのである。
その中の一つが、保健科学研究科につけられた
「設置後10年を経過して研究機器の老朽化が問題である。」
と言う指摘だったのである。

吉備国際大学では次の基準協会の評価を受けるのに備えて、新学長の下、教育・研究改革推進中核センターという組織を立ち上げ、私は何故か研究部門の副部門長に任命されてしまった。
これが3年前の出来事である。

それからが大変だった。
基準協会の指摘もあり、研究機器の更新をしなくてはならないが、大学の一部学科で定員割れが起こっているような状況で大学全体の予算も厳しいものがあり、法人本部が予算を新規につけてくれるわけがない。
今回は細胞培養などの基礎実験室の整備なども問題になっている。
もともと3次元動作解析システムの更新すらできないのにどうやって保健科学研究科全体の研究機器・実験室の整備ができるというのか。

会議を開いていろいろ検討した結果、これらの問題を一気に解決する方法として、文科省が行っている補助金の申請をするしかないと言うことになった。
いろいろ検討して一番可能性がありそうなのが、文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業(オープン・リサーチ・センター整備事業)に応募するというものだった。
この補助金は、研究所などの建物を建てる予算も補助の対象になる上、研究機器、研究年間予算など全て対象として5年間半額が補助される仕組みになっていた。
これなら、基礎の実験室も整備できるし、3次元動作解析システムなども新規に導入できるし、地域の健康増進の拠点としても使うことができる。

戦略として大学院保健科学研究科=保健福祉研究所=オープンリサーチセンターという形を取ることにした。
保健福祉研究所というのは吉備国際大学に設置はされているものの規定と年間220万円の予算があるだけで、建物としての実態のない組織であった。これを、補助金申請の母体と位置づけたのである。


問題解決の戦略は決まったが、それからが苦難の連続であった。
結局私一人で申請書を書かなくてはならなかったからである。
容易に想像できると思うが、いろいろな立場の人がいろいろな意見を言ってくれるが、実際に作業を手伝ってくれる人はほとんどいないからである。
中核センターの研究部門副部門長という辞令をよくわからぬまま受け取ってしまったがために、この大変な作業を行わなくてはならなくなったのである。

コメント
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