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世界最大の加速器「LHC」7兆電子ボルト達成!質量の謎に迫る

2010年04月04日 | 宇宙
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 加速器「RHIC」の4兆℃達成
 加速器とは荷電粒子を加速する装置の総称である。原子核/素粒子の実験に用いられるほか癌治療などにも応用される。今年に入ってから世界各地の加速器を使った実験が成果を上げている。

 2月16日、米ブルックヘブン国立研究所の相対論重イオン衝突加速器(RHIC)を使って、理化学研究所と高エネルギー加速器研究機構は、金のイオン同士を衝突させ、約4兆度という実験室で実現した温度としては最高記録を達成した。

 約4兆度という高温では、陽子や中性子を構成するクォークとグルーオンがプラズマ状態になっていると考えられている。宇宙ができた直後の数十万分の1秒の間、宇宙はクォークとグルーオンのプラズマ状態で満たされていた。

 その後宇宙が冷えて、クォークとグルーオンは陽子や中性子に凝縮、さらにその後、原子核や原子とそれらが集まってできる星がつくられたという。

 どうやって陽子と中性子が結びつけられ、原子核ができたのか。「強い力」の謎に迫る。「RHIC」の全周長は約4キロメートル、トンネル内に設置した2本の加速器で構成されている。

 「J-PARC」の加速器でニュートリノ発生
 2月24日、日本では昨年4月にニュートリノ発生に成功した東海村の大強度陽子加速器施設「J-PARC」から、飛騨市の検出器「スーパーカミオカンデ」に向けてニュートリノを発射。24日午前6時、スーパーカミオカンデ側で検出が確認された。今後何度も発射して、謎の多いニュートリノの振る舞いを研究する。

 3月12日、J-PARCは、平成21年12月に試験的に行った陽子ビーム高出力運転において、物質・生命科学実験施設(MLF)に設置したミュオン実験装置で発生したミュオン数を実測した結果、世界最高強度のパルスミュオンが発生していたことを発表した。

 ミュオンは、中性子、ニュートリノ、中間子とともに加速器からつくられる2次粒子の一つ。強力なミュオンビームを利用し、物理学の基礎的研究のほか磁性材料、超電導材料、燃料電池材料などさまざまな分野への応用が期待される。

 J-PARC(Japan Proton Accelerator Research Complex)は、高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構が共同で建設を進めている大強度陽子加速器施設である。その中にある最大の加速器「MR」(50GeV 陽子シンクロトロン)の全周長は1,567.5mある。

 加速器「LHC」過去最高エネルギー到達
 そして今回、3月30日、スイスにある世界最大の加速器である、大型ハドロン衝突型加速器 (Large Hadron Collider:LHC)が、7兆電子ボルトで陽子を衝突させる実験を初めて成功させたと発表した。

 発表したのは、欧州合同原子核研究機関(CERN:本部ジュネーブ)。CERNによると、米フェルミ国立加速器研究所が2001年に記録した約2兆電子ボルトを上回り、過去最高となる。

 7兆電子ボルトと言われると、とてつもないエネルギーに感じるが、「電子」という極小サイズの単位。身近な単位に変換すると、=0.000001ジュール(=1マイクロワット・秒)に等しいという。今後、7兆電子ボルトでの実験を2年ほど続け、約1年かけて改良工事をしたあと、13年ごろ最終目標の14兆電子ボルトでの実験に入る。

 衝突で宇宙の始まりの時期に似た高エネルギー状態を作り出せるため、実験を続けると、素粒子に質量を与える「ヒッグス粒子」など未知の粒子の発見につながるのではないかと、世界で期待されている。

 「LHC」は、スイスとフランスとの国境を越えて建設された1周27キロ・メートルの円形の地下トンネル内で、光速近くに加速した陽子同士を衝突させる装置。今回は加速エネルギーが3.5兆電子ボルトの陽子同士を正面衝突させた。(2010年3月31日01時32分  読売新聞)

 LHCが解き明かそうとする謎
 素粒子の振る舞いは標準模型と呼ばれる理論でよく説明されることが知られている。その標準模型に登場する粒子で唯一未発見のものがヒッグス粒子である。粒子に質量を与えるこのヒッグス機構の元になる考え方が「自発的対称性の破れ」とよばれるもので、南部陽一郎さんが2008年のノーベル賞を受賞した。LHCではこのヒッグス粒子の発見がまず期待されている。

 しかし、その標準模型が説明していないことがいくつもある。同じく2008年のノーベル賞を受賞した小林・益川理論は3世代6個のクォークを予言した。一方、電子(とニュートリノ)の仲間も3世代6個ある。これは偶然の一致なのか。標準模型は何も説明していない。

 また、宇宙の質量構成では星など目に見える質量はごく一部であり、暗黒物質と呼ばれる相互作用をほとんどしない未知の粒子によって大きな割合が占められているがその正体は何なのか。LHCのエネルギー領域の世界ではこれらへの手がかりが得られるかもしれない。

 LHC実験の安全性
 LHCがマスコミに注目された理由の一つに、LHCではブラックホールができて地球を飲み込んでしまうという噂が広まったことがあるかもしれない。CERN(後述)はこの問題を重視し、専門家による委員会で「LHCの安全性」について検討してきた。理論的可能性として微少なブラックホールが生成されることはあり得るが、あまりに小さいものであり、生成直後に蒸発してしまう。

 安全である根拠としては、宇宙からはLHCで作られる衝突エネルギーを超える高いエネルギーの宇宙線が太古の昔より降り注ぎ続けている。それによって生成されたブラックホールが地球を飲み込んではいないことからも、LHCがそのような危険なものでないことがわかる。(坂本 宏 氏:東京大学 素粒子物理国際研究センター) 

 

参考HP 欧州原子核研究機構「CERN」・Wikipedia「RHIC」「J-PARC」「LHC」

ビッグバンをつくりだせ―新型加速器:リニアコライダーが宇宙誕生の瞬間に迫る
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