【まれに両者の自然雑種「オトコオミナエシ」も】
スイカズラ科オミナエシ属の多年草。日本各地の日当たりのいい山野に自生し、朝鮮半島、中国などにも分布する。草丈は60~100cm。8~10月頃、直立し枝分かれした茎の先端に散房花序をつけ、粟粒状の白い小花を多く付ける。花は基部が筒状の合弁花。花冠は径3~4mmほどで5つに裂ける。全草に毛が多く密生し、姿形がよく似るオミナエシに比べると茎が太く葉も大きい。
オトコエシの名も茎が細く黄花が美しいオミナエシより逞しく男性的に見えることから命名された。別名に「オトコメシ」や「シロアワバナ」。オトコメシは小花を白米のご飯に、シロアワバナは小花を粟に見立てた。オミナエシ、オトコエシの「エシ」は「メシ(飯)」からの転訛との説もある。漢名の「敗醤(はいしょう)」は根に醤油が腐ったような異臭があることからの命名。漢方では解毒剤や消炎剤などとして用いられる。まれにオミナエシとオトコエシの自然雑種が見られ「オトコオミナエシ」と呼ばれる。花色は淡黄色。
オトコエシはオミナエシに比べかなり影が薄い。オミナエシは古くから秋の七草の一つとして親しまれ、万葉集に14首、古今和歌集にも17首が登場する。一方のオトコエシ。万葉集に2首出てくる「児手柏(このてがしわ)」をオトコエシとみる説もあるにはあるが不明。磯野直秀氏の『草木名初見リスト』によると、江戸時代前期の歌人・俳人北村季吟著『増山の井(ぞうやまのい)』(1663年)が過去の文献でのオトコエシの初見という。「女郎花少しはなれて男郎花」(星野立子)