空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

道尾秀介 「光媒の花」 集英社

2010-09-28 | 読書
4月13日付けの小説月評にこの本のことが出ていた。

ー 道尾秀介は、ミステリーという土壌に咲いた大輪の花である。巧みな仕掛けに驚愕の結末、文章だって美しい。だが2年という歳月をかけて紡ぎ出された短編集「光媒の花」(集英社)を手に取れば、気づくだろう。その地に安住せず、より広い場所へと歩みを進める作家の姿に -

「向日葵の咲かない夏」「鉤の爪」を読んで面白い作家だと思っていたので、そう言う評があるのだからこの本も読んでみよう。
と思った。

「光媒の花」は
6章に別れ、今まで感じていた作品とは傾向が違う、淡い哀しみの色彩を帯びた短編集になっている。それぞれは微妙につながっていて、東野圭吾の「新参者」のスタイルにも似ている。

だが、彼の本領はここにはないと思った。
静かな文芸作品のような香りのする文章がつづれられていて期待を裏切った。ミステリを離れ秋の読み物にはいいかも知れない。

「向日葵の咲かない夏」は前に感想をメモした。
「鉤の爪」は仏像についての薀蓄が話に厚みを出していた。
どちらも異常な舞台設定の中で、ミステリアスな展開があり、犯行の動機もうまく考えられて楽しめたが、どちらも最終段階に入り多少密度が薄れていくようで残念だった。

多方面での受賞作を読んでいないので、評価の定まったものを読むのもいいかもしれない。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする