しずや、しず・・・絵と光と影
健とユカリは北海道に一旦、戻ることにした。この宮城県で得たものは多かった。だが、歴史の真実は依然として霧の中だ。推理と類推の仮説でしかない。まるで霧笛だけが聞こえ、焦りと危機感が迫って来るが、その本体は見えてはこない。
青函トンネルが出来たおかげで北海道と本州の交通路は飛躍的に便利になった。ほんの少し前は青函連絡船で行き来しなければならなかったのだ。便利さは旅の情緒を失うが、現代人にはそれを味合う必要性のない時間帯で生かされているのかも知れない。健とユカリは電車に乗りながらそのスピ-ドに身を任せて北海道にむかった。健は朝刊に眼を走らせ、ユカリは歴史の本を読んでいた。
「また、少女誘拐事件がS市であったって、大見出しだ」
そう健は言った。
「またなの、どうして誘拐なんかするんでしょうね。目的はお金なのかしら」
「いや、犯人らしい者からは何の連絡もないそうだ。どうやらこれは前の一連の誘拐事件と同じらしいな」
「誘拐された人達はどうされているのかしら」
「うん。死体らしきものも発見されていないしな。何の目的があってのことなのかな。まさかこの現代に人身売買で売り飛ばしてしまうわけじゃないだろうにな」
「こんなに情報網が発達しているもの、そうじゃないわよ」
「でもさ、何か何処かの国がアベックを誘拐して行った、と言う事件があったろう」
「ええ、港の見える公園から乗用車を残したままに理由も無く蒸発してしまったり、戦闘服を着た数人の男達に誘拐されたていった所を目撃されたカップルの事件が数件。それに函館の近くの海に潜ったダイバ-が海の底にキャタピラの跡を発見したとか」
「まさか、とは思うが、潜水艦か何かで何処かの国へ連れさらわれてしまったわけじゃないだろう」
「潜水艦で?・・・ほんとうだとしたら、どういうつもりなのかしら。・・・何処かの国のスパイの謀略なのかしら」
「そうでないことを祈るよ」
「それにしても潜水艦なんて発想は何時ごろからなのかしら?」
「ユカリは『ノ-チラス号』の小説、読んだ事はないかな」
「そういえば読んだ。映画もTVで見た事がある。あの物語の船長の発想って武力によって敵の力をそいで平和がもたらされると言うものだったわね。現在の大国の論理と全然変わっていない・・・結構、発想は古いわけね」
「その『ノ-チラス号』よりも、もっと古いらしいよ。記録的にはアレクサンダー大王とか、レオナルド・ダ・ビンチなんかも考えたらしいけれどな」
「へ-、そうなの」
「ダビンチ、あの人は発想そのものの天才だよな」
「そうね、飛行機とかグライダ-みたいなスケッチ、見た記憶があるわ」
「空を飛ぶことに関してはギリシャのイカルスが早いな」
「昔、空想していた事が、いま殆ど実現しちゃっている。人間ってすごいわね」
「そうだな。・・・でもさ、古代文明って意外とこれらの事を既に実現してきたのじゃないかな」
「古代文明?」
「うん、何かさ、古代文明ってエジプトやオリエンタル、インド、それに中国や中南米の古代文明の遺跡にある建築物や遺物一つ取っても説明つかない部分が多いだろう。神話にしてもどこまでがハナシで、どこが人間の事実の物語なのかも」
「そうね、遺跡や、その建築物の残害は神話物語を裏付けているのだし、その時代の技術的なエア-ポケットが余りにも多いわね。・・・実際、真実はどうなっているのかしら」
「空飛ぶ事も、海へ潜る事も、それに彼らがコントロ-ルしたエネルギ-。運搬手段。石の建築物。オパ-ツと呼ばれているやつもさ、メッキとか水晶なんかを削り取ったり、彫刻したりの技術、それにイラクで発見された古代の電池なんか」
「文明のエア-ポケットよね」
「・・・俺さ、モモエおばさんが死ぬ少し前に変な夢を視たんだ」
「どんな?」
「なんか、俺自身が宇宙の『天の川』にある星から宇宙船でこの地球に氷河時代にやって来るんだ。そして海に着陸して、変な格好をして陸に上がるんだ」
「ふ-ん。それで?」
「そしてさ、既にこの地球にきている宇宙人みたいな、これも変な格好の女性に出あって、一緒になるのだけれも、その辺から場面は一転して少年と少女が雪の世界で、何か人の名前を呼ぶように遠く向かって叫び、戯れているところで終わるんだ」
「ふ-ん。変なの」
ユカリはあまり興味なさそうに言った。
「・・・毎日の三面記事って、このところズ-と誘拐事件と地上げに絡むトラブルばかりの報道だな。・・・あれ、嫌だな、我々と同姓の日下延(クサカ・ノブル)って人が『土地に絡んでバラバラ殺人事件か?行方不明者の鍵を握る人物?』って書いてある」
ユカリは健が手にしている新聞をのぞき込んだ。
「クサカ・ノブル?・・・それ花江さんが見せてくれた手紙の人物、永雄さんの子供じゃないかしら」
「うん、・・・いや、違うな。これ同姓異名の人物だ。名前が延(ノブル)と書いてある」
「・・・事件は東京、大阪、茨城の不動産売買と北海道の原野商法に絡んでの殺人と見られている。逃亡しているらしい日下延(クサカ・ノブル)容疑者はこの事件の重要な鍵を握ると見られている・・・ノブオじゃなくてノブル。似ているわね」
「地上げする人物って、どんな奴なんだろうな」
「・・・ほんと、古代の昔から問題はこの大地の領有権なんだわ。ほら、イギリスの誰かが言ったわよね、『アダムとイブの時代にこの大地は誰のものであったのか』と」
「そうだったな・・・ユカちゃん、腹が減らないか?車内販売だ、弁当でも買って食べるか」
「ええ、もちろん、何時の時代も食料事情こそが重要だわ」
健とユカリは弁当を食べ終わって少し電車に揺られながらウトウトと眠った。電車は青森に向いつつあった。
青のキャンバスのベタ塗りに赤と白の点がボンヤリと無数に描かれていた。それを望遠レンズが、徐々にピントを合わせて拡大していく。青海原になびく無数の赤旗と白旗の入り交じりなのだ。針のような無数の矢がその青の部分を一瞬、黒い線が走るように大きい二本マストの帆船に向かってバラバラと飛んだ。
「戦は今日で決着がつく。いいか、少したりとも敵に後ろを見せるな。この時にこその命、惜しまず最期まで戦え」
健に似ている。だがそう命令を下したのはカラフルな鎧兜に身をかためた大将らしき武士だ。
「尼よ、私を何処へ連れていこうとするのか」
幼い男の子は側にひざまずく尼僧らしき女性にあどけなく尋ねた。
「この海の底にも素晴らしい都があります故に、私は、ミカドとご一緒にお供つかまつります」
これは、かの安徳天皇が二位の尼に戦船の上で尋ねている場面ではないか。すると船上で指揮を執っているのは平家の大将「知盛」だ。「二位の尼」は目から溢れ出る涙をタモトで拭い、幼い天皇を抱いていま、まさに海に飛び込もうとしていた。
冷たい、苦しい、これが男の戦に連れ添わねばならぬ女の宿命なの・・・。ならば、私は男どもが神として崇め奉ってきたこの「神器」もろとも・・・。
ユカリは、フッと目を覚ました。手で目を拭うと濡れている。ユカリは、かの有名な「源平・壇の浦」の戦いの一場面で 「二位の尼」になりきっている夢を視ていたのだ。やや、放心しながらも、涙だけはとめどもなく目からこぼれ落ち、頬を伝わって来る。ハンカチを取り出し涙を拭い、鼻をかんで、そして深呼吸をした。電車は変わりなく東北の田園をつっ走ていた。彼女は横に座る平和そうに眠っている健を観て首を回した。「おじさんが平家の知盛か、役者不足よね」、そう心で思ってニッと笑った。そして鞄に詰めてある本を取り出してパラパラとめくり、赤い目を走らせて行った。
初めに目に入ってきたのはカラ-写真によって紹介されている赤間神宮蔵とある源平合戦の口絵であった。それは文治一年(1185)三月、壇の浦での戦いで建礼門院の入水と、義経の「八そう跳び」が描かれていた。
--
潮の流れが原因でないとしますと
この合戦の勝敗を決した理由は
何だったのでしょうか。
金指・・・
この源平時代の軍船の構造が
勝敗を決したと思われます。・・・
--
当時の船の構造はどのようなものだったのでしょう。
金指・・・
これは大型海船でして
壇の浦合戦で
源氏・平氏に使われた兵船も
最大級でこの程度の船であったと思われます。
技術史的には
準構造船と呼ばれ、当時の典型的な海船です。
平時は荘園の年貢などを
輸送していた内航用の荷船でありまして、
特に軍船として造られたものではありません。
船底部は木を
けずって造ったクリ船でして、
その両舷に、
一、二段の舷側板をつけて乾舷を大きくし、
耐航性と積載量の増大をはかったものです。
水上に浮かんでいるときには、
上部構造が板と梁とで構成されていて、
船底部がクリ船式だとは思えないので、
近世の構造船と
同じように思われがちのものです。
この船の最大の特徴は、
クリ船式の船底部の幅に制約されて、
船体の幅が狭いので、
両舷にセガイと呼ぶ張り出しを設け、
その上で
水主(かこ)が櫓を漕ぐようになっていることです。
これによって、
船体の内部が水主に占有されず、
人や荷が多く積めるようになっていました。
また、この船の大きさは、
絵巻では、
船に対して
人物をかなり大きく描いているために、
水主や兵士も実際よりは数が少なくなっています。
手前の島津の船の水主は六人ですが、
船型や舵の屋形の大きさから判断すれば、
この二隻の船は、
少なくとも当時の
二百石積み級の輸送船と見て
差し支えないもので
実際には平時でも
八ないし十人の水主を必要とすると思われます。
--
すると、戦闘用の軍船などは
当時はなかったのでしょうか。
金指・・・
ですから壇の浦合戦で使われた船は
すべて、平時の輸送船や漁船を徴用して、
ギソウしたもので、
特に戦争用に
建造・整備されたものではなかったわけです。
--
そうだとしますと、
平家が
海戦に強いとか、
水軍力があったと言われているのは、
海上での軍事力があった
ということではなかったことになりますね。
金指・・・
平家が海戦に強いと言うことは
平家が
瀬戸内海を中心に
西国に勢力を持っており、
地元の荘園年貢米などの
輸送船を調達する能力を持っていたということで、
結局、
地元の豪族の持っていた船と水主を
平家の傘下に集める能力があったと言うことです。
--
さてこの船の構造から見て、
この壇の浦の戦いを決定的にしたのは、
ずばり何でしょうか。
金指・・・
そこで義経が例の
奇襲戦法を用いたわけです。
--
奇襲とは・・・。
金指・・・
漕ぎ手を射ろということです。・・・
(以上は
金指正三山陽女子短期大学教授が
対談で質問の聞き手に応え、
教授の説を展開している部分からの抜粋である。
「NHK・歴史への招待・実証・壇の浦合戦。
赤江 漠・金指正三」)
なるほど、とユカリは思ったが、
何か納得がいかないものがあった。
・・・それは船の構造である。
こんなシロモノではないのではないか、
と脳裏に疑問がよぎったのだ。
朝鮮海峡を渡って
「白村江」で戦った船、
「蝦夷征伐」で戦った船、
「隋の残党水軍」が
航海してきた船はそんなものじゃない。
それに、
「義経の八艘(嫂)跳び」。
牛若丸のイメ-ジが
たとえあったとしても
重い鎧兜を身につけているのだ。
これは有り得ない話だ。
だが、もし、
義経の乗っていた船が
特殊なものであるとしたら、どうであろうか。
「八嫂=八捜の跳び」なのだ。
・・・ユカリの脳裏には何か
その特殊な船の形が
イメ-ジとして浮かんで来るのだが、
夢の記憶が目覚めると同時に
霧の中に霞んで行くように消えて行ってしまう。
そして
また本を膝の上に置いたまま、
電車の心地よい揺れに
身を任せながら
ウトウトと夢の中に誘い込まれていった。
舞台に立った白衣装のユカリは
目に涙をキラリと光らせて舞ながら謡った。
逃亡に身をつやした男を恋ながら。
┌────────────┐
│よしの山みねのしら雪ふみ分て
│ 入りにし人のあとぞこひしき
│
│しづやしづしづのをだまきくり返し
│ 昔を今になすよしもがな
└────────────┘
この謡は・・・
夢は義経が東北奥羽に落ち延び、
静御前が
源頼朝
と妻の
政子の前で
舞いと謡う事を命令されている場面なのだ。
もちろん、
物語の主人公が詠ったのではあるまい。
物語の作者が主人公の立場に立って詠ったのだ。
とすれば、この悲劇は、また、
別な古代史の物語に懸けられているハズである。
「緒だ巻の糸」を意図的に
「伊都」に懸ければ、
その異図が見えて来る。
よしの山・・・予詞乃纂
与子埜邪魔・輿祇廼挫務
みねの・・・・三根乃・箕子之・美禰之
しら雪・・・・史裸往記・新羅喩姫・姿螺由基
ふみ分て・・・文 訳出・赴箕話懸・府壬吾家手
吉野の山 峰 の 白 雪 フミワケて
入りにし・・・要理螺・移里尼子
人のあと・・・姫斗乃跡・秘都之吾砥・肥都乃阿砥
ぞこひしき・・蘇乞始期・甦故意死期・祖虎医姉姫
入りにし 人 の後 ぞ恋 しき
↓↓↓↓ ↓↓↓ ↓↓ ↓↓
煎里西 秘都之吾砥 蘇乞 始期
例えば、同音異字の組合せは無数に出来るが、
これを、イトテキに、更に意図的に、
異図的に漢字を変換し、これを読めば、
次のような展開になるであろう。
予(あらかじめ=阿羅鍛冶の女)、
詞(ことば=古都の場)、
乃(すなわち=沙の倭地)、
纂(あむ=阿武)、
三(みつ=御津)、
根(ね=音)、
乃(すなわち=州名の話に致)、
史(ふみ=府看)、
裸(はたか=波の侘の歌)、
往(ゆき=往復)、
記(しるす=始留州)、
文(ふみ=賦視)、
訳(やくし=八句始)、
弖(て=氏の一・出)、
要(かなめ=仮名女)、
理(ことわり=古都倭里)、
螺(にし=爾志・西)、
姫(ひめ=卑女)、
斗(はかる=波珂瑠)、
乃(すなわち=挫の倭地)、
跡(あと=娃砥)、
甦(よみがえる=黄泉賀重瑠・読み変える)、
故(いにしえ=移西江)、
意(あ=吾)、
死(し=支=祇=始=姉=姿=史)、
期(とき=朱鷺=鴇=穐=辰=土岐=解き)
しづや しづ
しづの をだまき
くり返し
昔を今に
なすよしもがな
靜や 靜
靜 の 緒だ巻
繰り返し
昔を今に
為す由もかな
↓↓ ↓↓↓↓ ↓↓ ↓ ↓↓↓ ↓↓↓↓↓ ↓
指図耶 祇頭
姉厨乃 嗚妥真姫
九里華江姿
鵡歌詩緒 依真似
菜州与詩母哉
史頭哉 櫛
失廼 将侘巻
繰理替史 釈を移真似 茄余史模仮名
詞柘八 史頭
示図乃 男拿真紀
句裏化重詞
無化史緒移真爾
名守預詞模哉
「八史」とは
・・・八艘
八嫂
嫂=女+叟=㛮=㛐
女+臼+丨+又
ソウ
あによめ
あによめ・兄の妻
叟=ソウ
おきな=翁
としより
老人
愚叟(グソウ)・愚かな老人
自分を謙っていう言葉
三番叟(サンバソウ)=能の翁
北叟笑む(ほくそえむ)
「漢書・隋書・唐書(新旧)
宋史・遼史・金史・元史・明史」
である。
この歌には云うまでもなく、
日本古代史の事件が
「八史の故事」に重ねられているのだ。
「源史」は言辞で、諺示。
「源氏=水+原+氏」は
「御津の波羅の氏」、
「六波羅(密)の探題の氏」、
「氏」は、
宇治で、
烏治=卯児=鵜事=雨児=海部貳(反乱)=天子
スナワチ
雨期のウジウジした奴と重ねられているのだ。
ウジの「音」に代表させられている物語は
「宇治拾遺物語」である。
「大修館国語要覧(増補版)」
によれば次のように記されている。
「雑纂形式の説話集」、
「全十五巻」、
「百九十七」の説話集。
「源 隆国」による
「宇治大納言物語」を母体にして、
後人が
増補加筆したもので、
成立時期は鎌倉時代初期と考えられる。
ほとんどが
「本朝=日本」の説話であり、
「天竺=インド」、
「震旦=中国」
はきわめて少ないが
「新羅」の話のあることが注目される。
また、かなり多くの説話が
『今昔物語集』とその他の説話集と共通している。
雑多な書き方の中に描かれている人物像は、
大部分が平凡な、
日常茶飯の生活の中で行動する人間である。
編者は、
人間とは結局このようなものだとする
寛容の態度と静観の姿勢で、
人間のおかしさ、
悲しさを描いているものと思われる」
と、ある。果してそれだけであろうか・・・ここには、「今は昔」で始まる「巻一、田舎の児、桜散るを見て泣く事」が例文としてあげられ、また、オリジナル的な噺として
「鬼に瘤取らるる事=瘤とり爺」
「雀報恩の事=舌切りスズメ」
である、とも記されている
・・・このことをみれば、
この「イマはムカシ」、
「イナカのコ、サクラ、チルをミテ、ナク、コト」、
「オニにコブ、トラルル、コト=コブ、トリ、ジイさん」、
「スズメ、ホウオンのコト=シタ、キリ、スズメ」
の「漢字」と「言葉」の
「ウラに懸けられた意味」
に注目せざるを得ないと、
ユカリは思うのである。
今は昔=イマ は ム カシ
意真 把 武(鵡)花史
=意味の真実を把握するには務(分)よ歌詞
巻一=カンのイチ 歌誌
干 の壱=ヨコシマのハジ メ 河岸
横島 初 め ↓
始 め ↓
肇 ↓ ↓
葉字(眼芽痲女) 可視
↓
日下のキバ
田舎の児 桜散るを見て泣く事
イナカのコ、サクラ、チルをミテ、ナク、コト
伊那珂姑 挫玖羅 蜘琉 箕?? 茄玖 古都
鬼に瘤取らるる事=瘤とり爺
オニにコブ、トラルル、コト=コブ、トリ、ジジ
将尼 子武 虎 流留 古都 琥武 渡李 時事
↓
昆布=鼓舞=誇武=顧憮
雀報恩の事 =舌 切り スズメ
スズメ、ホウオンのコト=シタ、キリ、スズメ
涼 女 捕烏将武古都 史侘 雰 洲頭女
↓ 霧=雨+務=海部武
↓
舌切=ノ+古+七+刀 斬
「源 隆国」による
「宇治大納言物語」は散逸して現存していないが、
「大納言物語」とあるからには
『納言』と云う
「ポジションが何を意味しているのか」
を検討し、更に
『拾遺』を検討してみれば
「古事記」との関連も見えて来る。
納言=ナゴン=糸+内+言
=尭、舜時代に
天子の言を下に伝え
下の言を天子に奏上する官。
国内では太政官(ダジョウカン)の官職名。
大臣の次官。大納言、中納言、小納言の総称。
=ナゴン=糸 +内 +言・・・名言
茄吾武=伊都 中 魂
=納=おさめる。いれる。
中(ナカ)に入れる。
しまう(蔵)。
うめる。
死者を埋める。取る。取り入れる。
収穫する。受ける。受け入れる。
受け取る。貰う。承知する。
官に差し出す。奉じる。献ずる。
引き入れる。引き進める。致す。
贈る。着ける。履く。終える。
とも。
のり。
「納言」と云う概念には
「太政官(ダジョウカン)」、
大臣の「次官」となっているが、
この日本独自の言葉である
「太政官(ダジョウカン)」、
「次官」の検討をしてみれば・・・。
太政官(ダジョウカン)
大(一人)+ゝ+一+止+夂+ウ+呂=苔嬢花奴
↓ ↓ ↓
太=はなはだしい。 はなはだ。ふとい。ふとし。
侘聶=妥瀞=雫丞 花 肌 私意 鼻 膚 婦問い 府肇
ヨコシマのササヤキ 周りが大きい
肥えている。ずうずうしい。
真話理 声 頭卯豆烏始
ず。おお。しろ。たか。と。ひろ。ます。
宇洲 緒将 代 鷹 砥 尋 鱒
み。もと。
箕 本
太=大と二(二つ重ねる意)=大+印=太陰=月
府侘津、重ねる(加佐子婁)
次官(ジカン)=冫+欠(勹人)+ウ+呂
=氷+包+肥斗+烏(卯)冠+世補音
時間=トキのアイダ・字観(字間)
=日の壱拾壱の寸(尊)の門(問)の日(秘)
字観 解きの吾委妥
示甲 土岐の娃移拿
「拾遺」はシュウイ、ジュウイと読み、この同音異字は「周囲」、「重囲」、「獣医」である。周囲は「マワリカコム」、重囲は「カサネカコム」、獣医は「ケモノミコ」である。この訓に「一音一字」を当てはめたら「拾遺」の意味するところが明らかになるだろう。
「マワリカコム」=真話理過去(加古=水夫)武
「カサネカコム」=加佐音過去(加古=水夫)務
「ケモノミコ」 =懸模乃箕琥(己=ヨコシマ)
拾遺(ジュウイ)=落ちているものをひろう。
↓↓↓↓↓↓ ↓
(堕ちて飴琉者 を拾う )
もれたもの、抜け落ちたモノを拾い集 めて補う。
↓↓↓↓↓ ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ↓↓↓ ↓
(漏戻他者 濡毛堕地侘母乃将廣移吾津女??緒祇拿烏)
君主の気づかぬ過失を拾い上げて諌めること。
唐、宋時代の官名。君主を諌 める役。
↓ ↓↓↓ ↓↓ ↓↓ ↓↓↓↓↓
(頭 嫂穐代 甲命 訓取 伊邪女瑠訳)
拾=シュウ・ジュウ・ひろう・シフ・ジフ
=ひろいとる。おさめる。あつめる。
ゆごて(弓を射るとき左肘につけるもの)。
とお=十に通じ、文字の改変を防ぐために借用する。
手が意符。合(人+一)が音符。
あつめる(集)意を表す。
遺=イ(ヰ)・ユイ
=わすれる(わする)。すてる(すつ)。
わすれてすてる(遺棄)。のこす。のこる。
とどめる(遺跡)。うせる。なくなる。にげる。
うしなう。おく。はなれる。はなす。あます。あまる。
ぬける。ぬかる。ておち。すたれる。いばり(大小便)。
贈る。やる。物を遣わしあたえる。
くわわる。くわえる。へりくだる。おく。
辷が意符。貴が音符。
おとす意。道に物を落とす意。物をおくる意。
↓
音素
「野史」とは民間で編纂した歴史書で、
「外史(ガイシ)」である。
故に
「外紙(ソトカミ)」は、
祖渡=姐妬=蘇賭=鼠都=素砥の、神である。
もちろん、「夕の卜=遊牧」の歴史である。
「香具師(ヤシ)」はカグシで、縁日、祭りなどで興行したり、「露店(ロテン)」で商売をするもので、「的屋(テキヤ)」とも呼ばれる人々だ。もちろん、白(ノ+日)の勹のゝの尸の一のムの壱拾壱である。
「椰子(ヤシ)」は常緑の高木の総称で、熱帯 地方に広く産する。
↓↓ ↓↓ ↓↓ ↓ ↓ ↓
(嬢力の喬木の草将で、子津台地方の秘録、纂)
「椰子」は、木=姫=記の、
耳の邑の子(了の一で、「終始」)である。
健が、いや健ではなく、「頼朝」が、「静」に変身して踊りながら謡うユカリの姿を観て激怒して立ち上がろうとした。横に座る「政子」が「頼朝」をなだめ、更に御敵の前で恋しい男の女心を謡う静こそが「女の鏡」であると誉め契った。
何故、健おじさんは頼朝なの・・・?
・・・義経が従者を連れて何処までも北へ落ちて行く・・・。
何故なの?・・・どうして私を置いて・・・?
北の北まで、更には船に乗り蝦夷地にまでも・・・?・・・日高。
かっては
日下一族、登美彦が、長須根比古が
逃げ延びた最果ての地、北海道の日高へ。
歴史は繰り返すのだろうか・・・。
「卑弥呼と壱与」
「大日下王と安庚天皇」
「聖徳太子と蘇我馬子」
「蘇我氏と天智天皇」
「大友皇子と大海人皇子」
「天武天皇と持統天皇」
「源氏と平家」
「源氏と北条」
「後醍醐と足利氏」
「織田氏と明智氏」
「明智氏と豊臣氏」
「豊臣氏と松平氏」
「徳川氏と明治天皇」
・・・共通項は常に「時の権力者」に対する反逆、反乱である・・・そして、「カンの子」、すなわち「姦(ヨコシマ)な子」、「漢字」=「水の草の冠の口の二の人、ウの子」で、「真名字」である。
・・・「靜(シズカ)」、スナワチ、「白拍子」の名前、主=牛(ウシ)は、丹(タン)=胆(キモ)=肝、爪(ツメ)=津女の、ヨ=針鼠、猪の頭、青の争い。
・・・「しづか」である私は、誰にそんなにも恋をしているのだろう・・・「よしつね」って、誰なの?・・・
ユカリはハッと目を開けた。「安珍」と「清姫」・・・そうなのだ、「九郎・義経」もまた日の下一族の血を引く者に違いないのだ・・・九(ノ+乙=ヒサシイ)の郎(皀+邑=オトコ)、ロウが浪(ナミ)の狼(オオカミ)の弄(モテ・アソブ=王の一の人)なら、「模の手(??)は阿蘇の武」なのだ・・・そう、ユカリは思った。
よしつね→雪の吉野山
→和歌山、紀伊の日高
→蝦夷→東北義経神社
→北海道、日高→平取・義経神社・・・
とみひこ→日下・吉野→国巣・道成寺・安珍・清姫
→東北、奥羽・日高神社
→蝦夷地→富川・富浜・大富
→静内→シャクシャイン城・・・
「ユカちゃん、青函トンネルだよ。景色が何もない、海の底だ・・・『猿田彦』だな・・・そうか、海底は改訂、改定、階梯、開廷で、日本歴史を改めるで、会談、怪談、階段=海断の、梯子(ハシゴ)=梯語=箸呉(ハシクレ)で、新たな王朝の開廷だ・・・ふーん、端(ハシ)クレは、『木切れの切れ葉』だ」
「・・・ハシクレって、そお云うことなのね!」
「海底よりも海上がいいな・・・やっぱし連絡船の旅が懐かしいな」
「ほんとうね。海上って、上海(シャンハイ)よね」
「上海は『申』だったな」
「『サル』よねっ!」
「シャンハイを去(サル)だな。しかも、目的地はヤマタイ国だ」
「西からの渡来人だわ」
「まさに、ニシからだな・・・」
「・・・外の景色じゃなくて窓に映るのは自分の顔ばかり」
「『雪国』、トンネルを抜けるとそこは雪国であった、か。
海の中が水族館のように覗けると楽しいんだがな」
「雪・・・ユキ国、雨のヨ。そういえば、
おじさん、
その小説の中に外の景色と
自分の顔が窓に
二重写しになっている描写があったわね・・・」
「うん・・・二重写しか・・・
そうか、わかったぞ、ユカちゃん!」
「何が?」
「あれさ、銅鐸からでる光の点線を
絵図面に当てたらどうなる?」
「絵図面を銅鐸からでる光線に当てる?」
「そうだよ、モモエおばさんの声、絵と光だ」
「・・・そうだわ、おじさん、すごい発見よ」
「うん、カサねるだ!」
「きっとそうだわ。
絵図面に具体的な図形が現れるのに違いないわ」
「太陽の傘、日傘は雨の兆しで、予報だ」
「そう、そうだわ、雨傘、簑傘なのよ!」
「海女、海部、海士、
尼のカサ・・・
傘、笠、加佐、上総・・・」
「花津挫、数の差、和の叉、葛の詐、割の差・・・下図作だ」
「九はカズともよむわ」
「参(マイ)ったのはサンだ!」
「舞ったのは蚕(カイコ)で、天の虫・・・
纂は編纂の拾で、
『拾は、とお=十に通じ、
文字の改変を防ぐために借用』
する、なんだ!」
「モウー・・・牛だ話」
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玄武・サブマリン・壬申
健は太平洋沿岸を航行するフェリ-で北海道の苫小牧を出、仙台、名古屋のコ-スで帰ることにした。海に浮かぶ近代的な巨船に自らの存在を任せ、古代人が操ったらしい「メクラ船」に思いを馳せてみたいと衝動にかられたのだ。もちろん、途中、この船が仙台に寄港すること自体が日下比孝の家に行くのに都合がよく、あの銅鐸が放つ光を図面に当てて何が浮かび上がるのかを確かめる為である。船に乗り込み、動き出すとすぐ彼は再訪問することとその目的を比孝に電話をした。その後は船にある大浴槽に身を浸し、いい気分の鼻歌で極楽だった。古代人には思いも付かないであろう窓から海が見える湯舟。兼備されているサウナ。いや、古代人、指揮を執る提督は意外と贅沢な船室に納まりながら航海したのかも知れない。人間の考えることに古代人も現代人も何の変わりもないのかも知れない、と思いながら風呂から上がった。そして仙台に至るまでの間、彼は頼子から借りた相馬龍夫氏の著書、「日本古代文字の謎を解く」をゴロ寝しながら目を通して行った。
本の初めに「サンカあぶり出し文字」があり、「サンカ」社会の研究者、三角寛が「サンカ」と出会った経緯が記され、「お雪」と言う女性の事件が書かれてあった。
・・・お雪は丹沢で育ったことはわかりましたが、両親はおろか自分の名前も知らない孤児で、五、六歳のころ村里に現れたところを、たまたまサンカの遊芸(エラギ)の一、{サンカ社会には、箕作(ミツクリ)、笛作(フキカタ)、遊芸(エラギ)の三つの区別があり、彼らはすべてこの三家(サンカ)に包含されている。一とは頭領のこと}である相模阿国(オクニ)に拾われて、その養女になったと言うことです。・・・
その本の箇所にはそう記されてあった。このお雪のに関する縁談事件で「サンカ」社会は一般に知られるようになったのである。お雪の養母、阿国が「サンカ」の掟による縁談を承知できないとして警察に「サンカ」社会の内情を暴露したのだ。この暴露に関するものが「サンカあぶり出し文字」なのである。このあぶり出された文字こそが問題の「サンカ文字」であった。
健はフッと「お雪」は拾われたのではなく、さらわれたのではないか、と思った。それは未だ解決をみていない不可解な誘拐事件が彼の頭の隅にあったからなのかも知れない。
また、大羽弘道氏が「オリエンタル古代学」から銅鐸の絵を絵文字としてその意味を解いたように、この本の著者は「日本古代文字」の存在と言う観点から銅鐸の絵を文字として意訳していた。
丁度その本を読み終わったところで船は仙台に入港した。船から降りて、彼は宮城県白石にある比孝の家にむかった。その途中、頭によぎることは図面の謎がどの様に解明されていくか、と言うことばかりであった。
比孝の家の前で一呼吸しながらはやる心を抑えて戸を開けた。出てきたのは花江であった。
「いらしゃい、健さん。さあ、上がって、準備万端になっていますから。あの人、奥の部屋で首を長くして待っていますから」
そう、彼女は言って健の荷物を取ってくれた。
健は比孝夫婦にこの間に解明された「日下累代故事」の内容のアウトラインを説明し、ユカリが死んだモモエから「絵に光を当てよ」と不思議なメッセ-ジを受けたこと話した。
「そうですか、準備は整っていますよ。早速、銅鐸のライトを明るくして、その絵図面に光を当ててみようじゃありませんか」
気も早く、そう比孝は彼に言った。
「先ず、この舟の図面に光を当ててみたいのですが」
「わかりました。おい、花江、部屋の電気を消して、銅鐸のライトをつけろ」
健は図面を両手に持ちながら銅鐸が放つ光を当て、その距離の遠近を調節して動いた。図面にある無数の染みのような黒点が光点と重なり、それは一つの具体的な図形を示しだしていったのだ。
「何だ、これは。船であることは間違いないようだけれども、真上からみた亀かスッポンだな、これは」
「健さん、図面を横にしたらどうかね」
そう、比孝は言った。そして健は図面を持ち替えて、銅鐸の孔からでる光をそれに当てていった。
「・・・これは細長い首のようだ・・・」
「健さん、こりゃあ、ちょと変わっているが潜水艦じゃないだろうかね・・・この出っ張りと、その首はまるで潜水艦の司令塔だな」
「・・・センスイカン・・・司令塔・・・潜水艦の司令塔・・・」
「昔の海軍の特殊潜行艇だぞ、これは。わしゃあ、土建屋も兼業して、建築図面をよくみるが、横にすれば側面図、縦にすれば平面図じゃないか。もし、これが船ならば、亀型の潜水艦だな、これは」
「・・・センスイカン・・・紛れもなく潜水艦なんだ。これは」
「それにしてもだ、もし潜水艦ならば、そんな昔の時代に造ったのだろうかねっ」
「ふ-む・・・いや、確かに造ったのですよ。うん、造ったんだ。日下一族は海の人々でもあったんですから。・・・海の神『スサノオ』、『沙本姫と沙本彦』はサオで竿の象徴そのものだ。『ヤマトタケル』は船で東征し、時代を下れば『安倍比羅夫』、壬申の乱の勝利した『大海人皇子』、すなわち天武天皇は名前からして海そのものだ。・・・それに『壬申』そのものも意味深長だ。壬はミズノエとよまれ、水そのもの。申はサルで、その象徴する意味は金です。この字を考えてみると『甲(コウ)』でキノエと読まれる字に頭が付いた字です。甲は甲良(コウラ)です。これに首を出したモノが『申』で、意味は延びるです。まさに亀がその首を伸縮させるがごとくの潜水艦の司令塔と突き出す潜望鏡だ。それに浦島太郎の話は竜宮城に亀の甲良に乗っていく。・・・それにこの話は木曽の寝覚めの里にも伝説としてあるんです」
「ほう、浦島が山の中に?」
「ええ、信州は山梨、甲斐甲府の隣。そして、今、気付けば甲斐と甲府の字からして亀の甲良が宛てられている。・・・以前は不思議に思ったこともある。何故、山の中に海の竜宮伝説があるのか、と。龍は『竜』で、『立と甲の尻尾の曲がった』漢字です。とにかく海に乗り出すには先ず採鉱、鋳鉄、鋳造の技術と、造船に適する木材です。古代の総合技術が結集されなければ大航海は不可能です」
「しかし、大航海の必要に迫られていたのだろうかいなあ、その時代の古代の人々?」
「もちろんですとも。・・・そしてその遥か以前から造船技術があった。『古事記』によれば古代甲斐は『日下部の祖が国造』だった。『スサノオ』に関係した『足名椎の娘』、『櫛名田姫』は八俣の大蛇からその命を助けられている。足名椎は甲斐に隣接する海の国、相模の芦名で、また芦の湖の地名も存在する。これは多分、芦名湖と呼ばれていたのに違いない・・・出雲と相模は物語の裏でつながっているのです。・・・多分、この話を有する古代の同一種族、技術者集団が大規模に地理的に動いたからです」
「何故だろうかねっ?」
「理由は鉱物、木材資源の獲得そのものです」
「そりゃそうだな」
「それに比孝さん、『日下累代故事』によれば時代が下った『源平合戦』の四国、伊予の『河野水軍』が『壇の浦の戦い』でこの『メクラ船』を使ったことになっている。・・・」
「『源平合戦』で・・・」
「!・・・そうか・・・わかったぞ、義経の『八そう跳び』の謎が・・・八嫂で、鳶、飛ビの跳ビ、だ・・・ヤッツの嫂の砥の尾」
「義経の『八そう跳び』?」
「ええ、義経はヒラリ、ヒラリと船を跳んだのじゃないんだ」
「?」
「船の本体が海に潜っている『メクラ船』なんですよ。義経は海上に突き出た『メクラ船』の司令塔で海戦の指揮を取ったんだ」
「・・・?」
「比孝さん『メクラ船』は見えない船を意味するんですよ。潜水艦なんだ。これはサブマリンなんですよ」
健は興奮して自分の言葉に酔っていた。
「・・・フ-ン、まっ、とにかくすごいモンを造ったんだな」
比孝は健の話をあまり飲み込めないような口ぶりだったが、頭は健に同意するように振っていた。
「ほんとうに凄いの一言だ。これは」
「まあ、何時の時代にも男達は戦うための道具ばかりを考えては造ってきた、と言うわけよねっ。今だってさ、その潜水艦から原爆ロケットを飛ばして人を殺すことばかりを考えているんだからねっ」
そう、花江は言った。
「・・・比孝さん、次に星図に光を当てて見ましょうか」
「そうだな」
健は図面を取り替え、星図に銅鐸の孔から出る光を当て、その距離の間合いを取るために動いた。この距離間を調節することにによって各図面の内容が確認出来るのだ。
「さて、これは何だろう?」
「地図ですね。・・・日本地図だ。それにこの海岸沿いの点線は海流のようですね・・・これは日本沿海の海流を示す海図なんだ」
「そうよね、モノが潜水艦なら海流の動きを知る必要があるわよねっ」
花江がそう言った。
「次の図面を見ましょうか」
そう健は言って図面を取り替えた。
「?・・・これは・・・L字の筒の組合せか・・・これが球、玉かな。・・・これと、これは鏡、これも鏡で、そして筒・・・これは銅鐸かな」
「健さん、これは潜水艦に取り付けるモノなら潜望鏡に決まっているんじゃないか」
「!?・・・う-ん、凄い、まさにその通りだ。これは潜望鏡なんだ。・・・そうか、三種類の鏡の用途はこれなんだ。そして、この銅鐸の大きな穴の存在理由もわかったぞ。。これは横に棒を通して回し、位置の角度を変えて外の景色を覗ける機能性を持たせるものなのだ。・・・それに、光玉は光源の意味ではなく、水晶球か、ガラスで造ったレンズ状の玉かも知れない」
「ふ-ん」
「・・・潜望鏡か。比孝さん、凄いの一言です。まったく当然だけれども、凄いの言葉しかない」
「健さん、それにしてもだ、これが昔の人間が造ったなんて到底信じれんな。それに、例え造ったとしても、実際に海の底に沈んでしまわずに動いたのだろうかね」
「もちろんですよ。確かに潜水艦として動いたのに違いありません。・・・この設計図、文字の意味は今、詳しくは理解できないが、合理的に出来ている。時代的に潜水艦と言っても、『メクラ船』だ。海面からその本体を数メ-トルも潜ればその『メクラ船』としての戦術的機能の目的は充分に果たしたと思います。水と金属の比重も経験的に知っていたはずです。『古事記』には『オオツツキ』とか『オナベ』と言う名前の人物も記されている。金属自体で造られた器も水には浮くことを経験的に知っていたはずです。時代が下って奈良の大仏を造るぐらいの鋳造技術があれば船底、いや、すべてとは言わないが船体そのものを構造的に金属にしたり、あるいは鉄板を張り付けることも可能だったに違いない」
「ふ-む。・・・それにしてもだ、常識的に考えてもこの船を造船するには並み大抵の知識と技術では到底無理と言うものじゃないのかねっ」
「・・・可能性と言うことなら、可能性は充分にあったし、実際に造ったと思います。古代であろうが現代であろうが、鳥のように空に飛びたい、亀や魚のように海の中に海に潜ってみたい、と言う発想そのものは変わらないと思うんです。問題は力学的な浮揚力や、潜水力よりも動力源の問題です。グライダ-のように自然の気流に乗ると言うのではなく、鳥のように羽ばたいて、空中に浮揚し、意志としてその方向に飛ぶと言うことには人力そのものに限界があるとしても、船そのものが海に潜行すると言うことならば遥かに現実性があるとは思いませんか。亀のように海に潜ると言うことなら、古代人は亀の生態研究をすぐにでも出来た」
「そりゃあ、そうだな」
「比孝さん、浦島太郎は何故、亀なんでしょう。古代にワニと呼ばれた鮫でも物語としてならばいいはずです。カメでなければならない現実性があったのですよ。伝説に現実的な根拠があるとしたならば凶暴なワニではなく、優しくて、 おとなしいカメでなければならなかった。しかも、単なる舟ではなく、カメに例えられるような特殊な船で、カメにも似た機能性を有する船と考えた方が納得がいきます。そうか、日下の系図で、花江おばさんがモモじゃない理由が納得だ。カメは、花の女で、花江おばさんの名前なんだ」
「私の名前がカメで、花江なのかねぇー・・・私はカメさんなのかネ」
「そう、『私は亀』で、穐(アキ)なんですよ」
「?・・・今度はアキですか」
「亀、・・・まっ、カメは万年、鶴は千年、カメの方が有難いわな」
「カメは中国の陰陽思想では亀と蛇の合体とされたものとして『玄武(ゲンブ)』と称され、特殊な地位を与えられています。象徴的な意味では、物質は水、色は黒、方位は北、玄象と言えば日月星辰であり、天そのもの。天体としては北極星であり、北狼(ホクロウ)星とか、貪狼(タンロウ)星で、北辰とも呼ばれ、妙見信仰の実体です」
「カメが妙見さまかね」
「ええ、幕末の千葉周作、北辰一刀流の神様です」
「では、ヘビは何かね?」
「ヘビは・・・中国ではジョカと言われ、蛇の尾を有する女性の神で、古代伝説の源神であり、源人類を発生させた帝王です。・・・蛇は天体の天の川を意味したかも知れないな・・・とにかく、古代日本では蛇はウワバミと言われて、神話ではフツとされて矛や、スサノオの『天の叢雲剣』や、ヤマトタケルの『草薙の剣』につながる刀剣の神です」
「なるほど、刀ならば北辰一刀流の神様になるわけだ」
「そして、健さん、安珍と清姫の清姫の化身よねっ」
そう、花江が言葉を挟んで言った。
「そう、そうなんです。清姫の化身。ふ-ん・・・蛇は西洋では人間を堕落させた悪魔であり、また、自分の存在を自覚させしめた知恵の神でもあるのですが・・・聖書と日本神話は、その象徴である蛇と龍が同じようにダブッてくるんだ・・・」
「どう言うことなのかねっ、それは?」
「知恵は善と悪、愛と憎、畏敬と恐怖の表裏の合わさったもので、その象徴が地方によって蛇だったり、龍だったりしたからだと思うのですが。・・・まっ、知恵そのものの象徴です。そして、神占に利用された亀は、魔法陣としての数学の原点であり、亀甲文字としての原点でもあるのです。いわば、古代科学の原点なんです」
「古代科学の原点ですか。なかなか、難しいですな」
「あんたも、私も、もう少し、学があったら健さんの言っていることがスンナリわかるだろうにね」
花江はそう、比孝の言葉に続けて言った。
「・・・それにカメは聖武天皇の『神亀』、光仁天皇の『宝亀』として年号にも使用されている。更に言えば、『玄武』の玄は、道家の老子が説いた時間と空間を超越した天地万物の根元で太極。武は武芸、武道で、兵法、戦術そのものです。もう少し言えば『玄武』とされている亀と蛇の図は、古代インドの世界観を現している図がオリジナルらしいんです。その図には蛇がとぐろを巻いた中に亀がおり、その亀の甲良の上に三匹の象が大地と天を支え、その天上にコンロン山が描かれているのです」
「いわゆる仏さんの須弥山や、仙人さんの蓬莱山のことだわね」
「そうです、花江おばさん。『玄武』は、その象と天地、山が省かれたモノなんです。そして武はタケで、長い短いの寸法を言う丈、竹竿のタケ、猛だけしいのタケ、・・・そうか、お山も嶽で、岳(タケ)なんだ」
「そして、健さんのタケルで、ヤマトタケルのタケで、長髄彦の長いのタケ。それで日下につながって来るのね」
「そう、そうなんです。花江おばさん」
「ふ-ん。花江、おまえは、なかなかのもんだ」
「女房に惚れなおしたのかい、あんたは」
「うん、おまえに惚れなおした」
「テレくさいわよ」
「・・・話を元に戻して、古代の技術ですが、建築にしたって地震の搖れにも安定性を保つように建築された木造の五重の塔、中心柱の底部は丸い金属球が添え付けられ、それを乗せている土台がこれまた金属の摺鉢状の受け皿になっている。搖れがきても地球の中心と直角を保つ構造になっていて倒れない。巨大寺院そのものや、その山門。湿気調節の校倉造りの正倉院。それに大仏の鋳造を見てもそれらの技術を造船に活かす発想さえあれば『メクラ船』、古代潜水艦の現実性は高い」
「だがな、健さん、その可能性は認めるとしてだ、その古代人の知識の源泉は何処なんだろうな」
「何処から?ですか・・・経験的な知識と技術の積み重ね、と言うことでしょうか・・・いや、そんな月並みのモノじゃあないな。古代人の文明は高々五千年や六千年前のモノではなく、万年単位のモノだと思うのです」
「万年単位」
「ええ、数万年か、十数万年の単位です。歴史のエアポケットがあって、文明としての歴史の連続性が時々途切れてしまったのですよ」
「・・・」
「そうだ、とにかくこの結果をユカリに知らせねば。ちょっとお電話をお借りします」
健は興奮冷めやらぬ熱い頭を回して立ち上がり、電話機のある廊下に出てダイヤルを回した。
「・・・おっ、ユカちゃんか、俺、俺だ。・・・そう、・・・その通り、期待通りだった・・・メクラ船は潜水艦だ。・・・そう、サブマリンだ・・・潜水艦だ」
「!・・・メクラ船って・・・サブマリンなのぉー・・・」
ユカリの声が健の声に重なりながらその興奮の声を受話器から響かせていた。
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