
HTLV1のキャリアー
「ATLの急性期の発症と認められます。治療を始める時期です」。東北大医学部付属病院の医師から、告知を受けたのは昨年5月末だった。
しかし、「告知」が突然だったわけではない。数年前、母が血液の病気にかかり、その際の検査で、ATLの原因ウイルスHTLV1のキャリアー(感染者)だと分かった。その後、「ところで、史郎はどうなの」という話になった。
私自身も2005年に仙台市の宮城県赤十字血液センターで献血をした後、HTLV1のキャリアーだと知らされていた。「そう言えば、そんなこと言われた覚えがある」。その程度のやりとりで、私がキャリアーである事実をやっと家族が認識したのである。(2010/03/23付 西日本新聞朝刊)
テレビでおなじみの政治家「浅野史郎」氏はATL治療のため、現在闘病生活中である。

浅野氏は東京大法学部を卒業後、1970年に旧厚生省(現厚生労働省)に入り、1993年から2005年まで、故郷・宮城県の知事を3期12年務めた。捜査報償費をめぐる問題で県警と対峙するなど情報公開に積極的。“改革派知事”として全国に名をはせた。
ATLは「成人T細胞白血病リンパ腫」のことだが、おそらくほとんどの人が知らなかったのではないだろうか?
テレビによく出演していた元宮城県の知事、浅野史郎氏が入院したことで、私も知ることができた病気である。ATLとはいったいどんな病気なのだろうか?
ATLとは何か?
ATL(Adult T-cell leukemia/lymphoma)とは、成人T細胞白血病のこと。HTLV-1というウイルスの感染が原因で起きる血液のがん。感染から50年ほどたってから発症する。抗がん剤治療や骨髄移植が行われるが、ウイルスの増殖を抑える効果的な方法がなく根治が難しい。このウイルスは、難病の脊髄(せきずい)症(HAM)も引き起こす。
感染した母親が4カ月以上母乳で育てた場合の乳児への感染率は15~20%とされる。前宮城県知事の浅野史郎さんが昨年6月に緊急入院したことで関心が集まった。
ATLは古くから存在していた。1976年に高月清らによって発見、命名された疾患で、腫瘍ウイルス「HTLV1」が原因とわかった。
日本では、西日本、特に、九州にHTLV1感染者が多く、世界的には、カリブ海沿岸諸国、中央アフリカ、南米などで頻度が多い。HTLV1は母乳により垂直感染を起こすことが知られており、乳幼児の感染者が40-60年の潜伏期を経て成人T細胞白血病を発症する。HTLV-1キャリアは日本全国で100万-200万人いるといわれている。毎年600-700人程度キャリアがATL(病型は問わない)を発症している。キャリアの生涯を通しての発症危険率は2~6%である。
ATLの治療法
本疾患は多くの病型が知られているが、急性化すると極めて予後不良である。急性型と診断された患者が放置された場合、生存期間は平均1年未満である。
急性白血病と同様、寛解導入療法後の造血幹細胞移植を行う。寛解導入療法とは、骨髄中の白血病細胞が5%以下で、かつ末梢血・骨髄が正常化し、白血病に基づく症状や所見が消失した状態に導くための治療法。しかし、病原性白血球を完全に取り除くことは不可能なので、新しい造血幹細胞の移植が必要である。
ATLの感染ルート
HTLV1の感染はHTLV1感染リンパ球がリンパ球に直接接触したときに感染が成立するといわれており、このような経路としては輸血、性交、母乳があげられる。性交に関しては精液に含まれるリンパ球を通じて男性から女性への感染が基本である。
母乳感染がほとんどであり、人工栄養に切り替えると母子間感染率が20%から3%に低下するため、本疾患の撲滅には母乳遮断が有効であると考えられている。
なお、個体内でのHTLV1増殖の場は主にリンパ節であると考えられている。リンパ節で増殖したATL細胞が血液中に流出し(白血化)、特徴的な細胞が末梢血で見られるようになる。(Wikipedia)
参考HP Wikipedia「ATL」・浅野史郎Webサイト「夢ライン」
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