産業技術総合研究所は第5回産総研レアメタルシンポジウムを開催しました。
このシンポジウムを聴いて、レアアースなどの資源確保は30年ぐらいの長期間をにらんだ長期戦略が不可欠ということを学びました。日本は長期戦略を打ち立てられるか、次世代に安定供給を提供できるのかが問われているとのことでした。
10月18日午後1時から東京都港区赤坂で開催された同シンポジウムは、最近話題を集めている「レアメタル」「レアアース」関係の講演会だけに、参加希望者が多く、すぐに満員になったそうです。主催は産総研サステナブルマテリアル研究部門です。毎年このころに開催するレアメタルシンポジウムは、9月の尖閣諸島での中国との紛争問題の影響で、中国が日本に対してレアアースの輸出を事実上止めただけに、先端製品向けのレアメタルの安定供給という点で注目をかなり集めたようです。
サステナブルマテリアル研究部門は、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から「希少金属代替プロジェクト」として、インジウム(In)、ディスプロシウム(Dy)、タングステン(W)、白金(Pt)族、セリウム(Ce)、テルビウム(Tb)とユーロピウム(Eu)などの使用量を削減する、あるいは代替する研究開発を受託しています。また、既に産総研を含めたレアメタルタスクフォースを組織し、日本のレアメタル問題の解決に当たっています。
中国は現在、レアメタルの原料となるレアアースという鉱物資源の97%を寡占しています。最近新聞などで報じられたように、日本へのレアアース・レアメタルの輸出量を減らされると、ハードディスク・ドライブ向けなどの高性能モーター用の高性能永久磁石(ネオジム・鉄・ホウ素磁石)や液晶向けのガラスなどのハイテク製品の製造に支障を来します。この結果、欧米や韓国、台湾などのユーザーや製造業企業も困ることになります。世界的に材料・部品・製品を相互に依存する供給体制が崩れてしまいます。
中国がレアアースなどの希土類鉱物の資源生産で、世界の約90%を握るようになった経緯は、中国が希土類鉱物を安い販売価格で輸出し始め、米国などの鉱山会社はレアアースの採掘が採算割れになり、閉山しました。この結果、中国が大部分を供給するようになったそうです。ここまでは、事業競合の結果です。さらに、中国自身も国内での自動車や電機製品の市場が拡大するなど、BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)などの新興国の市場が拡大し、資源消費量が増えていますい。携帯電話機やパソコン、液晶テレビ、自動車などの消費台数の伸びはここ数年、急伸しています。サステナブルマテリアル研究部門長の中村守さんによると、2010年には中国は携帯電話機を7万台生産する見通しです。自動車の生産量も中国は米国、日本を抜いて、世界一になっています。
中国国内の資源消費量が急増したために、中国はレアアースに輸出税を課しレアアースの輸出価格を値上げしました。さらに、輸出数量枠を設定(「EL」と呼ぶそうです)し、輸出量を減らし始めました。中国1国にレアアースを依存するカントリーリスクの高まりです。このことは実はこれまでにも指摘され、危惧されてきましたが、そのリスクを理解する一般の方は少なかったとのことです。レアアースの埋蔵量は、中国分は約30%に過ぎないことから、他国のレアアース採掘が採算割れに追い込まれたことによって事業中止に至ったことが分かります。
この結果、日欧米などでは打開策として採掘を再開したり、新しい鉱山を開発するという解決策が浮上しています。ゲスト講演者の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)や三菱商事の方々は、「新鉱山開発には20年~30年かかる。採掘費用や鉱物を販売して投資額を回収するまでに、レアアースの価格が高値であり続けるかどうかが課題になる」と解説しました。価格が下落すると、採算割れになるリスクがつきまとうからです。
今回、新鉱山を見つける探鉱会社(「ジュニアカンパニー」と呼ぶそうです)は、日本企業がないことを知りました。こうした探鉱企業は“一攫千金”(いっかくせんきん)を狙って設立されたベンチャー企業だそうです。資金調達や20年~30年間という長期間の事業運営態勢を築けるマネジメントができる人材を獲得できる国に探鉱会社が設立されています。カナダに1000~1500社、オーストラリアに300~500社、南アフリカに60社、それぞれ設立されているそうです。日本は、高度なマネジメントを担える人材と資金を供給できる組織が無いようです。残念なことです。石油天然ガス・金属鉱物資源機構などは外国の探鉱企業と提携しているとのことです。日本にベンチャー企業が発生しにくいことに関連していそうです。日本人はほどほどの安定志向なのでしょうか。
このシンポジウムでは、既存製品に使われているレアメタルを回収する資源リサイクルの実証実験あるいは実証事業の結果報告もありました。例えば、携帯電話機からレアメタルを回収するリサイクル事業などです。日本の大手鉱山会社がリサイクル事業を検討しています。その事業採算の解析結果は、金(Au)や銀(Ag)、白金(Pt)などの貴金属回収は採算が採れるが、レアアースは採算が採れないということでした。採算割れの時には、国家が資源確保の施策として実施するかどうかということになりそうです。これも、20年~30年先の市場動向をにらんで戦略を立てることに他なりません。この長期戦略を解く人材が求められています。
このシンポジウムを聴いて、レアアースなどの資源確保は30年ぐらいの長期間をにらんだ長期戦略が不可欠ということを学びました。日本は長期戦略を打ち立てられるか、次世代に安定供給を提供できるのかが問われているとのことでした。
10月18日午後1時から東京都港区赤坂で開催された同シンポジウムは、最近話題を集めている「レアメタル」「レアアース」関係の講演会だけに、参加希望者が多く、すぐに満員になったそうです。主催は産総研サステナブルマテリアル研究部門です。毎年このころに開催するレアメタルシンポジウムは、9月の尖閣諸島での中国との紛争問題の影響で、中国が日本に対してレアアースの輸出を事実上止めただけに、先端製品向けのレアメタルの安定供給という点で注目をかなり集めたようです。
サステナブルマテリアル研究部門は、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から「希少金属代替プロジェクト」として、インジウム(In)、ディスプロシウム(Dy)、タングステン(W)、白金(Pt)族、セリウム(Ce)、テルビウム(Tb)とユーロピウム(Eu)などの使用量を削減する、あるいは代替する研究開発を受託しています。また、既に産総研を含めたレアメタルタスクフォースを組織し、日本のレアメタル問題の解決に当たっています。
中国は現在、レアメタルの原料となるレアアースという鉱物資源の97%を寡占しています。最近新聞などで報じられたように、日本へのレアアース・レアメタルの輸出量を減らされると、ハードディスク・ドライブ向けなどの高性能モーター用の高性能永久磁石(ネオジム・鉄・ホウ素磁石)や液晶向けのガラスなどのハイテク製品の製造に支障を来します。この結果、欧米や韓国、台湾などのユーザーや製造業企業も困ることになります。世界的に材料・部品・製品を相互に依存する供給体制が崩れてしまいます。
中国がレアアースなどの希土類鉱物の資源生産で、世界の約90%を握るようになった経緯は、中国が希土類鉱物を安い販売価格で輸出し始め、米国などの鉱山会社はレアアースの採掘が採算割れになり、閉山しました。この結果、中国が大部分を供給するようになったそうです。ここまでは、事業競合の結果です。さらに、中国自身も国内での自動車や電機製品の市場が拡大するなど、BRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)などの新興国の市場が拡大し、資源消費量が増えていますい。携帯電話機やパソコン、液晶テレビ、自動車などの消費台数の伸びはここ数年、急伸しています。サステナブルマテリアル研究部門長の中村守さんによると、2010年には中国は携帯電話機を7万台生産する見通しです。自動車の生産量も中国は米国、日本を抜いて、世界一になっています。
中国国内の資源消費量が急増したために、中国はレアアースに輸出税を課しレアアースの輸出価格を値上げしました。さらに、輸出数量枠を設定(「EL」と呼ぶそうです)し、輸出量を減らし始めました。中国1国にレアアースを依存するカントリーリスクの高まりです。このことは実はこれまでにも指摘され、危惧されてきましたが、そのリスクを理解する一般の方は少なかったとのことです。レアアースの埋蔵量は、中国分は約30%に過ぎないことから、他国のレアアース採掘が採算割れに追い込まれたことによって事業中止に至ったことが分かります。
この結果、日欧米などでは打開策として採掘を再開したり、新しい鉱山を開発するという解決策が浮上しています。ゲスト講演者の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)や三菱商事の方々は、「新鉱山開発には20年~30年かかる。採掘費用や鉱物を販売して投資額を回収するまでに、レアアースの価格が高値であり続けるかどうかが課題になる」と解説しました。価格が下落すると、採算割れになるリスクがつきまとうからです。
今回、新鉱山を見つける探鉱会社(「ジュニアカンパニー」と呼ぶそうです)は、日本企業がないことを知りました。こうした探鉱企業は“一攫千金”(いっかくせんきん)を狙って設立されたベンチャー企業だそうです。資金調達や20年~30年間という長期間の事業運営態勢を築けるマネジメントができる人材を獲得できる国に探鉱会社が設立されています。カナダに1000~1500社、オーストラリアに300~500社、南アフリカに60社、それぞれ設立されているそうです。日本は、高度なマネジメントを担える人材と資金を供給できる組織が無いようです。残念なことです。石油天然ガス・金属鉱物資源機構などは外国の探鉱企業と提携しているとのことです。日本にベンチャー企業が発生しにくいことに関連していそうです。日本人はほどほどの安定志向なのでしょうか。
このシンポジウムでは、既存製品に使われているレアメタルを回収する資源リサイクルの実証実験あるいは実証事業の結果報告もありました。例えば、携帯電話機からレアメタルを回収するリサイクル事業などです。日本の大手鉱山会社がリサイクル事業を検討しています。その事業採算の解析結果は、金(Au)や銀(Ag)、白金(Pt)などの貴金属回収は採算が採れるが、レアアースは採算が採れないということでした。採算割れの時には、国家が資源確保の施策として実施するかどうかということになりそうです。これも、20年~30年先の市場動向をにらんで戦略を立てることに他なりません。この長期戦略を解く人材が求められています。