【前回の続きです。】
「予想通りとはいえ、一気に降って来たわねェ。」
雨が盛大に湖へと降り注がれる。
湖面に引切り無しに波紋が浮ぶ。
窓越しにそれを見詰めていたナミが、如何にも残念そうに溜息を吐いた。
「まるで真夏の夕立。ひょっとして雷まで鳴るかも。」
「幾ら何でもこの時季に雷は無ェだろ。」
―――ッッ…ドォォォォ……ン……!!!!
「―って本当に鳴りやがったァァァーー!!!!」
「嫌だァ!!!ピカッて光ったァァァーー!!!!」
ザブザブ音を立てて降る雨、闇を劈く雷光、雷鳴…こりゃ本格的に嵐の様相っつか。
「…大丈夫かしら?万が一此処に落ちて停電とか…。」
「そりゃ無ェだろ。落ちるなら恐らくあの塔にだ。」
「それもそうね。どう見ても避雷針はあれよねv」
なんて、呑気に窓寄っかかってナミと談笑してた直ぐ後だ。
突然、フッ……と灯りが消え、真っ暗になっちまった――
「ほ、本当に停電しやがったァァァ~~!!!?」
「い~~やァ~~~!!!!!誰か蝋燭懐中電灯早くゥゥゥ~~~!!!!!!」
「うはははははははははははは♪なんちゃってェ~~♪ビビったかビビったか!?うははははははははははははははは♪」
玄関からルフィが馬鹿笑いしながら入って来た――右手にはキータッグをしっかり握り締めて。
「うははははははははははははははは♪……どうしたァ2人とも??んな恐い顔して??」
――げし!!げし!!げし!!げし…!!
「ちょっっ!!待っ!!ナミ!!す!すびばせん!!もう!!もうしばぜん…!!から…ぶっっ!ぐえェ!!!止め!!足ふみ止め…!!!」
「うっさァァい!!!!まったくあんたは!!あんたは!!あんたって人はァァ!!!やって!!良い事と!!悪い事の!!区別を!!いいかげんに!!覚えろと!!何度言えば!!解るのォーー!!!?」
――げし!!げし!!げし!!げし…!!
「………ま、馬鹿は死ななきゃ治らんっつうからな。」
雨は間断無く降り続ける。
8時を回っても、勢いが沈静化する気配さえ見えなかった。
「こりゃあ夜のショーは全部中止だな…。」
「えええーーー!!?花火中止しちまうのかァーーー!!!?」
「未だ判んないわよ!!雲が激しく動いてるし、一旦は上がるかもしれない。」
諦め付かねェナミが、開け放した窓から、空をじいっと凝視している。
屋根伝って落ちる雨水で、バルコニーまでびしょ濡れだ。
…雨風が部屋ん中まで吹き込んで寒いから、早いトコ窓閉めて欲しいんだが。
「『ゴスペルライブショー』、昨夜観といて正解だったなァ。…今日来て明日帰んなくちゃいけないお客さん、可哀想に…。」
「そうだな!!観といてラッキーだったよな俺達♪コンサートは観れなかったけどな♪」
「……誰のせいで観られなかった思ってる訳…ルゥ~~フィ~~??」
「あ、やべっっ。」
「藪から蛇突いて出しやがったな、ルフィ。」
「で、でもこんだけ降ったら花火の時間までに水尽きちまって止むかもな!うん!!」
「天の水瓶は利○川ダムみたく簡単に尽きやしねェと思うがな。」
「もし止まなくても、余程の荒天でない限りやるわよ!此処の花火は1年に2回しか中止になんなかったってんだから!!」
「へェ~~2回だけ~~!?根性有んなァ~~!!」
「その2回の内に今日が当ったかもしんねェじゃねェか。流石にこんな雨中でやったら花火湿気ちまうよ。残念だが諦めって事で……俺、風呂入って来るわ!」
「ちょっとォーー!!未だ判んないでしょォーー!?」
「そうだゾロ!!あきらめたら人生そこで終りだ!!」
「『人生諦めが肝心』とも言うぜ?…って訳で入って来るわ!1時間もしたら風呂から上がっから、ほうじ茶でも用意しといてくれよナミ!」
「良いけど……ルフィは何が飲みたい?」
「俺はミルク紅茶が飲みてェェ!!!」
「じゃ間を取って珈琲ね。」
「「だから何の間だよそりゃ!??」」
鼻歌交じりで体を洗い、湯船に浸かる。
冷えた肌にじわじわピリピリ沁みて堪んねェ~、やっぱ1日の〆は風呂だァな。
伸ばした背筋からペキパキポキと音がした。
然もありなん、昨日から引き摺られ通しの疲労溜り捲りだからなァ。
ナミには悪ィが『恵の雨』ってか、正直降ってくれて助かった。
いっそ明日の朝まで降り続けてくれねェもんか。
残り1日、出来れば朝寝がしてェ…せっかくのチェックアウト1時、有効に活用しねェと損だと思うしな。
まァ今夜はどうやら早寝が出来そうだ、雨様々、まったく有難ェ。
湯気が風呂場いっぱい立ち籠めてて眠りを誘う。
既に瞼も重く、大欠伸をしたその時だった。
――ドドドン!!ドドドドン!!
風呂場の硝子戸が激しく叩かれる。
驚いて振り向いたそこには、ルフィとナミのシルエットが――っていきなり何だよっっ!!?
――ドドドドドン!!ドドドン!!
「ゾロ!!朗報よ!!!」
「やったぞ!!!雨が止んだ!!!」
「それでフロントに電話して問合せたら予定通りやるって!!後5分!!早く上がって!!!」
「………マ!マジかよっっ…!!?」
「おお!!大マジだ!!きせきが起きたんだ!!!」
…………奇跡っつうか、こいつらの執念雲をも通すっつか……どっちにしろ俺にとっちゃ悲報だよ……。
湯船ん中で天を見上げる。
「兎に角早く出て来て!!!後5分して出なかったら中入ってって引き摺り出すわよ!!!」
――ぶっっ!!……ちょっっ!?待てっっ!!!
「お!!?後4分だ!!!4分したらここ開けっからな!!!」
「馬鹿止めろ!!!――そこ鍵閉めてねェんだからなっっ!!!ってかてめェらそこどけ!!!居たらむしろ出らんねェだろがっっ!!!」
今にも扉開けそうな気配が伝わって来る。
俺は焦って取っ手を押えた――
昨夜程ではないが、花火会場には大勢の客が詰掛けていた。
こいつらもルフィやナミ同様、『此処の花火は殆ど中止になった事がない』っつう噂信じて、今迄待っていたのかねェ?
だとしたら偉いっつかご苦労さんってトコだな。
花火会場の広場は、さっきまで降ってた雨のお陰で水浸しだった。
そこに照明が反射して光ってて結構綺麗だ。
開演を伝えるアナウンスが響き、曇って星の見えない夜空にレーザーの光が映った。
ドン!!ドォォン…!!!とイルミの点された帆船バックに、花火が打上げられてく。
レーザーの描く波ん中、光が四方八方に飛び散ってった。
「うはは♪♪きれーだなァ~~~~~♪♪」
「中止にならなくて良かったァ~~~~♪」
「気のせいか昨夜の花火よりきれーに観えるよなァ~~♪」
「言われてみればそうねェ……曇った空に光が反射して映り込んでるからじゃない?」
「成る程、天上の巨大なスクリーンって訳か。」
「やっぱ花火は良いよなァァ~~~♪」
「しかし考えてみれば昨夜も同じの観てる訳だし…何度も観なくてもなァ…。」
「良いの!!!花火は何度観ても飽きないんだから!!!」
空高くに打上げられた華が開く。
港街に光が降りしきる。
……そりゃ…まァ…1度や2度で飽きるもんじゃねェとは俺も…思う。
「ねね!海面見て!!花火が映ってる!!…まるで海中でも花火打上げてるみたいで素敵ねェ…v」
「おお~!!本当だ!!海中でも花火大会やってるみてェだな♪♪」
「へェ…反射して中々綺麗だな。」
「まるで俺が買った絵みてーだな♪」
「…絵?」
「エッシャーの絵だ。1枚の絵に3つの世界が在るヤツ。」
「ああ、あの、木と水面浮ぶ枯葉と水中の魚を描いて、3つの世界を同時に表した絵ね。」
「実はあの海ん中にもおんなじ世界が広がってたりして、海ん中入って行けたりしそうな…そんな気がしねーか??」
「馬ァ鹿!カナヅチが入ったら溺れるだけだ。」
「まるで『鏡の中のアリス』ね。……でも、ルフィらしい発想v」
夜の暗い海面がまるで鏡の様に、街の灯と花火とを反射させている。
確かにルフィの言う通り、此処と同じ世界がもう1つ、海中にも在る様に観える。
水辺の街っつうのは、風情が倍加して良いもんだなと思った。
【その26に続】
写真の説明~、フォレストヴィラ1階リビングに有る『ゾロ椅子』って事で。(笑)
マジ寝心地良く、思わず寝そべりたくなりまするv
「予想通りとはいえ、一気に降って来たわねェ。」
雨が盛大に湖へと降り注がれる。
湖面に引切り無しに波紋が浮ぶ。
窓越しにそれを見詰めていたナミが、如何にも残念そうに溜息を吐いた。
「まるで真夏の夕立。ひょっとして雷まで鳴るかも。」
「幾ら何でもこの時季に雷は無ェだろ。」
―――ッッ…ドォォォォ……ン……!!!!
「―って本当に鳴りやがったァァァーー!!!!」
「嫌だァ!!!ピカッて光ったァァァーー!!!!」
ザブザブ音を立てて降る雨、闇を劈く雷光、雷鳴…こりゃ本格的に嵐の様相っつか。
「…大丈夫かしら?万が一此処に落ちて停電とか…。」
「そりゃ無ェだろ。落ちるなら恐らくあの塔にだ。」
「それもそうね。どう見ても避雷針はあれよねv」
なんて、呑気に窓寄っかかってナミと談笑してた直ぐ後だ。
突然、フッ……と灯りが消え、真っ暗になっちまった――
「ほ、本当に停電しやがったァァァ~~!!!?」
「い~~やァ~~~!!!!!誰か蝋燭懐中電灯早くゥゥゥ~~~!!!!!!」
「うはははははははははははは♪なんちゃってェ~~♪ビビったかビビったか!?うははははははははははははははは♪」
玄関からルフィが馬鹿笑いしながら入って来た――右手にはキータッグをしっかり握り締めて。
「うははははははははははははははは♪……どうしたァ2人とも??んな恐い顔して??」
――げし!!げし!!げし!!げし…!!
「ちょっっ!!待っ!!ナミ!!す!すびばせん!!もう!!もうしばぜん…!!から…ぶっっ!ぐえェ!!!止め!!足ふみ止め…!!!」
「うっさァァい!!!!まったくあんたは!!あんたは!!あんたって人はァァ!!!やって!!良い事と!!悪い事の!!区別を!!いいかげんに!!覚えろと!!何度言えば!!解るのォーー!!!?」
――げし!!げし!!げし!!げし…!!
「………ま、馬鹿は死ななきゃ治らんっつうからな。」
雨は間断無く降り続ける。
8時を回っても、勢いが沈静化する気配さえ見えなかった。
「こりゃあ夜のショーは全部中止だな…。」
「えええーーー!!?花火中止しちまうのかァーーー!!!?」
「未だ判んないわよ!!雲が激しく動いてるし、一旦は上がるかもしれない。」
諦め付かねェナミが、開け放した窓から、空をじいっと凝視している。
屋根伝って落ちる雨水で、バルコニーまでびしょ濡れだ。
…雨風が部屋ん中まで吹き込んで寒いから、早いトコ窓閉めて欲しいんだが。
「『ゴスペルライブショー』、昨夜観といて正解だったなァ。…今日来て明日帰んなくちゃいけないお客さん、可哀想に…。」
「そうだな!!観といてラッキーだったよな俺達♪コンサートは観れなかったけどな♪」
「……誰のせいで観られなかった思ってる訳…ルゥ~~フィ~~??」
「あ、やべっっ。」
「藪から蛇突いて出しやがったな、ルフィ。」
「で、でもこんだけ降ったら花火の時間までに水尽きちまって止むかもな!うん!!」
「天の水瓶は利○川ダムみたく簡単に尽きやしねェと思うがな。」
「もし止まなくても、余程の荒天でない限りやるわよ!此処の花火は1年に2回しか中止になんなかったってんだから!!」
「へェ~~2回だけ~~!?根性有んなァ~~!!」
「その2回の内に今日が当ったかもしんねェじゃねェか。流石にこんな雨中でやったら花火湿気ちまうよ。残念だが諦めって事で……俺、風呂入って来るわ!」
「ちょっとォーー!!未だ判んないでしょォーー!?」
「そうだゾロ!!あきらめたら人生そこで終りだ!!」
「『人生諦めが肝心』とも言うぜ?…って訳で入って来るわ!1時間もしたら風呂から上がっから、ほうじ茶でも用意しといてくれよナミ!」
「良いけど……ルフィは何が飲みたい?」
「俺はミルク紅茶が飲みてェェ!!!」
「じゃ間を取って珈琲ね。」
「「だから何の間だよそりゃ!??」」
鼻歌交じりで体を洗い、湯船に浸かる。
冷えた肌にじわじわピリピリ沁みて堪んねェ~、やっぱ1日の〆は風呂だァな。
伸ばした背筋からペキパキポキと音がした。
然もありなん、昨日から引き摺られ通しの疲労溜り捲りだからなァ。
ナミには悪ィが『恵の雨』ってか、正直降ってくれて助かった。
いっそ明日の朝まで降り続けてくれねェもんか。
残り1日、出来れば朝寝がしてェ…せっかくのチェックアウト1時、有効に活用しねェと損だと思うしな。
まァ今夜はどうやら早寝が出来そうだ、雨様々、まったく有難ェ。
湯気が風呂場いっぱい立ち籠めてて眠りを誘う。
既に瞼も重く、大欠伸をしたその時だった。
――ドドドン!!ドドドドン!!
風呂場の硝子戸が激しく叩かれる。
驚いて振り向いたそこには、ルフィとナミのシルエットが――っていきなり何だよっっ!!?
――ドドドドドン!!ドドドン!!
「ゾロ!!朗報よ!!!」
「やったぞ!!!雨が止んだ!!!」
「それでフロントに電話して問合せたら予定通りやるって!!後5分!!早く上がって!!!」
「………マ!マジかよっっ…!!?」
「おお!!大マジだ!!きせきが起きたんだ!!!」
…………奇跡っつうか、こいつらの執念雲をも通すっつか……どっちにしろ俺にとっちゃ悲報だよ……。
湯船ん中で天を見上げる。
「兎に角早く出て来て!!!後5分して出なかったら中入ってって引き摺り出すわよ!!!」
――ぶっっ!!……ちょっっ!?待てっっ!!!
「お!!?後4分だ!!!4分したらここ開けっからな!!!」
「馬鹿止めろ!!!――そこ鍵閉めてねェんだからなっっ!!!ってかてめェらそこどけ!!!居たらむしろ出らんねェだろがっっ!!!」
今にも扉開けそうな気配が伝わって来る。
俺は焦って取っ手を押えた――
昨夜程ではないが、花火会場には大勢の客が詰掛けていた。
こいつらもルフィやナミ同様、『此処の花火は殆ど中止になった事がない』っつう噂信じて、今迄待っていたのかねェ?
だとしたら偉いっつかご苦労さんってトコだな。
花火会場の広場は、さっきまで降ってた雨のお陰で水浸しだった。
そこに照明が反射して光ってて結構綺麗だ。
開演を伝えるアナウンスが響き、曇って星の見えない夜空にレーザーの光が映った。
ドン!!ドォォン…!!!とイルミの点された帆船バックに、花火が打上げられてく。
レーザーの描く波ん中、光が四方八方に飛び散ってった。
「うはは♪♪きれーだなァ~~~~~♪♪」
「中止にならなくて良かったァ~~~~♪」
「気のせいか昨夜の花火よりきれーに観えるよなァ~~♪」
「言われてみればそうねェ……曇った空に光が反射して映り込んでるからじゃない?」
「成る程、天上の巨大なスクリーンって訳か。」
「やっぱ花火は良いよなァァ~~~♪」
「しかし考えてみれば昨夜も同じの観てる訳だし…何度も観なくてもなァ…。」
「良いの!!!花火は何度観ても飽きないんだから!!!」
空高くに打上げられた華が開く。
港街に光が降りしきる。
……そりゃ…まァ…1度や2度で飽きるもんじゃねェとは俺も…思う。
「ねね!海面見て!!花火が映ってる!!…まるで海中でも花火打上げてるみたいで素敵ねェ…v」
「おお~!!本当だ!!海中でも花火大会やってるみてェだな♪♪」
「へェ…反射して中々綺麗だな。」
「まるで俺が買った絵みてーだな♪」
「…絵?」
「エッシャーの絵だ。1枚の絵に3つの世界が在るヤツ。」
「ああ、あの、木と水面浮ぶ枯葉と水中の魚を描いて、3つの世界を同時に表した絵ね。」
「実はあの海ん中にもおんなじ世界が広がってたりして、海ん中入って行けたりしそうな…そんな気がしねーか??」
「馬ァ鹿!カナヅチが入ったら溺れるだけだ。」
「まるで『鏡の中のアリス』ね。……でも、ルフィらしい発想v」
夜の暗い海面がまるで鏡の様に、街の灯と花火とを反射させている。
確かにルフィの言う通り、此処と同じ世界がもう1つ、海中にも在る様に観える。
水辺の街っつうのは、風情が倍加して良いもんだなと思った。
【その26に続】
写真の説明~、フォレストヴィラ1階リビングに有る『ゾロ椅子』って事で。(笑)
マジ寝心地良く、思わず寝そべりたくなりまするv