映画には、ネタバレを知ってから見た方が楽しめる作品と、そうでないものに分かれる傾向にある。
「ゴースト•ライター(2010)」はネタを知り尽くして見た方がずっと判りやすい。
そういう私はこの映画を2度見たが、1度目は単なる欧州サスペンスにしか見えなかった。それでも十分に魅力ある見応えある作品ではあった。
流石に2度目は、サイトでネタを確認しながら見た。ロマン•ポランスキー監督の作品は映画にするには理屈っぽく過ぎて、所々に変態グセがあり、複雑過ぎて付いていくのに一苦労する。劇場で見る作品としては十全に楽しめる展開ではないと思った。
しかし、この作品は元ネタさえ理解してれば、普通に楽しめる仕上がりでもある。
この作品にに登場するアダム•ラング元英首相(ピアース•ブロスナン)は、2000年代前後の英首相トニー•ブレアがモデルになっているのは有名ですね。
そこで最も重大な要素として描かれているのが、ラング首相とアメリカCIAの癒着です。
ブレア首相は、”9−11”に対する報復として、ブッシュ政権が実行したアフガニスタン攻撃やイラク戦争に積極的に参加しました。
当時のフランスやドイツなど欧州の主要諸国は、ブッシュ政権を批判してたにも関わらず、ブレアだけはアメリカに同調しました。
勿論、英国内でも激しい論争が起きますが、ブレアは議会を通さずに強引に決断を強行したのです。
この映画で巨匠ポランスキー監督が描いているのは、英国(ブレア)とアメリカ(CIA)の癒着と、それにより引き起こされたイラク戦争に対する批判です。
結局ラングは、彼が引き起こしたイラク戦争に駆り出された、若者の父親によって暗殺されます。
つまり、イギリスの首相がCIAと通じているという事は、首相の仕事は全てアメリカの利益になるという事ですが。ポランスキーはこの米英の黒い癒着を、同業者を失ったライターと息子を失った遺族の2つ視点で見事に映画化したんです。
元イギリス首相アダム•ラングの自伝を担当してた、ゴーストライターの水死体が発見された所から幕が開きますが。その後任ライターが主人公(ユアン•マクレガー)であり、首相が大学時代にCIAと絡んでたのでは?と疑惑を抱く様になる。
以下、”日本未公開の「ゴーストライター」が迫るブレア英首相の実態”から一部抜粋です。
この作品が衝撃的なのは、その濃密でドキュメンチックなリアリティーにある。当時、ブレア元首相が緊密な関係にあったのがイスラエル政府で、マイケル•レビという大富豪を介し、イスラエル政府はブレアに大きな影響力を及ぼしてた。
元々英国労働党は、労働組合を重要な資金源にしてたが、ブレアは大富豪のレビがスポンサーになって為、労働者の利益に反する政策を強引に推し進める事ができた。
レビとブレアが結びつくキッカケは、1994年にイスラエルの外交官からレビを紹介された時だ。その2カ月後に労働党のスミス党首が急死し、ブレアが後任の党首に選ばれた。
その後、1997年の選挙で労働党が勝利し、無能?のブレアは首相になる。
知る人が見れば、映画上のCIAは明らかにモサド(イスラエル情報機関)である。故に、英国の政治はイスラエルが操っていたという話にしたら、大変な騒動になる。
流石のポランスキーも、”ブレアはモサドの手先”という設定にはできなかったとされる。
因みにブレアは、1975年に大学卒業と同時に労働党へ入り、1980年にはチェリーと結婚した。その2年後、イスラエルはレバノンを軍事侵攻してPLOを追い出し、制圧した。その年の9月の3000名とも言われるパレスチナ人虐殺は、イスラエル軍が監視する中での出来事だった。
この事件を切っ掛けに、ヨーロッパではイスラエルへの見方が厳しくなり、英国労働党も”親イスラエル”から”親パレスチナ”へシフトする。そうした時期にブレアは頭角を現したのだ。
首相就任後、ブレアは労働党を”親イスラエル”へ引き戻した。つまり、”労働者との決別”と”イスラエル回帰”がブレアの政策であった。2001年にブレアは、ジョージWブッシュ米首相と手を組んで、イラクへ先制攻撃を仕掛けるが、同じ”親イスラエル派”としては当然の行動だ。
「ゴースト•ライター」の上映が視野に入っていた2009年9月、ポランスキーはスイスで拘束され、アメリカの捜査当局に逮捕された。
事実、ポランスキーは1977年に、アメリカである事件に巻き込まれている。麻薬を使い、13歳の少女をレイプしたなど、いくつかの容疑がかけられていたのだ。ポランスキーは容疑を全て否認していたが、司法取引で罪の軽い違法な性交渉を認めた。事実、ポランスキーは拘束を恐れ、1978年ヨーロッパに逃亡してる。
そんな闇事情がある中での作品だったのだ。
以上、櫻井ジャーナルからでした。
アメリカもアメリカだが、ポランスキーもまた然りではある。彼の作品はとても優秀だが、120分で完結させる作品にしては、やはり難解すぎる。「タイタニック」ではないが、”ガキでも解るサスペンス”に仕上げてほしかった。
この映画では、ラング元首相とCIAの博士の間にラングの妻が絡むが、これがホント余計なんだな。妻を演じたオリビア•ウイリアムスも悪くはなかったが、やはり間延びした。謎の女は、ラングの秘書で媚態を微妙に振りまくアメリアだけで十分だった筈だ。
しかし、抑え気味の演出と不穏な空気に満ちた雰囲気は流石で、建物も演出も実に憎い。淡々とした展開からパタパタと終盤に向かう結末を取り巻く絶妙な”空気”を楽しめる作品でもある。
ただ、展開をもう少し軽めに簡潔に描写すれば、傑作になり得る筈なんだが。ポランスキー監督に薬物依存や児童レイプの癖があるせいか、イマイチ軽快さに欠ける気がした。
映画は所詮、フィクションであり見世物である。元ネタがドキュメントであろうが、ショーの要素がなければ、どんな秀作も見向きもされない。イヤそうでもないか。
類は類を呼ぶ
でもポランスキーはいいとこ付いてるよ
とてもまっすぐな人間なんだろうね
でもアメリカ社会の児童ポルノ問題って
隅々にまで蔓延ってるんですかね。
日本とは異なり、向こうではゴーストライターは儲かる仕事らしいですね。
日本の芸能人やスポーツ選手の著書も大半がゴーストライターによるものではないでしょうか。