【前回の続きです】
歌い終ったミュージシャン達が、最後に1人づつ、ヴォーカルに名前呼ばれてあいさつしていく。
1人1人前に出てく度、集まった大勢の観客が、拍手と歓声で応えた。
もちろん俺もしてやった、口笛まで吹いて。
全員があいさつし終えて、手を振りながら、ステージ裏に去って行く。
最後は演奏してたメンバーも、手を振って去って行った。
「すっげ楽しかったなァ~♪♪」
「皆本当にすっごく歌上手だったよねェ~!」
「ちょー盛り上ったよな!!最後は皆でバカノリしちまってよォ!!」
「あんたはノリ過ぎよルフィ!!こっちまで引き摺られて恥しかったのなんの…ま、楽しかったけどさ。」
「…………俺は疲れた……早く風呂入って寝ちまいてェよ…もう、ショーは全て終了したんだろ?いいかげん帰ろうぜェ?」
「未だよ!最後の花火が残ってる!」
「未だ有んのかよ~~~!?……いいかげん帰りてェよ俺は…。」
「花火ってアレか!?ドーンと鳴って打ち上がるちょー特大のヤツか!?なら観る!!ぜってー観るぞ俺!!!」
「どうせ会場は此処みたいだし、やっぱ1日の終りは花火で〆ないと♪……後25分、間が有るみたいだから、どっか開いてるお土産屋入って暖まってよ!」
花火がやる時刻まで、俺達はてきとーに土産屋選んで、入って待ってる事にした。
…つってもたいがいの店が閉ってて、開いてるのは3けんくれェしか無かったけどな。
その内の1けん、酒をメインに売ってる店が在ったんで入る事にした――ゾロのたっての希望で。
しょーちゅーとかの日本酒が多く置いてある店だったけど、他にも明太子とかカマボコとかカステラとか…奥には焼物の器とかまで有った。
出てたししょくを片っぱしから食ってく、チョコレート味のカステラが甘くて美味かった。
しょーおーけんって名前の、長崎で有名なカステラ屋の物らしい。
俺の後ろでは、ゾロがかつて見た事無ェほどマジな顔して、1本1本酒ビン見つめながら考えてる。
そのゾロの後ろから、ナミがギャイギャイ騒いで注意してる…ようで、ナミ自身もゾロと一緒になって酒見てた。
何か長くかかりそうなんで、1人でとっとと店を出た。
店の出入口前には『かんころもち』って書かれた屋台が在って――実を言うと店入る前から興味持ってたんだけど――まんじゅうみてーな大福みてーな変ったもんふかして売っていた。
ふかしてるトコから白い湯気がホコホコ出てて、外寒かったんで余計に美味そーに見えた。
誘惑に負けてつい1個買っちまった。
手に持ったそれは、アツアツで紫色した大福みてーな形してた。
包まってたラップはがして、フーフー言いながら一口かじる。
「ってあんたは目を離した隙にまた食ってるし!」
「ブッッ!!…ファ、ファヒ!!?――アヂッッ!!!アヂアヂアヂィッッ!!!」
「買い食いも程々にしとかないと、お小遣いあっという間に無くなっちゃうから!!……って何?その紫色の食べ物…。」
「『かんころもち』って名前の食いもんだ。餅っつうけど、今食ってみたら、これ餅じゃねェぞ?芋だ!」
食ってみたら、紫色の餅みてーな外側部分は芋だった、芋きんとんの味だ。
中味は白アン…不味くはねェっつか、まァまァ美味ェし甘ェ。
「なひゃひゃひはおもひへーもん売っへんひゃな~~。」
「成る程ねー、紫芋を餅みたいに練って、中に白餡包んで大福みたいにしたお菓子…なのかしら?変ってる~。」
「おー、悪ィ!待たせたかァ?」
ゾロがニコニコしながら戻って来た。
「……ゾロ…あんた、未成年のクセして焼酎一升瓶で買ったわね…?」
「家への土産だ。何も問題無ェだろが?」
「有るわよ!!!人がちょォっと目を離した隙にあんたはあんたはあんたはあんたは!!!私が大人しく我慢してんだからあんたも我慢すんのが気配りってもんでしょォォォ!!?」
「痛っっ!!痛痛痛痛痛痛ェェ!!!バッッ!!止めっ!!抓るな引掻くな!!…別に我慢しなきゃ良いだろっって――痛ェェェェェ!!!!」
「おい!!これから花火やるって放送してるぞ!?」
「え!?ああ!!大変!!!早く会場戻らなきゃ!!!」
「会場って、さっきの海賊船の前か!?」
「オレンジ広場だって!より人だかり有る方目指せば良いわ!!」
店を出て、何か美味そーな名前の広場に急いで向う。
でっけークリスマスツリーの前が、1番人が多くて混雑してた。
来て初めて観たクリスマスツリーだ、青・緑・金色と、どんどん色が変ってってきれーだった。
後でこれをバックにして写真をとろうと思った。
「…凄ェ。此処、こんなに人が入ってたのか。初めて知ったぜ。」
「今までで1番活気づいてんなー!!」
「どうやら前に広がる海で上げるみたいね。」
開始を知らせる英語アナウンスがかかった。
曲に合せて空いっぱいにレーザーの光が反射される。
ドン!!!ドォン!!!とものすげー音させて花火が打ち上がる。
レーザーの光と重なって、空にぱぁっと広がる。
花火って名前の通り、本当に花みてーだ!!
散ってキラキラと、雪みてーになって降って来る。
また打ち上がる、ぱぁっと広がる。
色とりどりの空の花。
キラキラキラキラ、雪のよーに、星のよーに、降って来る…
「……きれーだなー……」
「綺麗でしょ?この島の花火は、グランドラインでも有名な美しさなんだって。」
「ふーーーん…。」
……………………ぐらんどらいん???
「ぐらんどらいんって、何言ってんだ?ナミ??」
「はァ??あんたこそ何言ってんのよルフィ!?『偉大なる航路』、私達が今、航海してる海じゃないの!!」
「いだい???こうかい????…何の事だそりゃ??????」
「おいルフィ…食あたりでもしたか?医者呼ぶか?」
「――ゾロォォ!??おま何だァ!?そのカッコ!??腹巻!!?刀!??いつ着替えたんだァァァ!!??」
目の前に立ってたゾロのカッコは、さっきまで着てたジーンズに緑のジャケットではなくて、半そでおやじシャツに緑の腹巻うでには黒バンダナしばってってな風に変ってた――しかも刀3本も差してるぞコイツゥゥゥ!!??
「ゾ!ゾロ!!何だよその刀!!?何処の店で買ったんだよカッコ良いじゃねーか!!!でもじゅーとーほーいはんだぞ良いのか!!?なァァァ!!??」
「……おい、クソコック。おめェ、ひょっとしてこいつに一服盛ったんじゃ…?」
「クソざけんなよ、マリモンチッチ。幾ら連日食料強奪しやがってるからって、コックのプライド捨ててまでそんな真似するかよ。」
「けどさっき、コックさんの強烈な蹴りが脳天に直撃してたでしょ?…それが原因で彼、一時的な記憶喪失になってしまったんじゃないかしら?」
「サ、サンジィィ!!??おまえいつここに来たっっ――ってかロビン先生まで居るしっっ!!??」
振り返ったそこには、黒スーツ着てタバコぷかぷかふかしてるサンジ、そしてなぜか俺達のクラスの担任のロビン先生まで居た!
「っておいサンジ!!!ロビン先生の前でタバコはヤベェだろ!!?いやそんな事よりいつここ来たんだよ!!?受験勉強は大丈夫なのかよ!?来てたんなら早く教えててくれよォーーー!!!!」
「…あ~~あ、そーとー打ち所、いや、蹴り所悪かったみてェだぞ。ま、何だ!此処はやっぱ医者の出番だろ!おゥい!チョッパー!!仕事だぜ!!」
「お、おう…!!!」
「――ウソップゥゥ!!??おめェも来てたのかァァァ!!??……っておまえは誰だァァァァ!!???」
サンジの後ろにはウソップがいた!!
あの長い鼻は間違い無くウソップだ!!!
しかもさらにその後ろから、チョコチョコと奇妙な生物まで出て来やがった!!
ピンクのぼうしをかぶり、ツノを生やした青っ鼻の、見た事も無ェ動物。
…シカか??…タヌキか???
「解った!!シカとタヌキのキマイラだ!!!」
「トナカイだ俺はっっっ!!!」
「相当、重症ね。」
「まったく酷いわねー!!あんた、ウチの大事なドクターまで忘れちゃったってーの!!?」
「ナミ!?おまえまでいつの間にそんなうすいワンピースに着替えたんだ!!?風邪引くぞ!!!?」
「……あんたに言われたくないわよ…。」
「――え!!?あああ!!??俺ビーサンそで無しいつの間にィィィ!!???」
俺の服はいつの間にか夏服に、はいてるくつなんかビーサンに変ってた!!!
何だ何だ!??
どういう事だこれ!!???
いつの間にか全員集合、しかも妖怪まで混じって!!???
いったいぜんたいどーなっちまったんだよ!!!??
誰か説明してくれよ!!!!
訳解んねーよォ~~~~!!!!!!
コンガラガッちまった頭の上で、またドォン!!!とでっかい音が響いた。
見上げた夜空に、ひときわでっけー花が咲いた。
そしてまた雪みてーなって、キラキラ光りながら降って来る。
観ている皆の笑顔が、明るく浮き上がった。
「…ほら、あんたの大事な帽子が落ちてる!」
ナミが、俺の頭の上に、ポスッと何かをかぶせた。
手に持って見ると、それは古びた麦わらぼうし。
「………これ…俺の、か……?」
「そうよ!大事な誓いの帽子でしょ?……しっかりしてよ、船長!」
ナミがにっこりと笑う、その後ろには光る雪。
――ああ、そうだった!!
俺の名前はモンキー・D・ルフィ。
海賊王になる為に、船に乗って海へ出た。
そうして見つけた仲間達。
三刀流のすごうで剣士、ロロノア・ゾロ。
天才航海士で、怒ると鬼より恐ェナミ。
ウソが上手くて鼻の長ェウソップ。
グルグルまゆ毛の一流コック、サンジ。
医者で七段変型面白トナカイのトニー・トニー・チョッパー。
考古学者でものすごく頭の良いニコ・ロビン。
そうだそうだ!!
何で忘れちまってたんだ俺!?
…ゴメンな、チョッパー!シカとかタヌキとかキマイラとか妖怪とか言っちまって…
けど思い出した!全部思い出したぞ!!
海賊王、最強の剣士、世界地図、
勇かんなる海の戦士、オール・ブルー、
万能薬、リオ・ポーネ・グリフ……
皆一緒に、夢を叶える為に、俺達はグランド・ラインに入って、航海して来たんじゃねェか…!!
ドォン!!!と響いて花火が打ち上がる。
空に幾つもきれーな花が咲いてく。
「……きれーだ……。」
「綺麗でしょ?
この島の花火は、グランド・ラインでも有名なんだって!
毎日沢山の旅行客が、これを目当てに訪れてる。
でもね、元々の此処は、草木も育たない、捨てられた荒地だったんだって。
信じられる?こんなに緑豊かで、美しい花が咲き乱れてる街がよ?
1年半、耕して耕して耕し続けて、気の遠くなる程の歳月をかけて、
島は生まれ変り、そしてこんなに大きな街が造られた…」
ドドドォォン…!!!と連続で花火が打ち上がる。
今までで1番でっけー花火だった。
空に映ったレーザーの波の中、いっぺんに沢山の花が咲く。
広がっていっせいに散って、そうして空ん中だんだんと、溶けて流れてった……
今のが最後の花火だったらしい。
一気に歓声と拍手が上がった。
「……すげェ……すげェェェェェ~~!!!!」
「ね!?観て良かったでしょ!?ルフィ!…ゾロ!!」
「まァな、やっぱ花火はショーの華だな!」
「ウソップ!!サンジ!!チョッパー!!ロビン!!おめェらも…!!!」
――って、あ、あ、あれ!!!??
振り返ったそこに、ウソップやサンジやチョッパーやロビンの姿は無くて、知らねー観光客達が、びっくりした顔して立ってるだけだった――
「ああれあれ!!???おおゥい!!!ウソップ!!サーンジ!!チョッパー!!ロビーン!!!…皆どこ行っちまったんだァーーーーー!!!!??」
「…ウソップ?サンジ君?ロビン先生???……あんた、さっきから何言ってんの???」
「っつかおめェ、ロビンって…教師の名前呼び捨てっつうのは失礼じゃねェか?」
「なァおまえらもウソップやサンジやチョッパーやロビンを探してって――またいつの間に着替えたんだよおめーらァァァ!!?」
目の前に立ってたゾロとナミは、また冬服に戻って居た!
――どどどどーなってんだ!!??こりゃーーー!!!???
「ウソーーップ!!!サーーンジ!!!チョッパーー!!!ロビーーン!!!おゥゥゥいーーーー!!!!!」
「…だから何てめェはウソップやグル眉毛やロビン先生の名前呼んでんだよ!??」
「居たじゃねーかさっきまで!!!!ウソップやサンジやチョッパーロビン全員!!!!」
「居る訳無ェだろウソップや眉毛が!!!最初っから此処に来てなかっただろが!!!!」
「……最初っから……?何で………?」
「…だから、2人とも受験が有るから、勉強しなきゃいけねェって……そもそも担任の教師が何で俺達と一緒に此処来るっつうんだよ…??」
「……受験…?勉強……??」
「ねェ…『チョッパー』って何よ???」
「わ…忘れちまったのかよナミィ!!?医者でトナカイで七段変形して、一緒に航海して来た俺達の仲間じゃねェかーーーー!!!!!」
「……………何で、トナカイが医者で、私達の仲間んならなきゃいけないのよ……??」
「後悔…??航海か???……何時俺達が航海したってんだよ……??」
ゾロとナミが、変な顔して俺の事見ている。
――そんな…だって…確かに、さっきまでいたんだ!!全員!!!!
「…夢でも見たんじゃねェか…?」
「立って夢見るなんて、ゾロより酷い寝惚けね!おっかし~!!」
「どうしてそこで俺が出るんだよ!!?」
「あら!?だって寝惚けはあんたの必殺技、酔拳ならぬ『睡剣』じゃない!」
「んだとっ!?てめェ!!!」
――夢じゃねェ、夢なんかじゃねェ!!
けど確かに今此処には、ウソップもサンジもチョッパーもロビンも、居なくなっていた……
【その14に続】
…この話読んで「お前の企みは全て解った!!」と思った方も多かろうな~。(苦笑)
すんません、そんな妙な事企んでおりました。(汗)
付いて行けなかったらすんません。(汗々)
写真の説明~、ハウステンボス、スパーケンブルグ地区に在る、海賊船ではなく『デ・リーフデ号』にイルミを点灯させた『光の船』。
文中出て来たお酒の店は、スパーケンブルグ地区に在る『ぜーランド』って店の事です。
カステラの美味しい、長崎の老舗店は『松翁軒』ね。
歌い終ったミュージシャン達が、最後に1人づつ、ヴォーカルに名前呼ばれてあいさつしていく。
1人1人前に出てく度、集まった大勢の観客が、拍手と歓声で応えた。
もちろん俺もしてやった、口笛まで吹いて。
全員があいさつし終えて、手を振りながら、ステージ裏に去って行く。
最後は演奏してたメンバーも、手を振って去って行った。
「すっげ楽しかったなァ~♪♪」
「皆本当にすっごく歌上手だったよねェ~!」
「ちょー盛り上ったよな!!最後は皆でバカノリしちまってよォ!!」
「あんたはノリ過ぎよルフィ!!こっちまで引き摺られて恥しかったのなんの…ま、楽しかったけどさ。」
「…………俺は疲れた……早く風呂入って寝ちまいてェよ…もう、ショーは全て終了したんだろ?いいかげん帰ろうぜェ?」
「未だよ!最後の花火が残ってる!」
「未だ有んのかよ~~~!?……いいかげん帰りてェよ俺は…。」
「花火ってアレか!?ドーンと鳴って打ち上がるちょー特大のヤツか!?なら観る!!ぜってー観るぞ俺!!!」
「どうせ会場は此処みたいだし、やっぱ1日の終りは花火で〆ないと♪……後25分、間が有るみたいだから、どっか開いてるお土産屋入って暖まってよ!」
花火がやる時刻まで、俺達はてきとーに土産屋選んで、入って待ってる事にした。
…つってもたいがいの店が閉ってて、開いてるのは3けんくれェしか無かったけどな。
その内の1けん、酒をメインに売ってる店が在ったんで入る事にした――ゾロのたっての希望で。
しょーちゅーとかの日本酒が多く置いてある店だったけど、他にも明太子とかカマボコとかカステラとか…奥には焼物の器とかまで有った。
出てたししょくを片っぱしから食ってく、チョコレート味のカステラが甘くて美味かった。
しょーおーけんって名前の、長崎で有名なカステラ屋の物らしい。
俺の後ろでは、ゾロがかつて見た事無ェほどマジな顔して、1本1本酒ビン見つめながら考えてる。
そのゾロの後ろから、ナミがギャイギャイ騒いで注意してる…ようで、ナミ自身もゾロと一緒になって酒見てた。
何か長くかかりそうなんで、1人でとっとと店を出た。
店の出入口前には『かんころもち』って書かれた屋台が在って――実を言うと店入る前から興味持ってたんだけど――まんじゅうみてーな大福みてーな変ったもんふかして売っていた。
ふかしてるトコから白い湯気がホコホコ出てて、外寒かったんで余計に美味そーに見えた。
誘惑に負けてつい1個買っちまった。
手に持ったそれは、アツアツで紫色した大福みてーな形してた。
包まってたラップはがして、フーフー言いながら一口かじる。
「ってあんたは目を離した隙にまた食ってるし!」
「ブッッ!!…ファ、ファヒ!!?――アヂッッ!!!アヂアヂアヂィッッ!!!」
「買い食いも程々にしとかないと、お小遣いあっという間に無くなっちゃうから!!……って何?その紫色の食べ物…。」
「『かんころもち』って名前の食いもんだ。餅っつうけど、今食ってみたら、これ餅じゃねェぞ?芋だ!」
食ってみたら、紫色の餅みてーな外側部分は芋だった、芋きんとんの味だ。
中味は白アン…不味くはねェっつか、まァまァ美味ェし甘ェ。
「なひゃひゃひはおもひへーもん売っへんひゃな~~。」
「成る程ねー、紫芋を餅みたいに練って、中に白餡包んで大福みたいにしたお菓子…なのかしら?変ってる~。」
「おー、悪ィ!待たせたかァ?」
ゾロがニコニコしながら戻って来た。
「……ゾロ…あんた、未成年のクセして焼酎一升瓶で買ったわね…?」
「家への土産だ。何も問題無ェだろが?」
「有るわよ!!!人がちょォっと目を離した隙にあんたはあんたはあんたはあんたは!!!私が大人しく我慢してんだからあんたも我慢すんのが気配りってもんでしょォォォ!!?」
「痛っっ!!痛痛痛痛痛痛ェェ!!!バッッ!!止めっ!!抓るな引掻くな!!…別に我慢しなきゃ良いだろっって――痛ェェェェェ!!!!」
「おい!!これから花火やるって放送してるぞ!?」
「え!?ああ!!大変!!!早く会場戻らなきゃ!!!」
「会場って、さっきの海賊船の前か!?」
「オレンジ広場だって!より人だかり有る方目指せば良いわ!!」
店を出て、何か美味そーな名前の広場に急いで向う。
でっけークリスマスツリーの前が、1番人が多くて混雑してた。
来て初めて観たクリスマスツリーだ、青・緑・金色と、どんどん色が変ってってきれーだった。
後でこれをバックにして写真をとろうと思った。
「…凄ェ。此処、こんなに人が入ってたのか。初めて知ったぜ。」
「今までで1番活気づいてんなー!!」
「どうやら前に広がる海で上げるみたいね。」
開始を知らせる英語アナウンスがかかった。
曲に合せて空いっぱいにレーザーの光が反射される。
ドン!!!ドォン!!!とものすげー音させて花火が打ち上がる。
レーザーの光と重なって、空にぱぁっと広がる。
花火って名前の通り、本当に花みてーだ!!
散ってキラキラと、雪みてーになって降って来る。
また打ち上がる、ぱぁっと広がる。
色とりどりの空の花。
キラキラキラキラ、雪のよーに、星のよーに、降って来る…
「……きれーだなー……」
「綺麗でしょ?この島の花火は、グランドラインでも有名な美しさなんだって。」
「ふーーーん…。」
……………………ぐらんどらいん???
「ぐらんどらいんって、何言ってんだ?ナミ??」
「はァ??あんたこそ何言ってんのよルフィ!?『偉大なる航路』、私達が今、航海してる海じゃないの!!」
「いだい???こうかい????…何の事だそりゃ??????」
「おいルフィ…食あたりでもしたか?医者呼ぶか?」
「――ゾロォォ!??おま何だァ!?そのカッコ!??腹巻!!?刀!??いつ着替えたんだァァァ!!??」
目の前に立ってたゾロのカッコは、さっきまで着てたジーンズに緑のジャケットではなくて、半そでおやじシャツに緑の腹巻うでには黒バンダナしばってってな風に変ってた――しかも刀3本も差してるぞコイツゥゥゥ!!??
「ゾ!ゾロ!!何だよその刀!!?何処の店で買ったんだよカッコ良いじゃねーか!!!でもじゅーとーほーいはんだぞ良いのか!!?なァァァ!!??」
「……おい、クソコック。おめェ、ひょっとしてこいつに一服盛ったんじゃ…?」
「クソざけんなよ、マリモンチッチ。幾ら連日食料強奪しやがってるからって、コックのプライド捨ててまでそんな真似するかよ。」
「けどさっき、コックさんの強烈な蹴りが脳天に直撃してたでしょ?…それが原因で彼、一時的な記憶喪失になってしまったんじゃないかしら?」
「サ、サンジィィ!!??おまえいつここに来たっっ――ってかロビン先生まで居るしっっ!!??」
振り返ったそこには、黒スーツ着てタバコぷかぷかふかしてるサンジ、そしてなぜか俺達のクラスの担任のロビン先生まで居た!
「っておいサンジ!!!ロビン先生の前でタバコはヤベェだろ!!?いやそんな事よりいつここ来たんだよ!!?受験勉強は大丈夫なのかよ!?来てたんなら早く教えててくれよォーーー!!!!」
「…あ~~あ、そーとー打ち所、いや、蹴り所悪かったみてェだぞ。ま、何だ!此処はやっぱ医者の出番だろ!おゥい!チョッパー!!仕事だぜ!!」
「お、おう…!!!」
「――ウソップゥゥ!!??おめェも来てたのかァァァ!!??……っておまえは誰だァァァァ!!???」
サンジの後ろにはウソップがいた!!
あの長い鼻は間違い無くウソップだ!!!
しかもさらにその後ろから、チョコチョコと奇妙な生物まで出て来やがった!!
ピンクのぼうしをかぶり、ツノを生やした青っ鼻の、見た事も無ェ動物。
…シカか??…タヌキか???
「解った!!シカとタヌキのキマイラだ!!!」
「トナカイだ俺はっっっ!!!」
「相当、重症ね。」
「まったく酷いわねー!!あんた、ウチの大事なドクターまで忘れちゃったってーの!!?」
「ナミ!?おまえまでいつの間にそんなうすいワンピースに着替えたんだ!!?風邪引くぞ!!!?」
「……あんたに言われたくないわよ…。」
「――え!!?あああ!!??俺ビーサンそで無しいつの間にィィィ!!???」
俺の服はいつの間にか夏服に、はいてるくつなんかビーサンに変ってた!!!
何だ何だ!??
どういう事だこれ!!???
いつの間にか全員集合、しかも妖怪まで混じって!!???
いったいぜんたいどーなっちまったんだよ!!!??
誰か説明してくれよ!!!!
訳解んねーよォ~~~~!!!!!!
コンガラガッちまった頭の上で、またドォン!!!とでっかい音が響いた。
見上げた夜空に、ひときわでっけー花が咲いた。
そしてまた雪みてーなって、キラキラ光りながら降って来る。
観ている皆の笑顔が、明るく浮き上がった。
「…ほら、あんたの大事な帽子が落ちてる!」
ナミが、俺の頭の上に、ポスッと何かをかぶせた。
手に持って見ると、それは古びた麦わらぼうし。
「………これ…俺の、か……?」
「そうよ!大事な誓いの帽子でしょ?……しっかりしてよ、船長!」
ナミがにっこりと笑う、その後ろには光る雪。
――ああ、そうだった!!
俺の名前はモンキー・D・ルフィ。
海賊王になる為に、船に乗って海へ出た。
そうして見つけた仲間達。
三刀流のすごうで剣士、ロロノア・ゾロ。
天才航海士で、怒ると鬼より恐ェナミ。
ウソが上手くて鼻の長ェウソップ。
グルグルまゆ毛の一流コック、サンジ。
医者で七段変型面白トナカイのトニー・トニー・チョッパー。
考古学者でものすごく頭の良いニコ・ロビン。
そうだそうだ!!
何で忘れちまってたんだ俺!?
…ゴメンな、チョッパー!シカとかタヌキとかキマイラとか妖怪とか言っちまって…
けど思い出した!全部思い出したぞ!!
海賊王、最強の剣士、世界地図、
勇かんなる海の戦士、オール・ブルー、
万能薬、リオ・ポーネ・グリフ……
皆一緒に、夢を叶える為に、俺達はグランド・ラインに入って、航海して来たんじゃねェか…!!
ドォン!!!と響いて花火が打ち上がる。
空に幾つもきれーな花が咲いてく。
「……きれーだ……。」
「綺麗でしょ?
この島の花火は、グランド・ラインでも有名なんだって!
毎日沢山の旅行客が、これを目当てに訪れてる。
でもね、元々の此処は、草木も育たない、捨てられた荒地だったんだって。
信じられる?こんなに緑豊かで、美しい花が咲き乱れてる街がよ?
1年半、耕して耕して耕し続けて、気の遠くなる程の歳月をかけて、
島は生まれ変り、そしてこんなに大きな街が造られた…」
ドドドォォン…!!!と連続で花火が打ち上がる。
今までで1番でっけー花火だった。
空に映ったレーザーの波の中、いっぺんに沢山の花が咲く。
広がっていっせいに散って、そうして空ん中だんだんと、溶けて流れてった……
今のが最後の花火だったらしい。
一気に歓声と拍手が上がった。
「……すげェ……すげェェェェェ~~!!!!」
「ね!?観て良かったでしょ!?ルフィ!…ゾロ!!」
「まァな、やっぱ花火はショーの華だな!」
「ウソップ!!サンジ!!チョッパー!!ロビン!!おめェらも…!!!」
――って、あ、あ、あれ!!!??
振り返ったそこに、ウソップやサンジやチョッパーやロビンの姿は無くて、知らねー観光客達が、びっくりした顔して立ってるだけだった――
「ああれあれ!!???おおゥい!!!ウソップ!!サーンジ!!チョッパー!!ロビーン!!!…皆どこ行っちまったんだァーーーーー!!!!??」
「…ウソップ?サンジ君?ロビン先生???……あんた、さっきから何言ってんの???」
「っつかおめェ、ロビンって…教師の名前呼び捨てっつうのは失礼じゃねェか?」
「なァおまえらもウソップやサンジやチョッパーやロビンを探してって――またいつの間に着替えたんだよおめーらァァァ!!?」
目の前に立ってたゾロとナミは、また冬服に戻って居た!
――どどどどーなってんだ!!??こりゃーーー!!!???
「ウソーーップ!!!サーーンジ!!!チョッパーー!!!ロビーーン!!!おゥゥゥいーーーー!!!!!」
「…だから何てめェはウソップやグル眉毛やロビン先生の名前呼んでんだよ!??」
「居たじゃねーかさっきまで!!!!ウソップやサンジやチョッパーロビン全員!!!!」
「居る訳無ェだろウソップや眉毛が!!!最初っから此処に来てなかっただろが!!!!」
「……最初っから……?何で………?」
「…だから、2人とも受験が有るから、勉強しなきゃいけねェって……そもそも担任の教師が何で俺達と一緒に此処来るっつうんだよ…??」
「……受験…?勉強……??」
「ねェ…『チョッパー』って何よ???」
「わ…忘れちまったのかよナミィ!!?医者でトナカイで七段変形して、一緒に航海して来た俺達の仲間じゃねェかーーーー!!!!!」
「……………何で、トナカイが医者で、私達の仲間んならなきゃいけないのよ……??」
「後悔…??航海か???……何時俺達が航海したってんだよ……??」
ゾロとナミが、変な顔して俺の事見ている。
――そんな…だって…確かに、さっきまでいたんだ!!全員!!!!
「…夢でも見たんじゃねェか…?」
「立って夢見るなんて、ゾロより酷い寝惚けね!おっかし~!!」
「どうしてそこで俺が出るんだよ!!?」
「あら!?だって寝惚けはあんたの必殺技、酔拳ならぬ『睡剣』じゃない!」
「んだとっ!?てめェ!!!」
――夢じゃねェ、夢なんかじゃねェ!!
けど確かに今此処には、ウソップもサンジもチョッパーもロビンも、居なくなっていた……
【その14に続】
…この話読んで「お前の企みは全て解った!!」と思った方も多かろうな~。(苦笑)
すんません、そんな妙な事企んでおりました。(汗)
付いて行けなかったらすんません。(汗々)
写真の説明~、ハウステンボス、スパーケンブルグ地区に在る、海賊船ではなく『デ・リーフデ号』にイルミを点灯させた『光の船』。
文中出て来たお酒の店は、スパーケンブルグ地区に在る『ぜーランド』って店の事です。
カステラの美味しい、長崎の老舗店は『松翁軒』ね。