トム・クイン著の「人類対インフルエンザ」を読んだ。
この本は紀元前4世紀のヒポクラテスから現代まで、インフルエンザの歴史について述べている。特に1918年の世界最悪のパンデミック、スペイン風邪についてページを多く割いている。
このスペイン風邪、5000万人の死者が出たとされている。1918年に終わった第一次世界大戦での死者数が兵士で900万人、民間人が900万人だからこれらを遥かに上回る死者数である。
このパンデミックを引き起こした一つの要因が無能な政治としている。
ニュージーランドではカナダ発の客船ナイヤガラ号がオークランドについたとき、100人以上の船員がインフルエンザにかかっているのに入港を認められた。ニュージーランドの首相はその船にVIPが大勢乗っているのを知っていたからだ。沖合で隔離処置を取るべきだという船医と船長の主張を無視して乗客の下船を許した結果、7000人近くのニュージーランド人が命を落とした。
ジャマイカではイギリスの総督が隔離措置を拒み、7000人以上の島民が亡くなった。
スペイン風邪以降、1957年のアジア風邪、1968年の香港風邪などの新型インフルエンザによるパンデミックが発生している。季節性インフルエンザと、人類が免疫のない新型インフルエンザとは全く別のものとして考えなくてはならない。この本では、常に変異し続けるインフルエンザウイルスの脅威について強調している。
筆者は10年前に本書の日本語版序文でこのように提言している。
この50年余、日本を含む殆どの先進国では大規模な救急医療サービスを設ける必要がなかった。そのため、こうしたサービスを円滑に機能させるために必要な技術や知識が不足している。今から救急病院のネットワークを整備しておくことが急務であろう。
、、、、、抗ウイルス薬も常に進歩しており、インフルエンザの流行が世界的な惨事に発展するのを防いでくれるに違いない。ただしそれも、政府の各機関が正しい対応をした場合に限られる。われわれは人類がインフルエンザといかに厳しく戦ってきたか、その歴史に学ばなくてはならない。われわれが生き延びるために、、、、
最近の新型コロナウイルスのアウトブレイクの状況を見ていると、同じ過ちを繰り返しているように思えてならない。ウイルス感染症の実態を知るためにもおすすめの本だ。
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