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アマプラで一時評判になった(多分)ドラマ「ザ・テラー」(2018~2019)だが、シーズン1とシーズン2(共に全10話)とに分かれ、評価が高かったのは前者の方だった。
シーズン1は史実を元にした極地探検の物語で、原作「ザ・テラー/極北の恐怖」(ダン・シモンズ著)を元に、エレバス号とテラー号の遭難を描いている。
原作の小説を少し読んだ事のある私だが、高いレビューを鵜呑みにして見たせいか、よく出来てはいるものの、史実をやや軽視?した感があり、期待ハズレの思いもなくはなかった。
一方、前者に比べ目立たない存在のシーズン2の「不名誉」だが、正直こっちの方がずっとリアルで、恐怖にハマりっ放しだった。
パッと見では、何となくファニーで雑っぽく感じたが、不思議とハマる奇怪な怖さが物語の隅々にまでしぶとく描かれている。完成度はそんなに高くはないものの、私には(ジャパンホラーの金字塔とされる)「リング」や「らせん」(共に1998年)よりも怖く感じた。
日系人が思い描くホラー
第二次世界大戦時にて、アメリカに実在した日系人強制収容所や日系人コミュニティで、次々と不可解な現象に巻き込まれていく。
大まかな展開としては、こうした一連の騒動は、どうもある女の怨霊が原因らしく、それは何処までも憑いてくる。更に、真珠湾攻撃で太平洋戦争が勃発し、強制収容所に送られた日系人コミュニティに不吉な災難が次々と襲う。
彼ら彼女らは次第に深刻な状況に陥るも、最後は何とか?家族愛というハッピーエンドで幕を閉じる。
決して出来のいい秀作ホラーとは言えないし、ジャパンホラーみたいにインパクト系パニックでガンガン押し通す訳でもない。が、ジワりシワりとしぶとく食らいついてくる絶妙なる恐怖感は、見てる者の精神を着実に追い込んでいく。
私にはこうした恐怖感は初めてだったので、とても斬新にかつ奇抜に思えた。
しかし、序盤はとても地味で曖昧で、意味が分からない事が多々ある。そういう私は一気に8話まで見て、それから(ネタバレを少し読んで)最初に戻り、第1話からじっくりと吸い付くように見た。
お陰で(”一粒で二度美味しい”ではないが)、この手の特殊ホラーにどっぷりと浸かってしまった。
ネタバレになるが、物語の主役は女(ユウコ)の怨霊でも、その息子(チェイサー=タイゾウ)でもなく、怨霊がしつこく奏でる恐怖そのものである。
つまり、このドラマは何度も見返す事で評価が上がる。事実、RottenTomatoesによる批評家支持率は83%で、平均点は10点中7.38点。また、Metacriticの加重平均値は78/100と、ここで初めてシーズン1(の73点)を上回る。
女(ユウコ)の無念の思いが強すぎて、周りの人に”呪い”をこれでもかとしつこい程にまき散らす。しかし、それにはちゃんとした訳があり、その謎はエピソードを重ねるにつれ、いや彼女の不幸な物語(過去)を理解するにつれ、徐々に明らかになる。
唯一残念なのは、チェイサー(デレク・ミオ)の日本語が非常に聞き取り辛い事だ。その他の日系人役の声は明確な日本語で判りやすかっただけに、これだけが残念である。
その解決策として、字幕版ではなく吹替版を見る事を強くオススメする。つまり、聞き取りにくい日本語が字幕化されるから、序盤の不可思議で不透明な展開が理解しやすくなる。
慢性化したジャパンホラーに食傷気味な人は、不器用だがこうしたアメリカ人が作るジャパンホラー(もどき)も新鮮に映るだろう。
最後に
このドラマでは、チェイサーの恋人で後に奥さんになるルース(クリスチーナ・ロドロ)がとても魅惑的に映り、隠れた救世主に思えた。
ユウコとは対称的に、陰湿でジメジメとした彼女の怨霊をラテン系のドライな感性が払拭する。更に、この時期ベストセラーになったフォードV8(モデル18)の黒い車がとてもカッコよく映った。
アメリカ人が描く日系人ホラーとも言えるが、ジャパンホラーとは異なり、太平洋戦争中のアメリカでの強制収容所にて露骨で不条理な人種差別を受けながら、なお女性は母国である日本特有の男社会との板挟みになり、彼女らの苦しみとその怨念は今の日本人には到底理解出来まい。
原題は”Infamy”で”不名誉”と訳されてはいるが、私としては”汚名”とした方がスムーズに受け入れられたのではと思う。
シーズン1では、イヌイットの怨霊が白熊にも似た怪物を生み、大英帝国の探検家らを次々と襲い、恐怖のどん底に陥れる。
イヌイットにしては、彼らが(ヨーロッパとアジアを結ぶ)北西航路の発見という重要な目的はあろうが、自分たちの庭をよそ者に土足で踏みにじられる様なもので、これこそが”不名誉”である。
一方、シーズン2では、アメリカでの市民権を持つ日系人らが不条理な運命と自らが生み出した亡霊に苛まされる。
ザ・テラー(恐怖)という点では同じだが、同じ恐怖でもこうも違うのかと、思い知らされた。
という事で、なかなか見応えのあるホラードラマのお話でした。
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