空耳 soramimi

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「藁の盾」  木内一裕  講談社文庫

2014-06-10 | 読書




本を読んでいても、人物のイメージはあまり鮮明に沸かない。キャラクターの造形は言葉だけでは浮かんでこないことが多い。
これは映画化もされているしYou Tubeで少し見てみた。

配役を見て人物像がつかめたところで読んでみたが、設定がとても面白かった。

少女を残虐に殺し犯して捨てた犯人が出所してきた。間もなくまた一人の少女を犯して殺した。その子は大富豪の孫だった。
金を使って三大紙に全面広告を出す。

<この男を殺してください>
黒々としたバカでかい文字が踊っていた。
 その下に大きな顔写真と<清丸国秀 三十四歳>さらに<御礼として十億円お支払いします>と続き、<蜷川隆興>という署名とWebサイトのアドレス、携帯サイトのアドレス、フリーダイアルの電話番号。
 広告はそれで全てだった。


身の危険を感じて、清丸が福岡県警に名乗り出た。
検察庁まで送致しないといけない。
警護課から銘刈と白石が、捜査本部から奥村と神箸、福岡県警捜査一課の関谷を加えた五人が東京まで警護する。
しかし年のわりに幼い顔をした清丸は罪の意識はまるでなく、開き直って横柄なふてぶてしい態度だった。
引き取りに行った時は既に三度襲われ、殺されかけて傷を負っていた。殺せば十億円、彼が札束に見えてもおかしくない。
移送手段を選ばなければならない。
航空会社には断られた。ヘリは狙われる。
350人体制の県警の移送部隊に守られて、4WDの大型車に乗せた。だが反対車線は大渋滞、命を狙った車は突っ込んでくるはで、高速道路は無理だとわかった。
山口で新幹線に乗り換える。多目的室に清丸を閉じ込めて見張ることにする。

しかし銘刈は、安心できない。
清丸を狙うのは誰でもできる、特に銃を持った警察官、隙間なく取り囲んでいる警ら部隊、そして身近にいる5人も心から信用できない。

予想通り、様々な形で清丸が狙われ、ついに殉職者がでる。
一方この生き残りゲームは、犯人の残忍さと10億円の重みで人々は沸き立つ。警護する銘刈までが非難されることになる。

命と国費までかけて移送するのはなぜか。10億円は誰の手に入るのか。そういう類の本だった。


読み終わって、You Tubeを最後まで見た。
警護の銘刈と組む白石が女性だった(松島奈々子)がっかり。
銘刈の大沢たかおは安定感もあってイメージどおり。
清丸の醜悪なところ、藤原竜也は曲がった悪を憎憎しいほどうまく演じていた。彼はこんな作品で良く見るように思うが、無邪気な青年役も似合う気がする。

ドラマでは撮影も制約があるだろうが、原作を離れて見れば面白かった。


移送の行程は、緊張感がある。銘刈と清丸はどうなるのか。
こういうストーリーは乗りやすい。
小説としてどうかよりも、場面の進行に乗って読んでしまう。
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