暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

令和7年の「今日庵東京稽古始め」に出席して

2025年01月20日 | お茶と私

       (京都の今日庵のお床です・・・今日庵HPより)

 

1月17日(金)、令和7年(きのと歳)の「今日庵東京稽古始め」へ行ってまいりました。

昨年11月の三笠宮妃百合子殿下の薨去により、恒例の「初釜式」に代わって今年は「稽古始め」として行われました。

・・・「何を着ていったらよいかしら?」と迷っていましたが、今日庵へ出席した茶友から「皆様、着物はいつも通りでしたよ」という情報があり、唐子模様のブルーグレイの色留袖に白地銀箔に御所車の行列が刺繍された帯を着ていきました。(書いておかないと忘れてしまうのでゴメンクダサイ)

しばらく待合席で待った後に(待合の掛物「梅の画」)、式場へ移動し展観席から始まりました(11時のお席でした)。濃茶席と薄茶席の会記と立派なお道具類が並べられ、箱書もたくさんあり、もうここだけで頭の中が満杯になりました(メモもカメラもなく覚えられませんで・・トホホ)

「稽古始め」の式場へ入ると、点茶盤が設えられた立礼席で50人ほどの喫架と椅子が用意されていて中ほどに座りました。

床には、緑鮮やかな結び柳が風情好く、今年の勅題「夢」に因んで元伯宗旦筆の御軸「夢想」が掛けられています。点茶盤には坐忘斎家元好みの皆具が据えられていました。

はじめに、千 宗室お家元と千 玄室大宗匠が新年のご挨拶をされました。素晴らしいお話なのでお家元のお話から書いておきます。

「今はわからないことがあると、スマホやPCで検索してすぐに「わかった」「知った」ということになりますが、「わかった」「知った」はゴールではなく、始まり(スタート)なのです。「知った」と思ったことから必ず1つか2つ、「わからないこと」が生じ、それを調べると又「わからないこと」があり、次々と「わからないこと」を調べ、深く掘り下げていくことが、茶の湯には大切だと思います」

百二歳になられた大宗匠から「茶の湯は死ぬまで勉強、死んでからも勉強・・・」と力強いお言葉をいただき、「「お先に」「お相伴します」という他人を気遣う優しい心を忘れずに「一盌の茶」とその気持ちを周りの方に広げていって欲しい」と続けられました。大宗匠の元気なお姿を見られて、もうもう感無量でございました。

 

        (京都の今日庵の濃茶席・・・今日庵HPより)

玄々斎好みの菓子・菱葩を頂戴した後、お家元が濃茶を練られました。一同、シーンと静まり返り、息をのむようにお点前を見つめます。やがて一碗の濃茶が運ばれ、お正客様が一口召し上がると、

「如何でしょうか? 少々伸ばしすぎたかもしれません・・・」

「とても美味しく頂戴しております。ありがとうございます!」

お正客様は上品な年配のご婦人で、後で山梨から来られたことを伺いました。

お家元から床の宗旦筆の「夢想」のお軸について素敵なお話がありましたので、一生懸命思い出しながら書いておきます。

宗旦の字はとても読みにくいそうで、要約すると「自在天神さまに願い事を一生懸命にお願いしていたら、なんと願いが叶い、なんとも嬉しくせいせいしし」という意味だそうです。

最後の「せいせいし」が字余りで、「」は「・・・」を表わしていて、つまり願い事が叶って「せいせいし」と思ていたら「・・・」で、なんと!夢だった。それで「夢想」の題だそうです。

さらにお家元は、私たちは神仏にいろいろなことをお願いしますが、そのお願いの仕方が間違っていることに気が付いたそうです。神仏に丸投げではなく、自分がお願いしたことを自分自身も努力することをお願いするように・・・と。

「どうぞ今年も家内安全でありますように。家内安全になるように私も努力いたしますのでお願い申し上げます」

とても心に残るお話でした・・・ありがとうございます。

まろやかによく練られた各服点の濃茶が薫りよく美味しく喉を潤してくれました。茶銘は「山雲の昔」(坐忘斎好み)、詰は竹茗堂(静岡)です。

点茶盤の皆具が遠目では唐銅皆具のようにも見えるのですが、陶器の黒渦文の皆具で作者は当代永楽善五郎でした。

展観席で拝見した茶入は古瀬戸(藤四郎)、珍しい四耳茶入で太閤秀吉から拝領の御品で、銘「七草」です。(間違っていたらゴメンクダサイ) 茶杓は大宗匠の力強い御作でしたが銘が思い出せません・・・スミマセン。

 

      (京都の今日庵の薄茶席・・・今日庵HPより)

次いで薄茶席へ移動し、千 宗史若宗匠、千 容子家元夫人、伊住弘美様、伊住宗禮様がご挨拶されました。

薄茶席の床には、「池塘春草生」又玄斎一燈筆、釣り花入に雲龍梅と可愛らしい福寿草1輪。

千 宗史若宗匠が御園棚でお点前され、お話がユーモラスでお席が楽しく盛り上がりました。

干菓子は、常磐饅頭(ほんのり温かかったです)、干支に因んだウロコの型物と松葉(飴)です。

熱く美味しい薄茶を久世久宝の茶碗で頂きました。茶銘は「海月の白」(坐忘斎好み)、詰はこちらも竹茗堂(静岡)です。

そうそう、薄茶席の主茶碗のことを書いておきます。了入作の赤楽茶碗で銘「曉雪」、会記で銘を拝見したときに「あらっ! 私のためのお茶碗みたい・・・」と嬉しかったです。赤釉に黒とグレイの釉薬の景色が「曉雪」(明け方にちらちらと降る雪)を表わしていました。

薄器は梅月棗、淡々斎好みの梅月棗の本歌(宗哲作)で一閑張溜塗の折ため、蓋裏に「好」と淡々斎花押の朱書がありました。林和靖の詩の一句「暗香浮動月黄昏」が箱裏に書き付けされています。茶杓は寒雲桜を以って銘「窓の曙」(?だったと思う)です。

御終いにくじ引きがありました。当りはお香合とか・・・もちろん外れで残念です。

お家元心づくしのお土産と辻留のお弁当が配られ、14時頃お開きとなりました。  

 


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