【前回の続きです。】
重ねて運の悪い事に、誰もこのバス停に立ち寄ろうとはしなかったし、バスも来なかった。
反対側の『出入国口方面行き』バス停には結構人が寄ったりバスも来たりするんだが、こっちの『港街方面行き』には何故か来ねェんだ。
結果として俺とナミ2人だけ…妙に気まずい雰囲気ん中で、黙ってベンチに隣合っていた。
ルフィは未だ戻って来ねェ――何やってんだよ!?そんなに気に入った物が有んなら店ごと買占めろよっっ!!
「……で?結局話は有る訳無い訳??無いならビビと話の続きしたいんだけど。」
「ああいや有る事は有るんだが…」
「じゃ、さっさと言って。」
「あーー……ええと…………あ!見ろよ!良い景色じゃねェか!」
左を向いて指差す、そこには昨日写真を撮った、背高ツリーと教会と塔の3点セットになって重なり見えていた。
「へェ、こっからだと3つ共纏めて観られるんだなァ~、知らなかったぜ♪」
「……そうね。」
「そろそろ点灯時間だろ!?此処座って待ってりゃァ、良い写真撮れんじゃねェか!?」
「………………点灯まで未だ40分は有るわよ?それまでこんな寒い中、座って待ってるの?」
「え?ああ…………そりゃあ……嫌だな。」
「それに確かに観覧席としてはベストだけど、撮影するには周りの街路樹が邪魔してて良くないわよ。」
「ああ…………そう……だな。」
ナミの言う通り、教会の在る広場の周囲には街路樹が植わってて、此処から全景を入れる為には少し邪魔になっていた。
また会話が途切れ、静寂が降りて来る。
「……あ~とその…………予定狂って残念だったな。」
「ん?まァ…しょうがないわよ。明日って日も有るし……あんだけ喜んじゃってるトコ、邪魔して無理矢理引き摺って連れてくのもねェ。」
……って此処まで散々人引き摺って来といて今更とは思ったが、話拗らすのも何なので茶々を入れずに置いた。
「ギヤマン……何つったか?何時に閉館しちまうんだ?」
「『ギヤマンミュージアム』よ。8:15に閉館だって。」
「じゃ、未だ全然余裕じゃねェか。」
「駄目よ。そしたら他に予定してんのどんどん狂って来ちゃうもの。この後は飛ばして、カナルクルーザーで場内1周しようと思ってる。」
「クルーザー?」
「天気がね……どうも思ったより早く悪くなって来てんの……恐らく7時過ぎたら一気に荒れるわ。だからそれまでに夜の運河を1周しときたいのよ。せっかく今年からナイトクルーズ用に橋や護岸をライトアップしてんのに、観ずに帰っちゃったら勿体無いでしょ?」
空を仰ぎ見る……ナミの言う通り、一面分厚い雨雲が覆っていた。
「確かに……あんな天気好かったのに、何時の間にか曇ってるな。」
――まったく、大した見立てだよ、こいつのは。
「ルフィが戻って来たら即カナルクルーザーに乗船。その後『楼蘭』で夕食。……こんなトコかな。」
「雨って事は、今夜の花火は中止だな。」
「それはどうかなァ。雲の動きを見る限り、通り雨っぽいし。だとしたらやるかも。」
「悪天候じゃ普通はやらねェだろうよ。」
「此処の花火は余程じゃなきゃ中止にならないんだって。去年なんか2回位しか、なんなかったらしいわ。」
「……ってそりゃ随分根性有り過ぎだろうがっっ。」
「周り中海で、民家も近くに無いからね。……そだ!!」
いきなりナミがベンチから立ち上がった。
「どうした??」
「近くに綺麗な景色観られるベンチ有るんだけど……行ってみない?ゾロ!」
「…………は?」
返事も聞かずにナミは、そのままルフィの居る店に入ってった。
……と思ったら、また直ぐ出て戻って来やがる。
「ルフィに言っといたわ。私達が戻るまでそこに大人しく居なさいよって。――行こ!!」
「……大丈夫なのか?1人にしといて。」
「大丈夫じゃない?食べ物屋じゃあないんだしv」
にっこり笑って言ったその台詞に、ああそりゃそうだなと納得する。
そのままベンチの後の、尖った屋根した赤煉瓦の建物入ってくんで、後を追った。
これは……何の建物だ?……見張所か??
「水門、『ウォーターゲート~スネーク~』だって。」
建物ん中にはベンチが並べられ、四方2ヵ所づつ窓の様に開いてい、そこから周囲を眺められる様になっていた。
ナミが海側を向くベンチの1つに座る。
それに倣い、隣に腰を下ろした。
前に開いた窓からは、イルミが灯り出した港街、そして見渡す限りの海。
「ね?見晴らし良いでしょ?」
「ああ……こりゃあ、絶景だな……。」
吹いてる海風が、手前に並んだヨットのマストを揺らす。
揺れる度にマストは、物悲しい金属音を響かせる。
辛うじて山の端に残ってた朱色が消えると、空と海はすっかり濃紺に染められた。
「天気が好ければ、最高の夕暮れが観られたんだろうけどねェ。」
「いや、充分綺麗だって。」
ポツポツと点いた街の照明が、海に反射している。
見下ろした水面に、もう1つの街が映って揺れていた。
「良い眺めだ。まったく都合の良い場所にベンチが置いてあったもんだ。」
「元より意図して置かれてんだと思うわ。此処だけじゃなく、他に置かれたベンチの多くも。今迄景色良いから撮ろうと思った場所には、必ずベンチが置かれてたし。」
「そうだったか?ちっとも気付かなかったな。」
「『良い景色ですよォ、ちょっと座って休んでかれませんかァ?』……ひょっとしたらそんなメッセージが篭められてたのかもね。」
「『急がば回れ』、『そんなに急いで何になる?』……っつう事かねェ。」
「『重い荷物を置くのにどうぞ』とか、『撮影用にどうぞ』とか、『カップルの憩いの場にどうぞ』とか…。」
「確かに此処なんか良いデートスポットだよな。」
「なんなら私達も、ルフィ放っぽってデートでもしちゃおうか?」
――ブッッ…!!!!
「……何でそこで噴出すのよ?失礼ね。」
「い!…いきなりそんな突拍子も無ェ事てめェが言うからっっっ!!!!――ってかマジかよ今の!!!?」
「冗談よ。」
――ゴン!!!!
………こ……この女っっ……。
「噴いたりベンチに頭ぶつけたり、落ち着き無いわねェ、さっきから。」
「煩ェ!!!!てめェが変な事ばっか言って来るからだろおがっっ!!!!!」
「ああゴメン、言い方悪かったわね。かなり本気に近い冗談って事で。」
「本気に近い冗談!??何だそりゃ!!?どっちかはっきりしろよっっ!!!」
「だから私、ゾロの事好きだし。デートする分には構わないっつってんの。」
――ガターン!!!!!
「…って今度はずり落ちるし。」
「……ル…ル…ル……!!!」
「………る???」
「…ルフィが好きだったんじゃねェのかてめェはっっ!!??」
「勿論ルフィも好き。」
――ゴガン!!!!!!
「さっきからアメリカンコミックショーでも観てる気分で楽しいわァ。…大丈夫、頭?煉瓦にぶつけちゃ痛いでしょ?」
「………結局てめェは、どういう意味で好きっつってんだっっ!!!?」
「ゾロも、ルフィも、ウソップも、サンジ君も、皆好きだって事よ、要するに。」
「………何でェ、ただの仲間としての友愛か。」
「仲間として付き合いたくない奴と、恋人になんかなりたいとは思わないけど?……正直、4人の中で1人でも『付き合ってくれ』って言われてたら……多分、そいつと付き合ってたかもしれないし。」
「…だったら眉毛と付き合ってやればよかったじゃねェか。暇見つけちゃあモーションかけてたんだからよ。」
「もうちょい重めに迫ってくれたらそうしたかもね。……でもやっぱり付き合わなかったかも。特に必要感じなかったし……私、仲間の中でのそれぞれが好きだったから。……ゾロ、あんただって、もし私が『付き合って』って言ったら……付き合ってくれてた?」
「それは…………断ったかもな。」
「ほら、一緒!………ま、そうしても何時か結局はバラバラになった訳だけどね…。」
ずり落ちたベンチに掛け直す。
横から見るナミは、ただぼんやりと海を観ているだけだ。
「世界一周するんだってな、ルフィの奴。あいつらしいと言うか。」
「そ!『20歳までは金を出してやるから自由に生きろ。20歳になったら生き方見付けて独立しろ。』……お父さんのこの教えに従い、20歳まで自由に世界を廻って遊んで来るんだってさ!」
「…って事は、20歳になったら帰って来る訳だ。」
「帰って来ないんじゃな~~い?お兄さんなんかもそう言って、結局帰って来なかったんだし。」
「放浪癖は血筋か。」
「他人事みたいに言って、あんただって似た様な道歩むんじゃないの?あ~んな北の果ての学校行っちゃうんだからさ!」
「しょうがねェだろ?倒してェ相手がそこに居るんだからよ!」
「ああ、くいなさんだっけ?」
「何でてめェがそいつの事知ってんだよっっ!!?」
「ルフィから聞いた。非公式の試合とはいえ、あのゾロが唯一負けた女だって。」
……………あんの馬鹿猿、端から知る度喋りやがってっっ…!!!
「傍に居てくれるのは、ウソップとサンジ君だけか。……あ~あ!本当にサンジ君と付き合っちゃおうかなァ!それとも他にブルジョアな男見付けて玉の輿狙うとか!」
「止めとけよ。んな理由からじゃ、相手の奴に失礼だ。」
「解ってる。する訳無いじゃない。馬鹿ね。」
振り向かずに、真直ぐ海を観たまま、ナミが呟く。
「あんた達2人共、迷子になって一生戻って来なきゃいいんだ。」
外は夜の闇にすっぽり包まれちまってた。
水門に灯った照明だけが煌々と、辺りから浮き上っている。
「……………何でてめェは………」
さっきから腹ん中に溜めてたものが口をつきそうになる。
「…何でてめェは………!」
「ゾロ~~~~~!!!!ナミ~~~~~!!!!ど~こ~に~行ったァァァ~~~!!!??」
「……ルフィ!!」
「…………あの馬鹿、今頃…!!!」
すっかり存在を忘れかけてた頃に、ルフィは戻って来た。
水門内のベンチに居た俺達を見付け、嬉々として走って来やがる。
手には刃渡り数10cmの短剣型ナイフが握られていた。
「見ろよ!!!このちょーかっけェ~~短剣!!!!」
ブンブンとチャンバラ劇宜しく回転しながら斬り付ける真似をする。
そして空に衝き立て片膝着いて決めのポーズ――って何のポーズだよそりゃ!?
「あんたまたそんな無駄遣いして!」
「無駄遣いじゃねェよ!!2,000円もしなかったんだからな!!」
「…つまり、2,000円近くは使ったんだ?」
「うっっ…あ、えっと…。」
柄に飾りのゴテゴテ付いた見るからに玩具、精々ペーパーナイフだな。
「ゾロが好きそうな長剣も有ったんだぜェ~♪も、すっげカッコ良いんだ!!――メチャクチャ高ェけど。」
「…玩具の刀なんかに興味持つかよ、俺が。」
玩具とはいえ、エモノを手に入れたルフィは有頂天だ。
俺の皮肉もナミの小言も全く通じねェ。
悩みの一切無ェ顔で、ひたすら剣の舞に興じてやがった。
ちなみにこれは後日談だが……このルフィの持っていたナイフが長崎空港でのチェックに引っ掛かり、お陰で帰りの飛行機の離陸が10分遅れる事となった――
【その24に続】
……キャラの人間関係はフィクションですって事で(汗)…まぁ、あんま気に懸けないで頂きたいです。(苦笑)
それにしても恥しい話になったもんだ。(焦笑)
写真の説明~、『ウォーターゲート~スネーク~』を写した物…中にはベンチが置かれてて、海を観るにはベストスポットですv
ハウステンボス来ると、大概の人はベンチの多さに驚くんではないかと…。
重ねて運の悪い事に、誰もこのバス停に立ち寄ろうとはしなかったし、バスも来なかった。
反対側の『出入国口方面行き』バス停には結構人が寄ったりバスも来たりするんだが、こっちの『港街方面行き』には何故か来ねェんだ。
結果として俺とナミ2人だけ…妙に気まずい雰囲気ん中で、黙ってベンチに隣合っていた。
ルフィは未だ戻って来ねェ――何やってんだよ!?そんなに気に入った物が有んなら店ごと買占めろよっっ!!
「……で?結局話は有る訳無い訳??無いならビビと話の続きしたいんだけど。」
「ああいや有る事は有るんだが…」
「じゃ、さっさと言って。」
「あーー……ええと…………あ!見ろよ!良い景色じゃねェか!」
左を向いて指差す、そこには昨日写真を撮った、背高ツリーと教会と塔の3点セットになって重なり見えていた。
「へェ、こっからだと3つ共纏めて観られるんだなァ~、知らなかったぜ♪」
「……そうね。」
「そろそろ点灯時間だろ!?此処座って待ってりゃァ、良い写真撮れんじゃねェか!?」
「………………点灯まで未だ40分は有るわよ?それまでこんな寒い中、座って待ってるの?」
「え?ああ…………そりゃあ……嫌だな。」
「それに確かに観覧席としてはベストだけど、撮影するには周りの街路樹が邪魔してて良くないわよ。」
「ああ…………そう……だな。」
ナミの言う通り、教会の在る広場の周囲には街路樹が植わってて、此処から全景を入れる為には少し邪魔になっていた。
また会話が途切れ、静寂が降りて来る。
「……あ~とその…………予定狂って残念だったな。」
「ん?まァ…しょうがないわよ。明日って日も有るし……あんだけ喜んじゃってるトコ、邪魔して無理矢理引き摺って連れてくのもねェ。」
……って此処まで散々人引き摺って来といて今更とは思ったが、話拗らすのも何なので茶々を入れずに置いた。
「ギヤマン……何つったか?何時に閉館しちまうんだ?」
「『ギヤマンミュージアム』よ。8:15に閉館だって。」
「じゃ、未だ全然余裕じゃねェか。」
「駄目よ。そしたら他に予定してんのどんどん狂って来ちゃうもの。この後は飛ばして、カナルクルーザーで場内1周しようと思ってる。」
「クルーザー?」
「天気がね……どうも思ったより早く悪くなって来てんの……恐らく7時過ぎたら一気に荒れるわ。だからそれまでに夜の運河を1周しときたいのよ。せっかく今年からナイトクルーズ用に橋や護岸をライトアップしてんのに、観ずに帰っちゃったら勿体無いでしょ?」
空を仰ぎ見る……ナミの言う通り、一面分厚い雨雲が覆っていた。
「確かに……あんな天気好かったのに、何時の間にか曇ってるな。」
――まったく、大した見立てだよ、こいつのは。
「ルフィが戻って来たら即カナルクルーザーに乗船。その後『楼蘭』で夕食。……こんなトコかな。」
「雨って事は、今夜の花火は中止だな。」
「それはどうかなァ。雲の動きを見る限り、通り雨っぽいし。だとしたらやるかも。」
「悪天候じゃ普通はやらねェだろうよ。」
「此処の花火は余程じゃなきゃ中止にならないんだって。去年なんか2回位しか、なんなかったらしいわ。」
「……ってそりゃ随分根性有り過ぎだろうがっっ。」
「周り中海で、民家も近くに無いからね。……そだ!!」
いきなりナミがベンチから立ち上がった。
「どうした??」
「近くに綺麗な景色観られるベンチ有るんだけど……行ってみない?ゾロ!」
「…………は?」
返事も聞かずにナミは、そのままルフィの居る店に入ってった。
……と思ったら、また直ぐ出て戻って来やがる。
「ルフィに言っといたわ。私達が戻るまでそこに大人しく居なさいよって。――行こ!!」
「……大丈夫なのか?1人にしといて。」
「大丈夫じゃない?食べ物屋じゃあないんだしv」
にっこり笑って言ったその台詞に、ああそりゃそうだなと納得する。
そのままベンチの後の、尖った屋根した赤煉瓦の建物入ってくんで、後を追った。
これは……何の建物だ?……見張所か??
「水門、『ウォーターゲート~スネーク~』だって。」
建物ん中にはベンチが並べられ、四方2ヵ所づつ窓の様に開いてい、そこから周囲を眺められる様になっていた。
ナミが海側を向くベンチの1つに座る。
それに倣い、隣に腰を下ろした。
前に開いた窓からは、イルミが灯り出した港街、そして見渡す限りの海。
「ね?見晴らし良いでしょ?」
「ああ……こりゃあ、絶景だな……。」
吹いてる海風が、手前に並んだヨットのマストを揺らす。
揺れる度にマストは、物悲しい金属音を響かせる。
辛うじて山の端に残ってた朱色が消えると、空と海はすっかり濃紺に染められた。
「天気が好ければ、最高の夕暮れが観られたんだろうけどねェ。」
「いや、充分綺麗だって。」
ポツポツと点いた街の照明が、海に反射している。
見下ろした水面に、もう1つの街が映って揺れていた。
「良い眺めだ。まったく都合の良い場所にベンチが置いてあったもんだ。」
「元より意図して置かれてんだと思うわ。此処だけじゃなく、他に置かれたベンチの多くも。今迄景色良いから撮ろうと思った場所には、必ずベンチが置かれてたし。」
「そうだったか?ちっとも気付かなかったな。」
「『良い景色ですよォ、ちょっと座って休んでかれませんかァ?』……ひょっとしたらそんなメッセージが篭められてたのかもね。」
「『急がば回れ』、『そんなに急いで何になる?』……っつう事かねェ。」
「『重い荷物を置くのにどうぞ』とか、『撮影用にどうぞ』とか、『カップルの憩いの場にどうぞ』とか…。」
「確かに此処なんか良いデートスポットだよな。」
「なんなら私達も、ルフィ放っぽってデートでもしちゃおうか?」
――ブッッ…!!!!
「……何でそこで噴出すのよ?失礼ね。」
「い!…いきなりそんな突拍子も無ェ事てめェが言うからっっっ!!!!――ってかマジかよ今の!!!?」
「冗談よ。」
――ゴン!!!!
………こ……この女っっ……。
「噴いたりベンチに頭ぶつけたり、落ち着き無いわねェ、さっきから。」
「煩ェ!!!!てめェが変な事ばっか言って来るからだろおがっっ!!!!!」
「ああゴメン、言い方悪かったわね。かなり本気に近い冗談って事で。」
「本気に近い冗談!??何だそりゃ!!?どっちかはっきりしろよっっ!!!」
「だから私、ゾロの事好きだし。デートする分には構わないっつってんの。」
――ガターン!!!!!
「…って今度はずり落ちるし。」
「……ル…ル…ル……!!!」
「………る???」
「…ルフィが好きだったんじゃねェのかてめェはっっ!!??」
「勿論ルフィも好き。」
――ゴガン!!!!!!
「さっきからアメリカンコミックショーでも観てる気分で楽しいわァ。…大丈夫、頭?煉瓦にぶつけちゃ痛いでしょ?」
「………結局てめェは、どういう意味で好きっつってんだっっ!!!?」
「ゾロも、ルフィも、ウソップも、サンジ君も、皆好きだって事よ、要するに。」
「………何でェ、ただの仲間としての友愛か。」
「仲間として付き合いたくない奴と、恋人になんかなりたいとは思わないけど?……正直、4人の中で1人でも『付き合ってくれ』って言われてたら……多分、そいつと付き合ってたかもしれないし。」
「…だったら眉毛と付き合ってやればよかったじゃねェか。暇見つけちゃあモーションかけてたんだからよ。」
「もうちょい重めに迫ってくれたらそうしたかもね。……でもやっぱり付き合わなかったかも。特に必要感じなかったし……私、仲間の中でのそれぞれが好きだったから。……ゾロ、あんただって、もし私が『付き合って』って言ったら……付き合ってくれてた?」
「それは…………断ったかもな。」
「ほら、一緒!………ま、そうしても何時か結局はバラバラになった訳だけどね…。」
ずり落ちたベンチに掛け直す。
横から見るナミは、ただぼんやりと海を観ているだけだ。
「世界一周するんだってな、ルフィの奴。あいつらしいと言うか。」
「そ!『20歳までは金を出してやるから自由に生きろ。20歳になったら生き方見付けて独立しろ。』……お父さんのこの教えに従い、20歳まで自由に世界を廻って遊んで来るんだってさ!」
「…って事は、20歳になったら帰って来る訳だ。」
「帰って来ないんじゃな~~い?お兄さんなんかもそう言って、結局帰って来なかったんだし。」
「放浪癖は血筋か。」
「他人事みたいに言って、あんただって似た様な道歩むんじゃないの?あ~んな北の果ての学校行っちゃうんだからさ!」
「しょうがねェだろ?倒してェ相手がそこに居るんだからよ!」
「ああ、くいなさんだっけ?」
「何でてめェがそいつの事知ってんだよっっ!!?」
「ルフィから聞いた。非公式の試合とはいえ、あのゾロが唯一負けた女だって。」
……………あんの馬鹿猿、端から知る度喋りやがってっっ…!!!
「傍に居てくれるのは、ウソップとサンジ君だけか。……あ~あ!本当にサンジ君と付き合っちゃおうかなァ!それとも他にブルジョアな男見付けて玉の輿狙うとか!」
「止めとけよ。んな理由からじゃ、相手の奴に失礼だ。」
「解ってる。する訳無いじゃない。馬鹿ね。」
振り向かずに、真直ぐ海を観たまま、ナミが呟く。
「あんた達2人共、迷子になって一生戻って来なきゃいいんだ。」
外は夜の闇にすっぽり包まれちまってた。
水門に灯った照明だけが煌々と、辺りから浮き上っている。
「……………何でてめェは………」
さっきから腹ん中に溜めてたものが口をつきそうになる。
「…何でてめェは………!」
「ゾロ~~~~~!!!!ナミ~~~~~!!!!ど~こ~に~行ったァァァ~~~!!!??」
「……ルフィ!!」
「…………あの馬鹿、今頃…!!!」
すっかり存在を忘れかけてた頃に、ルフィは戻って来た。
水門内のベンチに居た俺達を見付け、嬉々として走って来やがる。
手には刃渡り数10cmの短剣型ナイフが握られていた。
「見ろよ!!!このちょーかっけェ~~短剣!!!!」
ブンブンとチャンバラ劇宜しく回転しながら斬り付ける真似をする。
そして空に衝き立て片膝着いて決めのポーズ――って何のポーズだよそりゃ!?
「あんたまたそんな無駄遣いして!」
「無駄遣いじゃねェよ!!2,000円もしなかったんだからな!!」
「…つまり、2,000円近くは使ったんだ?」
「うっっ…あ、えっと…。」
柄に飾りのゴテゴテ付いた見るからに玩具、精々ペーパーナイフだな。
「ゾロが好きそうな長剣も有ったんだぜェ~♪も、すっげカッコ良いんだ!!――メチャクチャ高ェけど。」
「…玩具の刀なんかに興味持つかよ、俺が。」
玩具とはいえ、エモノを手に入れたルフィは有頂天だ。
俺の皮肉もナミの小言も全く通じねェ。
悩みの一切無ェ顔で、ひたすら剣の舞に興じてやがった。
ちなみにこれは後日談だが……このルフィの持っていたナイフが長崎空港でのチェックに引っ掛かり、お陰で帰りの飛行機の離陸が10分遅れる事となった――
【その24に続】
……キャラの人間関係はフィクションですって事で(汗)…まぁ、あんま気に懸けないで頂きたいです。(苦笑)
それにしても恥しい話になったもんだ。(焦笑)
写真の説明~、『ウォーターゲート~スネーク~』を写した物…中にはベンチが置かれてて、海を観るにはベストスポットですv
ハウステンボス来ると、大概の人はベンチの多さに驚くんではないかと…。