覚えて置いて使える時が来れば良いが:
アメリカに行けば、現地の人たちと話をすることも当然のようにある。入国手続き(IRSという担当部署)もあれば、ホテルや空港のチェックインもあれば、商店での買い物や、レストラン等で注文することもある。
こういう場合に戸惑わされるのは「アメリカならではの独特の言い回しがある事」で、慣れていないと「何の事?」となってしまい応答できなくなってしまう場合が多々あるのだ。そこで、今回はそういう教科書には出てきていなかっただろう言い方(言われ方か?)を取り上げていこうと思う。
「入国審査」:
解説)到着した空港では先ず入国管理(Immigration and naturalization service=INS、移民帰化局)のブースに入り、パスポートと出入国カードを提出する。すると無愛想な係官が“Business or pleasure?”、と問いかけてくる。「サイトシーイング?」訊かれた経験はない。
”pleasure”は「楽しみ」という意味なので「仕事で来たのか遊びに来たか?」と訊かれたと理解すべきだろう。観光だと思っていれば「サイトシーイング」とは言わずに「プレジャー」と答える方が良いと思う。
ご夫婦の場合は一緒にブースに入っても良いので、”We are traveling together.”と申告すること。次の質問は通常は滞在期間だから、例えば”Seven days.”と言ってみれば良い。そこまででスタンプが捺されて入国許可となる。ここを通過するのは慣れていないと非常に緊張させられるもの。
「税関」:
解説)ここを通るのも緊張を強いられると思う。税関申告書は機内で作ってあるはずだが、申告するものを持っていなければ、“Nothing to declare. All personal belongings.”と言えば良いと思う。たまには「スーツケースの鍵を開けろ」と要求されるが、素直に従うことだ。
空港で:
解説)税関を通った後で空港の話になるが、帰国しようというのではない。何百回そういう手続きをしたか数えたこともないが、チェックインが終わって、往年は厚紙だったboarding passを貰うと、係員が“Now. You are all set to go.”と言って送り出してくれた。そう言うのが手続きのうちかと思って意味など考えた事もなかった。
後になって調べてみれば「準備完了」か「準備万端整う」という事だった。なるほど「ご搭乗の準備完了です」と言っていたのだと知った。でも、この“all set ~”は他にも応用できそうかと思ったが、ついぞ使ったことがなかった。
ホテルで:
解説)次はホテル。「フロントデスク」乃至は「フロント」は完全な日本語での表現である。アメリカのホテルのフロントのカウンターには通常”Reception”という表示されている。そこに行ったら「予約してある誰それです」という意味になる”I am so and so. I believe I have a reservation, here.”という決まり文句がある。”so and so”は「誰それ」という意味だが、こう言いなさいと言うのではなく、ご自身の氏名を名字から言えば良いと思う、そこが“first name first”の国であっても。
次は(今でもそう言う手順になっているかどうか責任は持てないが)クレデイットカードを提示する。その際に注意すべき事は「カードを裏向きにしてカウンターに置くこと」である。何故かと言えば、何時何処で番号を盗み読みする悪者がいるか解らないので、それを防止する為の安全策である。
レストラン等で:
解説)アメリカの習慣では、メニューを見ている限り、そのテーブル担当のウエイターかウエイトレスは寄ってこない。余り長い時間迷っていると“Are you ready to order?と問いかけられることもある。通常はメニューを置いてから”I’m ready to order.”と係のウエイター(ウエイトレス)を呼べば良い。「オレンジ」の「オ」にアクセントを置くのだが、アメリカ式では「アレンジ」の方が通じるだろう。
卵料理の注文は面倒だが、目玉焼きをやってみよう。「卵2個の目玉焼きで、黄身のところは半熟程度に軽く焼いて欲しい。そしてハッシュブラウンを付けて欲しい」と言うとしよう。それは、”Two fried eggs, over easy with hashed browns on the side.”と言えば通用すると思う。”hashed browns”はジャガイモを刻んで纏めて焼いたものでアメリカ人は喜んで食べるか、正直なところ美味いものではない。
目玉焼きの注文が面倒だったら卵料理は抜きにするか、「アムレット」と言えば「オムレツ」が出てくる。”on the side”としたのは「サイド・オーダー」(=付け合わせか)のことで、「ソーセッジ」と言えば「ソーセージ」が出てくる。案外面倒なのがbaconのアクセントで、「ベイクン」なのであり、「ベイ」にアクセントを置くと分かってくれる。因みに、アメリカではテーブルで精算するのであり、伝票を持ってキャッシャーのところに行って払うのではない。
ホテルの中での支払い:
解説)これはホテル内のレストランでも売店でも、現金で支払うのではなく、伝票(checkというと思っていれば良いか)に署名する時に”Can I charge it to my room account?”と言えば、部屋付け即ち滞在の勘定の中に入れられるのだ。通常は“Oh, yes.”とか”Of course.”(=勿論)と答えるだろう。
「買い物」:
解説)キャッシュレスの時代になってからはアメリカに行っていないので、ここでは過去の経験談になるだろう。ホテルの外での買い物の場合の会話。販売員たちはこちらがアメリカの習慣を知っているか知らないかなどは一切構わずに、気安く”Cash or charge?”と訊いてくる。即ち「現金払いですか、クレデイットカードで払いますか」と確認する。
”charge”がカード払いの意味だが、私は「クレデイットカードにチャージするので”charge”と言うのだ」と思っている。トラベラーズチェックで払ったことはあるが、個人小切手で払った経験はないが、これは現金と同じだと思う。
なお、レストランなどではカードで払う場合に、その伝票には”tip”を書き込む欄があったので、そうすればチップの現金を出さなくても済む。21世紀の現在では最低でも15%で、20%にせねばならない場合もあるとか聞かされた。大変な時代になったものだ。
筆者注:
既にお分かりの方がおられると思うが、所謂「日常会話」などというものは、ごく簡単な平易な単語ばかりを使って的確に言いたい事を表しているのである。即ち、沢山の単語の独自の意味だけを覚えていても、native speakerたちの中に入れば、そのやさしい単語を組み合わせた表現に出会うことが多いので、困惑させられるのだ。
だからこそ、今日まで繰り返して「単語の意味をバラバラに覚えるのも良いが、夫々の単語が流れの中でどのように組み合わされていくかを学んでおく必要がある」と強調してきたのである。この点を充分認識して頂きたいのだ。