暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

古稀をお祝いする茶事・・・その2 エール

2019年08月05日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

       後座の床  白い木槿と紅い水引をやな籠に活けました

(つづき)
炭手前(炭所望)が終わったので、待合のテーブル席へ動座して頂きました。
そちらでゆっくり懐石を味わって頂きたいと思いました。
なんせ佐藤愛真さんがお祝いのためにあれこれ考えて作ってくださった懐石料理なので・・・。
一献目はスパークリング・ロゼワイン、二献目からはN氏お好みの久保田の千寿をお出ししました。
献立を記念に記します。

  向付  鱚の昆布〆 細造り 水前寺海苔 花穂 山葵 加減酢
  飯   一文字
  汁   胡麻豆腐 順菜 赤味噌 溶辛子
  飯器  赤飯
  煮物椀 小鯛の素麺巻 隠元 青柚
  焼物  かますの塩焼
  強肴  茄子 蛸 おくら 炊き合わせ ふり柚子
  箸洗  岩梨 梅香仕立
  八寸  車海老 若桃の密煮
  香の物 沢庵 水茄子 
  湯桶

お菓子を召し上がっていただいてから中立をして頂きました。
主菓子は特注の金団 銘「紫雲(しうん)」、石井菓子舗製(旭区都岡)です。
紫(古希の色)とクリーム色の金団が掛け分けになっていて、お目出度い金粉が上に飾ってあります。

後座の床の中釘にやな籠を掛け、白い木槿と紅い水引を活けました。
用意していた木槿と葛の花・・・迷っていたのですが、朝開いた白い木槿の清廉な美しさに息を呑み、すぐに決まりました。

後座の茶道口、茶碗を置き、お点前に集中するべく呼吸を整え、襖を開けました。
さぁ・・・茶事で一番大事な濃茶の始まりです。
濃茶茶碗を持ち出しの時、意識するとかえって身体がふらついて・・・修業が足らず困ったことです。
それでも静かに点前が始まりました。
藤紫色の帛紗を捌き、茶入、つづいて茶杓を清め、茶碗で茶筅通し・・・お客さまと一体となるような心持でした。

N氏のお祝いの一服目、緑が美しく映えるよう滑らかな濃茶となるよう心を込めて練りました。
「どうぞ3人様で」
「お服加減は如何でしょうか?」
「大変美味しく頂戴しております」
このお言葉に安堵して2碗目の濃茶に取り掛かりました。

半東KTさんが3人分の濃茶が入った茶碗を時間を見計らって持ちだしてくれました。
湯を入れるとすぐに馥郁とした香りが立ち上ります。
濃さは飲み易いように少し薄めを心がけています。
濃茶は「錦上の昔」 京都の柳桜園詰です。

お祝いの茶事ですが、あれもこれもお目出度い道具づくしというのも如何なものかしら?と思い、
茶碗と蓋置に気持ちを託しました。


      高麗御本三島   古帛紗はバトラです

1碗目は黒楽で楽4代一入作、藪内流7代桂隠斎の銘「不老門」です。
お祝いをするのに茶事しか思いつかなかったように、主茶碗は黒楽「不老門」しか思いつきませんでした。
2碗目は高麗御本三島(愛称「伊備津比売(いびつひめ)」)、古帛紗「バトラ」を添えました。
19世紀頃の貴重な古裂「バトラ」、初使いです。



   干菓子は常盤と紅白のすり琥珀(いずれも佐藤愛真製)、干菓子器は蛍籠です

続き薄茶は半東KTさんにお点前を交代して頂きました。
主茶碗は御目出度い鶴の象嵌が愛らしい青磁雲鶴、銘「玉帚木(たまははき)」、替茶碗は染付祥瑞、三代三浦竹泉造
です。
鶴(青磁雲鶴)にはやはり亀でしょう・・・と少ない道具を探したところ、亀の蓋置(松楽造)を見つけ、長板の点前ですが喜んで使いました。


    続き薄茶の点前座

薄茶になり、和やかに楽しくいろいろなお話が飛び交ったのですが、小堀遠州流の次客YさまからN氏へ掛けられた素敵な御言葉(エール)を記しておきます。
「古希は人生の大事な節目ですが、ゴールではありません。
 むしろこれから・・・だと思いますよ。これからが本当のスタートなのです・・・」

暁庵からのエールは茶杓です。
茶杓は大徳寺聚光院雪山和尚の八十九歳の作、銘「雲錦(うんきん)」です。
雲錦(うんきん)は、「運(うん)」と「金(きん)」にも通じるので、健康に留意し、これからの人生が「うんきん」に益々恵まれ、心豊かに過ごされますように・・・と願っております。

最後に、お祝いの茶事に参席してくださったお客様、半東KTさん、懐石の佐藤愛真さんに心から感謝申し上げます。
ありがとうございました・・・。


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