【前回の続きです。】
順調に予定をオーバーしている。
ニュースタッドのアミューズメントを攻略し、駆け足で隣の地区『ミュージアムスタッド』へと向う。
辿り着いた時には15分のオーバー。
結局、次に予定してた『オルゴール・ファンタジア』の4時の回に間に合わず、仕方なくその前に在った『カロヨン・シンフォニカ』の方へ先に入る事にした。
『カロヨン・シンフォニカ』っつうのは鐘の博物館で、世界中から集めた約300の鐘を一堂に展示している所らしい。
で、館最大の目玉っつうのが、高さ9mも有る『カロヨン・タワー』っつうヤツらしく。
これがタイムリーにも俺達が入館した時に、物凄ェ大音量で演奏を始めた。
ぶっちゃけ煩ェの何の…3人揃って思わず唖然呆然、耳塞ぎながら聴いた。
や、塞がねェと鼓膜破れそうだって!
案内役が説明するには、17世紀のオランダ教会の鐘楼を再現した物だって事で、毎15分置きで自動演奏を行うらしい。
目の前で巨大な演奏装置が簾みたく張ったワイヤーを引張りベルを鳴らす、その度に床が振動で揺れる。
元は時報として造られた物らしい…こんだけでけェ音出しゃあ、そりゃ街中隈なく伝える事が出来んだろうよ。
演奏終了、ルフィなんかは気に入って拍手してアンコール希望したが、それは勘弁して欲しいと願った。
頭痛くなっちまう…終って暫くしても耳ん中でくわんくわん響いてた。
ナミ曰くスケジュール押している為、早々に2階まで廻って館を後にする。
出た丁度に前で、当初予定してた施設館、『オルゴール・ファンタジア』が入場始めてたんで、そのまま入口に並ぶ。
と後から「カーン!!」と鐘が鳴ったんで振り向く。
見るとさっき居た館の外壁に設置された4つの鐘が鳴っていた。
所謂からくり時計だったらしい。
オランダの鐘撞き職人男の人形が2体、カンカンカンカン交互に打ち鳴らす……時代がかってて趣き深い。
次に入館した『オルゴール・ファンタジア』っつうのはオルゴールの博物館だった。
オルゴールっつっても俺が知ってる様な、蓋開けたりネジ巻いたりして曲鳴らすっつうヤツじゃねェ。
17~20世紀の自動演奏楽器…オルゴールの御先祖様を集めて展示してある博物館っつうのだった。
入ると他の客と一緒に先ずホールの様な展示室に通されて、案内役がその中の1つを選び演奏を聴かせる。
この日聴いたのは、入って目の前の、1番ド派手で1番でっけェ『ダンスオルガン』っつう、100年前にダンスホールでの演奏用として造られた物だった。
バラの花彫ってある外観も凄ェが、内蔵した334本の笛使っての演奏が、さっき聴いたカロヨンにも負けねェくれェの大音量で驚いた。
当時は蒸気エンジンを動力に、『ブック』って言う穴だらけの本の様な物使って演奏してたらしい。
開いた穴に蒸気を吹き込み出る音で、曲を奏でるっつう仕組…だろう。
演奏が終って次は2階の展示室にゾロゾロと移動させられる。
今度は主にシリンダー使って演奏するタイプのオルゴールを集めた部屋だった。
シリンダーってのは筒型してサボテンの棘みてェなのが無数に埋め込まれた様な物で、これがブックに取って代り、次の時代に楽譜として使用されたっつう事だった。
この部屋でも展示された内の1つを選び目の前で演奏する。
1870年代にスイスで製作された物なんだそうな。
曲目は、ええと……
「ナミ、これ何て曲っつってたか?」
「賛美歌(ヒム)だって。多分、クリスマス・シーズンに合せての選曲ね。」
此処で、演奏中の回転しているシリンダーに、居る客全員、順繰りに触れさせてく時間が設けられた。
触れるとまるきしサボテンの棘みてェなチクチクした感触がする。
「すげェなー、本当にゾロの頭みたくチクチクしてやがる!」
「ってサボテンだろっつの!!!」
それにしても当時から色んな形したオルゴールが有ったもんだと感心して観回す。
一見額縁入りの絵にしか見えない物や、篭の中の鳥が囀るといった物まで…職人の腕ってのはまったく大したもんだ。
3つ目の最後の部屋では、席に座ってコンサートの様に演奏を聴く形となっていた。
今迄さんざっぱら走らされて来たもんで、席に座ってってのは非常に有難かった。
座り心地が良いもんでこのまま寝ちまいたいとも考えちまう。
客全員が席に着いた所で、案内役が舞台に立ち説明し始める。
舞台には様々な形したオルゴールが数台置かれていた。
「あの中央のピエロ人形、あれ演奏してくんねーかなー!!1番面白そーだ♪♪」
ルフィの指差す中央には、如何にもからくり人形と思しきピエロが、鉄棒でもするよなポーズで置いてあった。
…残念ながら選ばれたのはそれではなく、木造の比較的地味なデザインしたヤツだった。
ルフィが如何にも不服そうに口を尖らす。
演奏に使われたのは『ヴァイオラーノ』って言う、ヴァイオリンとピアノを同時に演奏する様な物で、80年前にアメリカで製作されたらしい。
仕組は電機モーターで楽譜である所のロールペーパーを巻き取りながらっつう事だそうだ。
案内役がコインを入れて演奏が始まった。
「所謂ジュークボックスね。」
「で、これは何て曲だ?ナミ?」
「『オー・ホーリー・ナイト』…やっぱりクリスマスソングよ。昨日お茶飲んでる時に、ホテルでも演奏されてたでしょ?」
「あー…そうだったか…?」
「あ!!俺、覚えてるぞ!!ケーキ食ってた時だろ!?」
「そうそvあの時ロビーで演奏してた内の1曲よv…ゾロも思い出した?」
「ああ……まァ……覚えてるような……ないような……だな。」
「……っとに甲斐の無い奴なんだから!」
演奏が終了し、これにて全てのプログラムも終了となった。
結構楽しめた……案内が付いて説明してくツアー形式ってのは珍しいし、新鮮に思える。
ホールを出て階段を下る、良く出来たもんで下はオルゴールの売店だ。
土産用の、見知った形したオルゴールが整然と陳列されている。
どれもこれも女の好みそうなファンシーなデザインだ。
ナミが目を輝かせて引っ掛かる、続いてルフィも。
あちこち置いてあるオルゴールのネジを回して遊び出す。
「……おい、この後にも予定有んじゃねェのかよ?」
夢中になってたナミに耳打ちする…したら漸く我に返ってルフィ引き摺り外に出た。
――が、通りに出た所で更なる障害に遭遇したっつうか。
『フィギュアヘッド』っつう、海と航海をテーマにした海外輸入雑貨店にぶち当たっちまった。
何となく薄暗い店内に所狭しと置かれた――実際店外まで溢れてやがったし――フィギュアヘッド型したお守り、サーベル、レプリカ火縄式銃、ボトルシップ、羅針盤……こんなルフィのツボをダイレクトに突く物堆く積み上げて有っちゃあ……。
予想通りルフィは瞬く間に店入ってそのまま金縛りの地蔵化しやがった。
ナミが何とか引き摺り出そうと、殴ったり蹴ったり宥めたり賺したりしてたが、終いには匙投げ怒って放っぽって外行っちまった……。
「……おい……ルフィ……ナミ、てめェ放っぽって先行っちまったぞ……!」
「んーー?あーーーー、うん……。」
「良いのかよ…?置いてかれたら帰れなくなるだろが。鍵はあいつが持ってんだし…。」
「あーーー……大丈夫じゃねェ?…すぐそこで待っててくれんだろーーーー。」
………………駄目だ……心此処に有らずになってやがる。
まるきし冒険少年の瞳だ……こりゃァ、長くかかるなァと溜息吐いて、諦めてナミの後を追った。
先ず動いてる方の行方確認しとかんと…。
とは言え案ずる事無く、ルフィの言った通りにナミは、店出て直ぐ左隣のバス停ベンチで座ってやがった。
背中向けて座ってるんで表情は解らない……が、恐らく予定が狂わされちまった事を相~~当~~怒ってるに違いねェ。
覚悟して近付く……夕暮れをバックに1人ブツブツブツブツ呟く声が聞えて来る……やっぱり、怒髪天を衝く勢いだな、こりゃあ。
さてどうする?傍寄るか止めとくか逡巡する……いや、恐れてる訳じゃあ無ェが。
意を決して肩叩こうとする間際、殊更甲高い声が上がった――
「そうなのよビビー!!!もうこれで10分!!あ、今1分また経ったから11分よ!?20分待って帰って来なかったら2人共置いて帰っちゃおうか思うけどどぉ思うーー!??」
――って携帯向って話してやがったのかよっっ!!!
………どうやら店出てずっっと此処でビビ相手に話してやがったらしい。
たくっっ、ちっとでも心配して損したぜっっ。
声の調子聞く限り、考えてたよりかは怒ってねェな……ま、一先ず安堵した。
ベンチの隣に座る。
一瞬だけちらりと視線を向けたが、また喋りに没頭しちまった。
――それから約10分経過。
相も変らずペチャクチャペチャクチャペチャクチャペチャクチャ……まるでテープの早回しだ。
見ていて良く口が回るもんだと感心しちまう。
どんどん夕闇が濃くなる。
…………段々、苛付いて来た。
俺が座った時分に一瞬視線を送っただけで、後は殆ど顔も見ようとせずにひたすらビビと喋り捲りだぞこいつ。
まるで隣には誰も居ないってな風だ、頗る気分が悪ィ。
「……だからねそれでねビビ!!うんそうなのもう大変よォ!!だって○○が○○で○○○○じゃない!?冗談じゃないよねェ~~~vv」
「おい、ナミ……いいかげん、電話切れよ……。」
「え!?あ!!ううん!!あれは○○○○で○○○よォ!!そうそう!!それで○○○だからァうん!!うんうん!!」
「おい……おいって…!!こっち向けよおい…!!!」
「えええーー!!?うっそ嫌だもうもうも~~ォ!!!違うってばそんなんじゃないってばもうビビったら~~vvv」
「人が話し掛けてんだから電話切れっつってっだろおいっっ!!!!」
……我慢限界に達し、遂に耳元で叫んじまった。
目をキョトンとさせてナミが見詰て来る。
ビビに断り、漸く切って折畳んでウェストポーチに仕舞う。
…………辺りにしじまが訪れた。
「………で?何なの??」
「…………何がだ?」
「余程重要な話が有ったから、切れって言ったんじゃないワケ?」
「………いや…………特に重要な話は無いっつか……」
「何あんた!?話無いクセに人が話してるの邪魔して切らせたっつうの!!?」
「っつか行儀が悪いってか…!!人が隣座ってる時に他の奴とベラベラ話すのは止めろって…!!」
「行儀が悪いィィィ!!!?――何それお説教!!?何様よあんた!!!?」
「だから説教ってより一般常識としてだなァ…!!!」
…………やべェ……この展開はかなりやべェ。
正直人の事無視すんなって言いたかっただけっつか。
だから話題も特に思い浮かばねェ。
此処は1つ常套手段として「好い天気だな」とでも言おうとして空見たら、何時の間にかどんより曇ってやがるし。
ナミはすっかり怪訝な顔して俺の事見詰てやがる。
そりゃそうだ、楽しくダベってたトコ邪魔されて、「特に話は無ェ」っつったら……………………べらぼうに怒り狂うだろうなァ………。
話題話題話題話題話題話題話題話題話題話題……畜生、何か無ェか話題???
ルフィ~~~~~お前何やってんだよ!??
早く戻って来てこの雰囲気変えてくれよ!!!
店の方にちらりと視線向け、俺は中に居るであろうルフィにひたすら「早く帰れ」と念を送り続けた………。
【その23に続】
写真の説明~、『オルゴールファンタジア』のからくり時計。
私の記憶が確かならば(BY.料理の鉄人)、15分毎に3人の妖精が建物から出て音楽が奏でられるっつう物。
順調に予定をオーバーしている。
ニュースタッドのアミューズメントを攻略し、駆け足で隣の地区『ミュージアムスタッド』へと向う。
辿り着いた時には15分のオーバー。
結局、次に予定してた『オルゴール・ファンタジア』の4時の回に間に合わず、仕方なくその前に在った『カロヨン・シンフォニカ』の方へ先に入る事にした。
『カロヨン・シンフォニカ』っつうのは鐘の博物館で、世界中から集めた約300の鐘を一堂に展示している所らしい。
で、館最大の目玉っつうのが、高さ9mも有る『カロヨン・タワー』っつうヤツらしく。
これがタイムリーにも俺達が入館した時に、物凄ェ大音量で演奏を始めた。
ぶっちゃけ煩ェの何の…3人揃って思わず唖然呆然、耳塞ぎながら聴いた。
や、塞がねェと鼓膜破れそうだって!
案内役が説明するには、17世紀のオランダ教会の鐘楼を再現した物だって事で、毎15分置きで自動演奏を行うらしい。
目の前で巨大な演奏装置が簾みたく張ったワイヤーを引張りベルを鳴らす、その度に床が振動で揺れる。
元は時報として造られた物らしい…こんだけでけェ音出しゃあ、そりゃ街中隈なく伝える事が出来んだろうよ。
演奏終了、ルフィなんかは気に入って拍手してアンコール希望したが、それは勘弁して欲しいと願った。
頭痛くなっちまう…終って暫くしても耳ん中でくわんくわん響いてた。
ナミ曰くスケジュール押している為、早々に2階まで廻って館を後にする。
出た丁度に前で、当初予定してた施設館、『オルゴール・ファンタジア』が入場始めてたんで、そのまま入口に並ぶ。
と後から「カーン!!」と鐘が鳴ったんで振り向く。
見るとさっき居た館の外壁に設置された4つの鐘が鳴っていた。
所謂からくり時計だったらしい。
オランダの鐘撞き職人男の人形が2体、カンカンカンカン交互に打ち鳴らす……時代がかってて趣き深い。
次に入館した『オルゴール・ファンタジア』っつうのはオルゴールの博物館だった。
オルゴールっつっても俺が知ってる様な、蓋開けたりネジ巻いたりして曲鳴らすっつうヤツじゃねェ。
17~20世紀の自動演奏楽器…オルゴールの御先祖様を集めて展示してある博物館っつうのだった。
入ると他の客と一緒に先ずホールの様な展示室に通されて、案内役がその中の1つを選び演奏を聴かせる。
この日聴いたのは、入って目の前の、1番ド派手で1番でっけェ『ダンスオルガン』っつう、100年前にダンスホールでの演奏用として造られた物だった。
バラの花彫ってある外観も凄ェが、内蔵した334本の笛使っての演奏が、さっき聴いたカロヨンにも負けねェくれェの大音量で驚いた。
当時は蒸気エンジンを動力に、『ブック』って言う穴だらけの本の様な物使って演奏してたらしい。
開いた穴に蒸気を吹き込み出る音で、曲を奏でるっつう仕組…だろう。
演奏が終って次は2階の展示室にゾロゾロと移動させられる。
今度は主にシリンダー使って演奏するタイプのオルゴールを集めた部屋だった。
シリンダーってのは筒型してサボテンの棘みてェなのが無数に埋め込まれた様な物で、これがブックに取って代り、次の時代に楽譜として使用されたっつう事だった。
この部屋でも展示された内の1つを選び目の前で演奏する。
1870年代にスイスで製作された物なんだそうな。
曲目は、ええと……
「ナミ、これ何て曲っつってたか?」
「賛美歌(ヒム)だって。多分、クリスマス・シーズンに合せての選曲ね。」
此処で、演奏中の回転しているシリンダーに、居る客全員、順繰りに触れさせてく時間が設けられた。
触れるとまるきしサボテンの棘みてェなチクチクした感触がする。
「すげェなー、本当にゾロの頭みたくチクチクしてやがる!」
「ってサボテンだろっつの!!!」
それにしても当時から色んな形したオルゴールが有ったもんだと感心して観回す。
一見額縁入りの絵にしか見えない物や、篭の中の鳥が囀るといった物まで…職人の腕ってのはまったく大したもんだ。
3つ目の最後の部屋では、席に座ってコンサートの様に演奏を聴く形となっていた。
今迄さんざっぱら走らされて来たもんで、席に座ってってのは非常に有難かった。
座り心地が良いもんでこのまま寝ちまいたいとも考えちまう。
客全員が席に着いた所で、案内役が舞台に立ち説明し始める。
舞台には様々な形したオルゴールが数台置かれていた。
「あの中央のピエロ人形、あれ演奏してくんねーかなー!!1番面白そーだ♪♪」
ルフィの指差す中央には、如何にもからくり人形と思しきピエロが、鉄棒でもするよなポーズで置いてあった。
…残念ながら選ばれたのはそれではなく、木造の比較的地味なデザインしたヤツだった。
ルフィが如何にも不服そうに口を尖らす。
演奏に使われたのは『ヴァイオラーノ』って言う、ヴァイオリンとピアノを同時に演奏する様な物で、80年前にアメリカで製作されたらしい。
仕組は電機モーターで楽譜である所のロールペーパーを巻き取りながらっつう事だそうだ。
案内役がコインを入れて演奏が始まった。
「所謂ジュークボックスね。」
「で、これは何て曲だ?ナミ?」
「『オー・ホーリー・ナイト』…やっぱりクリスマスソングよ。昨日お茶飲んでる時に、ホテルでも演奏されてたでしょ?」
「あー…そうだったか…?」
「あ!!俺、覚えてるぞ!!ケーキ食ってた時だろ!?」
「そうそvあの時ロビーで演奏してた内の1曲よv…ゾロも思い出した?」
「ああ……まァ……覚えてるような……ないような……だな。」
「……っとに甲斐の無い奴なんだから!」
演奏が終了し、これにて全てのプログラムも終了となった。
結構楽しめた……案内が付いて説明してくツアー形式ってのは珍しいし、新鮮に思える。
ホールを出て階段を下る、良く出来たもんで下はオルゴールの売店だ。
土産用の、見知った形したオルゴールが整然と陳列されている。
どれもこれも女の好みそうなファンシーなデザインだ。
ナミが目を輝かせて引っ掛かる、続いてルフィも。
あちこち置いてあるオルゴールのネジを回して遊び出す。
「……おい、この後にも予定有んじゃねェのかよ?」
夢中になってたナミに耳打ちする…したら漸く我に返ってルフィ引き摺り外に出た。
――が、通りに出た所で更なる障害に遭遇したっつうか。
『フィギュアヘッド』っつう、海と航海をテーマにした海外輸入雑貨店にぶち当たっちまった。
何となく薄暗い店内に所狭しと置かれた――実際店外まで溢れてやがったし――フィギュアヘッド型したお守り、サーベル、レプリカ火縄式銃、ボトルシップ、羅針盤……こんなルフィのツボをダイレクトに突く物堆く積み上げて有っちゃあ……。
予想通りルフィは瞬く間に店入ってそのまま金縛りの地蔵化しやがった。
ナミが何とか引き摺り出そうと、殴ったり蹴ったり宥めたり賺したりしてたが、終いには匙投げ怒って放っぽって外行っちまった……。
「……おい……ルフィ……ナミ、てめェ放っぽって先行っちまったぞ……!」
「んーー?あーーーー、うん……。」
「良いのかよ…?置いてかれたら帰れなくなるだろが。鍵はあいつが持ってんだし…。」
「あーーー……大丈夫じゃねェ?…すぐそこで待っててくれんだろーーーー。」
………………駄目だ……心此処に有らずになってやがる。
まるきし冒険少年の瞳だ……こりゃァ、長くかかるなァと溜息吐いて、諦めてナミの後を追った。
先ず動いてる方の行方確認しとかんと…。
とは言え案ずる事無く、ルフィの言った通りにナミは、店出て直ぐ左隣のバス停ベンチで座ってやがった。
背中向けて座ってるんで表情は解らない……が、恐らく予定が狂わされちまった事を相~~当~~怒ってるに違いねェ。
覚悟して近付く……夕暮れをバックに1人ブツブツブツブツ呟く声が聞えて来る……やっぱり、怒髪天を衝く勢いだな、こりゃあ。
さてどうする?傍寄るか止めとくか逡巡する……いや、恐れてる訳じゃあ無ェが。
意を決して肩叩こうとする間際、殊更甲高い声が上がった――
「そうなのよビビー!!!もうこれで10分!!あ、今1分また経ったから11分よ!?20分待って帰って来なかったら2人共置いて帰っちゃおうか思うけどどぉ思うーー!??」
――って携帯向って話してやがったのかよっっ!!!
………どうやら店出てずっっと此処でビビ相手に話してやがったらしい。
たくっっ、ちっとでも心配して損したぜっっ。
声の調子聞く限り、考えてたよりかは怒ってねェな……ま、一先ず安堵した。
ベンチの隣に座る。
一瞬だけちらりと視線を向けたが、また喋りに没頭しちまった。
――それから約10分経過。
相も変らずペチャクチャペチャクチャペチャクチャペチャクチャ……まるでテープの早回しだ。
見ていて良く口が回るもんだと感心しちまう。
どんどん夕闇が濃くなる。
…………段々、苛付いて来た。
俺が座った時分に一瞬視線を送っただけで、後は殆ど顔も見ようとせずにひたすらビビと喋り捲りだぞこいつ。
まるで隣には誰も居ないってな風だ、頗る気分が悪ィ。
「……だからねそれでねビビ!!うんそうなのもう大変よォ!!だって○○が○○で○○○○じゃない!?冗談じゃないよねェ~~~vv」
「おい、ナミ……いいかげん、電話切れよ……。」
「え!?あ!!ううん!!あれは○○○○で○○○よォ!!そうそう!!それで○○○だからァうん!!うんうん!!」
「おい……おいって…!!こっち向けよおい…!!!」
「えええーー!!?うっそ嫌だもうもうも~~ォ!!!違うってばそんなんじゃないってばもうビビったら~~vvv」
「人が話し掛けてんだから電話切れっつってっだろおいっっ!!!!」
……我慢限界に達し、遂に耳元で叫んじまった。
目をキョトンとさせてナミが見詰て来る。
ビビに断り、漸く切って折畳んでウェストポーチに仕舞う。
…………辺りにしじまが訪れた。
「………で?何なの??」
「…………何がだ?」
「余程重要な話が有ったから、切れって言ったんじゃないワケ?」
「………いや…………特に重要な話は無いっつか……」
「何あんた!?話無いクセに人が話してるの邪魔して切らせたっつうの!!?」
「っつか行儀が悪いってか…!!人が隣座ってる時に他の奴とベラベラ話すのは止めろって…!!」
「行儀が悪いィィィ!!!?――何それお説教!!?何様よあんた!!!?」
「だから説教ってより一般常識としてだなァ…!!!」
…………やべェ……この展開はかなりやべェ。
正直人の事無視すんなって言いたかっただけっつか。
だから話題も特に思い浮かばねェ。
此処は1つ常套手段として「好い天気だな」とでも言おうとして空見たら、何時の間にかどんより曇ってやがるし。
ナミはすっかり怪訝な顔して俺の事見詰てやがる。
そりゃそうだ、楽しくダベってたトコ邪魔されて、「特に話は無ェ」っつったら……………………べらぼうに怒り狂うだろうなァ………。
話題話題話題話題話題話題話題話題話題話題……畜生、何か無ェか話題???
ルフィ~~~~~お前何やってんだよ!??
早く戻って来てこの雰囲気変えてくれよ!!!
店の方にちらりと視線向け、俺は中に居るであろうルフィにひたすら「早く帰れ」と念を送り続けた………。
【その23に続】
写真の説明~、『オルゴールファンタジア』のからくり時計。
私の記憶が確かならば(BY.料理の鉄人)、15分毎に3人の妖精が建物から出て音楽が奏でられるっつう物。