「エスコン」って何だろうと思っていた:
昨30日は北海道の日本ハムの新球場「エスコンフィールド北海道の杮落とし」の試合を見ていた。記憶する限りでは「エスコンとは」の説明はなかった。そこで検索してみると不動産会社だった。正確には「日本エスコン株式会社」(ES-CON)だった。
テレビ中継では詳細にこの球場の施設の紹介があった。なかなか興味深いものがあった。そこは言うなれば「東京ドームがある後楽園遊園地一帯を凝縮して野球場にしてしまった」とでも言えば良いかもしれないほど娯楽設備が整えられていた。「良く考えたものだな」という印象。
と言うのは、我が国の野球場には「娯楽」という観念が一切盛り込まれていなかったが、この点はアメリカに行って野球なりフットボールなりを観戦すると、そこには「お持てなしの場」の感覚があったのだ。一方、我が国では「野球場とは神聖なる野球道に精進した選手たちが戦う場を提供するのだから、お持てなしなどとんでもない」との感覚に満ち溢れていて、緊張感すら味わえる場であるのだ。換言すると「物品の販売などで利益を上げよう」という場ではなかったと思う。
1980年代だったかに、初めてシアトルでキングドーム(今では破壊されてしまったが)に入って、MLBの野球を見たときにはhot dog等の売店の前には大きなスペースがあり、食べながらモニターで観戦できるような場所の広さと明るさに圧倒された。要するに、土地に余裕がある設計なのだった。それに、場内は回廊式になっていて内野から外野までを一周して歩けたし、甲子園球場のように外野席が分離されてはいなかったのも印象的だった。
スポーツに対する精神的な姿勢の違いにも触れておきたい。古くから言われていることに「我が国では野球でも何でも外国から導入されてきた競技でも、『武道』のように『道』化されて、精神面が重視される傾向がある」と言って誤りではないと思う事だ。即ち、「礼に始まり礼に終わる」のであり、甲子園の高校野球のように試合開始前に両校が整列してお辞儀をし、終われば再度お辞儀を交わすのである。退場する際にも、全員が脱帽して球場に一礼するのだ。美しい文化である。
アメリカ人たちはそんなことを考えてはいない。初めてアメリカ人の野球を見たときに、いきなり守備側がグラウンドに出て行って守備位置についたのには驚かされた「挨拶抜きかい」と。アメリカ人たちとともに野球やフットボールを見に行くと、彼らは上質のエンターテインメントを楽しむ為に来ているのだということを、良く認識できるし、球場側もその楽しみの為の設備を整えていると知った。
エスコンフィールド北海道はそのアメリカ式の娯楽施設というかエンターテインメントのために形を整えてあると見た。中にはホテルまであり、その室内からも観戦でいるようにしたとは、アメリカ人もビックリだろうとかと思った。また、アナウンサーが「観客席が左右対称になっています」と言い間違えたように、言わばアメリカ式に「左右が非対称」になっているのも特徴だろう。
誰の発想で造られたのは知る由もないが、野球道ではなくて、楽しむ場として捉えていた球場の設計に大いなる興味を感じた。行ってみたい気もしたが、もう北海道まで観戦に飛んでいける体力が残っていないだろうと不安を感じたのが残念だった。