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親同士をつなげる「まわる雑記帳」~土佐いく子の子どもたちのまなざし⑳

2009年01月08日 | 土佐いく子の教育つれづれ

■学級だよりから発展

 学級だよりを出しつづけてきました。子どもたちの学校生活の様子を日々ホットなニュースにして伝えてきたのです。載っていた作文を読んで、わが子を見直したり、わがクラスの子らへの理解が親の中に広がっていきました。

 そして、親自身がわが子のちょっと嬉しい話や子育ての知恵、時には子育ての悩み事を投稿してくれるようになり、学級だよりは、親と子と先生で作っていくんだという意識になっていったのです。

 その中で先生と親との関係、親同士の関係が変わっていきました。そんな時に始まったのが、親の間をまわるノート。ノートの1ページ目に、私はこんなことを書きました。

「先日の懇談会で、親の間でらくがき帳をまわそう、という話になりました。何を書いてもいいのです。いえ、読むだけでもいいのです。新聞や雑誌の切り抜きを貼ってくれてもいいんですよ。一人ひとりが今、何を思い、悩み、心動かして生きているのか、またその暮らしぶりに触れ合えたら、人は心がつながっていきます。人と人との関係が希薄になり生きづらい時代です。子どもたちが日記や作文を読み合うことで仲良くなっていったように、親も書くこと、読むことで少しでもつながりが深まれば、嬉しいですよね。

 何を書いてもいいのです。きれいな字で書かなきゃ、いいことを書こうと思わず、らくがき帳ですから、お気軽に。

・わが子のちょっと嬉しい話、子育ての悩み
・自分の趣味や特技(得意料理、手作りおやつ、今晩のおかずの紹介なども)
・子ども時代の思い出、ふるさとのこと
・心に残っている人との出会いや本の話
・仕事や暮らしのこと、世の中のこと
・詩や歌、絵もよし
 父ちゃんやおばあちゃんやおじいちゃんの登場もお待ちしていますよ。

 ノートを受け取ったら長く置かないで早めに届けてくださいね。私が言葉を添えたらまた次の人にまわします。よろしくね」

 そうして始まったらくがき帳。「何書こう…困るなあ」と言いつつ、クラスの親(父親も、時には祖父母や兄弟も)全員が書いてくれました。

 晩ごはんの作り方から日々の生活、子育て相談、闘病記にいたるまで、忙しい暮らしの中でペンを握って書いてくれるのです。思わず笑ったり、涙がこぼれたり、長い返事を書かずにはいられない話など、私もまたいつも読むのを楽しみにしていたものでした。

*中島さんより*

 2回目のノートがまわってきました。ずいぶん悩んだ末の嬉しい話を書きます。

 3人目の子を妊娠したのですが、生活のこともあるし、実は、私は2年前にわかった病気があって産めるかどうかもわからない身体でした。いろいろ悩み、病院に行くまで1ヵ月以上かかりました。主人にも言えず、病院に行って結果だけを言うつもりでした。いきつけの内科と産婦人科を行ったり来たりでした。そして、血液検査の結果「この数値だったら生んでも大丈夫だ」と言われ、病院の帰り、うれしくてうれしくて、もうボロボロと涙が出て止まりませんでした。

 しかし、先生は「大丈夫」と言ってくれますが、やっぱり子どもの姿・声を聞くまでは安心できません…何かあったらと不安が消えない日々を送っています。でも兄ちゃんたちは赤ちゃん誕生をすごく楽しみにしていて、早く顔が見たいようです。(以下略)

   *  *

 こんなノートを読んで、体調の悪い時は、いろいろな援助や声かけをしてくださったクラスの親たちでした。

 そしてこのノートは、親たちの宝物だからとその後、文集になってみんなの手元に届けられました。世界にたった1冊しかない手作りの本です。

(とさ・いくこ 中泉尾小学校教育専門員・大阪大学講師)

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