河村顕治研究室

健康寿命を延伸するリハビリテーション先端科学研究に取り組む研究室

日本再生医療学会総会に参加して

2011-03-02 | 研究・講演
日本再生医療学会総会に参加した理由はいろいろあるが、今の日本の医療に関する学会の中でこの学会がおそらく最先端の内容を取り扱っていることは間違いないと思う。
いろいろな発表を聞いていると、まるでSFの世界がすぐにでも展開されるような錯覚に陥る。
医療の在り方が根本から変わるのである。

わかりやすい例で言えば虫歯になったら今の治療では悪いところをごっそりと削って詰め物をする。
どうしようもなくなったら抜いてしまう。
ところが現在既に研究レベルで実現している技術を使えば、虫歯になった部分に歯そのものを再生させてきれいな歯に戻すことが出来るのである。
発表者自身がおっしゃっていたのだが、これまでの歯科治療は大工のようなもので、歯を無機物として扱ってきた。これからは歯を生きた有機物として扱う治療に変わって行かなくてはならないということだ。
これはすごいことになる。
今ではコンビニと同じくらい歯科医院があると言われているのに、このような再生治療が始まったら古い歯科医院はほとんどが立ち行かなくなるだろう。

現在培養した皮膚のシートを重度熱傷患者に利用することに関しては既に認可が下りて保険も適応されるようになっている。
しかし、ここに至るまでには10年近くもかかったそうだ。
別のベンチャーが眼の角膜の細胞シートを臨床応用しようとしているが、日本では認可が下りるまで早くて5から6年かかると言うことで、フランスのリヨンで治験が開始されたという。
iPS細胞が山中教授によって日本で開発されたことを受けて、国も規制を緩和して対応しているが、それでもまだまだいろいろな制限が産業化を阻んでいる。

今回、会長がアレンジした特別講演が、現在の再生医療の状況を暗示している。

意志あるところに道拓けるか?―スーダンでのNGO活動―
川原 尚行(NPO法人 ロシナンテス)

特別講演を行った川原先生はもともとは外務省の医務官としてスーダンに派遣されていたのが、いろいろな制約からスーダンの問題を解決するには外務省を辞めるしかないと決意する。
フリーになってNGO組織を立ち上げて名前をロシナンテスとつける。
ロシナンテというのはドン・キホーテがのる痩せ馬の名前である。
1人1人は非力なロシナンテでも、たくさん集まれば何かができるという思いでロシナンテスという名前をつけたのだそうだ。
その結果としてスーダンの無医村に診療所を立ち上げ、井戸を掘ったり、女子教育のための学校を作ったりしてきた。
講演に出てきたスーダンのスライドはとても美しくて感動した。

会長がこの特別講演を企画したのは、再生医療も川原先生のようにがむしゃらに頑張らないと患者さんのためになる臨床応用はとても出来ないということを言いたかったのだと理解した。

いろいろ疲れてぼやいている自分が情けなく感じられて、励まされた学会参加であった。
私も自分に出来ることはこつこつ頑張ろうと改めて思った。



PS. 川原先生がブログに講演のことを書いています。
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第10回日本再生医療学会総会2日目

2011-03-02 | 研究・講演
2日目に参加した主なセッションについて記録する。

シンポジウム 再生医療特区への期待
座 長: 中内 啓光(東京大学 医科学研究所 幹細胞治療研究センター 幹細胞治療分野
            /JST ERATO中内幹細胞制御プロジェクト)
早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)

会長講演 細胞シート再生医療の現状と今後の展望
岡野 光夫(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
座 長:高戸 毅(東京大学 医学部 口腔外科学講座)

はじまった再生医療産業~自家培養表皮ジェイス®の事業化を通じて得られたもの
松村 一(東京医科大学 形成外科)
座 長: 熊谷 憲夫(聖マリアンナ医科大学 形成外科)
畠 賢一郎(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)
共催:富士フイルム(株)/(株)ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング

SHINYA YAMANAKAレクチャー
    幹細胞研究から新しい医療へ
中内 啓光(東京大学 医科学研究所 幹細胞治療研究センター 幹細胞治療分野
          /JST ERATO中内幹細胞制御プロジェクト)
座 長: 山中 伸弥(京都大学 iPS細胞研究所)



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