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準惑星になった冥王星
冥王星は、2006年までは太陽系第9惑星とされていた天体。2006年8月14日からチェコのプラハで開かれた国際天文学連合 (IAU) 総会で準惑星に格下げになった。
会議では、当初提出された定義案に従うならば、冥王星が惑星として残るのに加えて冥王星の衛星カロン、小惑星ケレス、2003 UB313(エリス)が惑星とみなされ、惑星は12個となるはずであった。
しかし、天文学者などから強い反対の声が噴出し、原案は大幅な見直しを余儀なくされた。結局、8月24日に採択された議決において「惑星」、「dwarf planet」(準惑星)、「Small Solar System Bodies(太陽系小天体)」の3つのカテゴリが定義されることになった。
惑星
1.太陽のまわりを公転していること。
2.自己の重力によって球形になるほど十分な質量を持っていること。より明確にいうと、自3.己の重力により重力平衡形状になっていること。
4.軌道上の他の天体を排除 (clear) していること。
準惑星(dwarf planet)
1.太陽のまわりを公転していること。
2.自己の重力によって球形になるほど十分な質量を持っていること。より明確にいうと、自己の重力により重力平衡形状になっていること。
3.軌道上の他の天体を排除 (clear) していないこと。
4.衛星ではないこと。
Small Solar System Bodies
太陽のまわりを公転している天体で、惑星、dwarf planetでないほとんど全ての天体(小惑星の大部分、太陽系外縁天体の大部分、彗星その他)。
IAUは上記の定義の元で、それまでの9つの惑星のうち冥王星は惑星としての条件の3つ目を満たさないとして、惑星の総数を8つとするとともに、冥王星を「dwarf planet」に再分類し、太陽系外縁天体内の新しいサブグループの典型例とみなすと決議した。(Wikipedia)
NASA冥王星画像公表
さて、そんな冥王星だが、最後まで惑星とする意見の中で、巨大な衛星カロンをもつことそして大気をもつことをあげる天文学者もいた。
今回米航空宇宙局(NASA)は、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した写真から作製した準惑星・冥王星の高精細合成画像を公表した。地球から遠い冥王星の観測は難しく、表面の様子はよくわかっていなかったが、黒っぽい部分やオレンジ色の部分があるなどの特徴や大気の存在がはっきり映し出された。
この画像は2002年から翌年にかけて、ハッブル搭載のカメラで撮影された写真約400枚を合成して作った。白っぽく光る部分は、一酸化炭素が固まった霜だと考えられている。
1994年に撮影された白黒の画像と比較すると、模様が変化していることもわかった。冥王星はいびつな公転軌道を持っている。太陽からの距離が大きく変わるのに伴って、温度も大きく変化し、表面の様子も変わっているらしい。
研究チームのマーク・ブイエさんによると、ハッブルがいろいろな角度から撮った元の写真では、冥王星は数ピクセルの大きさだが、20台のコンピューターに4年間計算させるとこんな画像ができるという。ブイエさんは「地上から月面を肉眼で見る程度の画質だが、第一歩」という。
冥王星は、2006年に惑星から準惑星に「格下げ」されて評判になった。NASAの探査機ニューホライズンズが2015年に初めて接近することになっている。(asahi.com 2010年2月16日)
精密画像から分かること
冥王星のオレンジ色と灰色の色彩は、太陽光が地表を包むメタンガスを分解してできた炭素を多く含む残留物によって作り出されている可能性があることが、今回作成された画像からわかっている。
ハッブルが撮影した写真から地表の詳しい状態を探ることはできないが、地表上の明暗がはっきりとうかがえることから、冥王星の地形が非常に変化に富んだものであることが推察される。
さらに、今回の画像と以前の画像とを見比べると、冥王星は2000年から2002年にかけて、南半球側が著しく赤黒い色に変化し、一方で北半球側は明るさを増したことが分かるという。おそらくは冥王星の季節の変化に応じて、氷がいったん溶けた後で再び固まったからだろうと、カリフォルニア州パサデナにあるカリフォルニア工科大学のマイク・ブラウン氏は記者会見で語った。
冥王星は、太陽系の中のカイパーベルトと呼ばれる領域を、非常に細長い楕円を描きながら248年かけて太陽の周りを一周している。冥王星の軌道が楕円形であるため、軌道上の場所によって太陽までの距離に差があり、一番近い位置で約44億キロ、一番遠い位置では約73億キロと大きな差がある。
カイパーベルトの謎に迫る!
ブラウン氏によると、太陽までの距離の極端な差が、これまで確認されている太陽系の天体の中でも最大規模の変動が冥王星の地表に生じる原因だという。同氏は、木星や土星などの大気に包まれた惑星の表面の様子が絶えず変化していることを例にあげ、「季節があると変化も激しくなる。なぜなら季節風が地表にあるものを色々な場所に運んで回るからだ。それでも、冥王星のように地表が急激に変化する例は珍しい」と語った。
冥王星の季節が春から秋に変わる時の変化をブラウン氏は次のように説明する。「地球なら、気温摂氏15度から21度ほどの心地よい春だったのが、秋になった途端に摂氏マイナス68度ほどにまで急激に落ちるようなもので、とても住めるような所ではない」。
ハッブルの撮影による最新の冥王星の写真は、実際には最近の改良前まで搭載されていたカメラで撮影されたものである。2009年に「広視野カメラ3」(Wide Field Camera 3: WFC3)が搭載されてからは、冥王星を以前よりも鮮明に撮影できるようになった。
しかし、冥王星の姿を最も良く伝える写真はニューホライズンが撮影することになりそうだ。2006年に打ち上げられたニューホライズンは、冥王星までの距離の半分以上の飛行を終えている。やがて冥王星を周回する軌道に乗って、カイパーベルト内に存在する、その多くが未解明の物体について新たな観察情報を地球に送る最初の宇宙探査機となる予定である。
「冥王星は太陽系外縁部にある天体で最も大きいわけではない。しかし冥王星こそは、地球に最も近いこともあり、太陽系外縁部にあるその他すべての天体について私たちが最も多くを学ぶことができる天体だろう」。 (National Geographic News 2010年2月5日)
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かくして冥王星は降格された―太陽系第9番惑星をめぐる大論争のすべて ニール・ドグラース タイソン 早川書房 このアイテムの詳細を見る |