【全国39都府県で絶滅危惧~準絶滅危惧種に】
流れの緩やかな河川や湿地、休耕田、河川敷などに自生する多年草の湿生植物。本州、四国、九州をはじめ中国、朝鮮半島、熱帯アジアなどに広く分布する。かつてはユキノシタ科やベンケイソウ科に分類されていたが、最新のAPG分類体系ではタコノアシ科タコノアシ属として分離独立している。
草丈は50~80cmで、9月頃、数本に分枝した枝先の総状花序を放射状に伸ばし、外向きに巻いた花序に径4~5mmほどの小さな黄緑色の花をずらりと付ける。上からのぞくと、タコが逆立ちして吸盤が並ぶ脚を広げたように見えることから「蛸の足」と名付けられた。晩秋には熟した実を含め全草が赤茶色に紅葉し、まるで茹でダコのようになる。河川の氾濫や浸食などで水位変動がある場所によく生える〝撹乱依存植物〟で、生育を阻害する周りのヨシなどと違って地上部の茎が倒されてもすぐに新しい葉を展開し茎を立ち上げる。
自生地は河川の改修や湿地の埋め立てなどで全国的に減少傾向にある。環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種。地方でも絶滅危惧や準絶滅危惧種に指定している都道府県が全国の8割強の39都府県に上る。そんな中、各地で保全のための研究や活動も活発になってきた。宮崎市では「NPO法人大淀川流域ネットワーク」を中心に大淀川の砂州に自生するタコノアシの生育環境改善や生育地の拡大を目指し、昨年からヨシやオギの草刈り、種子の採取などに取り組んでいる。「秋空へ花の足あげタコノアシ」(飴山實)