メタボリックシンドロームとは?
メタボリックシンドローム(metabolic syndrome)とは、内臓脂肪型肥満(内臓肥満・腹部肥満)に高血糖・高血圧・高脂血症のうち2つ以上を合併した状態をいう。
厚生労働省は、中年男性では二分の一の発生率を見込むなど、約2000万人がメタボリックシンドロームと予備軍に該当すると考えており、これを平成24年度末までに10%減、平成27年度末までに25%減とする数値目標を立てている。これにより医療費2兆円を削減することを目的としている。
WHO、アメリカ合衆国、日本ではこの診断基準が異なっていた。日本肥満学会(JASSO)の基準(2005年)では、腹囲男性85cm、女性90cm以上が必須。かつ血圧130/85mmHg以上。中性脂肪150mg/dL以上またはHDLc40mg/dL未満。血糖110mg/dL以上。・・・の3項目中2項目以上。と定められている。
2008年4月から特定健診制度(糖尿病等の生活習慣病に関する健康診査)で、メタボリックシンドロームの概念を応用して糖尿病対策を行い、40歳から74歳までの中高年保険加入者を対象に健康保険者に特定健診の実施を義務化すると共に、メタボリックシンドローム該当者、または予備軍と判定されたものに対して特定保健指導を行うことを義務づける。
5年後に成果を判定し、結果が不良な健康保険者には財政的なペナルティを課す事によって実行を促すとされる。
反メタボ共同声明
しかし、メタボリックシンドロームの基準についてはあいまいさが指摘されてきた。2005年、国際糖尿病連合(IDF)は腹部肥満を必須項目とするメタボリック症候群の世界統一診断基準を提唱したが、アメリカ循環器学会(AHA)とアメリカ心臓肺血液研究所(NHLBI)はIDF診断基準よりも、全米コレステテロール教育プログラム (NCEP)診断規準の方が良いという共同声明を発表し、アメリカ糖尿病学会(ADA)とヨーロッパ糖尿病学会(EASD)は、これまでのどの診断基準も症候群と称するに足る科学的根拠がないので、人々にメタボリック症候群というレッテルを貼ってはならないという共同声明を発表した。
この声明の中では以下の8項目の問題点が指摘されている。
1.診断基準があいまいで不完全である。2.基準値の根拠がきちんと説明されていない。3.糖尿病を含む価値は疑問である。インシュリン抵抗性が共通の原因かどうか不確かである。4.他の心血管危険因子を含むか除外するかの明確な根拠がない。5.心血管疾患の危険度は含まれる個別の危険因子によって様々である。6.心血管疾患の危険度は各危険因子の総和以上ではないと考えられる。7.この症候群の治療は各成分の治療と同じである。8.この症候群の診断の医学的価値が不明確である。
共同声明が発表されてから現在までメタボリック症候群診断の是非が論争されており、メタボリック症候群でないと診断された人のほうがメタボリック症候群と診断された人よりも心血管疾患の危険度が高い場合もあるという。
復囲に科学的根拠なし?
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の適正な診断基準を検証していた厚生労働省研究班(主任研究者=門脇孝・東京大学教授)は2月9日、診断の必須項目の腹囲の数値によって、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞の発症の危険性を明確に判断できないとする大規模調査の結果をまとめた。
現在の診断基準は、腹囲に加え、血糖、脂質、血圧の3項目のうち二つ以上で異常があった場合、メタボと診断され、保健指導(積極的支援)の対象となる。しかし、他の先進国に比べ男性の腹囲基準は厳しすぎる、女性の基準は逆に甘いと、批判されていた。
研究班は、全国12か所の40~74歳の男女約31000人について、心筋梗塞、脳梗塞の発症と腹囲との関連を調べた。
その結果、腹囲が大きくなるほど、発症の危険性は増加したが、特定の腹囲を超えると危険性が急激に高まるという線引きは困難であることがわかった。
国際的には、腹囲を必須とせず、総合的にメタボを診断するのが主流。米国では、腹囲(男性102センチ以上、女性88センチ以上)は中性脂肪、HDLコレステロール、血圧、血糖値を含めた五つの診断基準の一項目に過ぎない。
ただ、今回の研究でも肥満の人ほど発症しやすい傾向は変わりない。現行の基準でメタボと診断された人は、そうでない人に比べて発症の危険性は男性で1.44倍、女性で1.53倍高かった。(2010年2月9日 読売新聞)
厚労省メタボに新基準!
こうした状況から、厚生労働省研究班は、内臓脂肪の蓄積で生活習慣病の危険性が高まる「メタボリック症候群」の診断基準の妥当性について、現在「90センチ以上」としている女性の腹囲を「80センチ以上」に厳しくすれば、より多くの脳卒中や心疾患を予防できるとする研究結果をまとめた。
メタボリック症候群は、日本肥満学会などが2005年に「腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上」などの診断基準をまとめ、特定健診にも採用されたが、女性の腹囲が男性より緩い点などに異論も出ていた。
基準が変更されれば、保健指導にも影響を与えることになるが、厚労省生活習慣病対策室は「今回は妥当性判断の一つの材料。必要があれば検討会を設置する可能性もある」としている。
研究班は、全国の40~74歳の男女約3万6千人に、腹囲と、血圧や血糖値などの関係を調べた。メタボリック症候群は、内臓脂肪蓄積に加え脂質異常、高血圧、高血糖のうち2項目以上に該当する状態だが、男性で85センチ前後、女性で80センチ前後を上回ると、そうした状態になる可能性が3倍に高まり、心筋梗塞や脳卒中が起きるリスクが大幅に上昇することが分かった。(2010/02/09 共同通信)
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