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原油流出!「エクソンバルディーズ号事件」20年前の原油残存!

2010年02月03日 | 環境問題
 ナホトカ号事件
 石油流出事故というと何を思い出すだろう?...そう、石油タンカーが、座礁して積み荷の石油が流出し、海洋が汚染される場面である。石油の流出事故は環境に衝撃的な影響を与える。原油には除去がとても難しい多環芳香族炭化水素を含んでおり、堆積物や海洋環境に数年間に渡って残存する。多環芳香族炭化水素にさらされた海洋生物は成長異常を引き起こし、病気に弱く、繁殖に異常をきたすことがある。

 日本では、1997年1月2日未明におきたナホトカ号事件が有名である。大しけの日本海(島根県隠岐島沖)において、暖房用C重油約19,000 klを積んで上海からペトロパブロフスクへ航行中のロシア船籍タンカー「ナホトカ」号(建造後26年経過)に破断事故が発生。

 船体は浸水し、31名の乗組員は救命ボートに避難。しかし船長は行方不明となり、後日福井県の海岸に遺体が漂着した。船体は水深約2,500 mの海底に沈没したが、船体から分離した船首部分は強い北西季節風にあおられて数日間南東方向へ漂流し、対馬海流を横断して1月7日13時頃、越前加賀海岸国定公園内の福井県三国町安島沖に座礁した。

 厳冬期の石油流出事故
 積み荷の重油は、約6,240 klが海上に流出。また、海底に沈んだ船体の油タンクに残る重油約12,500 klの一部はその後も漏出を続けている。座礁した船首部分の油タンクに残っていた重油は、海上での回収作業および陸上からの仮設道を利用した回収作業により2月25日に回収を終えた。

 海上に流出した重油は福井県をはじめ、日本海沿岸の10府県におよぶ海岸に漂着し、環境および人間活動に大きな打撃を与えた。全国各地からの個人・企業・各種団体によるボランティアも参加して、のべ30万人近くと伝わる民間有志による回収作業も行われたことも話題になった。

 厳冬期の1月に事故が起こったことで、海からの冷たい風が吹き荒れる海岸での回収作業は過酷を極め、回収作業に当たっていた地元住民やボランティアのうち5名が過労などで亡くなるという二次被害が発生した。この件を契機に「ボランティア活動には危険もつきまとう」という事実が世間に知られ、ボランティア活動を行う者に対して「ボランティア活動保険」への加入を勧める活動が積極的に行われるようになったという。

 エクソンバルディーズ原油流出事故
 さて世界に目を向けると、これまで海上で発生した人為的環境破壊のうち最大級のものとして、エクソンバルディーズ号原油流出事故がある。

 1989年3月23日、原油タンカーのエクソンバルディーズ号はアラスカ州のバルディーズ石油ターミナルを、5300万ガロンの原油を積んでカリフォルニア州に向かった。水先案内人はバルディーズ海峡を誘導したのち操縦をバルディーズ号船長と交代して下船した。船は航路の氷山を避けながら進んだ。

 午後11時過ぎに船長は操舵室を離れるさい、三等航海士に操舵の責任を託し、AB級水夫に事前に打ち合わせた地点で航路に戻るよう指示した。そして事故当時は執務室にいた。しかしバルディーズ号は航路に戻ることができず、1989年3月24日午前0時4分頃に暗礁に乗り上げた。

 世界最大級の海洋汚染
 この事故でおよそ積載量の20%にあたる1100万ガロン(24万バレル)の原油がプリンスウィリアム湾に流出した。すぐに分厚い原油の層がプリンス・ウィリアム湾一帯を覆い、船が座礁したのち3日間嵐が吹き荒れたため、大量の原油が各地の岩浜に打ち寄せた。

 もっとも信頼できる推計によれば、事故後まもなく死亡した野生動物の個体数は次のとおりである。各種の海鳥:25万-50万羽、ラッコ:2800-5000頭、カワウソ:約12頭、ゴマフアザラシ:300頭、ハゲワシ:250羽、シャチ:22頭、その他サケやニシンの卵の被害は甚大であった。

 徹底的な原油除去作業によって一年後には現地を訪れる人間の目に触れるような被害の痕跡はほとんど見られなくなったが、今回、流出した原油が、今も沿岸に残っていることが、米テンプル大の調査で分かった。

 アラスカ湾に20年前の原油残存
 米アラスカ湾で89年に起きたタンカー「エクソン・バルディーズ号」の座礁で流出した原油が、今も沿岸に残っていることが、米テンプル大の調査で分かった。

 原油を分解しにくい地層の存在が原因だが、同様の地層は北極圏を中心に各国の沿岸に存在するという。研究チームは事故防止と復旧の対策作りを急ぐよう呼びかけている。17日付の英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス(電子版)に論文を掲載した。

 事故では、原油4000万リットル以上が流出、アラスカ沿岸約2000キロに漂着した。生態系や漁業への影響が大きく、米国史上最悪の海洋汚染とされる。当初は除去作業や微生物による分解で、数年後に原油はほぼ消えると期待されていた。

 しかし、沿岸の一部で原油が残存しているのが見つかり、米テンプル大は昨年までの3年間、原油が漂着した湾内のエレノア島の沿岸12地点を調査した。
 
 その結果、原油を分解する微生物が生存するのに必要な酸素や養分の量が通常より10分の1という層が地表近くに存在し、原油の「貯蔵庫」が形成されていることが分かった。  アラスカ南部では海岸線のほぼ半分がこうした特徴を持つとされ、残存している原油は約7万6000リットルに上る可能性があるという。
 
 研究チームは「温暖化で北極海の氷が減り、周辺海域を航行するタンカーの増加も予想される。事故の再発が憂慮され、対策が急務だ」としている。(毎日新聞 2010年1月18日)

 

参考HP Wikipedia「ナホトカ号重油流出事故」「エクソンバルディーズ号原油流出事故」 

ナホトカ号重油事故―福井県三国の人々とボランティア
粟野 仁雄,高橋 真紀子
社会評論社

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