かぜねこ花鳥風月館

出会いの花鳥風月を心の中にとじこめる日記

ああ・・北海道の山の思い出・・大千軒岳

2023-11-11 19:41:22 | 日記

北海道の南端、いわゆる道南の名山「大千軒岳・だいせんげんだけ・1017m」に登ったのは青森に勤務していた1985年ころのことだから、かれこれ40年近く前のことだったか。北海道在住の知り合いらと3人でワイワイ言いながら登った記憶がある。

その「大千軒岳」で10月末、北大水産学部の前途有為の若者が単独行中にヒグマに襲われ命を落としたというニュースが飛び交った。

この忌まわしい事故は、若者の遭難地点付近を登山していた消防士の3人が、同じ個体のクマに襲われて、そのうちクマに馬乗りになられた勇敢な一人が必死の覚悟でクマの首めがけてナイフを刺し、このクマが逃げて行ったという騒動が基因となった。

この消防士らのアクシデント発生前に、すでに若者がこの山で行方不明になっていたことから警察が捜索していたところ、なんと消防士らが襲われた地点から数百メートルしか離れていない場所でこのクマの死骸と、そこから数十メートルも離れていない場所でこの若者の無残な姿とザックなどを発見したということだ。

クマは消防士のナイフで致命傷を負い、わずかの間に絶命していたと推定されるが、死に場所が若者の遺体を埋めていた地点に近かったことから、専門家は、クマは確保した「食料」を守ろうと消防士らを追い払うために襲ったのではないか、ということである。クマの習性として占有した「食料」への執着心が強く、「食料」に近づいた者を追い払おうとして消防士らを襲ったのではないかとのこと。

報道では、北海道の登山でのヒグマによる死亡事故は、約50年ぶりであるとのことだが、あの1970年の日高での福岡大生3名の死亡事故以来ということなのだろう。あの事故は、ヒグマにテントで奪われた食料入りザックを学生らが奪い返したことが発端だとされているが、この場合もクマの「食料」への執着が原因だ。

いずれも悲惨な事故であり、改めてヒグマの怖さを思い知らされるが、登山中の死亡事故は、それでも半世紀に2件ばかりなので、ヒグマのDNAには、ヒトを川を上るサケやエゾシカの同じような食料確保のターゲットとしているとは思えない。たまたま、出会いがしらの衝突で相手が絶命したので、反射的に食べ物としたのだろう。そうでなければ、もっと被害者が増えていたはずだ。

二、三日前、たまたまNHKBSで、萩原元ヤマケイ編集長が、大雪山主脈を縦走しトムラウシをめざしていたドキュメントが放送されていたが、驚いたことに、多くの登山者が歩く忠別岳付近の登山道に親子のヒグマが彼らの近くに現れたが、ヒトに気づいて、向こうの方から退散していった。登山道にまでヒグマが現れることは、個体数がほんとうに増加している証左だとは思うが、ヒトを敬遠してあちらの方から退散するのが本来のヒグマなのだと思っている。

YouTubに登山Youtuberりょーじさんが、今年8月に大千軒岳を登頂した動画がアップしているが、彼のルートも今回の北大生や消防士ら同じルートであり、オイラたちが40年前歩いたのもこの松前ルートだ。おそらくこのルートが昔からのメインルートなのだろうが、40年前と比較にならぬほどヒグマの気配がしそうな沢ルートであり、当時と比べて沢から離れた登山道も草に覆われて不気味なのである。。

40年前は、同じ沢ルートを歩いても、「クマの通り道だから怖いな」という感覚はなかったような。あのときの牧歌的な雰囲気とは何だったのだろう。もちろんクマ鈴程度の装備は必需品として持ち合わせていたが、40年前はヒグマの個体数も相当程度少なかったのではないだろうか。

なつかしき「大千軒岳」、りょーじさんが登り着いた900メートル地点の十字架がたつ草原から頂上までの大展望に感動した。この山、1017mの山とは思えない魅力的な山なのであるが、今となっては「あの時登っていてよかったなぁ」と思い出のポケットにしまい込むことにしよう。もう、3人でも歩きたくはないな。

40数年前に北海道に滞在していた頃には、阿寒や大雪を中心に一人歩きも何度か行ったが、そんな無邪気な時代の古き良き思い出もポケットにしまっておくことにしよう。

 

登山のYoutuberりょーじさんの映像(40年前と同じルート)

 

ヒグマに比較して、本州・四国に生息するツキノワグマの脅威の程度は相当程度低いのは「死の恐怖」が相当程度低いからだと思われるが、今はヒグマより比較とならぬほど事故件数が多い。クマはほとんど一撃・二撃程度で相手のひるむのを見て立ち去り、ヒトを「食料」とは考えてはいないのだろう。しかし、その一撃・二撃により顔や頭部にただならぬ損傷を受けるヒトも少なからずいるとのことで、もうこのご時世には、ヒグマ並みの警戒を強めて山を歩くことにしたい。彼らに出会わないにこしたことはない。

ツキノワグマも、絶対数が増えて、いま事故を起こしているのはほとんどが里に下りた若いアーバンベアとのことであるが、里山の善良な住民と異なり登山者は、クマ本来の生息地である奥山に「故意に」分け入るのであるから、それなりの覚悟と対策が必要なのだろう。何があっても「自己責任」であり、けがをしても批判は免れないだろう。

登山者がバイカーのような強化ガラスのフェイスカバーのついたヘルメットを被り、機動隊のような防弾チョッキをつけて奥山を歩く時代がすぐそこに来ているのだろうか。めんどうな時代ではある。

(考えてみたら、交通事故やヒトによる殺傷事件数はクマの事故件数どころではないのであるから、大騒ぎしている世間というものはじつは変なヒトたちの集合体なのではないか・・とクマさんたちが言っているような・・・。)

 

DIAMOND ONLINE クマ専門家の意見

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