とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

劇評「八月納涼歌舞伎『廓噺山名屋浦里』」

2016-08-20 14:48:35 | 演劇
 8月16日に「八月納涼歌舞伎」の第2部と第3部を見てきました。その第3部の演目『廓噺山名屋浦里』の感想です。主演は中村勘九郎と中村七之助。原作は笑福亭鶴瓶の新作落語だそうです。

 とてもおもしろい話でした。歌舞伎の人情話としてかなりよくできた話となっていたと思います。

 ただしやはり筋が弱い気がしました。理由は2点。

 1点目。七之助演ずる花魁が実は暗い過去があります。その暗い過去によって遊女になってしまった。その思いがあるからこそ、勘九郎演ずる武士の実直さにほだされるのです。その過去が軽く描かれているように思いました。

 2点目。勘九郎演ずる武士と七之助は、決して結ばれることがないとしても、やはり恋仲になるという設定にしたほうがいい。そうしなかったから話があまりにストレートに進みすぎ、深みが出なかったように思えます。

 普通なら後の花魁道中が感動の焦点となる場面となるはずなのに、どうしてもつけたしのように感じるのはそのためではないかと私は考えています。

 しかしこういう話を大切にして、再演を繰り返していけば歌舞伎も多くの人に愛されていくように思います。意欲を感じるすばらしい舞台でした。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする