新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

紳士の服装学

2025-02-11 07:59:39 | コラム
公式の場に臨むときの心得:

私は先ごろ石破首相がトランプ大統領との初首脳会談に臨まれた際の「スリップオンの靴に問題あり」と指摘した。この点については、この分野に精通された東海大学のKS教授も「疑問である」という見解だった。要するに「あのような公式の場には少なくとも紐を結ぶ方の靴を着用すべきである」というのが服装学の原則なのである。

私には教授の「首相は長距離の長時間のフライトの後で足がむくんでしまったので、やわらかい靴を選択されたのではないか」との推論が興味深かった。

ところが、再三再四放映されるあの首脳会談の画面を見ていた私は、もう一つの疑問点を発見してしまった。それは、首相がシャツの袖口にcuff links(カタカナ語では「カフスボタン」または「カウスボタン」となっている)をされていたのを発見した。しかも、もしかすると装飾用に「(宝)石」がついているものだった。不味いなと思った。これも宜しくないのである。

袖口の装飾につけられるカフリンクスはカフスとは、注文シャツを専門にするAtelier BERUNによれば、

>引用開始
日本ではカフリンクス・カフスボタン、またはカウスボタンとも呼ばれたりしますが、正式にはカフリンクス(cufflinks)といいます。 もともとはドレスシャツやワイシャツ、ブラウスの袖口(カフ/cuff)を留める(リンク/link)ためのアクセサリーでした。
<引用終わる

ところが、ビジネスマンの服装学にも適用されていることで、カフリンクスは公式の会談・懇談・交渉事の席に着く際につけて行ってはならない性質なのである。まして、首脳会談の場に臨む時などにはあってはならないことなのだ。カフリンクスだけではなく、飾りがついたタイバー(「タイピン」は別の装飾品)の着用も避けるべきなのだ。

この点についても、以下にKS教授の見解を引用してみよう。

「カフリンクスは夜の宴席(=タキシードを着るか、それに準ずる装いがもとめられるoccasion)でつけるのが原則で、昼間の式典やビジネスシーンでつけるのはあまり望ましくない。モーニングとかディレクタースーツとか、格式のたかい礼装をした場合は例外になるが、そのケースでも石の入っていないカフリンクスをするほうがよい。

米国大統領と会談する日本の首相の装いとして、黒い石の入ったカフリンクスは理想的とはいえません。たぶん石破氏のスタッフに、服装にくわしいひとがいないのだと思います。」

となっていて、明快なのである。

このくらいのことにも側近の気配りは必要だったのではなかろうか。私は外務省の担当部局もここまでのことに気が回らなかったのではなかったと、何となく同情したい気もしないではない。以前にも指摘したことで、服装については、我が国で「紳士の国」と崇めている英連邦よりも、アメリカ合衆国の方が厳格なのである。そのアメリカの大統領との会談の席だった。

以上、揚げ足取りと非難されることを承知で疑問点を取り上げた次第である。Mead社のパルプ部副社長は日本に来る時でも「タキシードに黒いエナメルの靴を持参して、夕食の席には着用に及んでいた。夕食の席に昼間のスーツにネクタイの儘という姿は略式なのである。服装とはそういう事なのだとご承知おきを。 


トランプ大統領に申し上げておきたい事があります

2025-02-10 07:38:49 | コラム
何故、アメリカは貿易赤字を抱えることになったか:

私はトランプ大統領が以下に指摘するような事柄を承知の上で「我が国や中国に向かって輸出を減らしてアメリカ国内で生産せよ」と要求されるのか、あるいは全く知らずに数字だけの現象を見て、強硬姿勢を取られるのかが分からないのです。と言うのは、実態と現状を認識できていれば「関税をかけるぞ」などと言い出せるとは思えないからです。

と言う次第で、アメリカ紙パルプ・林産物業界の代表的メーカーの2社に通算で22年間勤務して日本向け輸出に専念してきた者の経験と見聞から、思うところを申し述べておきたいのです。

トランプ大統領は事態/実態を正確に認識しておられるのか:
トランプ大統領は貿易赤字を嫌うと言われていますが、私が見る問題点は「アメリカの西海岸は兎も角、ロッキー山脈の東側に日本向け輸出に懸命になる企業がどれほどあるかという事実を認識しておられるのか」という点です。私は未だに、側近または関係者が大統領に実態を説明し切れていないのだと疑うのです。

事実、私の長年の友人で、アメリカではアメリカの会社だと誤認されているS社のEVP(専務だったかも?)で、アメリカ駐在と勤務が長かったK氏は「何処も何もしていない」と断言していた。

ましてや、1990年代初期までボーイング社に次いで対日輸出の金額がアメリカで第2位の会社だったウエアーハウザーが実質的に消滅しているし、ボーイングはあの体たらくでエアバス社に取って代わられている現在、何処のどの会社が貿易赤字を解消できるだけの輸出をするのでしょうか。大統領が推進しておられる液化ガスは、今日明日には物にならないのでは。

これも、何度か取り上げた話ですが、在職中に大学で同期だった経済学部の緒田原教授に「ウエアーハウザーが一次産品(素材)であるパルプ、木材チップに紙類だけを日本に輸出するアメリカ有数の会社だ」と語ったところ、「何だ。それではアメリカは日本の植民地のパターンではないか」と苦笑いでした。要するに、あけすけに言えば、我が社は「資源小国」に素材を提供していた企業だったという事になるのです。

ウエアーハウザーは60年代に米材丸太(ダグラスファー=米松)を供給する会社として日本市場に進出。その頃の販売は商社任せだったとか。ウエアーハウザーの経営はそこから川下に向かって多角化していき、印刷用紙類と段ボール原紙等の製造と輸出に注力していったのです。パルプと木材チップの輸出が続いたのは、日本には乏しい針葉樹に特化したまで。だが、アメリカ政府は丸太のような素材で売ってしまえば自国の産業と業者が潤わないと悟り、丸太の輸出を制限していきました。

アメリカ西海岸には大規模の製造会社がなく、輸出したくても木材関連の製品の他には飼料用の乾燥した牧草くらいしか大規模に輸出できる物が少ないのです。そこで、ウエアーハウザーの大活躍となった次第。トランプ氏はこの辺りの歴史と実態を何処までご承知なのかと思うのです。

民主党のクリントン政権などは全く知らずに「原料ばかり買って、世界最高の品質を誇るアメリカの印刷用紙を輸入しない日本が怪しからん」と、何度もスーパー301条を適用するぞと脅迫しました。私は「無知は力なり」なのかなと何度もトランプ氏の貿易赤字嫌悪の姿勢に疑問を呈してきました。

ロッキー山脈の西側に輸出に注力できる/する企業が少なく、多くの種類の製品を輸入に依存せざるを得なくなっていたアメリカで、貿易赤字が増大するのは避けようがなかったのです。それに、繰り返し指摘したように、労働力の質に問題があったので、輸出市場での競争能力が低下していたのも紛れもない事実。

何故、貿易赤字が増えたのか:
上述のようにアメリカの会社に勤務していたから見えてきて、指摘できる問題点が多々ありますが、私にはもしかして赤字が増えたのはオウンゴールにも似た現象だったかもしれないとも見えていました。

アメリカの消費者/需要家の品質受け入れ基準が我が国のそれと比較すれば非常に大らか且つ大雑把で、その製品として機能を果たせば良いというようにすら見えました。故に、需要家も最終消費者も、購入した製品/商品が少しくらい規格から外れていても、外観が悪くても気にしないのです。

そうなってしまった原因には労働力の質が低いことも挙げられるのです。アメリカの製品しか知らなければ、そういう物に慣れてしまえば、我が国の基準からみれば問題があっても受け入れられているのです。その市場に我が国や下請けに使っていた中国や東南アジア等の国から品質に優れ、経済的な価格の製品が入ってきたのでは、加工業界も消費者も受け入れるので、アメリカの製造業は防ぎきれませんでした。

それだけではなく、職能別労働組合の力が強くて、賃上げ要求が激しくなったのを受け入れた為に労務費が高騰したのです。そこで生じた現象は「労務費が低く、質が高い労働力がある中国や他の発展途上国に工場を移す空洞化」です。自国で作らずに他国に任せたのでは輸入が増えるのは当然。

その点では自動車産業が輸入品に負けたデトロイトが典型的な悪い例でしょう。主たる敗因はどの産業でも通用するだろう労働力の質の問題です。そこには、我が国の方式とは異なる「職能別労働組合」の問題があるとは何度も指摘してきました。簡単に言えば「会社の組織内ではない上部組織から派遣された組合員が製造の現場を担当している」と言う事です。会社と工場が別個の組織なのです。

組合に負けて賃金(時間給の労務者向け)を上げ続け、空洞化が発生したのだという流れを、不動産業界と興行界出身のトランプ氏に確実に認識できていたのだろうかという疑問に撞着します。

アメリカでは、結果的に非耐久消費財(アパレルや雑貨のみならず、人気のブランド品でも外国に生産を委託)を輸入に任せていたのです。老舗のBrooks Brothersなどでは殆どの衣類が東南アジアの国での製造となっていました。

製造業界では多くのメーカーは優れた人材を集めて、R&Dに巨額の投資をするので、素晴らしいアイデイアは後から後から出てくるのです。だが、残念ながら商業生産化する段階の工場の労働力の質が低いので、最新鋭のアイデイアが活かしきれていない傾向がありましたし、真似をして作った後進国にも抜かれてしまうのでした。

こういう不利な条件を抱えていれば、輸入が増え続けるのは避けようがないのではと危惧します。トランプ大統領がこのような状態を、関税をかけてdealで減らそうと意図しておられるのであれば、「できると思っておられるのかな」と疑問に思ってしまうのです。

どの業種でも何処でも良いから工場に行って、現場を見学して組合員たちと会話してみれば、何故貿易赤字が増えて、アメリカの競争力が低下したか直ちに見えてくると言いたいのです。カーラ・ヒルズ大使は1994年にこの労働力の質の問題点を指摘していました。我が事業部では副社長以下全員が承知していました。だから、改善に努力したのです。


2月9日 その2 改訂版「和製英語(造語)とカタカナ語 #6

2025-02-09 15:43:18 | コラム
ローマ字式発音または恣意的な読み方:

本稿は2014年2月8日に発表したものが有難いことに今でも読んで頂いているのだが、編集が粗雑で読み難い点が多々あったと思うので、お詫びしてここに加筆訂正したもの。宜しくお願い申し上げます。

 私はこれは日本訛りの発音の変形であるとも考えている。この例は私が嫌う割にはそれほど多くはないと思う。簡単に言えばKing’s accentでは”o”を「オ」といわばローマ字のように素直に発音するが、アメリカ式となると殆ど「ア」と発音されることを指している。例えば「ホリデー」とされている単語の綴りが実はholidayで、発音記号を見ても実際にネイティヴ・スピーカーの発音を良く聞いても「ハラディー」となっていることを指している。

 さらに“a”を素直に「ア」と読まずに「エイ」という発音になる例が多いのも要注意である。なお、King’s系の発音では「アイ」となることがあるが、これはロンドンやオーストラリアやニュージーランドにおける訛りであるから除外して良いだろうと思う。

 私が指摘したい最悪の例は、アメリカのMajor League Baseball(=MLB)を「メジャーリーグ」または「メジャー」と言い、カタカナ表記していることなのである。「メジャー」に当てはまる英語の言葉はmeasure(=計る)しかあり得ない。だが、この「メジャー」は完全に全国区で戸籍を得てしまった。この恥ずかしい読み方を最初に導入したのは何処のどいつだったのか。

 ここで発見した面白い現象にminorをチャンと「マイナー」と表記していることだ。何故、Minor Leagueは「ミノルリーグ」にならなかったのだろう。

中には発音が難しく尚かつカタカナ表記も困難で似て非なる表記になっているものがあり、私はこれが最も気に入らない。それは「セキュリティー」となっているsecurityや「ユビキタス」になってしまったubiquitous等である。何れも辞書を見て貰いたくなるようなおかしな表記であると信じている。

 
*コラーゲン ⇒collagen、
解説)奇怪である。正しい発音は「コラージェン」なのだから。このように“g”の表記がおかしくなっている例に「ロサンゼルス」がある。Los Angelesは「ロスアンジェレス」なのだが。

*ペプチド ⇒ peptide、
解説)これは「ペプタイド」のように発音するのだが、だれか先達がペプチドとしてしまった。

*ルーキー → rookie, rookey, rooky、
解説)奇怪である。どこの世界にbookをブークと言う人がいるか?lookと書いて「ルーク」と読むか?発音記号を見て貰いたい。そう言っても、最早定着しているから手遅れか?「ルキー」か「ルッキー」に近いのが本当だろう。

*パトリオット → patriot、
解説)典型的ローマ字読み。日本語に帰化済み。本当は「ペイトゥリアット」に近い。

*ナトー → NATO
解説)ローマ字読みである。帰化済みである。英語では「ネイトー」と発音される。パックンとやらはこれも槍玉に挙げていた。

*ボディーチェック → body search、
解説)すでに例に挙げたが、ローマ字読みとして再登場させた。ボデイーではなくて、バデイーが英語の発音。*シンポジューム → sy

*シンポジウム ⇒ symposium、
解説)このumないしはiumで終わるスペルのグループには、他にもアルミニューム=aluminum→アルーミナム、アクアリウム=aquarium→アクエアリアム、スタジアム=stadium=ステイディアム、ウラニウム=uranium→ユーレイニアム等がある。

*ゲーリー → Gary、
解説)これはゲアリーであると思う。偶にはギャリーとしている例もある。面白いことはMaryには「メアリー」があって「メリー」もあること。何を隠そう、この私もゲーリーだと思い込んでいた時期があり、訪ねたゲーリーはいないと言われてしまった経験があった。他に面白かった現象に”Queen Merry”と名付けられた観光バスに乗ったことか。

*リコール → recall、
解説)欠陥商品の回収ならばリーコルかリーコールに近くなり「リー」にアクセントが来る。リコールだと思い出すことになる

*リサイクル → recycle、
解説)リーサイクルだが、最早リサイクルが日本語に帰化を果たしている。ここで面白いと思うことは「レサイクル」と読まなかった点である。こういう柔軟性がたまらない。

*ビニール → vinyl、
解説)これは造語に近い。しかも間違いが重複している珍しくもない例。これはヴァイニルと読むのだがPVC=polyvinyl chloride=塩化ビニルのこと。我が国では広くビニールをプラスティックス(Plastics)の代名詞の如く使っている。プラスティックスには他にもpolyvinylidene chloride=ポリ塩化ビニリデンもあるし、polyethylene=ポリエチレンも、polyamide≠ナイロンも、polyurethane=ウレタン等多数あるにも拘わらず。なお、ビニルだけではビニル基のことになると思う。これは、どうやらドイツ語の発音らしいのだが。

*レギンス → leggings、
解説)これはここまで挙げてきた例から外れるが、こういうものもあると思取り上げた。私は長い間レギンスの元の言葉が分からなかった。必ずしもローマ字読みではないのだが、いつの間にかこのように変化して定着したようである。ここには複数のsが残されている。

*ハーレイダビッドソン → Harley-Davidson、
解説)勿論?かのオートバイのハーレイ・デイヴィッドソンなのだが、これも日本語化済みである。David=ダヴィデはイスラエルの王である。このことは割合に広く知られていたと思うが、それなのに“ダビッド”としたのは何故だろう。

*ヘボン式 → Hepburn、
解説)ローマ字の本家本元James Curtis Hepburnを忘れていた。宣教師で医師であったヘプバーンさんがヘボン式ローマ字の生みの親だと思う。だから敬意を表して敢えてここに入れた次第。当時、これが「ヘボン」と聞こえたのであろう。私はこれが聞き違いとは思わないが。だが、後から出てきた二人の有名女優、キャサリンとオードリーはヘプバーンと表記されている。

*レトリバー → retriever、
解説)ご存知、訓練された猟犬である。リトリーヴァーに近いのが本当の発音だろう。因みに、retrieveは取り戻すことだ。

*アワード → award、
解説)アウオードに近いのが本当の発音だ。近頃この妙な読み方が大流行。だが、これは難しい問題でforwardにbackwardやtowardとwardがつく言葉が多い。ワードはwordの方だろう。「戦争」のwarを「ワー」と発音するか。

*レシピ ⇒ recipe、
解説)正しくは「レサピ」に近く、レにアクセントが来る。出もここまで網を広げると揚げ足取りと言われるかと危惧する。

*マクドナルド → McDonald’s、
解説)どう読んでも「マクドナルズ」なのだが、このファストフードが進出以来所有格無視で通ってきた。敢えてカタカナ表記すると「マクダナルズ」でアクセントは「ダ」に置くのだ。同様に、アメリカ合衆国大統領は「ダヌルド・トランプ」に聞こえるように発音する。

*パーテーション ⇒ partition、
解説)これが最近目立ってきた。いや、耳だって?いるのかも知れない。これは一寸酷すぎるカタカナ語化だ。勿論「仕切り」のことだが、どう読めば「パーテーション」になるのだろうか。似たような言葉にconditionがあるが、誰も「コンデーション」と言わないのは何故だろう。

*クローズアップ → close-up、
解説)同じcloseでもここでは「閉じる」ではないのだから「クロウス」という発音になるのだ。NHKに「クローズアップ現代」という番組がある。あれは現代を接写しているのだと思うが、あれでは閉鎖してしまっている。

*コンテナー → container、
解説)コンテイナーである。containが元だが、これを「コンテン」と読むか?

*カジュアル ⇒ casual、
解説)catと書いて「カット」と言うか。「キャジュアル」だ。英語の面白さはcanと言えばキャンで「出来る」だが「缶」もcanだが、これは前にaを付けるものだろう。

*セキュリティー → security、
 解説)これは最も憎むべきで、メジャー(majorの誤読)と共に排除したいカタカナ語であり、造語に部類に入れたいくらいだ。英語を母国語とする人の誰が発音しても、如何なる辞書を見ても発音記号には「セキュアラティー」が最も近いのである。何処の誰がこんな劣悪なカタカナ表記を編み出してテレビで言わせ、報道の文書に使うと決めたのか。

しかも、困ったことに屡々safetyと混同されている。Oxfordにはsecurityは“the activities involved in protecting a country, building or person against attack, danger, etc.”とある。safetyは“state of being safe and protected from danger or harm”とある。では、セキュリティーはどっちだ。

 
筆者注:
重ねて申し上げ得ますが、上記は2014年2月8日に発表したもので、反省する所があって加筆訂正して改めてお送りする次第です。

「石破首相とトランプ大統領との初会談」に思う事

2025-02-09 07:01:18 | コラム
人の性格には多面的なものがあるのでは:

石破首相とトランプ大統領との初会談は、両首脳ともソツなく進められたのは両国の為にも非常に良かったと思う。そりが合わないのでは」と懸念されていた(誰が?)石破首相とトランプ大統領との波長も合っていたようだし、取り上げるべき波乱もなかったのもとても良かったのではないか。

私には記者会見でのトランプ大領領の抑制的とも見えた姿勢からは、支持者たちに語り掛けられるときの乱暴な言葉遣いは影を潜め、穏やかな「善い人」ドナルド・トランプ氏だったのが非常に印象的だった。その様子を見て、聞いて、あらためて人の性質と見えるものには多面的なのだろうと認識した次第。

何を言おうとしているのかという点だが、故石原慎太郎君(湘南中学の同期生で、同じ蹴球部の一員だった)を思い出していただきたい。彼は国会議員から都知事に就任したころには奔放な(乱暴な?)言葉遣いをする強気一点張りの人のようになっていた。要するに「人はその一面だけを見て、その人柄を決めつけるのは適切ではないのでは」なのである。

だが、我々蹴球部の者たちには「穏やかで気が弱く神経質で丁寧な言葉遣いの石原はどこに行ったのだろうか」と不思議なことにしか見えなかった。我々の一致した見方は「あの弱さにも通じかねない穏やかさを外に見せない為の、言わばベランメー口調なのだろう」だった。彼は細かい気遣いをする人で、この件は嘗て「石原は良い奴なんです」として発表してあった。

トランプ大統領も、あの石破首相の「国会答弁の常套句」という当意即妙な表現に対して、“He knows what he is doing.”と称賛した辺りは、選挙キャンペーン中にバイデン大統領(当時)とハリス候補を罵倒していた人と同一とは思えないほど違っていた。それこそ、トランプ氏と個人的に付き合いがある人たちが「良い人です」と表現した善い人そのものの面を感じさせた。

私はドナルド・トランプ氏が盤石の支持層である、敢えて言うと中以下の階層、それも労働者階級に向かって語り掛けられる際には、彼らに通じやすい乱暴な表現を敢えて使っておられるのだろうと、何回か指摘した。人とはそういうものだろうと思っている。石破首相にしても、記者会見ではマスコミが揶揄する石破構文では語っておられなかったと受け止めた。

私はトランプ大統領が無理をして善い人を演じておられたのではなく、故安倍元総理との間に築き上げられた、日本に好感を持つ良い大統領で接してこられたのであり、注意深く慎重に事を運ばれたのではと見ている。この辺りを、流行語大賞は取れないだろう、流行りの言葉でいえば「多様性がある」とでもなるか。

あら捜し:
「ビジネスマンの服装学の権威」と秘かに自認する私としては、石破首相のあのスリップオンだと見た何となく疲れたような靴が気になった。公式の場には相応しくない靴であると信じているからだ。あの場では内羽根の黒色の紐を結ぶ靴でなければならないのだ。この点で、私は折角の初の首脳会談の評価から減点しようと思う。

ところが、この方面に精通しておられる東海大学KS教授は、下記のような見解だったので紹介しよう

>引用開始
石破氏が「まちがった装いをしている」とまではいえないように思います。(わたしもじつはこの手の靴を持っていて、ときどきスーツに合わせます。購入するとき店員にも、「これ、slip onだけどスーツにも履けますよね?」と確認し、「スーツでも履けるということでおすすめしています」という回答を得ています。イタリアのファッション関係者も、ときどき「スーツに履き口の深いローファー」を合わせているのを写真でみかけます……)ただ、日本の新首相が、はじめてアメリカの大統領に会うときに、あの靴でいいかというと疑問です。
<引用終わる

という事なのだ。強調しておきたい事は「公式な場での服装は非常に厳格であり、好い加減にはできないのである」という点なのである。外務省も首相の靴までに注意できなかったという事か。

石破首相とトランプ大統領との初会談に

2025-02-08 16:01:00 | コラム
平穏無事に終わったようで何よりでした:

折悪しく6日から湯治に当時かけており、今朝ほどは帰宅の慌ただしい準備中だった。と言うのも、昨夜は早寝で、早朝も朝5時に入湯、時間が決められた朝食、荷物作り、忘れ物チェック、駅までのシャトルバスの予約等々に忙殺された。言い訳としては、ホテルも商売繁盛で何とか予約が取れたバスは朝9時半で出発という具合で、落ち着く暇が無かった。

従って、共同記者会見も飛び飛びにしか見る余裕がなかった。トランプ大統領が専ら慎重に原稿を読んで、当たり障りのない儀礼的な事ばかりを述べられ、我らが石破首相も同様に儀礼的な辞を述べていたのには、やや意表を突かれた感も。確かに「テレビで見てきたよりは穏やか云々」というようなジョーク(ユーモア?)を入れた勇気は良かった気もしたが、聞き逃していたのは残念!

アメリカの女性記者が議事堂突入の1,500名の釈放を質問していたのは驚きだったが、トランプ大統領の反応を観察するだけの時間の余裕がなかった。あの記者はこの機会に日頃質問できなかったことを「この機会に」と、持ち出したのだろうか。石破首相の初会談と関係があるのだろうか。

飛び飛びに聞いた限りでは、無難な話し合いに終始したのかなという印象。後報を待とう。USスティール買収を「投資」に切り替えた着想と表現が、トランプ氏だったのかどうかは不明だが、良い方向に進んだともう。但し、前日?に、USSのCEOに説得されて、流石のトランプ大統領も目覚めて事態を認識したのかと疑いたくなる。(余計なお世話だが、あの会社はスチールではない)

私は側近乃至はチャンとした有識者が、トランプ大統領に向かって勇気を以て何事についても「貴方の考えは間違いです」と進言する必要があると思う。だが、トランプ大統領は自説を曲げず、所謂レクチャーは容易に受け入れないと報じられているようだが。

私はもしかして何か波乱が起きるのかと懸念していたが、途切れ途切れに見て、聞いていたニュースでは、トランプ大統領が大事な同盟国の日本との関係を一層強固にするよう配慮されたのかと考えた。あるいは、官邸と外務省が懸命に賢明な作戦を立てた上に、事前の調整が卓抜だったのかと思うようにしている。

帰ってきたばかりで考えが十分に纏まっていないが、兎に角感想を述べておきたい衝動にかられた次第。また、希望的観測としては「石破茂首相は故安倍晋三元総理を凌ぐトランプ氏と昵懇の間柄を築き上げる第一歩だったら素晴らしい」と言って締めたい。