『散り椿』(2018)
世にもつまらぬ時代劇。
よくこんな写真撮れるなぁ......。
役者の演技も、愛情表現も、
プロットも、すべて空々しい。
くそつまらぬ映画のお手本の
ような出来になっている作品。
これはひどい。
映画としても、物語としても
ひど過ぎる。
原作の良否については言及しな
い。
藤沢文学に影響を受けた作家の
作だが、藤沢作品の海坂藩と
同じく架空の藩を主舞台とする
作品群を書いた作者だ。
だが、原作の良し悪しは映画
作品には反映されない。
映画作品は映画作品として独立
している。
映像作品の良否を決めるのは、
すべて映画監督の手腕に依っ
ている。
この作、あまりにも空々しく、
物語としても映画としても、
全く以てつまらない。
主人公の妻が冒頭で死ぬ際も
一切心は動かされない。
絵空事の典型のような描写だ
からだ。
役者がそのようにやっている
からだけでなく、これは本が
ひどすぎる。また監督は何の
仕事をこの作でやったのか。
すべての結論は、この作に現れ
ている。やった事が素直に現れ
る。
「映像作品」は恐ろしい。
劇中、武士が二名、渓流釣りを
するシーンがある。
その場面のみ唯一良かった。
ただし、腰掛けてミャク釣りでも
何でもないまるで鮒釣りのような
仕儀の釣りの描写表現である事、
及びこの河川のこの渓相、植生と
水の色からして、この流域でニッ
コウイワナが現実に釣れるとは
考え難い。
性質をきちんと代弁している。
広告はよくその世相を把握して
『蒲田行進曲』(1982年)
原作:つかこうへい
監督:深作欣二
銀ちゃんの部屋の壁はモデルガン
がずらり(笑)。
この映画作品における松坂慶子が
圧巻。
最初の登場シーンからズドンと役に
入り込んでいる。
「明かりを消して」というその最初
の一言から、すでに女優が演じる
女優という役が魔力のように憑依し
ている。
同年公開の同深作監督の『道頓堀川』
では、松坂慶子史上最低の演技では
と思われる程の学芸会ぶりだったの
が、本作では松坂慶子の本領発揮だ。
同じ監督である。
どうしてこういう現象が発生するの
か不思議でならないが、映画という
のは面白いものだ。
本作は映画化の権利を各社で争奪戦
になった。
東映の大御所は「これは売れない」
と言い切ったが、それに反してこの
映画は興行収入17億数千万円という
当時としては大ヒットとなった。
松竹配給だが、製作は角川映画だ。
角川映画としては映画として「初め
ての本当のヒット」となった。
それまでの巨額販対宣伝戦略展開に
よるものではなく、作品の出来のみ
の勝負で多くの人に観られた真の
ヒット作となったからだ。本作から
本物の角川映画が始まったともいえ
る作品。
映画『蒲田行進曲』は、第六回日本
アカデミー賞はじめ、各賞を総なめ
にした。
事実、本作品は傑作だ。
映画製作の世界を描いた映画は時々
作られるが、どれもが静かな良作
である事が多い。これは朝ドラで
あっても。
なぜだろう。
映像製作者たちが自分たちの住む
世界を描くから、思い入れが強い
その「気」のようなものが映像に
反映するのだろうか。
そうした映像製作サイドストーリー
の数々の作品の中で、この『蒲田
行進曲』は一つの映画史における
金字塔のような作品にもなっている。
つかこうへいの脚本の力も大きい
だろう。
本当に良作。
「名作」かどうかは不明だが、これ
ぞ映画という真の良作だ。