【マメ科では珍しい直立した花序に蝶形の青紫の花】
日本から中国、東南アジアにかけて分布するマメ科タヌキマメ属の1年草。日当たりのいい草原や丘陵などに生え、8~10月頃、茎の先に穂状の総状花序を伸ばし、10~20個の蕾を付け下から順次開花する。花はマメ科特有の蝶形の一日花で青紫色。マメ科にはツル性の植物が多いが、タヌキマメは茎が直立し、葉もマメ科には珍しく笹のような線形の単葉が互生する。
全体に褐色で細く長い毛が生えているのも大きな特徴。深緑色で毛がない葉の表面を除くと、茎にも萼(がく)にも葉の裏面にも毛が密生する。花後には萼が大きく膨らんで豆果を包み込む。「狸豆」の名前の由来には毛深い褐色の豆果をタヌキに見立てたという説をはじめ、振ると音を立てる鞘の中の種子を腹を叩くタヌキに見立てたといった説もある。学名は「クロタラリア・セッシリフローラ」。属名の語源はラテン語の「玩具のガラガラ」で、種小名は「花柄のない」を意味する。
タヌキマメは環境省のレッドリストには掲載されていない。ただ全国的には草地の減少などで見かけることが少なくなっており、都道府県版のレッドデータブックには関東や近畿地方を中心に22県で絶滅危惧や準絶滅危惧種になっている。近縁種で沖縄に自生し黄花を付けるエダウチタヌキマメ、ガクタヌキマメ、ヤエヤマタヌキマメの3種は「環境省レッドリスト2018」で絶滅危惧ⅠA類に分類されている。いずれも野生種がごく近い将来には絶滅してしまう危険性が極めて高いというわけだ。