水際対策崩壊？それでも東京オリンピックは強行される

　日本共産党の小池書記局長は7日の参院決算委員会で､東京五輪の開催が新型コロナ変異株を拡大させる危険性を指摘し､”このままでは国内または世界に感染を広げる危険がある”と五輪中止の決断を迫った。
　これに対し菅首相は､”国民の命や健康を守る事が大前提だ”を繰り返すだけで､小池氏が示した危険性については何一つ答えなかった。
　政府分科会の尾身会長は”リスクをどう低減できるか？選択肢も含めてやる事は我々の責務だ”と答弁。

　これを受け小池氏は､”いくら<安全安心の大会だ>と言われても､リスク評価が分からなければ安心できない。政府分科会に諮問して意見を聞くべきだ”と首相に迫った。
　ところが菅首相は､”分科会は感染状況について対応する所”と述べるだけで､小池氏は”都合の悪い意見には耳を傾けようとしない”と厳しく批判した。
　以下､｢五輪中止､首相に迫る｣から一部抜粋です。

既に水際は崩壊している？

　小池氏は､英国で見つかった変異株(アルファ株)に加え､インドで見つかった変異株(デルタ株)が新たに広がる危険性を指摘。デルタ株検査はまだ試行段階で､今年2~4月は外国人の入国者は1ヶ月で2万人以下なのに､陽性者が急増してるとして､”デルタ株の感染力は2倍以上だとされる。五輪を開催すれば入国者は今の5倍以上になり､しかも水際対策は緩和される。変異株により感染爆発の危険があるのではないか”と正した。

　田村厚労相は､”入国前に検査をやり､国内に入ってからもやる”と答弁。
　小池氏は､デルタ株が確認されてからの7週間では､入国前に検査を受けてるにも拘らず､インドとネパールからの入国者6200人のうち陽性者が230人に上り､180人からデルタ株が確認されたと指摘。しかも､外出自粛中の発症例が10件以上､無症状者を含めれば更に多いとして､”水際で明らかに水漏れが起きてる”と批判した。
　さらに､五輪選手や大会関係者を外部と遮断する<バブル方式>にも問題があると指摘。IOCの委員など五輪ファミリーの送迎に確保される車両は24時間体制で運行させる上､日本人運転手にはワクチン接種やPCR検査もなく､公共交通機関を使って通勤する事などを挙げ､”遮断などされていない”と正した。

　これに対し菅首相は､”徹底した対策を行うと報告を受けている”と答弁。
　一方で小池氏は､”30万人の日本人が五輪業務に関わるのに､こういう人たちを守る仕組みが全く検討されてない。バブルに大穴があいている。それこそバブルは泡と消える”と述べ､五輪中止を重ねて主張した。
　以上､新聞赤旗からでした。

平和の祭典から”感染の祭典”へ

　こうした”水際対策の大穴”に関する批判は共産党だけではない。
　政府は同じ7日の参院決算委員会で､4~5月に入国した東京五輪パラ関係者の約85％にあたる約1700人が､新型コロナ水際対策の隔離措置を免除される”特例入国”で入国したと明らかにした。
　立憲民主党の福山幹事長は､”特例入国した人の中には陽性と確認された人もいる”などとして対策の不備を指摘した。

　内閣担当者によると､例外的に入国が認められた五輪パラ関係者は､4月が991人､5月が1012人。特例入国したのはそれぞれ865人と842人で､隔離されなかった内の1人が入国4日後の検査で陽性だった事を明らかにした。
　福山氏は”何で五輪だけは関係者も含めて水際対策を緩和するのか。大きな穴が開いているのではないか”と批判した。
　政府は原則として､全ての国･地域からの新規入国を拒否。”特段の事情”で例外的に認める人には14日目までの自宅待機､変異株流行国からの場合は3~10日間の停留を要請する。　
　一方､東京五輪パラで”特例入国”する選手や大会関係者は免除され､入国後は検査を受けながら練習などができる(東京新聞)。

　Gooブロガーの記事｢東京オリパラは感染の祭典｣にもあるが､世界各国から東京に10万もの人が集まり､それぞれの国から持ち込んだ変異株を別の国に持ち帰るとなれば､平和の祭典どころか”感染の祭典”となる。
　組織委は､五輪関係10万人は頻繁な検査をするし､一般人とは触れ合わない”バブル”に入れ､日本国内への感染を防ぐと､感染対策には胸を張る。
　しかし､このバブルに入らない通訳･警備･運転･清掃･食事などを提供する日本人は30万人。その人たちへのワクチンは2万人分しか用意されていない。勿論､8万人のボランティアもワクチンなしだ。それに､彼らは自宅と現場を公共交通で往復する。
　選手の8割がワクチンを打ってくる事になってるが保証なし。関係者はワクチン接種は不明。
　これでどうやって”感染の祭典”を防ぐのだろうか？
　

それでも五輪は開催される？

　YouTubeでは､”コロナは怖くない”とか”コロナ死者はもっと少ない”とか､いうウケのいい幼稚な陰謀論がチラホラ見受けられる。
　専門家とは言え､高齢となると耄碌するんだろうか。アホ臭もいいとこだが､今や日本国民はそういうフェイクすら見抜けない。
　それに､IOCも日本政府も組織委もどんな汚い手やフェイクを使ってでも､五輪開催に漕ぎ着けるだろう。
　しかし､コロナ重症患者の受け入れとワクチン接種による医療現場の苦悩と混乱を見れば､今は目の前の”危険過ぎる祭典”よりも現実を見つめる時で､目の前の命や現場の苦悩を優先すべきだ。

　大穴が空いた水際対策の中で五輪を開催すれば最悪､全国規模での変異株の繁殖を引き起こし､全国規模での医療崩壊は確実となるだろう。
　池江選手の動画の様に､五輪開催の為に巧妙に作られた動画には感動の欠片もなかった。
　IOCの腐敗や政府や組織委の汚職が次々と明らかになりつつある今､”池江選手から勇気をもらった”と胸を張って言える人はどれ程いるのだろうか。　
　IOCも組織委も日本政府も､国民の命より五輪開催を重視してるのは明らかだろう。彼らには､目の前の尊い命よりも目先の腐ったカネの方が大切なのだ。

　東京都民の4割は五輪開催に肯定的である。かつて太平洋戦争の時も､日本人は”アメリカは本当は怖くない”と思ってたのだろうか。
　戦争もオリンピックも最終的には国民が引き起こすものである。つまり､国民がボイコットすれば､無謀な戦争も危険過ぎるオリンピックも回避できた筈だ。
　そして今､我々日本国民は無謀過ぎる4年に1度の”感染の祭典”に向かいつつある。

　かつては”平和の祭典”と崇めてきたオリンピックが医療崩壊という無条件降伏をもたらすとしたら､これほどの残酷な祭典はどこにあろうか。