新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカ合衆国の製造業の今昔

2024-12-24 07:15:30 | コラム
仰ぎ見ていた存在だったのだが:

自動車産業:
戦後から今日までを生き抜いてきたので言えるので、アメリカ合衆国とは我々にとっては尊敬すべき仰ぎ見る存在だった。アメリカ製の品物であれば何でも尊敬されたし、持っていれば「ステータスシンボル」になった。自動車などは、我が国には僅かにダットサンがあっただけだったので、アメ車は特別に幅を利かせていた。Chevroletは兎も角として外車は格好が良く見えた。

その偉大なる繁栄する国・アメリカを代表していた自動車産業が何時の間にか急速に衰退して、ビッグスリーどころではなくなっていた。飽くまでも私独自の見解だが「自動車を始めとしてアメリカの製造業が没落したのは、職能別労働組合の制度とそこに所属する組合員の労働力の質による」のである。

我が国でも、復興・復旧が進むにつれて産業と技術が進歩発展して、嘗ては侮蔑の対象だった「Made in Japan」が優れた品質と経済的な価格の代名詞の如くになっていた。そして、DatsunだけではなくToyotaもHondaもSubaruもアメリカ合衆国での売れ行きが伸びてきていた。ビッグスリーの衰退も始まった・

そこに、輸入車の増加を快く思わなかったアメリカ政府が「排ガス規制法」を設けた。ところが、アメリカの自動車メーカーたちは規制に到達できずにいる間に、日本車は悠々と達成してアメリカ向け輸出を伸ばしてしまった。保護貿易政策を採るアメリカは輸入車の規制を図る為に、日本のメーカーにアメリカでの現地生産を要求し、トヨタを始めとしたメーカーはそれに従った。

今や、アメリカの大都市に行って街角に10分も経って観察していれば「アメリカでも未だに4ドアセダンが作られていたのか」と思わせられるほど日本車、ドイツ車他の欧州車と韓国車が走っている状況なのだ。だが、これらの外車(アメリカブランド以外の意味)はトランプ前大統領がお怒りだった輸入車とは限らないのだ。現地生産が多くなっているのだ。

私は「何故、外国のメーカーがアメリカで現地生産するとアメリカのメーカーよりも品質が優れた車が出来るのか」知らないが、それらの車を作っているのはアメリカの労務者たちなのだ。同じUAWの組合員が作っているはずなのに、何故品質に優劣の差が出るのだろうか不思議だ。

私は労働組合の在り方が日本とアメリカとでは根本的に異なっている辺りに、労働力の質の違いが生じていると思っている。簡単に言ってしまえば「アメリカでは組合とは会社とは別個の法律によって保護されている存在である事」と「組合員が会社側に転属する(昇進するのではない)事は先ずあり得ない」から生じている問題だと思う。

日本製鉄のUSスティール買収:
この案件は私が予想した通りで民主党政権が反対を唱え、トランプ候補(当時)も同調した。「国内産業保護と組合員の職の安定/安全」が狙いであるようだ、私が聞いた限りでもUSW所属の組合員たちは歓迎していても。反対するとはどう考えても正しい政策ではないとしか思えない。

今や、鉄鋼産業界では粗鋼(crude steelと言うのだと知った)の生産量では中国(多くは国営メーカ-)と韓国を代表するPOSCO(旧浦項製鉄)占めるシェアーが圧倒的で、USSも何とかしなければ新興勢力の勢いに圧倒されて埋没してしまうかもしれないのだ。その流れを断とうと、劣勢に立たされつつある日本製鉄が言わば救いの手を差し伸べたと言って誤りではないようにすら思えた。

まさか、バイデン大統領もトランプ次期大統領もこういう状況をご存じないとは思えないが、私はアメリカ政府も共和党も反対などしていても良い状況に置かれているとは思えないのだ。

製紙産業を見れば、1990年代末期から中国、インドネシア、韓国、ブラジル等々の新興勢力が最新鋭の生産設備を導入して、古物化した設備しか持ち合わせがないアメリカ市場を高品質と低価格の印刷用紙で席巻していた。連邦政府はこの輸入を高率の関税で閉め出して国内のメーカーを保護した。ところが、時代の流れに勝てなかった印刷用紙メーカーが続々とChapter 11の保護を申請して倒れてしまった。

鉄鋼も時代の流れは新興勢力が最新鋭の設備を導入して経済的な価格で世界の市場に進出していくのだから、旧式の設備で戦ってきた日本やアメリカが劣勢に立たされたのは、印刷用紙の状況にも似ている。最早、鉄鋼業界ではtariff manの出番の時期は過ぎてしまっているとしか見えないのだが。

トランプ次期大統領は就任後には、このような新旧交代の時期が色々な産業界で生じていることを確りと確かめる必要があるのではないだろうか。恐ろしいのは、新興勢力の発展が続く為に「何時の日か、関税で保護したくなるような産業が残っていない日」が来て、誰もアメリカの製造業を仰ぎ見ることがなくなるのではないかという事。

今昔の感がある我が国の経済の現状

2024-12-23 07:00:00 | コラム
回顧談でもあるのだが:

ホンダと日産の経営統合の話し合いが本格的に開始されるとかだ。今昔の感に堪えない。戦前の我が国の経済を僅かながら聞き及んでいただけに、鮎川義介氏が1928年に創立した日本産業株式会社の名残である日産自動車が消えてしまうとは思っていない。だが、そういう形になっていくのが時の流れなのだろうが、誠に残念だなと感じている。

現代人に「日本産業」が現代の日立製作所、日本鉱業(ENEOSの前身)、日産自動車の基礎だと言ったら驚くだろうか、知らなかったと言うだろうか。彼等が「戦前には凄い経営者がいたものだと受け止めるか、戦前だからこそ力量がある個人が日本の産業界というか製造業の基を築くことが出来たのだ」と解釈するだろうか。

平成や令和の時代の人たちに「戦前に芝浦製作所と東京電気という二つの会社を夫々個人が開業され、1939年に東京芝浦電気株式となったのだ」と聞かせても「それって何の事」と言い返されそうな気がして怖い。この戦前からあった我が国の電気(電機または電器)産業を代表するような会社が「東芝」になって、今日に至ったのである。

1990年代の末期から我が国の経済が新興国に圧倒されたかの気配が出てきて、一部には「経営者の劣化」を云々する声も出始めていた。かく申す私も大手企業の当時の若手から「現在の部課長級が役員になる頃には、我が社の経営基盤が危うくなる」と聞かされるようになって来始めていた。後難を怖れずに言えば「彼等の予測は誤っていなかった」のである。

ところで、話題を日産に戻そう。シャープという会社はもとはと言えば「シャープペンシル」を創造された早川徳次氏の会社で、誰もが知る電気機器製造会社にまで発展したのである。その2016年に経営状態が悪化したシャープを救ったのが、台湾を代表すると言える鴻海精密工業(FOXXCON)である。その鴻海が日産に興味を示して、買収を企図していると報じられている。「だからホンダと」という事か?

話を更に台湾に向けていこう。世界最大級の半導体メーカーのTSMC(=臺灣積體電路製造股份有限公司、英語ではTaiwan Semiconductor Manufacturing Company、 Ltd.略称:台積電)が事業を拡張すべく選んだ場所が熊本県だった。その理由が「労務費が安いこと」だったと聞いたBSフジの反町理氏は震えが来るほど嘆いたと語っていた。「これが我が国の経済の位置なのか」とショックを受けたのだそうだ。

私はアメリカの労働力の質に問題があることを再三取り上げて指摘して、その際に引き合いに出してきたことはと言えば「我が国の労働力の世界に例を見ない質の高さと均一性」だったのだ。その高い労働力の質を台湾に「安価である」と言われたのでは、立つ瀬がないのではないかと言葉を失わさられた。

UAWの質に問題がある為に、アメリカでは国産車が没落し、我が国の労働力の高質さが故に、アメリカで日本車、特に乗用車があれほど好まれて普及しているのだ。それにも拘わらず、TSMCには労働力の経済的価値の方を評価されてしまったのである。我が国のように賃金を低く抑えてしまえば、経営が悪化するという例を見せている気がしてならない。

これだけ言えば十分だと思うので、ここまでにしようと思う。だが、私は「我が国の経済を再度活性化させる為には何をすべきか」がハッキリしていると思うのは誤りだろうか。

日頃の行動範囲を逸脱しないように

2024-12-22 06:36:22 | コラム
本22日は休みます:

17日の国立国際医療研究センター病院循環器内科での定期診断で、13年も診て頂いてきている主治医の医長先生に「状態は可もなく不可もなしである。年齢からすれば、これから先も日頃の行動範囲を逸脱しないように慎重に生活すること」と指示された。

だが、16日から一日も休むことなく外出を続け、昨日のTY先生との久しぶりの懇談会で、英語式の表現を使えば「長かった一週間」が終わった。6日間続けての行動は滅多になかったことだった気がする。

92歳、別に疲労困憊した訳でもないが、今朝はどのような話題を取り上げるかの適切な発想が浮かんでこないので、大事を取って今日は休載してボンヤリと寝転がっていようかと。

ジョン・ボルトン氏は

2024-12-21 08:06:07 | コラム
「トランプには哲学がない」と言った:

元大統領補佐官のジョン・ボルトン氏が「トランプ次期大統領には哲学がないから、次に何をするかが解らない」と語っていたとのニュースがあった。「言えてるなー」と一瞬感じた。だが、だが、良く考えてみれば自分自身が「哲学とは」は殆ど解っていなかったと気がついた。大学1年の必須科目だった哲学は、ドイツ人の神父の教授の講義がサッパリ解らず、辛うじて最低点で単位が取れた程度だった。

今を去ること69年前に何のことか解らなかった講義を1年間聴いた結果で、未だに覚えていることはPhilosophy(=哲学)とは「sophy即ち「知識」を愛することphiloで、philosophyとなっている」だけだという情けない状況。そこで、慌ててWikipediaを見れば、

>哲学(てつがく、フィロソフィー、philosophy)とは、存在や理性、知識、価値、意識、言語などに関する総合的で基本的な問題についての体系的な研究であり、それ自体の方法と前提を疑い反省する、理性的かつ批判的な探求である。

とあった。

さらに、Oxford English Dictionaryを引けば、“the study of the nature and meaning of the universe and of human“が最初に出ていた。「自然と宇宙と人類の意義の研究/学習」とでもいう事のようだ。

この二つの哲学の定義から見ても、トランプ次期大統領という方はphilosophyとはかなり縁遠い方のように思えてならない。

ボルトン氏はイエール大学の法科大学院の出身者であるから、哲学を引き合いに出してトランプ氏を批判されたようだ。確かにドナルド・トランプ氏は前大統領の頃から、私ですらMr. Unpredictableと呼んだほど、打ち出される政策には前後の脈絡がなかったし、中国からの輸入に高率の関税をかけたので、国庫に毎日のように中国から多額の金が入ってくると無邪気に喜ばれたりしていた。

それに加えるに、既に公表されたように第二次トランプ政権の閣僚人事も駐日本大使も発表され「彼等に求めるのは自分に対する忠誠心即ちloyaltyのみである」と公言された。事がここまで来ると、私が思うには「トランプ氏には哲学がないのではなくて、トランプ流の『何事でも自分かがこれで良いと決めた案件は躊躇わずに政策として打ち出していく』という哲学がある」のではないかということ。

私は20年以上もの間、アメリカの大手企業に勤務して、アメリカの経営者たちが2進法的思考体系に基づいて非常に重大案件でもズバリと決断する手法と、それを成功に導く結果を見てきた。だが、彼等経営者たちは独断専行するのではなく、事業部長たちからの提案を取り上げて決めることもあるし、社外の権威ある経営者たちで構成されている取締役会に諮ってから決めていくとの手順も踏んでいくのだ。

ご存じの方は多いと思うが、現在のアメリカの大手企業では、その中で生存していく為には修士号(例えばMBA)は必須となっている。博士号も必要かもしれない。即ち、副社長級の幹部は言うに及ばず、社外の役員たちもビジネススクールや法科大学院の出身者で固められている。

MBAたちは4年制の大学を卒業後に4年間の実務経験を積んでからビジネススクールであらためて理論を学び、討論を重ねて学習してから管理職の地位に就きスピードトラックに乗って昇進して、経営者の地位に就くのだ。現在はその高学歴の理論派の時代。トランプ氏も自分が彼等に支持されていないことくらいは承知しているだろうと思う。

その高等教育を受けた者の時代にあって、不動産業を経営しておられたドナルド・トランプ氏が第二次政権を来年からどのような思い切った政策を打ち出されて運営して行かれるのかと、全世界が注目しているだろう。中でも、習近平氏、プーチン氏、金正恩氏らにとっては「次に如何なる手を打ってこられるか」は片時も忘れられない重大事だろう。

12月20日 その2 続・Presentationの技法

2024-12-20 13:10:36 | コラム
アメリカの企業社会の異文化から学んだ事:

偽らざるところを言えば「アメリカの会社とは異文化の世界である」という認識も不十分なままで入ってしまったので、転進当初には戸惑う事も多かったのです。

アメリカ人たちからは「要点は飽くまでも如何にして聴かせるかがポイントだ。聴衆を読む事に集中させるような掲示をしてどうする」と教えられました。

私はオーバーヘッドプロジェクター(OHPと言うのは日本語です)の時代でしたので、何枚になっても1頁に3項目の見出しだけ記載してフィルムを作っていました。ここまでのところでは、どのような項目にするかも工夫が必要だったのです。

彼等は「ただ、語りの原稿を読み上げて、併せて時間も計るだけのリハーサル」、「本番に近い聴衆を置いてのリハーサル」、「ドレスリハーサル」(=個々の場面を本番と同様に進行させて、進行を確認する行為である。同義語や類義語には下稽古・予行演習があり、業界用語としての略称ではリハなども使われる。)も行って、完璧を期します。

恐るべき事は、この間にお客様への対応は二の次のような場合すらある事で、彼等が非常に内向きである点なのです。現在ではPower pointの時代ですが、要領は同じでしょうか。

正直なところ、何にも知らずに入ってしまったアメリカの企業社会でしたが、彼等の合理性を優先する思考体系とその方式は評価できるでしょう。と言うか、これが「異文化」でしょうか。