ユキオは自動券売機で200円の施設利用券を買い受付に出した。
「プールのご利用ですね、市内在住の方ですか?」
「はい、けやき町ですが証明書が必要ですか?」
「いえ、結構ですよ、ロッカーで着替えましたら中の係員に声をかけてください、
説明しますので。」
ユキオ:本名斉藤友紀夫、38歳独身、中小印刷会勤務(一応肩書きは)デザイナー、
9年間彼女なし、毎日変化無く決まった時間勤務し、
ある日気分転換でたまたま近所にあったプールに行き、通うようになる。
ロッカー室はそこそこの広さだが、
カーテンで仕切られた個室は4つしかなくそのうちの一つは障害者専用になっていた。
利用者はその辺で適当に裸になって着替えている。
ほとんどが老人なのでユキオは必然的に若造に見える。
シャワーを浴び、いよいよプールサイドで利用者に挨拶している係員に初めて利用する旨を伝えると、
コースがいくつかに分かれていること、
水中を歩く人はここ、25メートル泳げる人はここ、
水に入る時はプールサイドに立たないこと、周りを走らないこと、
ロッカーの鍵は必ずゴムバンドの内側にしまっておくこと等を丁寧に説明してくれる。
まずは歩くコースに参加してみる。
ここは2コース分とってあるので数人が横に並んでも(歩く速度が速い人が追い越しても)大丈夫。
みんな左回りで歩くので自然と流れるプール状態になる。
試しにけのびの様にして浮いてみると静かに流れていくのだ。
面白い、昔学校のプールでやったのと同じだ・
何周かして慣れた頃、どのくらい泳げるか試してみたくなった。
中学の時は夏の体育でプール活動があったとき、
全くの我流だが25メートルは泳ぎ切ったことが確かあったはずだ。
壁を蹴って順調に泳ぎだしたが息継ぎに失敗して水を飲んでしまった。
やっぱり泳ぎは忘れていたのだ、というか初めからちゃんと泳げたわけではないので、
やっぱりなという感じだ。
つづく