最近ホッコリづいているので、題名が気に入って買ってきた。
4人の作家の短編集だが、柚木裕子さんは名前だけ、吉川英梨は初見だった。
ホッこりという題名だけあって、ミステリだけれど解決が、あ~それはそれは、というか、へ~そうだったんだというか、日常のちょっとした話の結びは面白かった。
「BEE」 伊坂幸太郎
恐妻家の殺し屋「兜」は、夫婦の殺し屋ススメバチのメスはE2(東北新幹線はやて)事件で死んだと聴いていた。が、オスの方が生き残っていて、自分を狙っているそうだ。一方家庭ではいい夫の顔で暮らしている、出来のいい息子もいる。
妻がガレージの前に蜂の巣があると言う。それはアシナガバチかスズメバチか、どちらにせよ何とかするように妻に言われている。
殺しの紹介者は医者で、カルテには依頼内容が、腫瘍というのは標的で、依頼主は患者などと符牒が決まっている。このやり取りと、家にいる怖い奥さんと、巣を作ったススメバチとの一戦も読み逃せないと言うか、伊坂さんの殺し屋とハチがらみのユーモア炸裂!
「二百二十日の嵐」 中山七里
今で言う限界集落で、廃棄物処理場建設計画が持ち上がった。雇用促進だと言うが、城崎夏美は自然破壊が許せない、そのうえ便利な近道に使っていた崖下の道が、かっての嵐で崩れ多くの犠牲者がでて供養塔が立っている。
それを撤去しないと施設は作れない。
丘の上で揉めているところに、採石をして研究している同僚の高田先生がいた。彼は空気の悪い都会からここに来たと言う。ここの石には「モリブデン」が含まれているといった。
建設が始まって高い塀をめぐらして故意に目隠しがされてしまった。なぜか予定地に立っていた大きな慰霊碑が忽然と消えた。雨が降り続く日、危ない下家が崩れかけた、子供が一人巻き込まれたらしい。夏美はここで両親をなくしていた、急いで駆けつけると頭上の巨石が動いている。危機一髪、崖の上で石を止めたような高田先生の影が見えたが。彼は今日、産休明けの教師と交代して転任すると言う。
「モリブデン」を活用すれば、といって去っていった。夏美は子供の時に出逢った、あの童話のあの子のような気がした。
「心を掬う」 柚木裕子
郵便が届いてないらしい。どうもその数が半端でない。
「酒処ふくろう」でもその話が出た。客の佐方は考え込んで郵便物紛失について内部で調べて欲しいと言う。
そして意外な事実が出てくる、どうも現金がはいっていた郵便がなくなるらしい。しかし確証がない。
佐方は郵便の差出人の気持ちを汲んで意外な手段を選ぶ。ちょっと感動した。面白い。
この、心を掬った男、佐方直人さんは検事をやめた弁護士で柚木さんの他のシリーズで活躍しているらしい。一冊買って読んでみる。
「18番テーブルの幽霊」 吉川英梨
イタリアンレストランの18番テーブルはいつも予約済みになっている。
レストランにやって来た健太は、中学の友人から、この18番テーブルの幽霊話を解決して欲しいと頼まれている。
話を聴くために連絡したのは継母の原麻希。彼女は警視庁の鑑識課員で、父とできちゃった結婚してからはハラマキと呼ばれている。
謎解きより先に目前にある英語学院の児童の爆弾騒ぎに巻き込まれる。そこにはハラマキの娘がいた。
爆弾騒ぎはやがて解決、人質を取った爆弾男もパテシェの機転で捕まった。
蓋を開けてみるとなかなか深い人情話がひかえていて、謎あり、ちょっとアクションありよく纏まった面白い話だった。
初めての吉川さんは「アゲハ」「スワン」「マリア」「エリカ」「ルビー」という女性秘匿調査官・原麻希シリーズがあるらしい。面白かったのでメモしておこう。
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