高校3年のころだった・・・
煙草を吸っていることを誰にもいっていなかったはずなのに、野球部のМくんから「煙草の吸いかた、教えてくれ」と頼まれた。
「―野球部でしょ?」
「いいんだよ、夏の予選も終わったし、3年はすでに邪魔者扱いなの」
「それで髪も伸ばし始めたんだね」
「いいから、頼むよ」
「・・・なんで俺が吸っていると思ったの」
「聞いたんだよ、吸ってるって」
「誰から?」
「いいじゃん、とにかく教えてよ」
「教えるもなにも、吸って吐くだけだよ」
「それで?」
「それで・・・って、だからそれだけだって」
「じゃあ、実際にやってみせてよ」
「(苦笑)いつ?」
「いまは、持ってないの?」
「持ってないよ、持ち物検査とかされたら一発でアウトじゃん」
「じゃあ、あした持ってきて」
「持ってきて、どこで吸うっていうの?」
「トイレとかさ、」
「本気?」
「うん、頼むよ。俺、なにも知らないんだよ野球馬鹿だから」
それだったら野球馬鹿を極めたらいいと思ったが、なんとなく可哀想になったので教えることにした。
翌日、放課後―。
トイレの個室に入る、キッタネー男子ふたり。
「・・・なんだよ、この便器、ウンコこびりついてるじゃん」
「隣りにする?」
「まぁいいや、移動してるところを見られちゃヤバい」
「それもそうだね」
「火、つけるよ」
「おぉ」
「(火をつけ、Mに渡す)はい」
「吸えばいいの?」
「そう」
と、足音が聞こえる。
Мくん、慌てて煙草を便器に捨てる。
「・・・・・」
「・・・・・」
「行った?」
「行ったっぽいよ」
「(一息つく)もう一回」
「(火をつけ、Mに渡す)はい」
足音は聞こえないが、女子同士の話し声が聞こえてくる。
Мくん、ビビッて煙草を便器に捨てる。
・・・・・おいおい、この煙草、自分のなんですけど。
結局この日、火をつけては捨て、捨ては火をつけ・・・を繰り返し、8本くらいの煙草を無駄にした。
「どう?」
「う~~~ん、隠れて吸うほどのものじゃないかな」
「・・・」
まあいいんだけどね、隠れ喫煙仲間を増やしてもしょうがないし、1本10円程度(当時)のものを「金払え!」というほどケチでもないし。
ところで。
「このひとは禁煙しないだろう」と思っていた芸人の有吉ちゃんが禁煙に挑戦している。
ショートホープを1日2箱以上も吸っていたひとなのに・・・意外だなぁ、健康診断でなにかいわれたのだろうか。
自分?
その予定は、ない。
将来は分からんが、当分は吸い続けると思う。
少なくとも経済的理由で禁煙することはないだろう、たぶん酒を断つほうが先。
そう、どっちを捨てるかと問われたら間髪入れずに「酒よ、酒」と答える。
だから一箱500円とか700円になっても吸う。
美味いから吸っているのだが、なんというか、一種の「まじない」にちかいもの―になっているのだよね、モノを書くときの。
煙がないと、いいモノ書ける気がしないのだ。
というわけで、「初めての煙草」をテーマに語っていきたい。
「この一服がたまらん」といって煙草を吸う『スタンド・バイ・ミー』(86)のコリー・フェルドマン、
「ガキが煙草吸っちゃダメだ」と煙草を取り上げられる『フラッシュダンス』(83)のジェニファー・ビールス―「ガキと煙草」というと、自分の世代ではこれらの外国映画をすぐに想起する。
翻って日本では、きまって煙にむせるシーンが登場したりして。
共通するのは「背伸び」、そして、それゆえの「不恰好さ」か。
格好いいものに憧れて背伸びをしてみるが、どういうわけか格好よくはならない。
『風立ちぬ』に噛みついたナントカ学会は、上記の映画が新作だったとしたら、同じように抗議したりするのだろうか。「不恰好さ」を際立たせたチャーミングな映画たちを。
たぶん自分が初めて煙草を吸ったときも、そーとー不恰好だったにちがいない。
じゃあ、いまは格好いいの? と突っ込まれたら、それはそれで答えに窮するのだけれども。
そんな自分は、いつ煙草を吸おうと思ったのか。
高校1年の夏だった・・・と、はっきり覚えている。
覚えているのには理由があった、それは「格好いいから吸いたい」のほかに、もうひとつの強い思いがあったからである。
つづく。
♪ メンソールの煙草を持って、小さな荷物で ♪
…………………………………………
本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『初体験 リッジモント・ハイ(58)』
煙草を吸っていることを誰にもいっていなかったはずなのに、野球部のМくんから「煙草の吸いかた、教えてくれ」と頼まれた。
「―野球部でしょ?」
「いいんだよ、夏の予選も終わったし、3年はすでに邪魔者扱いなの」
「それで髪も伸ばし始めたんだね」
「いいから、頼むよ」
「・・・なんで俺が吸っていると思ったの」
「聞いたんだよ、吸ってるって」
「誰から?」
「いいじゃん、とにかく教えてよ」
「教えるもなにも、吸って吐くだけだよ」
「それで?」
「それで・・・って、だからそれだけだって」
「じゃあ、実際にやってみせてよ」
「(苦笑)いつ?」
「いまは、持ってないの?」
「持ってないよ、持ち物検査とかされたら一発でアウトじゃん」
「じゃあ、あした持ってきて」
「持ってきて、どこで吸うっていうの?」
「トイレとかさ、」
「本気?」
「うん、頼むよ。俺、なにも知らないんだよ野球馬鹿だから」
それだったら野球馬鹿を極めたらいいと思ったが、なんとなく可哀想になったので教えることにした。
翌日、放課後―。
トイレの個室に入る、キッタネー男子ふたり。
「・・・なんだよ、この便器、ウンコこびりついてるじゃん」
「隣りにする?」
「まぁいいや、移動してるところを見られちゃヤバい」
「それもそうだね」
「火、つけるよ」
「おぉ」
「(火をつけ、Mに渡す)はい」
「吸えばいいの?」
「そう」
と、足音が聞こえる。
Мくん、慌てて煙草を便器に捨てる。
「・・・・・」
「・・・・・」
「行った?」
「行ったっぽいよ」
「(一息つく)もう一回」
「(火をつけ、Mに渡す)はい」
足音は聞こえないが、女子同士の話し声が聞こえてくる。
Мくん、ビビッて煙草を便器に捨てる。
・・・・・おいおい、この煙草、自分のなんですけど。
結局この日、火をつけては捨て、捨ては火をつけ・・・を繰り返し、8本くらいの煙草を無駄にした。
「どう?」
「う~~~ん、隠れて吸うほどのものじゃないかな」
「・・・」
まあいいんだけどね、隠れ喫煙仲間を増やしてもしょうがないし、1本10円程度(当時)のものを「金払え!」というほどケチでもないし。
ところで。
「このひとは禁煙しないだろう」と思っていた芸人の有吉ちゃんが禁煙に挑戦している。
ショートホープを1日2箱以上も吸っていたひとなのに・・・意外だなぁ、健康診断でなにかいわれたのだろうか。
自分?
その予定は、ない。
将来は分からんが、当分は吸い続けると思う。
少なくとも経済的理由で禁煙することはないだろう、たぶん酒を断つほうが先。
そう、どっちを捨てるかと問われたら間髪入れずに「酒よ、酒」と答える。
だから一箱500円とか700円になっても吸う。
美味いから吸っているのだが、なんというか、一種の「まじない」にちかいもの―になっているのだよね、モノを書くときの。
煙がないと、いいモノ書ける気がしないのだ。
というわけで、「初めての煙草」をテーマに語っていきたい。
「この一服がたまらん」といって煙草を吸う『スタンド・バイ・ミー』(86)のコリー・フェルドマン、
「ガキが煙草吸っちゃダメだ」と煙草を取り上げられる『フラッシュダンス』(83)のジェニファー・ビールス―「ガキと煙草」というと、自分の世代ではこれらの外国映画をすぐに想起する。
翻って日本では、きまって煙にむせるシーンが登場したりして。
共通するのは「背伸び」、そして、それゆえの「不恰好さ」か。
格好いいものに憧れて背伸びをしてみるが、どういうわけか格好よくはならない。
『風立ちぬ』に噛みついたナントカ学会は、上記の映画が新作だったとしたら、同じように抗議したりするのだろうか。「不恰好さ」を際立たせたチャーミングな映画たちを。
たぶん自分が初めて煙草を吸ったときも、そーとー不恰好だったにちがいない。
じゃあ、いまは格好いいの? と突っ込まれたら、それはそれで答えに窮するのだけれども。
そんな自分は、いつ煙草を吸おうと思ったのか。
高校1年の夏だった・・・と、はっきり覚えている。
覚えているのには理由があった、それは「格好いいから吸いたい」のほかに、もうひとつの強い思いがあったからである。
つづく。
♪ メンソールの煙草を持って、小さな荷物で ♪
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明日のコラムは・・・
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