二刀流大谷の連日に渡る大活躍で、”大谷巨砲主義”は7月も健在みたいだが、そんなメジャーの派手な舞台裏では、深刻な事態がヒタヒタと忍び寄っている。
私は過去に2度ほど、”メジャー崩壊”についてのブログを書いた。
私の予想では、昨年末の労使交渉の決裂でMLBの半分は消滅してる筈だった。が、そんな私の予想をせせら笑うかの様に、メジャーは生き延びている。まるでゾンビが死肉を喰い漁って生き延びてるかの様に・・・
しかし、今度こそは私の予想が(半分ほどはだが)当たりそうな状況にある。
「されど大谷#27」に寄せられたコメントに、”MLBの約半数のローカル放映権を持つ(全米最大のTV放送企業の)シンクレア・グループが経営破綻の危機にあるらしい。このグループは他にも、NBA16チームとNHL12チームの放映権を持つが、MLBに至っては殆どが赤字だ”という。
過ぎた放映権バブルとコロナ渦、それに(ネット普及による)TV離れと慢性的に続く野球不人気の4つの悪玉が、一気にメジャーを襲う形となった。
つまり、放映権料も(その影響をモロに受ける)選手の年俸も額面だけが独り歩きし、契約の実態は空洞化しつつある。
MLBの放映権バブルの終焉が迫ってきている。
安価な旧形態の放映権契約の多くが高額な新契約に移行し、値上り目が無くなっただけでなく、アメリカ社会におけるテレビ離れが加速、更にコロナ禍が巻き起こった為とされる。
そういった厳しい状況の中、深刻な程の窮地に立たされてる企業が存在する。
大谷が所属するエンゼルスを含む、MLB球団の約半数のローカル放映権を所有するシンクレア・ブロードキャスト・グループである。
今日は、放映権バブルを巡るMLBの深刻な危機と、その周囲で起こりうる悲劇ついて紹介します。
以下、「MLBに大混乱をもたらすシンクレアの経営危機」より一部抜粋です。
放映権契約、その難航の背景
まず、MLBの放映権の仕組みだが、スポンサー依存の日本プロ野球とは大きく異なり、MLBを初めとするアメリカ4大リーグ(NBA,NFL,NHL)やMLSでは、各チームが地元のRegional Sports Network(ローカル局、以下RSN)の22社と放映権契約を結び、ケーブルTVや衛星放送のパッケージの一部として地元民に試合中継が届けられる。
因みに、”ローカル”と言っても大半は巨大メディア企業の子会社であり、大衆はそのローカル局からパッケージを購入し、MLB中継を見る事になる。
こうしたローカル局22社を通し、43チーム(MLB15、NBA16、NHL12)の放映権を保有していた21世紀FOX社は、2017年頃から身売り交渉を開始した。
2018年に、ディズニーが身売り先と決定したものの、独占禁止法に引っ掛かり、司法省の認可が下りず、ディズニー以外の売却先や分割売却や一部売却を模索。
ローカル局22社の中でもヤンキースの放映権を持つYESネットワークは、2019年3月にヤンキース他(アマゾンを含む)への売却が決定した。
そして、残りの21社は世界最大のローカルTV局運営会社シンクレア・ブロードキャスト・グループが企業価値106億ドルで一括買収する事に決まった。
因みに、今回シンクレアが保有するMLBチームは、レイズ,タイガース,ガーディアンズ,ツインズ,ロイヤルズ,エンゼルス,レンジャーズ(以上アリーグ)とブレーブス,マーリンズ,カージナルス,ブリュワーズ,ダイヤモンドバックス,ドジャース,パドレス(以上ナリーグ)の14チーム。
こうした紆余曲折の流れは、放映権料高騰に伴いローカル局の運営費が増大する一方で、テレビ離れによる視聴者(加入者)の激減が続く最悪のタイミングに行われた。
実際、ディズニーの21世紀FOX社買収の時は、YESネットワークを含めRSN22社に対し、200億ドルの値が付いたものの、シンクレアの買収時には21社で106億ドルまで値下がりした。
更に、シンクレア買収直後からコロナ禍により、スポーツ及びエンタメ市場は空前の大不況に陥り、テレビ離れとのダブルパンチによってシンクレアの業績は急落する。
買収時に60ドル強の高値を付けたシンクレアの株価は、コロナ禍序盤に12ドルまで落ち込み、コロナ禍収束時に40ドル弱まで復活したものの、現在は15~20ドルで推移。
一方で、買収した21のRSN社はシンクレア(親会社)→DiamondSportsGroup(子会社)→Bally Sports(孫会社)の形で所有・運営されてるが、2022年中盤時点でDiamondSportsは86億5千万ドルの負債を抱え、放映権契約のうちMLBはその殆どで、NBAは約半分、NHLは数チーム分が赤字とされる。
2022年12月には、DiamondSportsのCEOがクビとなり、シンクレアも着々と(MLBの)切り離しへの準備を進めている。
今後の予測
現在の予測では、早ければ2023年上半期中にDiamondSportsの倒産申請が行われると見込まれている。
その場合、各チームがDiamondSportsと結んだ放映権契約は(債権者により)解除となる可能性があり、新たに他のテレビ局等と放映権契約を結ぶ必要が生じる。当然、代替契約が現契約と同等以上の条件となる可能性は低い。
ただ、倒産申請の前にMLB・NBA・NHLの各リーグがDiamondSportsを買収し、新たな契約先が決まるまで各放映権をリーグが直接管理するとの手もある。
実際、昨年秋頃には30億ドルで売却される可能性も報じらたが、11月末の決算報告で約11億ドルの赤字を受け、交渉は事実上破綻したとの噂で、故に、今後もリーグの直接買収が実現する可能性は低い。
確かに、109億ドルで買ったもんを30億ドルで売る訳にはいかんでしょうね。
仮に、DiamondSportsが倒産すれば、放映権契約云々だけでなく、試合中継の製作・放映にても大混乱が巻き起こるだろうが、勿論MLBも直接買収交渉以外に何の対策も講じず倒産を待ち受けてる筈もなく、ケーブルTVや衛星放送を用いずローカル放映が視聴できる画期的なストリーミングサービスを準備中との報道もある。更に、同ストリーミングサービスにはNBAとNHLが加わるとの噂もある。
また、DiamondSportsとの契約が吹っ飛んだ場合でも、14チームの試合中継製作・放映が途切れない様に、MLBは既に水面下で他のテレビ局と交渉を行ってる模様だ。
何にせよ、近いうちにMLBの放映形態が根底から覆される事は間違いなく、多くのチームが不利益を被るだろう。
一方で、放映権契約を結ぶにあたり、放映権料とは別にチームへRSNの株式(所有権)の一部を譲渡する形態が、2010年代の放映権バブルの中でポピュラーとなっている。
これは、株式からの配当がMLB収入分配制度の対象外になる・・・つまり、”収入分配制度逃れ”を行う為で、勿論、所有権を売却し現金化する事も可能だ。
しかし、RSNの経営悪化と企業価値急落は、上記の契約形態を選び、収入分配制度逃れを目指したチームにとって、逆に大きな痛手となる。つまり、急落したローカル局の株式を買っても損なのは明らかだろう。
放映権破綻のケース
因みに、ローカル局の倒産例として10年前にアストロズと放映権契約を結んだ、ComcastSportsNetHoustonが挙げらる。
元々アストロズは、NBAのヒューストン・ロケッツと提携し、FoxSportsHoustonと放映権契約を結んでたが、2012年に契約を解除し、新たにコムキャストと連携して半分自前の新TV局ComcastSportsNetHoustonを同年10月に立ち上げた。
立ち上げと同時に、アストロズは2013年~2022年の20年で総額16億ドル・年平均8000万ドルの大型放映権契約を締結。加え、ComcastSportsNetHoustonの株式を45%も保有した。
しかし、立ち上げ直後から経営状況は厳しくなり、AT&Tやタイムワーナーなどの大手ケーブルテレビ業者との交渉にも失敗。お陰で、放送可能エリアの40%しかカバーできず、視聴・視聴家庭数は大低迷した。
2013年には、アストロズに支払う年間放映料5600万のうち2900万ドルしか捻出できず、同年9月にはアストロズの試合中継で視聴率0.0%を記録。結果、立ち上げから1年持たずに倒産申請を行った。
倒産申請後はAT&Tが買収。最終的にAT&T SportsNetSouthwestと名前を変え、現在に至っている。
肝心の新しい放映権契約だが、AT&Tの買収後に18年(2016年~34年)で総額13億2000万ドル・年平均7300万ドルの新契約を結んだ。
また、2016年~24年の契約前半は年平均6360万ドルで、24年シーズン終了後に再交渉を行うオプションがつく。
以上、「MLB雑記」からでした。
最後に
以上、放映権契約の実態を見ても判るように、2010年頃から始まったMLBの放映権バブルだが、大型契約を結ぶ程に(オプトアウトの行使により)放映権料が低くなるのが、明らかに見て取れる。
つまり、大型契約の総額の額面だけが独り歩きし、実際に手にする額はずっと低く、オプトアウト(契約更新)の行使で更に低くなる。
これは選手の年俸も同じで、公表される総額だけはド派手に報道されるが、通帳に振り込まれる年平均の実額は更に低くなる。そして、これからはもっと低くなるだろう。
2023年になれば更に悪化し、MLB大半の球団がローカル局と放映権の契約が出来ない状態になる事が予想される。最悪、日本だけで盛り上がるメジャーに成り下がる。
ローカル局から見れば、人気が冷え込んだMLB球団と放映権契約を結ぶ事は自殺行為に近く、MLBは更に孤立するだろう。
そんな冬の時代の真っ只中にあるメジャーを1人で支える大谷だが、今シーズンのスポンサー契約は60億ともされる。が、実際には、その何割が支払われるのだろうか?甚だ不透明ではある。
いや、(大谷の二刀流の活躍からか)高校野球にまで成り下がった感のあるMLBの質の低下の方が、放映権バブル崩壊よりもずっと深刻かもしれない。
かつて、放映権を支えてきた筈のケーブルTVが、今ではそっくりそのままネットに切り変わりつつある。更に、アメリカ国民の野球離れが追い打ちをかけ、MLB機構の財政を支えてきたローカル局はみな、瀕死の状態にある。
MLBだけでなく、プロスポーツ全体が娯楽でなくなる日がすぐそこまで来ている。
もしプロスポーツが全て死滅したとしても、時代は当り前のように進み続けるだろう。
そして我ら大衆も、新たなる娯楽にどっぷりと浸かり、何事もなかったかの様に日常を送り続ける。
次回(後半)では、各球団の放映権事情について述べたいと思います。
捕食者と被食者の関係で見ると理解しやすい。
放映権を買う側のローカル局が捕食者で、放映権を買ってもらう側のMLB球団が被食者。
更に、ローカル局を一括して買い取る側が捕食者で、1つ1つのローカル局は被食者。
これは球団と選手の関係も同じである。つまり前者が捕食者。
要するに
契約は捕食者に有利に出来てる訳で、損をするのは常に被食者である。
放映権バブルと言っても、儲かるのはローカル局とその親会社で、球団は一部を除き赤字のままで、MLB機構からのお零れだけが頼み。
言われてる通り、オプトアウトを行使する度に契約は捕食者に有利になる。
だったら、被食者が捕食者になればいいが、倒産寸前のローカル局を買い取っても借金を背負い込むようなもの。
今回は親玉であるシンクレアグループが破綻の危機にあるが、自ら買収した14のローカル局を切り離す事で最悪を回避するつもりだが、そのシンクレアがヤンキースと共にYESNetworkを買収したというから、先は全く読めない。
全くの窮地に立たされたMLBのオーナー達はどう動くのだろう。
キーボードが壊れたのでうまく書けませんが
放映権というのは額面だけが独り歩きし、鵜呑みにするとバカを見ます。
昔は放映権に頼らず、入場料収入とスポンサー料で十分に安定した運営がなされてましたが、90年代頃から放映権に頼り、メジャーの崩落が始まりました。
本来なら死滅してもおかしくないメジャーですが、アメリカという国の底力というものでしょうか。
しかし、今回のバブル崩壊の噂は本物になりそうですね。
メジャーという過去の亡霊にTV局側も縋ってるんですよ。
言われる通り、放映コンテンツとして既に成り立たなくなったMLBベースボールですが、シーラカンスみたいに化石が泳いでる様なもんですね。
コメントいつも有難うです。
メイン局の放映権料もMLB機構を通して全球団に配分されるし
スポンサー権料もある
いくら、ローカル局が赤字で、入場料収入が減少したとしても、そこまでの危機感はないんじゃないのかなぁ
普通はそう考えますよね。
私も昔はそう思ってました。
メイン局に加え、ローカル局の放映権料が入るんだから、メジャーは不景気に強く、安泰だと・・・
フォーブスによれば
メイン局(FOX,ESPN,TBS)の2023年の放映権料を約17億ドルと見てます。
これも後半で書きますが
額面上はという事で、実際にはもっと低いでしょうね。また、米メディア間でもこの数字には大きなバラツキがありますが。
そういう意味でも放映権は入場料収入に比べ、バブルになりやすく、不透明で弾けやすい。
スポンサー権料ですが、ごく一部のスター選手にはつくかもですが、MLBのゲームには付きたがらないでしょう。
つまり、入場料収入以外は全て浮動票みたいなもので、アテにならないんですよね。
まずは(ですが)おめでとうございます。
それも強豪揃いのアリーグ東地区
全てのチームが強打者揃い。
藤浪にとっては打倒大谷の第一歩になりそうです。
ガンバレ藤浪!クタバレ大谷!ってなればいいですね。
ところで
某週刊誌のインタビュー取材の件ですが
素直に受ければいいのに(*_*;
”数学が考えるSEX”って、転んださんにピッタリじゃないですか
という事で
これからの転んださんのご活躍とご健闘に大きく期待してますよ。
トレードが吉と出るか?凶と出るか?
藤浪次第でしょうね。
今、キーボードが壊れ、手入力なので
詳しい事が書けませんが、ご勘弁をです。
では・・・
昨日のWヘッダーで投手として1安打完封
その40分後に行われた第2試合では2打席連続本塁打
その瞬間思ったんですよね。
出来すぎだって
普通ならこのクソ暑いなかのWヘッダーで
投手大谷の連続出場はありえないですよ。
本人が100%大丈夫と言っても
休ませるのが指揮官というもの
2試合続けての腰痛による途中退場
39号を放った時は大谷の超人ぶりに驚きましたが
所詮は人間です。
とうとう無理が祟ったって感じですね。
これはどんな世界でも当てはまります。
流石に私も、昨日のWヘッダーでの大谷の躍動と快挙には頭が下がりました。
そして今日の第1打席での29号本塁打。
言われる通り、まさに超人の領域でした。
私の予想が完全に外れてしまったと観念しましたよ。
しかし”無理は禁物”とはよく言ったもんで、大谷も所詮は人間でした。
昨日は腰の痙攣、今日は両脚ふくらはぎの痙攣とされます。
これから8月9月と厳しく熱い戦いが続くという時期に、無理をさせた結果がこれです。
最悪の結果になったら、誰が責任を取るのでしょうか。
レンドン、トラウト、大谷と揃って長期DL入りとなれば、流石に偶然じゃ済まされない。