DNAを持つ生命体は皆その体に膨大なメモリーを受け継いでいる、電気的な処理をするコンピュータはプラスとマイナスの組み合わせで作業を行うが、DNAはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類の組み合わせでメモリーされ、同時に実行プログラムも自動処理される。
セクションの研究者達が生物の成長に直接関係のないものとされていた一部のDNAに、プログラムをパフ(始動)させるスイッチがあることを発見してまだ数年しか経っていない。だが研究は飛躍的に進み、使われていないと思われていたDNAの全てが未知のプログラムに使われているらしいことが解ってきた。
まだ初期の段階だが、DNAの組み替えによって簡単なプログラムが実行できるようになった。20世紀の終わりに始まった遺伝子操作は子孫の形を作り変える、いわゆるデザインチャイルドに突き進んだが、倫理的大失敗からその方向を変換し、メッセージメモリーの研究へ向かった。
宇宙(ひろし)へのメッセージは将来セクションがその方法を確立したことを教えてくれている。
セクションの研究者達が生物の成長に直接関係のないものとされていた一部のDNAに、プログラムをパフ(始動)させるスイッチがあることを発見してまだ数年しか経っていない。だが研究は飛躍的に進み、使われていないと思われていたDNAの全てが未知のプログラムに使われているらしいことが解ってきた。
まだ初期の段階だが、DNAの組み替えによって簡単なプログラムが実行できるようになった。20世紀の終わりに始まった遺伝子操作は子孫の形を作り変える、いわゆるデザインチャイルドに突き進んだが、倫理的大失敗からその方向を変換し、メッセージメモリーの研究へ向かった。
宇宙(ひろし)へのメッセージは将来セクションがその方法を確立したことを教えてくれている。
ハートマンは長いお話です。ブログ左側のカテゴリから「SF小説ハートマン①」を選択していただき、最初から読んでいただくと少しは面白いかも知れません。。。
宇宙(ひろし)はセクションの資料室に籠もりメモリの項目を閲覧していた。トントについて知りたかったからだ。フウセンカズラのことが分かれば、きっとトントのことも分かるに違いないという思いがあった。
「トント」「カメムシ」のキーワードではヒットしなかった。銀河のあちこちでハートマンをナビゲートするものは多種多様の生き物だからかも知れない。あきらめかけた時、メモリのカテゴリーの中に「ふうせんかずら」を発見した。
メモリに関するファイルは何層にも積み上がったフォルダーに分類されていた。根気よく探っていく。10分、20分、時間が経つのも忘れて次々にファイルを開いてみた。
そしてついに見つけた。教育補助生物の記録、トントだ。宇宙が眠りについた後、トントは種のメッセージを使い、バイオリストコンピュータの調整を行っていた。それが宇宙の体験した夢だ。
種についての記録もあった。それは外部メモリーであり、未来からのメッセージを受信する通信用モデムの役を果たす。
特殊な配列のDNAがメモリーの機能を持っていることはずいぶん前から分かっていることだ。DNAを持つ生命体は皆その体にメモリーを受け継いでいる。生命体が持つDNAの解析はほぼ終了している。外部からの刺激によってメモリを読み込むことも可能になった。だが情報を書き込む方法については未だ解明されていない。この種のを分析することで答えが見つかるかも知れない。大体そんな内容の記述だった。 つづく
宇宙(ひろし)はセクションの資料室に籠もりメモリの項目を閲覧していた。トントについて知りたかったからだ。フウセンカズラのことが分かれば、きっとトントのことも分かるに違いないという思いがあった。
「トント」「カメムシ」のキーワードではヒットしなかった。銀河のあちこちでハートマンをナビゲートするものは多種多様の生き物だからかも知れない。あきらめかけた時、メモリのカテゴリーの中に「ふうせんかずら」を発見した。
メモリに関するファイルは何層にも積み上がったフォルダーに分類されていた。根気よく探っていく。10分、20分、時間が経つのも忘れて次々にファイルを開いてみた。
そしてついに見つけた。教育補助生物の記録、トントだ。宇宙が眠りについた後、トントは種のメッセージを使い、バイオリストコンピュータの調整を行っていた。それが宇宙の体験した夢だ。
種についての記録もあった。それは外部メモリーであり、未来からのメッセージを受信する通信用モデムの役を果たす。
特殊な配列のDNAがメモリーの機能を持っていることはずいぶん前から分かっていることだ。DNAを持つ生命体は皆その体にメモリーを受け継いでいる。生命体が持つDNAの解析はほぼ終了している。外部からの刺激によってメモリを読み込むことも可能になった。だが情報を書き込む方法については未だ解明されていない。この種のを分析することで答えが見つかるかも知れない。大体そんな内容の記述だった。 つづく
半冷凍状態で搬入されたミリンダに蘇生術が施された。
衣服を全て取り去られたミリンダの体はニスを塗る前のマホガニーの様に艶のない褐色だった。鋭い反射神経によって弾けるいつものしなやかさも感じられなかった。だが柔らかな弾力まで失ってしまった訳ではなかった。
それは未だ明らかに生きていた。
医師の滅菌した指と検査用の器具が体のあちこちをはい回る度に、その部分だけが他の組織とは関係なく反応し、蘇生の可能性を示していた。
「いいぞ、始めろ。」
合図と共に数体のオペロイドが一斉に触手を伸ばし、ミリンダの体にケーブルを打ち込んでいく。
数分後、体のいたるところに取り付けられたケーブルが、血液を、神経を、筋肉を、生かしておくために黙々と働いていた。
首の傷にはそこだけで数十本のケーブルと、その先端に取り付けられた医療用ナノマシンがプログラムに従い着実に作業を続けている。声帯を人工物に置き換え、組織の再構築をすすめているのだ。
傷は声帯と気道の大半を押しつぶしていた。あとほんの少し力が加えられていたら、恐らく脊椎が延髄を突き破り最先端医療をもってしても蘇生は難しかったに違いない。
文字通りミリンダは命を拾った。しかし本当に拾ったのはFOXに通常の3倍の報酬を渡して買い取った雇い主の方かも知れなかった。 つづく
衣服を全て取り去られたミリンダの体はニスを塗る前のマホガニーの様に艶のない褐色だった。鋭い反射神経によって弾けるいつものしなやかさも感じられなかった。だが柔らかな弾力まで失ってしまった訳ではなかった。
それは未だ明らかに生きていた。
医師の滅菌した指と検査用の器具が体のあちこちをはい回る度に、その部分だけが他の組織とは関係なく反応し、蘇生の可能性を示していた。
「いいぞ、始めろ。」
合図と共に数体のオペロイドが一斉に触手を伸ばし、ミリンダの体にケーブルを打ち込んでいく。
数分後、体のいたるところに取り付けられたケーブルが、血液を、神経を、筋肉を、生かしておくために黙々と働いていた。
首の傷にはそこだけで数十本のケーブルと、その先端に取り付けられた医療用ナノマシンがプログラムに従い着実に作業を続けている。声帯を人工物に置き換え、組織の再構築をすすめているのだ。
傷は声帯と気道の大半を押しつぶしていた。あとほんの少し力が加えられていたら、恐らく脊椎が延髄を突き破り最先端医療をもってしても蘇生は難しかったに違いない。
文字通りミリンダは命を拾った。しかし本当に拾ったのはFOXに通常の3倍の報酬を渡して買い取った雇い主の方かも知れなかった。 つづく
ミリンダはぴくりとも動かない。
生命維持装置につながれてはいるが、動作の度にバフーバフーと音を立てる呼吸補助装置と、常にカタカタと震えている血液循環装置だけの旧式のものだ。モニターは力なく不規則な心臓のパルスだけを表示している。
喉に巻かれた包帯らしき物はどす黒く変色した血液で半ば固まり、なおシーツを赤く濡らし続けている。出血は続いている。この状態が続けばあと数時間で致死量の血液が流れ出てしまうだろう。
突然荒々しくドアが開けられ、数人のコマンダーがストレッチャーを押して飛び込んできた。医師らしき一人が瞳孔と首の様子を手早くチェックし、コマンダーにてきぱきと指示を出す。数本の薬剤が体内に注入され、包帯を切り取られむき出しになった喉の傷に止血剤がスプレーされた。
ストレッチャーの左右から透明なカバーが迫り出してきてミリンダの体を閉じこめると、コマンダーはニヤリと笑い数個のボタンを操作した。
小さな数字が光電管に表示され、カウントを始めると、足元から吹き出した乳白色のガスがミリンダの全身を包んだ。 つづく
生命維持装置につながれてはいるが、動作の度にバフーバフーと音を立てる呼吸補助装置と、常にカタカタと震えている血液循環装置だけの旧式のものだ。モニターは力なく不規則な心臓のパルスだけを表示している。
喉に巻かれた包帯らしき物はどす黒く変色した血液で半ば固まり、なおシーツを赤く濡らし続けている。出血は続いている。この状態が続けばあと数時間で致死量の血液が流れ出てしまうだろう。
突然荒々しくドアが開けられ、数人のコマンダーがストレッチャーを押して飛び込んできた。医師らしき一人が瞳孔と首の様子を手早くチェックし、コマンダーにてきぱきと指示を出す。数本の薬剤が体内に注入され、包帯を切り取られむき出しになった喉の傷に止血剤がスプレーされた。
ストレッチャーの左右から透明なカバーが迫り出してきてミリンダの体を閉じこめると、コマンダーはニヤリと笑い数個のボタンを操作した。
小さな数字が光電管に表示され、カウントを始めると、足元から吹き出した乳白色のガスがミリンダの全身を包んだ。 つづく
「いや、そんなことはない。バイオリストコンピュータの潜在能力は未知だ。今回の訓練もデータとして整理されたはずだから次はどうなるか分からないよ。<T-3>も昔の武器で攻撃しようなんて、かなり追い込まれていると考えてもいいかも知れないぞ。」
「通常のビーム砲に頼らないで僕も少し研究してみます。」
「その気なら少しフォックスハンターの事を調べてみるといいかも知れないな。」
「フォックスハンターって何ですか?」
「そうか、宇宙君はフォックスハンターを知らなかったな。セクションでミリンダのことを聞いてみるといい。きっと何かの役に立つだろう。」
「フォックスハンターのミリンダですね。覚えておきます。女性ですよね。どんな方なんですか?」
「ま、それは会ってからのお楽しみだ。」
宇宙は教官の指示を受けてフォックスハンターについての資料を調べてみた。活動の内容に関してはよく分かったが、肝心のミリンダに会うことはできなかった。フォックスハンター達の所在はセクションでも分からず、向こうから定期的に入る連絡を待つしかなかった。
活動の実態が分かってくるにつれ、彼女らはハートマンにとって無くてはならないものだと分かった。その意味で収穫は充分満足できるものだったと言えるだろう。
しかし数年後に運命的な出会いが待っていることなど知る由もなかった。
つづく
「通常のビーム砲に頼らないで僕も少し研究してみます。」
「その気なら少しフォックスハンターの事を調べてみるといいかも知れないな。」
「フォックスハンターって何ですか?」
「そうか、宇宙君はフォックスハンターを知らなかったな。セクションでミリンダのことを聞いてみるといい。きっと何かの役に立つだろう。」
「フォックスハンターのミリンダですね。覚えておきます。女性ですよね。どんな方なんですか?」
「ま、それは会ってからのお楽しみだ。」
宇宙は教官の指示を受けてフォックスハンターについての資料を調べてみた。活動の内容に関してはよく分かったが、肝心のミリンダに会うことはできなかった。フォックスハンター達の所在はセクションでも分からず、向こうから定期的に入る連絡を待つしかなかった。
活動の実態が分かってくるにつれ、彼女らはハートマンにとって無くてはならないものだと分かった。その意味で収穫は充分満足できるものだったと言えるだろう。
しかし数年後に運命的な出会いが待っていることなど知る由もなかった。
つづく
「では少し難しい質問をしよう。雷と雨はどちらも空から落ちてくるが、雷と雨はどこが違うかな?」
「違うって、全然違うでしょう。雷は電気だし、雨は水だし。」
「それだよ宇宙君。」
「えっ?」
「ビーム砲とガトリング砲だ。」
「・・・・・」
「雷のエネルギーは地下のプロトンサーキットに蓄電され、落雷の危険がある地区にそれを放出することで中和させることができる。この発明で活動範囲が広がった惑星は多いはずだ。」
「雨が降ったら屋根の下に入るか傘をさすんですね。うん、分かりました!電気的エネルギーのバリアーではダメなんだ。」
「そうだ宇宙君、今回使われたガトリング砲は当時ファランクスと呼ばれていたものだ。多少手を加えたが1分間に10000発程の金属弾を発射する。近づければそのうち2-3発は当たるだろう。それで充分だ。」
「宇宙空間で船体に穴があいたら致命的ですね。」
「と言うわけだ、宇宙(ひろし)君。射程内まで接近されなければ全然問題ないのだが。」
「敵に攪乱されました。」
「そうだったね。通常こんなに接近することはあり得ない。敵にとってもリスクが大きいからだ。」
「ということは、ぼくが見限られたってことですね。」
「そうゆうことになるな。」
「あの攻撃機に乗っていたのは誰だったんですか?」
「うーん、あれは<T-3>というサプライチームのスーパーシリコンマシンだ。脳内コンピュータではない。だから宇宙(ひろし)君バイオリストコンピュータとは考え方が違うようだ。だが戦闘専門機だからね、百戦錬磨と言っていいだろう。」
「かなわない訳ですね。」 つづく
「違うって、全然違うでしょう。雷は電気だし、雨は水だし。」
「それだよ宇宙君。」
「えっ?」
「ビーム砲とガトリング砲だ。」
「・・・・・」
「雷のエネルギーは地下のプロトンサーキットに蓄電され、落雷の危険がある地区にそれを放出することで中和させることができる。この発明で活動範囲が広がった惑星は多いはずだ。」
「雨が降ったら屋根の下に入るか傘をさすんですね。うん、分かりました!電気的エネルギーのバリアーではダメなんだ。」
「そうだ宇宙君、今回使われたガトリング砲は当時ファランクスと呼ばれていたものだ。多少手を加えたが1分間に10000発程の金属弾を発射する。近づければそのうち2-3発は当たるだろう。それで充分だ。」
「宇宙空間で船体に穴があいたら致命的ですね。」
「と言うわけだ、宇宙(ひろし)君。射程内まで接近されなければ全然問題ないのだが。」
「敵に攪乱されました。」
「そうだったね。通常こんなに接近することはあり得ない。敵にとってもリスクが大きいからだ。」
「ということは、ぼくが見限られたってことですね。」
「そうゆうことになるな。」
「あの攻撃機に乗っていたのは誰だったんですか?」
「うーん、あれは<T-3>というサプライチームのスーパーシリコンマシンだ。脳内コンピュータではない。だから宇宙(ひろし)君バイオリストコンピュータとは考え方が違うようだ。だが戦闘専門機だからね、百戦錬磨と言っていいだろう。」
「かなわない訳ですね。」 つづく