○ 私のBlogで、結構アクセスがあるのが「株券不発行会社の株式譲渡方法」↓です。
http://blog.goo.ne.jp/masaru320/d/20070409
アクセスの検索用語を見ると、「株券不発行、株式譲渡、サンプル」等もあり、具体的な雛形を探しておられる人が多いようです。ということで、今回は大サービスで、①名義書換請求書と②株主名簿記載事項証明書(株主証明)の(まぬけ商事株式会社の)雛形を末尾に添付します。また、併せて、会社法の株主名簿の規定について、少し「けち」をつけてみようかと思います。
① 名義書換請求書(会社法上の用語を使用する場合は「株主名簿記載事項変更請求書」としたほうが良いかもしれませんが、昔の用語である名義書換請求としています)-雛形をご参照下さい。
- 譲渡制限株式で、取締役会に承認権限がある場合の前提です。
- 譲渡承認は、株式の取得者も出来ますが(137条)、通常は事前に株主が譲渡承認請求をする場合が多いので、その様式にしてあります。
- 名義書換請求は、通常は株主と株式取得者との共同請求(133条2項)ですので、譲渡人と株式取得者の両者が、共同で会社に請求する形式にしてあります。一枚の書面にしていますが、もちろん譲渡人、株式取得者がそれぞれ別の書面にしても構いませんね。
- 名義書換請求の内容は、株主名簿記載事項(121条)を踏まえて作成しています。
- 株式の譲渡・取得日と名義書換請求日と、会社に実際に名義書換請求をする日は同一日として作成しています。→これらの日が異なると問題が生じる場合があると思います(後述)。
- 譲渡と対価の支払いを同時にする場合は、先のBlogを参照して下さい。先に譲渡人が記名捺印して、会社では無く、株式取得者に、この書面を交付することですね。
② 株主名簿記載事項証明書
- 株主名簿に記載又は記録された日(証明書では121条三号の通り、株式を取得した日としています)を、平成20年5月7日、証明書発行日を5月9日としています。
- 尚、以下に、証明書の日現在の発行済み株式総数とか議決権の個数を記載しています。
別にこれを記載しなくても良いですが、独禁法の株式所有報告とか、株式の保有比率・議決権保有割合で、報告・届出の必要な場合がありますので、これも記載した方が親切でしょう。
但し、転換社債型新株予約権付社債が発行され、株式に転換される株式があり、発行済み株式数が変動している場合とか、単元株制度の採用で議決権の個数が変動している場合があり、かつ毎日集計していないとか、多数の株主がおり株主名簿管理人を起用している場合等は、期末(中間期末を含む)とか事前に名簿管理人に依頼したときしか、正確な議決権保有割合がわからない場合がある点注意も必要です。その場合は、尚以下は書けませんね。
○ 121条三号に、株主名簿記載事項の一つとして、「第一号の株主が株式を取得した日」を記載・記録しなさいと規定されています。私は、これは会社法によくある「ちょんぼ規定」の一つであると思っております。「株主名簿に記載又は記録した日」とすべきです。その日から、株式取得者を、会社としては株主として扱いましょうということです。
- 株式取得者が、株式を取得した日と名義書換請求を会社に対して行う日は、同じ日もありますが、異なる日も当然考えられます。会社が新株を発行した日なら問題無いでしょうが、株式取得者が旧株主と共に、名義書換請求する日は、株式を取得した日と同じ日にしなければならないという理屈もありません。取得して、取得後に名義書換請求することだって十分あり得ることですね。
- 株主間で、株式を譲渡・取得した日は、当事者が会社に通知しないとわかりません。とくに株券不発行の場合は、当事者間では株式の譲渡は、意思表示で効力が生じます。会社としては、名義書換請求されるまでは、(事前に譲渡承認されていても)別に株主として扱う必要もありません(130条1項)。かえって株主として扱うと、株主の多い会社などの場合は混乱のもとになります。124条4項に基準日後に株式を取得した者も権利行使できる者と定めることができる例外的な定めをしていますが、これは株主が少数の会社の場合とか第三者割当増資をした場合だけですね。やはり、一律に扱う必要があります。
- 問題が生じる場合とは、どんな場合でしょうか。例えば、定時株主総会の基準日を3月31日と定款で定めている会社とか、臨時株主総会を開催するため基準日の公告(124条3項)をし、総会招集通知を送ったとき等、名義書換請求書に、株式の取得日を基準日以前とし、請求日を基準日後にして書換請求をした場合、どうするのですか?会社としてはバックデートして株主名簿の記載事項を変更出来ますか?出来ないですよね。
- 名義書換は、会社に書換請求をされた実際の日で行わないと支障をきたします。121条三号の規定は、ちょんぼ規定だと思います。
- ついでですが、122条4項には、株券発行会社については株主証明の規定(同条1-3項)は適用しないと規定されていますが、別に事実の証明の株主証明の請求権を認めてもよいのではないかと思います。
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