新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

仕事始めの日に神田明神に参拝とは

2025-01-07 06:39:09 | コラム
まさか、あれほどの大人数で「神頼み」ではあるまいな:

神田明神に「商売繁盛」や「金運の好転」を祈願に企業や自営業の経営者たちが、仕事始めの日参拝に行くという習慣があるという話は聞いたことがあった。だが、これまでに、その参拝と祈願の光景をテレビが中継したことはなかった気がする。それなのに、昨日辺りに大勢の方々が長い列を作って参拝・祈願され、熊手を買っていく様子が放映された。当方はその規模の大きさにはやや驚かされていた。

しかも、リポーターが出張っていて、色々な業種の方に「何を祈願されたのか」とまで尋ねて回っていたのだった。私は単純に「何故、今年だけ、これほど事細かに放映するのだろうか」と思いながら、その光景を眺めていた。そして「もしかすると、長く続く不況に沈み、給料も上がっていかない状態から脱出する為に、遂には自力だけでは事態を打破できないと、神頼みとなってしまったのか」とすら感じていた。

世界を見れば、あちこちで紛争や騒動や独裁政権の崩壊が発生し、アメリカでは間もなく大統領が交代し、カナダでは首相が辞意を表明したとか、ドイツもフランスも政権が不安定とか伝えられている。我が方でも石破首相は未だにトランプ次期大統領との会談の予定が定まっていない。その石破首相は新列島改造や大連立の可能性を仄めしていたが。7月の参院選の見通しも明るいとは言えないようだ。

各方面で事ほどさように見通しが不明ならば、残る手段が「神頼み」となったのだろうか。石破さん、逆風に負けずに何としても難局を打破して、神頼みにしなくても済む明るい日本にして下さい。頼みましたよ。

バイデン大統領が日本製鉄のUSスティール買収を阻止

2025-01-06 06:28:20 | コラム
「木を見て森を見ず」ではなかったのか:

この度、バイデン大統領が日本製鉄のUSスティール買収を阻止したことは予想通りのことで意外でも驚きでもない。「矢張りやってくれたか」と受け止めたのは誠に残念な結果である。産業界の実情に精通しているのかが疑わしいトランプ氏が、選挙キャンペーン中に先手を打って「反対」を唱えてしまったので、立場上追随せざるを得なかったようだ。だが、本当にそれだけの理由からだったら、事態は深刻だと思っていた。

私は「バイデン大統領の認識ではアメリカの鉄鋼業界が中国等の新興勢力に圧倒されて、劣勢であるとは知らず、自力で再建が可能とでも見ておられるのかもしれない」と疑いたくなってしまう。鉄鋼と言い紙パルプと言い、素材産業が衰退しつつあるだけではなく、新興勢力に市場を奪われている現状を何処までご承知かという事。と言うのは、私は既に24年12月26日に以下のように指摘していたのだから、

>引用開始
アメリカ側では懸案事項になっていたこの問題を、23日に連邦政府の傘下にあるCFIUS(=対米外国投資委員会)バイデン大統領の決断に任せることにしたと報じられた。CFIUSは「国家安全保障上のリスクがある」などと表明していたが、忌憚のないところを言えば「何を今頃になって言っているのか」辺りになる。

バイデン大統領は既に買収を支持しない意向を示していたし、トランプ次期大統領等は期待通りに反対を表明していた。私には両氏が21世紀の今日USスティールが世界の鉄鋼産業界でどのような地位というか、勢力になってしまっているかを良く承知の上で、立場上否定的な言辞を弄しておられるのだと推定しているが、そうでなかったら大変な事なのだ。

それは世界の鉄鋼産業界は言わば新興勢力の中国、インド、韓国等に圧倒されてしまい、生産量では日本製鉄は第4位でUSスティールに至っては24位の弱小メーカーに落ち込んでしまっている。即ち、市場では新興勢力の大量生産体制と安値の攻勢に圧倒されて、先進国は押されっぱなしなのだ。その24位に沈んだUSスティールに、日本製鉄が合併という救いの手を差し伸べたと言えば解りやすいかも知れない。

この時点での当方が危険視していたことは「バイデン大統領もトランプ次期大統領もアメリカの製造業が世界的に劣勢であり鉄鋼業界も例外ではない事を正確に認識出ていないのではないか。出来ていれば、真っ向から反対など出来るわけがないから」と言う点だ。
<引用終わる

JIJIの報道:
バイデン大統領は声明で、買収計画は「国家安全保障と重要なサプライチェーン(供給網)にリスクをもたらす」と述べ、安保への懸念を強調した。

ただ、米シンクタンクのハドソン研究所によると、USスティールの取引先は自動車や建設など民間部門が多く、国防関連先に鉄鋼を供給していない。また、国防総省が必要とする鉄鋼は米生産量の3%にとどまり、米鉄鋼業界は十分な生産量を確保できているという。

また、USスティールのブリット最高経営責任者(CEO)は3日、バイデン米大統領が日本製鉄による買収計画を阻止したことについて、「恥ずべき、腐敗したものだ」と批判する声明を発表した。「バイデン氏の政治的腐敗と闘うつもりだ」と述べ、法廷闘争を示唆した。このように米企業のトップが、現職大統領を強い言葉で批判するのは異例なのだそうであると聞いた。

USスティールの反応:
CEOブリット氏は声明で「経済、安全保障上の重要な同盟国である日本を侮辱し、米国の競争力をリスクにさらした」とも指摘。中国が不当に安価な鉄鋼を輸出し、市場支配を強めていることを念頭に、「中国共産党指導者は小躍りしている」と語り、買収阻止は中国を利することになると主張した。

日本製鉄はアメリカ政府に対して法的措置を講じる意向。バイデン米大統領が買収中止命令を出したことを受け、日本製鉄とUSスティールは3日、「明らかに政治的な判断だ」とする共同声明を発表した。今回の判断は適正な手続きが取られず、法令違反だとして米政府を提訴する方針を明らかにした。  

声明で両社は「この決定はバイデン大統領の政治的な思惑のためになされたものであり、米国憲法上の適正手続きと、対米外国投資委員会(CFIUS)を規律する法令に明らかに違反している」と批判し、「法的権利を守るためにあらゆる措置を追求する」と表明した。 

声明は「日鉄による買収は、米国の国家安全保障を弱体化させるのではなく、強化するものであることは明らか」として、買収計画が米国鉄鋼業界全体に利益をもたらすものであると主張した。  

その上で「同盟国である日本をこのように扱うことは衝撃的で、非常に憂慮すべきことだ。米国へ大規模な投資を検討しようとしている米国の同盟国を拠点とする全ての企業に対して、投資を控えさせる強いメッセージを送るものだ」と外交関係にも言及しながら厳しく非難した。「我々は決して諦めない」とも述べ、米政府に対する提訴を含め対応策を講じる考えを示した。

日本政府は:
私がやや奇異に思う事は「バイデン大統領が阻止を決定したのに対して、日本製鉄は遺憾の意を表明して法的に争う姿勢を鮮明にしたにも拘わらず、日本の政府は実質的に音無しの構えである点」なのだ。何故だろうか。

上述のように、当方の見解と各社の報道を纏めてみると、このような論調になるのである。上手い喩えにはならないかもしれないが、バイデン大統領はこの事態を処理するに当たって、「木を見て森を見ず」のような事をしてしまったのではないのか。

私は外国人を排除したい方なので

2025-01-05 07:23:50 | コラム
外国人(移民?)を受け入れざるを得ない事態だが:

産経新聞に田北真樹子特任編集長が「都心ではコンビニや飲食店の店員・スタッフ、ビルの清掃員らで外国人を見ない日はない」という書き出しで「移民拡大」という問題を論じていた。「外国の事情と外国人とは」を一般の方々よりも良く承知しているからこそ、私は外国人受け入れに容易に「諸手を挙げて賛成」できないのだ。

外国人を見たら何と看做すべきか:
何度か述べてきたことで、私が無節操に外国人を受け入れる政策に反対するのには理由がある。それは「我が国にやってくる連中とは自国で正業に就けず言わば食い詰めた者たちで、日本は外国人に優しいし人手不足に悩んでいると知って付け込んできただけだから、受け入れるに当たっては充分に識別か選別する必要があるのでは」というところにある。

例えば、アメリカでハーバードのビジネススクールでMBAを取得した若手の精鋭が、我が国に職を求めて一旗揚げようかとやってくるかという問題なのだ。我が国に英語や英会話の教師になどと言って流れてくる者どもが、アメリカの支配階層の人たちに認められ且つ通用するような正統派の英語を教えられる訳がないのだ。厳しく選別すべきだ。

人手と若年の働き手不足の時代:
だが、最早我が国が外国人を働き手として受け入れざるを得ないことくらいは解っている。即ち、毎年のように人口の減少が続き、出生率の低下も止まらないことくらいは充分に認識している。だが、簡単に言ってしまえば、知識と経験の他に熟練の技術を要しない単純反復労働の分野では決定的且つ致命的に人手が不足しているので、正規か非正規か知らないが上記に田北氏が指摘されたように外国人が増えているのは紛れもない実態。

アメリカの事情:
そういう労働というか仕事の分野に外国人が増えたら治安問題等がどうなっていくかは、アメリカに行ってみれば簡単に解る。アメリカにも「駕篭に乗る人担ぐ人、そのまた草鞋を作る人」的な流れがあって、単純反復労働の分野にはアフリカ系やヒスパニックや韓国等のアジア人が瞬く間に増えていった。その背景にはトランプ次期大統領が嫌悪される非合法のヒスパニック系の移民が急増していた。

その増え方たるや凄まじいものがあり、再三指摘したことで、私がリタイアした1994年頃のアメリカの人口は2億6千万人だった。それが約30年間で3億3千万人に達していた。白人の人口が6千万人も増えたのかという話だ。その流入した外国人に職を奪われたアフリカ系がLAで韓国人との間で大騒動を起こしたという事件があったではないか。

田北真樹子特任編集長が指摘された「コンビニや飲食店の店員・スタッフ、ビルの清掃員らで外国人を見ない日はない」は何年も前からアメリカでは日常茶飯事というか、ごく普通の事態なのだった。2010と2011年にカリフォルニア州を訪れた私は旅行記に「これからLA(ロスなんていう奇妙な略語は使わない)かカリフォルニアを旅しようとされるならば、先ずスペイン語と韓国語を覚えておかれると良い」と記載した。

このように人口が20世紀の頃よりもなお一層急増したアメリカでは、大都市における治安の急激な悪化が報じられている。トランプ氏が前任期中にメキシコ国境に壁を建設されても南アメリカから侵入してくるヒスパニックたちを防ぎきれなかった。そのこととの結果かどうか不明だが、治安の悪化が止まらないようだ。その悪化の傾向も我が国のような「匿名・流動型犯罪グループ」によるような性質ではないのだから、未だ州か連邦政府により鎮圧の方法がある。

我が国における窃盗犯の増加:
我が国では匿流の他に、太陽光発電施設の電線、果物や野菜の果樹園や畑からの窃盗、高級車の窃盗等の犯罪に不法滞在の外国人が加担した例が多すぎるのは気になる。彼等を受け入れた側の虐待がそういう犯罪に加担する一因になったと報じられている。私には人手というか働き手の不足に付け込まれてしまった気がする。

インバウンドの増加による問題:
本筋から外れる議論になるが、無闇矢鱈に「インバウンド様」を尊重し受け入れる政策に走った結果が「オーバーツーリズム」が生じて観光地を悩ます結果を招来したのではないのか。ハッキリ言えば、私は「外国人を見たら・・・と思え」と看做す方の一派に属している。だが、彼等に我が国独特の礼儀作法を周知徹底させる策を講じて来なかった政府にも責任があると見ている。知らなければ守れないのではないか。

石破首相にも望む事:
石破政権も「インバウンド様尊重政策」と「外国人労務者の受け入れによる人手不足解消策」を継承するのであろうから、何とかして可及的速やかに「外国人労務者を慎重に受け入れられるような政策と方式」を立てて頂きたいものである。さらに付け加えれば我が国は「性善説信奉」からの脱却も考えるべき時が来ているのだと思う。

1月4日 その2 「我が92年の人生を」の改訂版です

2025-01-04 08:28:22 | コラム
個人的に数字にして振り返れば:

37年が過ぎていた:
1988年(昭和63年)に、ここ東京都新宿区の片隅に建つ25階建てコンクリート住宅に住み着いてから37年目に入った。これまでの人生で一カ所に最も長く住んできた記録である。既に一度大修繕を経ている。3.11にはこの近所でも大揺れだったが、このコンクリート住宅は無事だった。凄いものだと感嘆して感謝した。

80年:
1945年(昭和20年4月)に旧制の中学(くどくなるが、当時は5年制)に入ってから、何と80年も経っていたのだった。この年の8月に1941年(昭和16年12月)から始まり、4年続いた戦争が終わっていたのだった。当時の小学生の認識では「アメリカに負けて戦争が終わる」とは全く夢にも考えてもいなかった。

その中学が1948年(昭和23年)に突如として新制の3年間の高等学校に変えられた。1951年(昭和26年)その新制高校を卒業してから4年制に変えられていた大学に入学した。未曾有の就職難の時代だと言われていた1955年に無事に大学を卒業して就職できたのだった。中学に入ってから10年経っていたのだが、旧制度の11年から1年短縮される事には気が付いていた。

この過ぎし10年間に我が国は目まぐるしく変化した。大本営発表では勝っていたはずの戦争が無条件降伏で終わり、国土(と我が家も)はアメリカの空襲で東京を中心に焼き払われてしまった。終戦とほぼ同時に、突然聞いたこともなかった「民主主義」の国に変わり、軍国主義とは決別したと聞かされた。そして東京裁判となり、中学生には何のことか解らぬままに東条英機他が処刑されていった。

しかし、そこから先の我が国の復興の速度は本当に目覚ましく、恰もそうなる為の諸々の制度が設計されていたかのようだった。私の世代は戦時中の食べる物がなかった生活から「貧乏人は麦を食え」と暴言を吐いた総理大臣が「所得倍増」を目指して経済の復旧・復興を見てきた。その成長の原動力に朝鮮動乱の特需のお陰があったという説は聞いたが、「当然の進路を進んでいるだけ」と受け止めていた。

あの頃までには「お米」は切符制だったし、財産税や新円の発行等々があって、戦前の富裕層が資産の大半を失っていったのだった。食糧を確保する為に農村に「買い出し」に行かざるを得なかったし、「物々交換」などと言って、着物や家財を食糧と取り替えっこをしていたのだった。この物がない時代を乗り越えられたのは、戦時中の「欲しがりません、勝つまでは」に耐えてきたからだという気がする。

1955年(昭和30年)に就職した頃の大学新卒者の初任給が1万円前後だった。それが、あれから70年を経た21世紀の現在で20万円辺り止まっているとは、他の物価水準の上昇と比較すれば、余りにも低くはないかと批判が集中するのは尤もだと思う。私には経営者側の手腕と責任の問題だという気がするのだが。

70年:
個人的な回顧に戻ろう。2025年で大学を終えてから何と70年も経っていたのだった。そうだったと気がついてみれば、遠い昔のことだったと解る。

17年は日本の会社で:
その日本の会社に採用して頂けて、17年間お世話になった後の1972年(昭和47年)に、アメリカの紙パルプ産業界の大手であるMeadに転進してから53年経っていたのだった。さらに1975年(昭和50年)に思いもかけなかったアメリカで第2位のWeyerhaeuserに移ってから、丁度50年(=半世紀)も過ぎていたとは、今更ながら驚いている。

22年半もアメリカの会社に:
振り返れば、このように日本の企業に17年半、アメリカの2社に19年強と、合計で22年半ほど勤務していた。この22有余年もそれこそ我が国の激変の時代だったと思う。あの目覚ましい急成長で世界の経済大国に名を連ね、日本式の「和」を尊ぶ経営方式が世界に広まっていくかの感すらあった。「wa」がアメリカやUKの辞書に採用されたという話すらも聞いた。

確かに、アメリカを始めとする先進の諸国が沈滞し、我が国が追い越したかの感があった。その沈みつつあるアメリカの製造業界の紙パルプ産業界の大手2社に勤務して「何故あれほど停滞したのか」は良く解った。

私には先ず「目指しただけの利益が挙がらなければ、合理化や拡大再生産の為の設備投資は実行しない」という古き良き資本主義の原則を貫いたことで、世界最新鋭の設備を備えざるを得なかった中国等の新興勢力の後塵を拝する結果になったこと」が大きな原因として指摘できると思う。時代遅れの設備で低質の労働力で生産する製品には世界の市場での競合能力がなかったのは当然。

次は「職能別労働組合の存在」と「労働力に質の低さ」である。この点は、繰り返して指摘してきたことで、1994年にUSTRのカーラ・ヒルズ大使が公開の席で認めておられた。こう指摘しても、容易に認識されないのが残念である。アメリカの労働組合と組合員たちと繰り返してつきあってきた、アメリカの大手製造業の会社の社員だった私が、我が国の組合と比較して言うのだから、紛れもない事実だ。

31年も前にリタイア:
そのアメリカの製造業を代表する一社だったWeyerhaeuserから1994年にリタイアしてから、2025年の今年で31年も経ってしまった。その31年間でアメリカ合衆国は大きく変わっていた。1994年には2億6千万人程度だった人口が今や3億3千人に達している。一寸考えても解ることは、トランプ次期大統領が「送り返す(deportationと言うようだ)」と言明された移民が多くなったのは明らかだ。

製造業が不振を極め、トランプ氏が嫌われる貿易赤字は一向に減らない。だが、一方ではGAFAMが世界を席巻している。オバマ元大統領は世界の警察官を辞めると宣言された。その結果かどうか、世界中の方々で動乱というか騒乱というか戦争というか知らないが、揉め事ばかりだ。トランプ次期大統領は瞬時に鎮めてみせると豪語しておられるので期待するしかない。

でも、バイデン大統領は世界の鉄鋼産業界が過剰設備を抱えてしまった中国の安値攻勢で混乱しているとご承知なのかどうか、悩めるUSステイールを日本製鉄が買収すると申し出ているのは退けられた。アメリカの製造業の地位が世界全体で何処まで下がっているかの認識が本当に無かったのであれば、問題は深刻だと思う。ボーイング社の混乱をご存じないのかと疑う。

1994年にリタイアしてからの31年間に我が国と世界とアメリカと新興勢力の事情は非常に激しく変化していたのである。過去のことしか知らない92歳の私には、簡単に理解できる状態にはないと思う。間もなく80歳になろうという製造業の世界を経験しておられないトランプ氏が君臨して、どのようにして支配していこうと計画しておられるのだろう。


我が92年の人生を

2025-01-04 07:41:35 | コラム
個人的に数字にして振り返れば:

1945年(昭和20年4月)に旧制の中学(くどくなるが、当時は5年制)に入ってから、何と80年も経っていたのだった。この年の8月に1941年(昭和16年12月)から始まり、4年続いた戦争が終わっていたのだった。当時の小学生の認識では「アメリカに負けて戦争が終わる」とは全く夢にも考えてもいなかった。

その中学が1948年(昭和23年)に突如として新制の3年間の高等学校に変えられた。1951年(昭和26年)その新制高校を卒業してから4年制に変えられていた大学に入学した。未曾有の就職難の時代だと言われていた1955年に無事に大学を卒業して就職できたのだった。中学に入ってから10年経っていたのだが、旧制度の11年から1年短縮される事には気が付いていた。

この過ぎし10年間に我が国は目まぐるしく変化した。大本営発表では勝っていたはずの戦争が無条件降伏で終わり、国土(と我が家も)はアメリカの空襲で東京を中心に焼き払われてしまった。終戦とほぼ同時に、突然聞いたこともなかった「民主主義」の国に変わり、軍国主義とは決別したと聞かされた。そして東京裁判となり、中学生には何のことか解らぬままに東条英機他が処刑されていった。

しかし、そこから先の我が国の復興の速度は本当に目覚ましく、恰もそうなる為の諸々の制度が設計されていたかのようだった。私の世代は戦時中の食べる物がなかった生活から「貧乏人は麦を食え」と暴言を吐いた総理大臣が「所得倍増」を目指して経済の復旧・復興を見てきた。その成長の原動力に朝鮮動乱の特需のお陰があったという説は聞いたが、「当然の進路を進んでいるだけ」と受け止めていた。

あの頃までには「お米」は切符制だったし、財産税や新円の発行等々があって、戦前の富裕層が資産の大半を失っていったのだった。食糧を確保する為に農村に「買い出し」に行かざるを得なかったし、「物々交換」などと言って、着物や家財を食糧と取り替えっこをしていたのだった。この物がない時代を乗り越えられたのは、戦時中の「欲しがりません、勝つまでは」に耐えてきたからだという気がする。

1955年(昭和30年)に就職した頃の大学新卒者の初任給が1万円前後だった。それが、あれから70年を経た21世紀の現在で20万円辺り止まっているとは、他の物価水準の上昇と比較すれば、余りにも低くはないかと批判が集中するのは尤もだと思う。私には経営者側の手腕と責任の問題だという気がするのだが。

個人的な回顧に戻ろう。2025年で大学を終えてから何と70年も経っていたのだった。そうだったと気がついてみれば、遠い昔のことだったと解る。その会社に17年間お世話になって1972年(昭和47年)にMeadに転進してから53年経っていたのだった。さらに1975年(昭和50年)に思いもかけなかったWeyerhaeuserに移ってから、丁度50年(=半世紀)も過ぎていたとは、今更ながら驚いている。

振り返れば、このように日本の企業に17年半、アメリカの2社に19年強と、合計で22年半ほど勤務していた。この22有余年もそれこそ我が国の激変の時代だったと思う。あの目覚ましい急成長で世界の経済大国に名を連ね、日本式の「和」を尊ぶ経営方式が世界に広まっていくかの感すらあった。「wa」がアメリカやUKの辞書に採用されたという話すらも聞いた。

確かに、アメリカを始めとする先進の諸国が沈滞し、我が国が追い越したかの感があった。その沈みつつあるアメリカの製造業界の紙パルプ産業界の大手2社に勤務して「何故あれほど停滞したのか」は良く解った。

私には先ず「目指しただけの利益が挙がらなければ、合理化や拡大再生産の為の設備投資は実行しない」という古き良き資本主義の原則を貫いたことで、世界最新鋭の設備を備えざるを得なかった中国等の新興勢力の後塵を拝する結果になったこと」が大きな原因として指摘できると思う。時代遅れの設備で低質の労働力で生産する製品には世界の市場での競合能力がなかったのは当然。

次は「職能別労働組合の存在」と「労働力に質の低さ」である。この点は、繰り返して指摘してきたことで、1994年にUSTRのカーラ・ヒルズ大使が公開の席で認めておられた。こう指摘しても、容易に認識されないのが残念である。アメリカの労働組合と組合員たちと繰り返してつきあってきた、アメリカの大手製造業の会社の社員だった私が、我が国の組合と比較して言うのだから、紛れもない事実だ。

そのアメリカの製造業を代表する一社だったWeyerhaeuserから1994年にリタイアしてから、2025年の今年で31年も経ってしまった。その31年間でアメリカ合衆国は大きく変わっていた。1994年には2億6千万人程度だった人口が今や3億3千人に達している。一寸考えても解ることは、トランプ次期大統領が「送り返す(deportationと言うようだ)」と言明された移民が多くなったのは明らかだ。

製造業が不振を極め、トランプ氏が嫌われる貿易赤字は一向に減らない。だが、一方ではGAFAMが世界を席巻している。オバマ元大統領は世界の警察官を辞めると宣言された。その結果かどうか、世界中の方々で動乱というか騒乱というか戦争というか知らないが、揉め事ばかりだ。トランプ次期大統領は瞬時に鎮めてみせると言い切っておられるので期待するしかない。

でも、バイデン大統領は世界の鉄鋼産業界が過剰設備を抱えてしまった中国の安値攻勢で混乱しているとご承知なのかどうか、悩めるUSステイールを日本製鉄が買収すると申し出ているのは退けられた。アメリカの製造業の地位が世界全体で何処まで下がっているかの認識が本当に無かったのであれば、問題は深刻だと思う。ボーイング社の混乱をご存じないのかと疑う。

1994年にリタイアしてからの31年間に我が国と世界とアメリカと新興勢力の事情は非常に激しく変化していたのである。過去のことしか知らない92歳の私には、簡単に理解できる状態にはないと思う。間もなく80歳になろうという製造業の世界を経験しておられないトランプ氏が君臨して、どのようにして支配していこうと計画しておられるのだろう。