少し前に読んだのだが、人気があって話すとすぐに貸してといわれた。
読んだ本が手元になくなると、メモしておかないとすぐに忘れそうなので、いまごろだが。
名前だけしか知らなかった作者で、初めて読んだのだけれど、いい本を書く人だそうだ。
カバーの裏に毎日出版文化賞と小佛次郎賞受賞とあった、単行本でちょっと見ていたのだが文庫にな
ったので、そして映画化されるという。面白いかも。とワクワクで読み始めた。
* * *
保険会社の外交員をしている若い女性三人組の一人が、地元で何かと怪談話が出るような、高速道路
から入った寂しい峠道で殺される。
車に乗せていたという大学生が犯人かと思われたが、真犯人は親を失い祖母と同居している祐一とい
う名の土木作業員だった。
彼は田舎育ちで、母にフェリー乗り場で置き去りにされた過去があり、祖父母と暮らしている。
職も転々と換え、おじの建設会社に拾ってもらって現場作業をしている。
携帯サイトで知り合って何度か付き合った外交員に、待ち合わせ場所まできて無視された。
女は通りかかった知り合いの男の車に乗った、祐一は車を尾行して行ったが、峠にさしかかったとこ
ろで、女が車から蹴りだされた。
助けようとして騒がれ、口をふさぐつもりが首を絞めて殺してしまう。
犯人かと思われた大学生は罪が晴れ、調べが進んで、金髪でスカイラインに乗った祐一が不審者とし
て追われることになる。
祐一は光代という双子の一人と知り合い、メールを交換していたが、会う約束をする。
地味なショップ店員の光代も祐一と会ってから次第に親しくなる。
祐一はついに自分が殺人者だと告白をしてしまい、光代は二人で逃げる事を選んだのだが。
* * *
ストーリーは実に面白い、逆境で育ったわりに淡々と生きている祐一や、現実をごまかし、女同士の
見栄や虚飾の中で暮らしている外交員、今を普通に受け止める若者は、風俗営業にも抵抗が無く入り
込む。
携帯サイトを使って夜は遊び、昼は勤めを難なくこなしている。
あれもこれも、作者は現代の一端を書いている。
地方都市ながら、どこにでもいそうなありそうな話で、登場人物は、表題に使われた「悪人」という
言葉よりも、現実に流されている人々の、善悪に拘らない大雑把な生き様をみせている。
殺人にしても故意に行われたわけでなく、被疑者となった祐一が車で逃げるのに付き合う光代にして
も、ちょっと日常から踏み出して、男と付き合うスリルから次第に情が移ってきただけだろう。
祐一は光代好みの寂しそうな朴訥なタイプだったろうし、彼女も変化をもとめていた。
作者はそんな人たちのストーリー(エピソード)を書いた。
ただそれだけの小説である。
可もなく不可もない。浅くも深くも無い、いまの時代こういうこともあるだろうという、そんなこと
がかかれている、という感想。
ひょっとしたら、文章よりも映像で見たほうがいいかもしれない。
湊かなえの「告白」のように
★★★