先週15日に大阪機関紙会館で「戦没画学生慰霊美術館 無言館」というドキュメンタリー映画の試写会がありました。信州上田市にある同館を描いた映画です。
私は2年前に無言館を訪ねました。田園地帯の小高い山の上にありました。雨の日の夕方近くの時間で周囲は薄暗くなるころでした。無言館はコンクリートの打ちっぱなし風の、全体が墓碑のような印象の建物で、木製の左右に分かれた入り口のドアを開けるのに何となく緊張したのを覚えています。
戦争のまっさなかの画学生たち。絵を描くなんてとんでもないという時代だったに違いありません。絵の具や画材なども簡単には入手出来なくなっていた時代です。
学徒動員で明日にも戦場へ出向くという時に、あるいは戦地での束の間の休息時間に、絵描きになりたいという夢をあきらめざるを得なかった時に…。さまざまな思いを抱きながら無心に描かれたであろう絵の数々。
それらの絵は決して誰かに購入してもらうために描かれたものではありません。そこに描かれているのは、画学生たちの愛する家族、妻、恋人、故郷の街や景色、自然…。そして自画像。
とにかく描きたい、描いておきたい、頭に刻み込んでおきたい、己が生きた証を遺しておきたい…、そんな思いで描かれた絵の数々です。どの1枚からも画学生たちの生命への愛おしさが感じられます。
映画は館主の窪島誠一郎さんが画学生の遺族を訪ね歩きながら収集するシーンや無言館を訪れる人々の表情、毎年8月におこなわれる慰霊祭「千年の絵筆」の様子などを描きながら、観る者を無言館へと誘います。
今、全国で上映運動が始まっています。ぜひご覧になること、お薦めします。