○ 今回は日米の株主代表訴訟(Derivative Litigation)についてです。取締役が会社に対して負う善管注意義務に違反(日本)・信任義務(fiduciary duty・米国)に違反することにより会社に対して責任を負う場合、会社が当該取締役に責任を追及する場合は、日本では監査役(監査役設置会社の場合)が会社を代表します(386条1項)。しかし、役員仲間である日本ではこういった訴訟は実現性に乏しいですね。ということで、株主により責任を追及する機会が与えられています。日本でも米国でも、株主は、会社に対してまず提訴請求しなければならないとされていますが、そのとき会社を代表するのは、日本では株主総会により定められた者ですが、監査役設置会社の場合には監査役ですね(386条2項)。しかし、ご承知の通り米国では監査役はいません。ということで、どういう仕組みになっているのでしょうか。
【日本の場合】
原則として、株主(公開会社の場合は6ヶ月前から継続して株式を有する株主)は、まず会社(当該会社の監査役)に書面等をもって訴えの提起を請求(847条1項)し、60日待ってなお会社が訴えを提起しないときは、株主は自ら提起しうる(847条3項)としています。ただし、60日待っていると会社に回復できないような損害が生じる恐れがある場合(取締役が財産を隠匿したりしている)には直ちに訴えを提起できます。被告は、当然責任を追及される取締役又は取締役であった者ですね。ではいかなる責任について代表訴訟を提起しうるかについては、多数説は取締役の会社に対する責任一般であるとしています。また、この責任追及の訴えが提起されたときは、他の株主又は当該会社もその訴訟に参加することが出来ます(849条1項)。
【米国の場合】
会社が訴訟を提起するか否かの決定は取締役会の権限ですね。その決定には経営判断原則(Business Judgment Rule)が摘要されます。しかし、取締役が信認義務を果たさず、経営判断原則を適用することが出来ない場合には、株主代表訴訟が認められます。
監査役がいない米国の会社の場合は、まず取締役会に会社自ら訴訟を提起するよう請求することが原則になっています。しかし制度の大枠は、米国も日本も同じですね。というか、日本が(例によって)まねをしたのでしょうか。
模範事業会社法では、Chapter 7 Shareholdersの権利として、7.40以下にDERIVATIVE PROCEEDINGSとして規定されています。
7.41 STANDING
A shareholder may not commence or maintain a derivative proceeding unless the shareholder: (1) was a shareholder of the corporation at the time of the act or omission complained of or became a shareholder through transfer by operation of law from one who was a shareholder at that time; and (2) fairly and adequately represents the interests of the corporation in enforcing the right of the corporation.
§ 7.42. DEMAND
No shareholder may commence a derivative proceeding until: (1) a written demand has been made upon the corporation to take suitable action; and (2) 90 days have expired from the date the demand was made unless the shareholder has earlier been notified that the demand has been rejected by the corporation or unless irreparable injury to the corporation would result by waiting for the expiration of the 90-day period.
上記は模範事業会社法ですが、デラウェア州会社法では、この事前請求が意味の無い場合(futile)は免除されるということになっているようです。
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