六段受審は「30回を超えた頃から数えていない」という超ベテラン五段剣士に、
「剣道をする目的は何ですか?」と聞いたら「よくわからない」という。
「六段が目標ですか?」って聞いたら
「実は受けるのイヤになってきてる」と言う。
稽古のたびに、ああだこうだとうるさく言われ、
それがどうやらストレスになっているようなのだ。
つづいて「もう剣道やめようかな・・・」と、ぼそっと言うので
「そりゃおかしいでしょ」と切り出した。
私:ではなぜ熱心に稽古されてるんですか?
彼:稽古したらスッキリするんや。
私:それでいいじゃ無いですか。それで十分ですよ。
彼は稽古には熱心だ。ほとんど欠席せず稽古に来る。
しかし、悪いが、まぐれでも六段合格は難しいレベルである。
それで周りから「ああだこうだ」とアドバイスされる。
時にはボロクソに言われ、それが彼には大きなストレスになっているみたいだ。
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稽古して汗かいてスッキリするのも良し、
仕事のストレスを稽古で解消させるのも良し、
終わったあとのビールが旨いという理由でも良し、
健康維持でも暇つぶしでも良い。
剣道を通じての人間関係が好きだと言うならそれも良し。
いろんな楽しみ方がある。
どれが正しいなんてありませんよ。
自分としての「剣道の目的」を明確にして、
周りから何と言われようとも「剣道を楽しむ」という姿勢で貫き通すのもありですよ。
だから「やめようかな・・」なんて言わんでください。
そう忠告しておいた。
いや、お願いなのかも知れない。
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どう指導しても直らない不器用な人もいる。
でも剣道が好きで稽古熱心な人もいるわけだ。
自分の剣道の目的が何かを、まず自分自身ではっきりさせて、
そして自分のペースで剣道を楽しんで欲しいと思う。
せっかく長く続けてきた剣道を、簡単に「やめる」なんて言わないで欲しい。
だから今後の審査は無理して受けなくて良いと判断した。
受け続けるから受からせたいと口うるさく指導をしてしまう。
着装の乱れ、竹刀の握り、構え、左足の向き、踵を着くクセ、
このいずれかを一つか二つ直せたら六段審査に向けての指導を再開してみよう。
一つでも直せたら「やる気が出てきた証拠」と思う。
目標が出来たら、きっと人生にもそれなりの深みが出来てくると思うのだ。
今はただ「無心に剣道を楽しむ」だけで良い。