清原和博氏が深夜の銀座で泥酔騒ぎを起こしたというコメントが届いた。酒癖の悪さもシャブ中の遍歴も遺伝なのか?脳の異常なのか?それとも単なる習慣か環境なのか?
アル中も薬中も自殺未遂も繰り返すと言われますが、脳との蜜な関係が明らかになりつつあります。
そこで昨年6月に書いた記事ですが、更新&追記し、新たな日付で紹介します。少し長くなりますが悪しからずです。
銃乱射事件で関係者の自殺相次ぐ
米コネティカット州の小学校で起きた銃乱射事件で娘を亡くした男性が昨年の3月25日、オフィスビルの中で死亡しているのが見つかった。自殺だったとみられる。
死亡したのはジェレミー•リッチマン(49)。6歳だった娘のエビエルちゃんは、2012年にサンディーフック小学校で起きた銃乱射事件で殺害されていた。この事件では子ども20人と大人6人が命を落とした。
この学校で起きた銃乱射事件に関連するとみられる自殺はこの1週間で3人目。
これに先立ちフロリダ州でも、2018年に銃乱射事件が起きたマージョリー•ストーンマン•ダグラス高校の卒業生、シドニー•アイエロさんが自殺した。アイエロさんは自分が生き延びた事で罪悪感に苛まれ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されていた。
続く23日には、同じダグラス高校の在校生が死亡した。警察は、この生徒も自殺したとみている。
以上、CNN News(2019.3.25)より。
これこそがまさに、銃乱射事件が引き起こす”自殺の連鎖”である。
自殺は果たして、負の心理なのか?心と精神の病なのか?脳の病なのか?それとも脳の異常なのか?
以下、「自殺した人の脳に共通する特徴とは」より、抜粋&編集です。
リッチマンの死が投げかけた自殺の闇
自らの命を絶つ前の週、リッチマンはフロリダ州フロリダ•アトランティック大学で講演を行っていた。
テーマは「人間である事の脳科学」
”脳科学を活用すれば、自分や他人を傷つけるリスクがある人に気付き、支援の手を差し伸べられる可能性がある”──これこそが3月19日に行われた講演の趣旨だった。
聴衆の関心も高かった。この2日前、前述のフロリダ州のストーンマン•ダグラス高校で昨年2月に起きた銃乱射事件の生存者の1人が自殺していた。数日後には、同じ高校の生徒がまた1人命を絶った。
アメリカの自殺者はここ数年増加傾向にあり、2017年には年間で4万7000人に達し、自殺率では世界15位でG7中3位だ。
因みに、日本は2万人を超え、自殺率は世界7位でG7中トップ。世界1位はロシアで、アジア1位は韓国。
リッチマンは、この”自殺と脳”のテーマに強い思い入れがあった。2012年12月14日、コネティカット州ニュータウンのサンディーフック小学校に20歳の男が押し入り、26人を殺害し、自らも命を絶った。この事件で殺害された中に、当時6歳の娘アビエルが含まれてたのだ。
リッチマンと妻のヘンセルは事件後直ちに、娘を失った悲しみを行動に変える事を決意した。娘の名前を冠した財団を設立し、銃暴力を防ぐ為に脳科学の研究を支援し始めた。薬学博士号を持つリッチマン氏は、製薬会社を辞めて財団の仕事に専念した。
しかし、リッチマンが精力的に支援した脳科学は、自らの命を絶つ事すら防げなかった。遺族は以下のメッセージを寄せた。
”彼の死は、脳の健康を保つ事が如何に手ごわい課題であるかを浮き彫りにした。そして、誰もが自分自身と大切な家族の為に、更には支援が必要な全ての人の為に、助けを求める事が如何に大切かという事を示した”
脳の専門家だったリッチマンが自らも死を選んだ事は、”残酷な皮肉”という他ないが、”自殺と脳”の関係を研究する科学者にとって、意外な事ではないのかもしれない。
最近の研究によれば、知識があるからといって人は自殺しない訳ではない。医学生や若い医師の主な死因の1つは自殺だという。この点では、精神科の学生と医師も例外でない。
自殺する脳とは?
脳科学の研究は目覚ましい進歩を遂げている。”自殺と脳”の研究が進展し始めたきっかけは、コロンビア大学とニューヨーク州精神医学研究所の研究者たちによる、25年以上前の発見だった。
このチームは、鬱病を解明する目的で”自殺者の脳”を集めた。従来、”自殺者は鬱に悩まされてる可能性が高い”と考えられてた。ところが遺族に話を聞くと、意外な事に自殺者の約半数は鬱病ではなかったのだ。
自殺者とそれ以外の死因で死亡した人たちの脳を調べると、更に意外な事が明らかになる。生前の鬱病の有無に関係なく、自殺者の脳には、共通する”神経学的特徴”が見られたのだ。
”自殺に関わりのある脳の異常が存在すると思ってる人は、当時誰もいなかった”と、研究に参加したコロンビア大学精神医学のジョン•マン教授は言う。
マンらの研究によると、自殺者の90%は自殺した時点で何らかの精神疾患を発症していた。
鬱病などの精神疾患がある人は、脳で感情を司る”扁桃体”が過度に活性化されてる事が知られてる。しかし、自殺者に共通する主要な脳の異常が見られた部位は”扁桃体”ではなく、脳の前部帯状皮質と背外側前頭前皮質だった。
これらは、自らのストレスの度合いを主観的に判断するプロセスに関係する部位だ。
”客観的に見た症状の深刻さは同じでも、彼らには主観的に感じる鬱症状の方が遥かに深刻だったのだろう”と、マンは語る。
”この様な人たちは、感情をコントロールする事が苦手な様だ。彼らが主観的に感じてるストレスは、自殺行動のリスクがない人より大きい。自分が鬱状態にある事を感じ取るセンサーが過度に鋭敏だと言ってもいい”
その上、自殺者の脳には意思決定に関わる部位にも異常が見られた。
故に、自殺リスクの高い人たちは、意思決定が必要な課題を与えられた時、リスクの高い選択をする傾向がある。
”自殺する脳”の特徴とは?
自殺リスクが高い人は、否定的な情報を受け取ると過敏に反応する一方、肯定的な情報にはあまり反応しない。その為、世界を”冷淡で敵対的な場”と感じる傾向が強い。
”この様な要因は全て自殺行動に繋がる”と、マンは説明する。
”鬱症状をひときわ重く感じ、感情に突き動かされて行動しやすい上、行動の選択肢が少く、周囲の人たちが批判的で冷たい様に感じる傾向が強い。しかも、彼らは自分が他の人たちとは違う事に気付いていない。不幸な事に、自らのリスクを認識できてない”のだ。
そういう私も”不幸は必然と感じ、幸運は偶然と感じる”方だが、不思議と鬱ではない。不幸や不運に慣れてるせいか、たとえ鬱であったとしても鬱病が発症しないのだろうか。
メリーランド大学精神医学のトッド•グールド准教授によれば、自殺の神経学的原因を研究してる研究者は、問題を2つの段階に分けて考える。それは自殺しようと考える段階とその行動を実行に移す段階だ。
”人生は生きるに値しないという思いは鬱に伴う事が多い”と、グールドは言う。
だがこうした感情に従って行動するかは、衝動性や決断に関わる脳内の生物学的回路が大きく左右すると。
死にたいと思っても、多くの人は実行には移さない。家族や友人が受けるショックを考え、リスクと便益をはかりに掛け、コストが大き過ぎると判断する。
一方、自殺傾向があると、結果が持つ意味をよく考える前に行動しがちだ。”自殺したいという思いが、そのまま行動に結び付くように見受けられる”と、グールドは語る。
”多くの場合、それは衝動的な行為だ”とも。
私も自殺願望は強い方だが、不思議と衝動的な行為に移る事はない。親父と兄を早くして失ってるせいか、ブレーキ(制御)が掛り易いのだろうか、追い詰められる程に楽天家になる傾向がある。
自殺は内に向けられた攻撃性だ
攻撃性も要因の1つであるようだ。精神分析の創始者ジークムント•フロイト以来、”自殺は内に向けられた攻撃性だ”と捉えられてると、前述のグールドは指摘する。
鬱病患者の自殺率減少には、リチウム塩の投与が効果的だが、”リチウム塩が衝動性や攻撃性に関わる脳内回路に働き掛ける”為だと言われてる。
麻酔薬として広く使用されている”ケタミンも自殺願望を急激に低下させる”事が判明してる。米食品医薬品局は今年3月、ケタミンを用いた処方治療薬の承認を発表した。
最善の対策として見解が広く一致するのが、自殺リスクを確かめる”スクリーニング検査”だ。どんな人も最低でも1年に1度は検査を受けるべきだと、マン氏は提唱する。
神経科学分野では、更に効果的な方法の開発が進む。カーネギー•メロン大学とピッツバーグ大学の研究者は2017年、機械学習アルゴリズムを用い、自殺傾向がある人とない人の脳スキャン画像の傾向をコンピューターで解析させた。
この研究では、被験者に30の単語を読み上げた。”精神疾患は特定の物事への考え方を変える”と、カーネギー•メロン大学心理学教授のマーセル•ジャストは指摘する。
”強迫観念が強いと、「警察」という単語に異なる脳活性化パターンを示す。自殺願望の場合も特定の単語に対し、同様の事が起きる”と。負の単語に異常に反応するんですな。
この機械学習アルゴリズムでは、6つの単語(死•残酷•困難•気楽•よい•称賛)が引き起こす脳内パターンを見るだけで、自殺願望がある人を90%の確率で特定できる事を突き止めた。
被験者が示した脳活性化パターンは明白だった。中でも顕著だったのが、自殺願望がある場合、上の6つの単語が”自己言及”に関わる脳内領域をはるかに活性化させたのだ。
つまり人によっては、”戦争”などを連想する筈の”死”という単語は、自殺傾向がある人の場合、”自己考察”に関わる脳内領域を強く刺激する。
前述の薬理学者であり、エール大学医学大学院の精神医学講師に就任予定だったリッチマンが、ジャストらの研究結果を知っていた可能性は高い。それでも彼は自殺した。
”知識が行動の変化に繋がるとは限らない”と、ブレントは語る。
”彼は6歳のわが子を亡くした。家族を失った人は悲痛が和らがない場合、特に自殺リスクが高い。鬱や心的外傷後ストレス障害(PTSD)だったり、心の傷が癒えていない場合、そのどれもが自殺の引き金になり得た。優秀な学者だったという事実は無関係だ”
以上、NewsWeekJapanからでした。
”自殺する脳”は止められない?
私は”サイコパス”についてブログ(全15話)を書いてきたが、今回の記事と内容は、原理的に見れば殆ど同じだと思う。
つまり、幸せに生きるか不幸に生きるかは、脳が判断し、脳で決まるという事だ。
美味しいとか美味しくないとかは、舌で感じる味ではなく見た目や匂いでもなく、それらを総合して受容し、そして判断する”脳”によって決定する。
つまり、自殺願望も自殺行動も全ては脳が判断する。そして、そういう事が解ってても人は自殺する。
鬱が自殺を誘引するのではなく、”鬱を苦痛と思う”脳の判断が自殺を決定的なものにするのだ。
そう考えると、攻撃や犯罪の遺伝子ではないが、”殺戮の脳”というものも無視できない。
自分を責めるという行為は、攻撃的という点にては、他人を責めるのと同じだ。
”戦争ドキュメント”ブログでも紹介した、カーチス•ルメイやオッペンハイマーやチャーチルも多分、超の付く”殺戮の遺伝子”を持ち合わせてた筈だ。しかし、彼らが自殺する事はなかった。彼らは大量殺戮を自分自身に押し付ける事はなかった。自らを責めるという意識すらなかったのだから。
つまり、脳がそういう命令を下す事がなかっただけの事である。でも彼らの脳は”殺戮の脳”ではなかったのか?
故に彼らには、”人を殺す脳”はあっても”自らを殺す脳”は存在しなかったという事になる。
勿論、サイコパス”その1”(要Click)で書いた様に、”温かい脳”(腹内側部)の機能停止や”冷たい脳”(背外側部)の異常活動がもたらすケースもあろうが。それら以外にも、意思決定に関わる脳領野の異常や、感情や衝動性や行動に関わる脳内の神経回路とそのシステムに、人の行動パターンは大きく左右される。
そういった過敏で攻撃的過ぎる脳神経を薬で和らげる事で、自殺防止に効果がある事も理解できた。
しかし、そういう事が解ってても自殺は防げなかった。結局、”自殺する脳”は一度暴走したら、止められないのか?
脳神経の研究は、まだ始まったばかりだ。自殺の脳とその神経のしくみが十全に解明されれば、犯罪自体も防げるのだろうが。私たちはその時を待つしかないのだろうか。
”自殺とは脳が引き起こす”
しかし、そういう事を知ってるだけで不思議と楽な気持ちになるのは私だけか?
甘やかされ過ぎたって事もあるでしょうに。
酒も薬も女も脳が求めるものかね。それとも脳が最初から成熟しきれてないのかね?
そう言えばタイガーウッズも女爆買い癖は治ったんだろうか?
有名人の脳みそを調べる必要があるな。
お陰でこの記事を思い付きました。
ウッズと同様にスポーツバカは治らんでしょうね。これも有名人病という事で。
「憂きことのなほこの上に積もれかし、限りある身の力ためさん」
書きかけが勝手に送信されたので、追伸させていただきました。
たびたび申し訳ありません。m(__)m
Kouuhnさんは博学過ぎて付いていくのにシンドイです。
厭世観による東大生の死は大きな社会現象をも引き起こし、自殺をするエリートが続出したんですね。
でもエリートの自殺のケースはとても興味深いです。自殺が冷静沈着な計画の元に行われたとしたら、これこそが犯罪ですから。
Kouuhnさんの格闘系友人の自殺ですが、武士道の純粋無垢な精神から来てるんでしょうか。もしそれがホントだとしたらこれまた凄い事です。
東大に合格した途端、自らを永遠の場所に開放したかったのか。脳というより、心の自殺なんでしょうか。
エリートの自殺も多岐に渡るのかもです。
ガロアもアーベルも若くして死ぬという事には大きな抵抗を感じてました。
そういう意味ではエリートの自殺というのは、ある特殊で繊細な”脆さ”を露呈してるのかも知れませんね。
その脳を成熟させるのは環境だよね
それに脳の良し悪しを決めるのが
親から受け継いだDNAって事だ
ただ自殺するしないを
衝動的行為として見れば
自殺する脳の存在は大きい
でも冷静に計画して
自殺出来る人がいたとすれば
これほど怖い事もないね
脳が異常であればエリートになれる筈もないし、エリートになる過程で潰れる筈です。高度な知能や才能に心が追いついていかないのかもしれませんね。
脳が早くに成熟し、心が成熟しきれない。
これからは”脳と心”の研究もすごく必要になってくると思います。