蔵王古道を下っているとき、小さな赤い木の実をつけた木の枝が歩道に散らばっていたので、上を見上げるとたくさんの赤い実をつけて、美しく黄いろに染まった葉をつけた樹木を見つけた。「アオハダ」の若い木なのではないかとよく見ようと木の方向に足を向けた瞬間、いきなり左足が滑って、オイラは不覚にも転倒した。
緩やかな何でもない林床だったので、「吾輩の体力も地に落ちたか・・」と苦笑いをしながら立ち上がったら、なんとオイラのズボンの左端がべっとり黄色い粘土質の汚物に塗れていた。左の靴にもべっとりとそいつが。
「しまった、動物のフンを踏んずけてしまった!」と思いながら滑った箇所をみると、得体のしれない柔らかな粘土質の真っ黄色の物体が地面からむき出しになっていた。。中に黒いぶつぶつがたくさん混じっている薄気味の悪い物体ではあった。おいらはこの物体に足を滑らせたのだ。何か動物のフンではないかと思ったが、フンにしては色が鮮やかだし、テッシュでズボンを吹いた後にその物体の匂いを嗅いでも、何の匂いもしない。まったくフンらしくないので、なにか工事で使うパテ状の物体か食料をヒトが捨てたのではないかと疑ったが、そのような場所ではないし、黒いぶつぶつの混じった黄色い物体はけっして人為的なものとは考えられない。
「いったい何なんだ。」気味の悪いその場所を後にしながら、オイラは考え続けた。
あれがフンだとすれば、タライ一ぱい位もしたあの量からしてクマさんのフン以外には考えられないが、フンであれば体内で腸内細菌が摂取したものを分解するという工程を経ているので、匂わないはずはなく、それにあのような鮮やかな黄色で出てくるわけがない、と。
謎だらけの黄色い物体。周囲の状況と樹木図鑑などからの情報から、いまオイラは以下のような勝手な推論を立てている。
① 赤い実をつけていたアオハダはクマさんが好んで食べるという。
② 最近クマさんがやって来て、アオハダの枝を落として木の実を黄葉した葉っぱごと、透きとる様に大食
いした。
③ アオハダの実と葉っぱを大量に食べたため、クマさんは腹を下して、その場で脱糞した。腹下りのため
腸内細菌がゆっくり分解するまもなくアオハダの黄色い葉は黄色いふんに赤い木の実は黒色に変色して
フンに混ざっていた。そのため、フンはイヤな腐敗臭を醸し出さない。
物体がフンだとすれば、あの黄色はアオハダの葉っぱの黄色、黒いブツブツはアオハダの実という訳か・・と変に納得がいくが、どうなのだろう。黄色い葉っぱは、黄色いままでフンになるものか。
もし、この推論が事実なら、黄色いフンは最近排出されたもので、もしかしたら近くに、その腹下しのクマさんが横になって休んでいたのかもしれない…(怖)
今後クマさんのフンのことをいろいろ調べてみることにして、やっぱ不思議なことが多いよね自然って。きのこのことも、動物のフンのことも何十年と山を歩いても、知らないことばっかしだ。
〇 秋の蔵王古道色いろ
紫色の美しいキノコ。帰って図鑑を見ると「ムラサキシメジ」しか候補はなく、もっと調べればよかったと後悔した。
赤く染まるのは、「ハウチワカエデ」の仲間
「ドウダンツツジ」の仲間か、鮮やかなオレンジ
この黄葉はちょっと名前がわからない
大きなブナに出会うとオイラはすぐに抱き着く
午前の陽を受けて、紅葉の森は木の幹まで赤く染まる