○ 日本の会社法の剰余金は、決算期現在では、基本的には資産から負債を引いて純資産を出し、そこから資本金と準備金を差し引いた金額であり、これは「その他資本剰余金」+「その他利益剰余金」との合計額に自己株式の保有額を加えたものですね。このうち分配可能剰余金は、この剰余金から法461条2項の各号の通り、加算・減算(自己株式の帳簿価額等)したものになります。剰余金の分配だけでなく自己株式の取得でも、この拘束を受けます。いわゆる財源規制と言われていますね。
○ では、米国の会社法での分配可能剰余金の規制はどうなっているのでしょうか?模範事業会社法では、以下の様に定めています。
§ 6.40. DISTRIBUTIONS TO SHAREHOLDERS
(a) A board of directors may authorize and the corporation may make distributions to its shareholders subject to restriction by the articles of incorporation and the limitation in subsection (c).
(c) No distribution may be made if, after giving it effect:
(1) the corporation would not be able to pay its debts as they become due in the usual course of business; or (2) the corporation’s total assets would be less than the sum of its total liabilities plus (unless the articles of incorporation permit otherwise) the amount that would be needed, if the corporation were to be dissolved at the time of the distribution, to satisfy the preferential rights upon dissolution of shareholders whose preferential rights are superior to those receiving the distribution.
即ち、債務を支払えないような配当は行ってはならない、あるいは資産が負債より少なくなるような分配は行ってはならないとしています。おもしろい規定ですね。普通は、資産合計額から負債合計額を差し引き、更に資本金(stated capital)の額を差し引いた金額を剰余金として、その限度において利益配当ができるとするのが当たり前だと思うのですが。日本法と違い、分配規制に資本金とか剰余金とかの概念はありませんね。
○ 米国では、州によっては額面株式の制度を廃止していますが、多くの州ではまだ額面株式が多いですね。即ち、発行済額面株式の株金総額をもって資本金としています。ただ日本と違うのは、日本では法445条2項3項により払い込んだ額の1/2までは資本準備金としなければなりませんが、米国ではこういった規制はありません。 米国では、発行価格US$100/株であっても額面をUS$1/株として、発行株式数にUS$1に掛けて、その総額を資本金とすることが可能ですね。Google(Delaware州法人)の普通株にも額面がありますが$0.001 par value per shareですね(*)。1centではありません。1/10centですね。残りはCapital surplusで、これも剰余金なので分配可能ということで、もう資本金の意味がありませんね。従い、米国企業の財務諸表には、Stockholders’ equityという言葉はありますが、最近は資本金=Stated Capitalという言葉はあまり使わなくなってきています。
準備金についてですが、Delaware会社法171条では。取締役会は、配当に当てる会社の資金から正当な目的の為に準備金を積み立てることができるし、また準備金を廃止することもできるとしています。日本と異なり、取締役会決議でできますね。
§ 171. Special purpose reserves.
The directors of a corporation may set apart out of any of the funds of the corporation available for dividends a reserve or reserves for any proper purpose and may abolish any such reserve.
(*) GoogleのJune.30,2011の10-Qを見ると、Stockholders’ equityとして以下の様に記載されています。
Stockholders’ equity:Class A and Class B common stock and additional paid-in capital, $0.001 par value per share: 9,000,000 shares authorized; 321,301 (Class A 250,413, Class B 70,888) and par value of $321 (Class A $250, Class B $71) and 322,668 (Class A 253,830, Class B 68,838) and par value of $323 (Class A $254, Class B $69) shares issued and outstanding.
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