渓流詩人の徒然日記

知恵の浅い僕らは僕らの所有でないところの時の中を迷う(パンセ) 渓流詩人の徒然日記 ~since May, 2003~

アメリカン・カスタムキュー

2022年08月11日 | open
ポール・モッティ

私が初めて所持したアメリカン・
カスタムキューはリチャード・
ブラックのブシュカだった。
まだ現在の意味での「カスタム
キュー」という言葉も概念も
この世に存在しない80年代の
頃だ。
マスプロ量産ーカーではない
個人ビルダーの作品は、その後
「カスタムキュー」と呼ばれる
ようになった。
元々ビリヤードの中でのプール
キューはブランズウイック等の
メーカーしか作れなかった。
そのメーカー製品をベースに
コンバージョン(というコルト
拳銃につけられた呼称もキュー
にはまだ存在しなかった)と
して部分使用で新たにキューを
リビルドすることが米国の作者に
よって開始された。
ハーマン・ランボーなどはその
嚆矢で、1950年代に現在のカ
スタムキューの原型を作った。
そして1960年代に入ってから
は、ロシア移民のジョージ・バ
ラブシュカが頭角を現した。
彼が作るコンバージョンは、
その撞球性能において頭抜け
ていたため、全米の上級者は
彼のキューを争うように求め
た。
彼以降、マスプロキューを販売
するディーラーが自社ブランド
品を製造するようになり、現在
の形式に至る。
日本のアダムなども、アメリカ
国内販売用にアメリカ人が設立
した。現在のカスタムとは違う
意味合いで「アダムカスタム」と
呼ばれた。それが1986年に日本
企業になった。創業者のヘルム
ステッターは、資材組織すべて
を無償で日本人現地作業者たち
に譲渡したという。
日本にはビリヤードは1600年代
から登場しており、明治以降は
世界の中で撞球王国のような感
を示す国となっていた。日本人
が本格的に撞球を始めたのは文
明開花以降だ。
当然、国内キュー製造職人たち
は存在した。
そして、戦後には進駐軍からの
要請で国産キューを作っていた。
1960年代にはアメリカンビルド
のキューの模倣品も多く作られ
た。粗末な工作機械で巧みな
キューを製造していた事に驚い
たヘルムステッターは日本人に
自社アメリカブランドのキュー
を製造委託するようになった。
それが「アダム」の誕生だ。
大阪万博の直後の事だった。
そして1986年以降はアダムは
世界トップのメーカーに成長
した。それまでは、米国内のみ
の販売であったので、日本人が
アダムキューを使うためには
米国から持ち帰るしかなかった。
また、個人・マスプロ問わず、
アメリカンキューの多くは
持ち帰りという形での輸入し
か所有する術はなかった。
大きく状況が変化するのは、
日米貿易形態に変化が現出した
1980年代後半からだ。

アメリカン・キュービルダーの
三大巨匠はジョージ・バラブシ
ュカ、ガス・ザンボッティ、バ
ート・シュレーガーといわれて
いる。
独自の工法を開発し、その後の
後進の手本となるオリジナリティ
を持っていたからだ。
他にも個人ビルダーが1960年代
には多数登場した。
大規模機械を保有するメーカー
でなくともキューが作れる事、
その道を指示したバラブシュカ
等の先人がいたからだ。
1960年代~1980年代末期あたり
までは、まだ個人ビルダーの作
るキューは、高額取引される
美術品的な位相にはなく、プレー
で使う為の道具として位置づい
ていた。
その為、見た目のファンシーさ
よりも何よりも、とにかく性能
の如何が重要視されていた。
それが、90年代以降、美術品
的な価値が付加されて、超高額
取引の対象とされてしまった
歴史が作られた。
80年代中期後半あたりでは1本
40万円程で購入できたガス・
ザンボッティ、80万円で買えた
バラブシュカが、今ではガスが
1500万円、バラブシュカは数千
万円するようになってしまった。
日本刀と同じく、実用性を離れ
て美術的、あるいは歴史的希少
性のみが浮上して市場価格を形
成するようになったからだ。
ガスの息子のバリー・ザンボッ
ティのキューでさえ、1本600
万円程する。
リーズナブルながら撞球性能が
高く、日本人の上級者に好まれ
たTADなどは、ファンシー物
でも1本20万円、プレーンだと
中古では1本5万円ほどで取引
されていたのが、TADでさえ、
現在は1本100万円以上するよ
うな時代になった。

数百万円~一千万円するキュー
を普段の玉撞きの道具として
使いますか?
そのようになってしまったキュー
は、もはやビリヤードのプレー
ヤーの競技武器としてではなく、
「資産」としてしか運用できな
い。
人それぞれだろうが、やはり
どんなに高額なキューであって
も、実用道具としては、勤め人
の給与1ヶ月分ほどの金額が
使用道具の限界ラインなのでは
なかろうかと感じたりもする。

アメリカン・カスタムキューは
実用性を有する作品に触れると
非常に面白い事に気づく。
それは、作品が作者毎の「味」
を有している事だ。
その味とは勿論見た目のファン
シーさではない。撞き味だ。
撞球性能に各人の特色が出て
いる事。
これは大きい。
マスプロメーカーの製品はどう
しても量産のため「金太郎飴」
になりがちだ。
だが、カスタムの場合は、一
撞きすれば、「あ、これはTAD
の動き」とか「80年代JOSS
独特の味」とか判るのだ。
これは量産メーカーには無い
特色だといえる。
例えば、ボブ・ランデが立ち
上げたショーンのキューなど
は、どれもが快音を放つ。
クォーンというような澄んだ
高音だ。
またTADなどは、TADで撞けば
エフレンのような玉筋の撞球が
できるという特徴がある。
ポール・モッティのキューは
押しが非常に楽で、割れずに
手玉がギュイギュイいって
進む。インレイの仕上げも
とても緻密で繊細で美しい。

現在はカスタムキューというの
は、個人ビルダーが作る特別製
のような意味合いになった。
そして、私が個人的に非常に
残念なのは、それらのカスタム
キューは投資目的やコレクター
の収集品目的で買い漁られて
いる点だ。
また、そうした金権主義による
市場が形成されている。
「撞く事を亡失させられた
ビリヤード・キュー」。
それはそのキューは幸せなのか。
また、製作者は撞球から離れた
棒状の美術品を作って嬉しいの
だろうか。
何か大きく基本がすっとばされ
ているように思える。

美術品としてのキューの価値は
私は一切否定しない。
日本刀でも国宝や重要文化財の
刀剣で丁々発止の戦闘行為など
はしない。特に現代では。
だが、武士がいた時代は、たと
え宝剣であろうとも、伝家の
宝刀であろうとも、いざ鎌倉
の時にはそれを腰間にたばさむ
のが武士だった。
それは、刀剣が刀剣としての
価値を持つ事が、金銭換算価
値たる美術品的価値よりも
重要な「価値」であったとい
う価値観の概念を武士が持って
いたからだ。
つまり、「使えない」「使わ
ない」刀というものは存在し
ない。
これ、まっとうですっきりと
一直線の真理を体現している
と思う。
そうした価値観を持っていた
のが武士だった。ゼニカネの
損得勘定を優先させない。
そんなものよりももっと大切
なものがある。
その真実の真理を全うした
のが武士だった。

撞球者がプレーヤーである限り、
投資収益を念頭に置く商人では
ない限り、やはりキューは武士
の刀剣と同じ位相にあるのでは
なかろうか。
真実一路の概念としては。
私はそんな風に思う。


チューリップウッド

2022年08月11日 | open


チューリップウッドのハギと
バットスリーブを持つロバート・
ランデの作品。1983年製。

非常に美しい。品がある。


ボブ・ランデが立ち上げたショーン
ドイツ語で美しいという意味だ。


貴重なチューリップウッドを惜し
げもなく使い、今はほぼ無い真っ
黒のマグロと呼ばれる本黒檀に本
象牙のインレイが施されている。


ダイヤモンドインレイの先は尖っ
ている。パンタグラフマシンで
は作れない。バート・シュレーガ
ーのように手作業だろう。


メイプルのスロットリング。
フォアアームはキルティングメー
プルをまるでジョス・ウエストの
ビル・ストラウドのような赤み
がかったブラウンで染めている。
メープルの模様も純鑑賞に値する
美しい。


シャフトは2本。
1本はコスモの西尾さんが私の為に
80年代後半にアメリカから輸入し
てくれた。


本象牙先角とアイボリーパティーナ
色のマイカルタ先角。
どちらも特徴的な事は、抜けるよう
な澄んだ快音がする事と、切れ過ぎ
る性質である事。かといって入れは
強い。押し引きヒネリ、非常によく
利く切れ味鋭いキュー。


チューリップウッドは、フランス
宮廷御用達ともいわれた木材だ。
銘木界では「木の宝石」とも呼ば
れている。
ブラジリアンローズウッドよりも
高価で、ハカランダと同じくワシ
トン条約規制品。
マメ科の低木で細い木なので、
このチューリップウッドで家具を
作ると、現在ならば数千万円から
は雄にかかるといわれている。
分類はローズウッドに分類されて
いる。
ランデのこのモデルは日本国内で
は、これ一本しか確認できていな
い。これは業者輸入販売品ではな
く、アメリカから持ち帰った物。

チューリップウッドはブラジル北
東部のごく狭い地域でしか生息し
ない。
世界中で普及していたブラジリアン・
ローズウッド=ハカランダよりも
貴重な樹木ともいえる。
以外と割れ易く、加工も難しいと
されているようだ。
削ると甘い香りが漂うらしい。
今はもう殆ど良質なブラジルの原
材は手に入らない。
チューリップウッドは、もしかす
ると、世界一高価で貴重な種か
知れない。


海の見えるレストラン

2022年08月11日 | open



海に面したレストラン。
ランチ
美味しい。
ドリンク付2200円。


オープンテラスはワンコ連れOK。
何組もワンコ連れさんいた。
ロケーション最高。


クリア塗装

2022年08月11日 | open


打痕が完全に埋まったので、
クリアを吹いた。
乾いてからヤマハピアノコンパ
ウンドでポリッシュ。

ピッカピカ。

スロットリングの部分。
チューリップウッドって、やはり
いいなぁ。

山の日

2022年08月11日 | open


本日、山の日だそうです。


相棒と相棒

2022年08月11日 | open


ケンケン乗せて、こういうのいい
なぁ。
どっちが相棒なんだかわかんない
けど。

天候

2022年08月11日 | open



曇っているが、走るにはいい塩梅。


海も山も、こういう時が良かった
りもする。