○ 会社の資本に関して、会社法では三原則があると言われています。即ち、①資本充実の原則、②資本維持の原則、③資本不変の原則、④資本確定の原則ですね。三原則といって四つある?のはおかしいですね。人によって分類方法が違うからですね。①②を併せて、資本充実・維持の原則という言い方もします。但し、④の資本確定の原則は、資本金の額を定款の記載事項として確定し、これに見合う財産の拠出をもって会社を設立あるいは増資することを意味します。会社設立時に、定款の附則として「設立に際して出資される財産の価額」として、「設立時資本金の額は、金xx億円(資本準備金の額は、金x億円)」などと記載しますが、これとは意味合いが違います。その後は、定款の記載事項ではありませんね。登記事項ですけれどもね。この原則は今の会社法には採用されていないので④は除かれます。ということで、資本に関する三原則ですね。
① 資本充実の原則:資本金の額に相当する財産が実際に会社に拠出されることです ね。株主は有限責任(104条)ですので、会社財産が債権者の引当となるので、株主の出資財産を払い戻すことを原則禁止する等の規制等も意味します(②の原則と一体として捉える方もいます)。現物出資の検査役調査、発起人・取締役の不足額填補責任もこの原則の現れですね
② 資本維持の原則:「資本金の額に相当する財産が実際に会社に維持されることをいう」とされています。こんなことないですよね。赤字の会社は一杯あります。実際に財産を維持しようとしても、事業がうまくいかなければ出来ないですね。資本金は元手です。維持できるかは会社の損益次第です。財務会計の資本取引と損益取引を混同した考え方です。この資本維持の原則は、人によって少し考え方が違うようです。もうこんな原則は無いという方もいます。でも、まあ「剰余金の配当や自社株取得の際の財源規制の原則」のことを言うと一応考えておきましょう。
③ 資本不変の原則:資本金の額の減少を会社の自由にさせないという原則ですね。勿論法定の手続き(特別決議+債権者保護手続等)を踏めばできますが。まあ、変な呼び方ですね。「不変」なんて。不変なら増加の場合も規制するのですか?そうではないですね。もっとしゃれた呼び方ないでしょうかね?
○ 上記の原則は、財務会計の視点で言えば資本取引ですね。財務会計では、資本取引と損益取引は明確に区別されています。企業会計原則三では「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。」としています。元手と利益を混同しては、正しい会計情報では無く利害関係者の判断を誤らせてしまうということですね。
○ 資本の三原則も資本取引も、資本が動いたときだけの話ということですね。資本の金額表示は毎日変動しませんからね。日常の企業活動は損益取引ですね。企業に常時適用される原則ではなく、資本の変動のある時だけ支配する原則だということです。ですから増資で資本を充実しても、直ぐに大損出せば、お金はなくなりますし、資本は維持されないですね。資本金の額という数字は、そのままですけどね。
○ 純資産の額は、今の会社法では、単なる資産マイナス負債の計算上の金額表示です。その中で資本金・準備金の金額は、配当・自社株取得の財源規制の際に維持すべき純資産の最低額を示す計数の役割しか果たしていません。勿論、会社のキャッシュフローとは関係の無い事項ですから、キャッシュが足りなければ、調達しないといけません。
○ 会社は、いったん資本金を元手に事業を始めれば損益取引とキャッシュフローで動いています。資本充実の原則で債権者の引当といいましたが、上記通り資本取引というある時点のBSの取引であり、継続・循環取引の債権者というPLの損益取引が混同されています。例えば、資本金(増資金)が払い込まれても、使途が決まっておれば、その債権者への支払いには充てられますが、他の債権者の引当にはなりません。債権者は、自分が卸売りした製品を、その会社が販売すれば、その売掛金を担保にして回収を計ることも出来ます。資本充実と言っても、お金が入っても直ぐに使ってしまった場合は、債権者の引当にはなりません。
○ H21年改正の会社計算規則、25条1項、29条2項1号では、資本金の増加の原資を、資本準備金・その他資本剰余金に限定せず、利益の資本組み入れを再度(昔の商法の通り)認めています。会社法では、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする」(法431/614条)という規定がありますが、どうも、会社法は、原則がふらふらしたり、原則の混同があるのではないでしょうか。
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